B-REVIEW作品投稿掲示板


儚い夢   

咲羽 
作成日時 2018-11-13
コメント日時 2018-11-14

 

儚い夢がここにあります どこまでも続く この道に 儚い夢の傷跡があります 笑顔を忘れたあなたがいます 夢に打ち破れた 笑顔を忘れる私がいます 儚さを知りました でも、私は信じます 儚くても夢は夢で 叶えるものだと そういうものだと 私は想います


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まりも (2018-11-14):

この短さに、たくさんの想いを詰め込もうとしている、そのぎゅうぎゅう詰まった感じがみずみずしいですね。 もったいないところは、儚さ、という言葉が、なんども出てくるところ。道の途中に置き忘れられた、夢の傷跡って、どんな傷跡、なんだろう。儚いって、どれくらい儚いんだろう。 どこまでも続く道。これから続く、未知の人生を暗示する、進路。 そこで手に取った(そして、手に取ったとたんにとけるように消えてしまった)なにか、とはなんだろう。 傷跡のように道に刻まれた絵が、現れては消えていく景を思ったり、逃げ水のように映像を映し出して、行ってみると跡形もない、というような景を想像してみました。 咲羽さんの、最初に浮かんだイメージは、どんな感じ、でしたか?

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ほわいと・ふぁいあー   

白犬 
作成日時 2018-11-13
コメント日時 2018-11-14

 

5分前 ぐったりと 肉の奥までの深い疲弊 青灰黒の淀んだ空気が あたしをつま先から頭のてっぺんまで覆い尽くして 凡ては過ぎ去ったことのよう 凡ては酷く手遅れで無意味でどうしようもないことのよう 凡ては今日の曇空のよう あたしはやっぱり塵の滓の屑で何処にも手が届かなくて このまま喉をひゅうひゅう鳴らしながら 声も出せず 世界に溺れ死んでいくのだと。 煙草を1本吸いながら 言葉にすればそんなこと。 ぼんやり。 ベッドの上で浅い呼吸を繰り返す 見るとも無く留めたスマホ画面がふっと消える 目を綴じて 真っ黒な瞼の裏を 堪能する とぐろを巻いた白蛇のいめぃじ 体を丸めて世界を睥睨する白い犬のいめぃじ 狂暴で自由な動物達の 白く光るぎざぎざの歯のいめぃじ 降ってくる べっどの上で浅い呼吸を繰り返す あたしの体に降ってくる 心の内奥でなにかが、起きるの ふつふつ で ぷつぷつ 点と点を結ぶいめぃじはえご。 拙い舌をちろりと出し入れて 言葉を攪拌すると こころが攪拌されて。 知ってる 世界はもう手遅れで無意味でどうしようもない。 知ってる 社会が樹々の繁るジャングルのように見えてくる(あっちに居るのは虎、こっちには猿、あそこには猪、そこには嫉妬深い蛇 美しい声で囀る鳥 みんな友達みたいなもん、うそ?) 知ってる そして あたしは自由だ。 知ってる あたしが世界に突き刺すのは この左足の踵であって この右足の踵だ あたしは深く息を吸って 灰色の雲の匂いを吸い込んで 瞼をあげて 勢い良くベッドを飛び降りる ここだって宇宙の1部だ 笑える ね、それって 悪く無いんじゃね?って 思い出す あたしはちょっと笑ってる 怖いよ それで丁度良いんじゃない 灰色の雲も青い空も雨の夜も音も無く降る雪も みんなみんな好きだったことを思い出す 白い火がぷすぷす騒ぎ出すから ね 火に油 注いでよ 虚空に浮かぶ点々を架空の線で辿って いつか 君にも会いたいな たっぷり眠って目が覚めた後みたいに、静寂さえくっきりして鮮やかに見える時 ね、 今だよ ほわいと・ふぁいあ in 屑肉 (壊して。殺して。燃やして。生きちゃうからね。なんてね。遊ぼう)


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まりも (2018-11-14):

凡て すべて ではなく。 凡庸、平凡、凡人、 すべて塗り広げられた平坦さで 平滑な生を送るということ 几帳面に点を打つ、その内側に点を穿つ、 その一歩を踏み出せぬまま 沸き起こる疼きが身を燃やし尽くすのを 夢想しながら果たされない、その、平凡 かつえているのだよ、すべてに、だれもが もらい火ではなく 点火せよ マグネシウムが発火する

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言わざりし言葉   

矢部杏太郎 
作成日時 2018-11-14
コメント日時 2018-11-14

 

煙に当てられて、網戸の目も抜け出していけぬ蚊のように あぁ、、、消えてしまった


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まりも (2018-11-14):

蚊取り線香の威力を調べようと思って、蚊に煙を当ててみたら、手足を縮めるようにして落ちて死んだことを思い出しました。一瞬、ぞっとしました。 この二行の短詩で、消えてしまったのは、なにか・・・題名に「言わざりし言葉」と明示されてしまっているので、言葉、と「答え」が出てしまうのですが、短絡的に「答え」が出てしまう流れではなく、題名と本文との間に、あと一息、余白やずらしがあるとよかったのではないか、と感じました。 あるいは、例えば ルナールの 蝶/二つ折りの恋文が花の番地を探している 蛇/長すぎる のように、エスプリの効いた比喩の面白さを伝える、ということであれば、 言わざりし言葉/煙に当てられて、網戸の目も抜けだしていけぬ蚊 と止める、など。 言いかけて、飲み込んで・・・のどのあたりに挟まったまま、という不快な感じが、うまく出せるといいなと思いました。

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無傷神話にしていいよ   

大覚11〻3号 
作成日時 2018-11-13
コメント日時 2018-11-14

 

ぼくらの表面をまっ白な蝋が覆う。 窒息しそうだよ、いつだって、 仮面をつけられている みたいで。 ( これは雪だよ ) きみは詩人だね。 ほんとうは雪なんてもの、 この世に存在しないのに。 ぼくらのカラダはあまりにもツメタイ。 降ってくる熱さがすぐに固まってしまう。 ぼくはきみが、雪だというものを 手のひらにのせた。 ( すぐにとけるよ ) ( とける、から ) 凝固した蝋がちいさなクリスマスツリーを ぼくの手のうえにつくってゆく。 ( 降ってくるのは   イノチなんかぢゃない。 +   積もることしか、   ぼくらの命に能はないんだ ) 「 ぼくたちの愛は   積もることさえできないぢゃない。 +   でも、消滅してゆくって   なんて可憐なのだろうね 」 冷たいユビサキで きみがぼくの頬にふれる。 ぼくらの家にはストーブがない。 きみはあたためるのをあきらめて、 ぼくの手にできたクリスマスツリーを やさしく折ってから、あふれだす 赤さを処置してくれた。 「 痛みは野蛮なカンカクだよ   氷と地面のヒビが同時に   深まるみたいだ 」 血が、 じんわりと ガーゼに染みてゆく。 オキシドールのあまい香りが ぼくらの距離を 近づける。 ( 深まってゆくのは   ぼくたちのカンケイだけでいい。   熱さはうちをながれるものだよ ) 「 かつて、   ぼくたちは   セカイ平和よりも   自らの孤独を選んでしまった。   その埋め合わせに男女が   必要なだけだろう。 +   アダムとイヴが他人だとすれば、   ぼくたちは出逢うことすら   できなかったはずだ。 +   けれども、   それの代償がセンソウだなんて、   ぼくには信じられない 」 その通りだ、と きみはうなずいていう。 ( ぼく、きみにうそついていた。   あれは雪なんかぢゃないって、   ホントはわかっていたんだ。   化学兵器の蝋で肺が   やられるまえに、 +   ぼくで息をしてよ。   していい、よ ) ぼくたちのくちづけは神話になる 誰もしらない、ただの神話さ。


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渡辺八畳@祝儀敷 (2018-11-14):

HNはイイね

大覚11〻3号大覚11〻3号 (2018-11-14):

渡辺八畳@祝儀敷さん どうもありがとうございます。 詩の内容は────:) ううん。

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君の目   

abso0509 
作成日時 2018-11-13
コメント日時 2018-11-14

 

あなたに手首と握られたとき、貴方の長い前髪から見えた眼は私のことなんて映してない。ただ歌う事、音掻き鳴らす執念だけの強い目だった。 死ぬほど愛おしいモノを見た気がした。伸ばして摑まれたて手を降ろす事が出来なかった。 愛おしいモノの為にいるあなたが本当に愛おしい。


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みうら (2018-11-14):

一読した時、一瞬好ましい引っかかりがあった。それは私にも目が気に入っているミュージシャンが幾人かいるためだと思った。で、それだけでコメントをするのはいかがなものかと思い、一旦閉じた。二回目に読んで思った。この作品はそもそも書こうとしている題材がありそうでなさそうなもの、既視感があると一概に言い切れない作者が持つ固有な詩になっているのではなかろうかと少しハッとした。ただ少しイージーさが目立つ。気になったのは誤字ではないかと気になってしまう箇所が2点ある。次回作品も読みたいと思えた作者。読んで良かったです。

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愛情飢餓   

alice1017 
作成日時 2018-11-13
コメント日時 2018-11-14

 

愛情飢餓 ねえ教えてよ 価値があるってどんな気分なの? 価値があるってどんな強さなの? 価値があるってどんな価値があるの? みんな自分のシャドウを隠して ペルソナという仮面を被ったまま 気丈に振る舞って生き急いで 「大丈夫」って言い続けてる 暗い部屋 真夜中の2時 短い鉛筆で 愛情飢餓になった男が こんな無価値な詩(うた)を書いてんだ ねぇ教えてよ どうして愛してくれなかったの? どうして僕を見てくれなかったの? どうして僕を殴ったの? お母さん あなたが見つめるのは ペルソナを被った 愛想笑いをし続けるピエロ 僕の心はがらんどう 痛いほどの空の蒼さが僕を責める みんな自分のシャドウを隠して ペルソナという仮面を被ったまま 気丈に振る舞って生き急いで 「頑張るよ」って言い続けてる 暗い部屋 真夜中の3時 短い鉛筆で 愛情飢餓になった男が こんな無価値な詩(うた)を書いてんだ


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みうら (2018-11-14):

なんだろうか。主観的な感想を述べればタイトル通りの心情が直裁な物言いとしてストレートに痛く伝わってくる。客観視でみれば、内情に閉じ過ぎていてコメントしずらい。語り手は辛いのだろうが、語り手の辛さを読ませるところまでの何かが必要なのかもしれない。辛いことが伝わってきても読者は得をしない。読んで得したと読者に言わせなければならないと思う。極論だけれども。 歌の作品であればメロディーで補えたりする。しかしテキストのみの作品であればその何かを詩文に与えることがとても難しい。でもその難しさを越えなければ、他人にとっては価値のある、無価値な詩にはならないと思う。

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小さな村で見た   

ishimuratoshi58 
作成日時 2018-11-05
コメント日時 2018-11-13

 

いつぽんの川がながれてゐる。 川べりの道は夏枯れた草に覆はれてゐる。 川はゆつたりと蛇行して その先はうつすらと 野のはてにきえ 太古の記憶へとつづいてゐる と村びとたちは云ふ。 川の右岸を 白い服 紺の帽子のこどもたちがあるいてゆく。 男の子も 女の子も 一列であるいてゆく。 今日はいつまでも夕方にならない。 こどもらの列は ながながとつづいてゐる。 みな顔がわらつてゐる。 何がたのしいのか 面白いのか わらひながらあるいてゆく。 川が見えなくなる先の そのまた先に 入道雲がむらむらとつき出してゐる。 ひとりのこどもが その雲に紺の帽子を投げた。 それを合図にするやうに こどもらはみな帽子を投げた。 幾千もの帽子が 高く高く舞ひ上がつていつた いつまでも青い空へ それら幾千もの帽子は 入道雲を吸ひ込み 空に溶けていつた。 がらんとして高い。秋空。


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まりも (2018-11-05):

不思議な懐かしさがありますね。谷内六郎の絵のような。 あえて旧仮名を用いたことが、味わいとなるか、目眩まし的な作用となるか・・・ 少しずつずらしてノリで貼り付けていくように、川や子供たちを重ねて行くのに、 いつまでも夕方にならない (真昼の幻影が続く) 幾千もの帽子~溶けていつた (実はすべてが非現実の幻だった) あまりにも鮮明な白昼夢のような映像に、しばし立ち止まりました。 時間を超越した、永遠の、夏。

みうら (2018-11-05):

正直にコメントすれば私はこれを書きたい。詩とはなんぞやという命題を抱え続け2年間が過ぎた。ネット詩にある流行は理解した。少し背伸びをして書けばネット詩の流行を取り入れた作品を書けることは実感した。でも私が書きたい傑作はそんなものじゃないと最近は確信していて。大層であり大層でないこと、自分語りであり自分語りではないこと、虚構であって現実であること、そんな傑作を書きたい。本作「小さな村で見た」を読んでそんな感想を持った。

ishimuratoshi58ishimuratoshi58 (2018-11-10):

まりもさん ご高覧ならびに美しいコメントありがとうございます。私は絵の世界に全く不案内で、谷内六郎の名前を知らなかったのですが、検索して氏の作品の画像を見て「なるほど」とおもいました(笑)私の脳裏にあった風景とよく似ております。 みうらさん ご高覧ありがとうございます。「大層であり大層でないこと、自分語りであり自分語りではないこと、虚構であって現実であること、そんな傑作を書きたい。」とのお言葉に大変、共感しました。私自身も、まさにそのようなものを書きたいと日々念じております。その域には未だ道遠し、ですが(笑)

stereotype2085 (2018-11-10):

旧仮名使いが初めは正直もどかしく感じるのですが、最後の「がらんとして高い。秋空。」という一節で収束させている。もう一作よりこちらが馴染みやすかった。これが最終節まで旧仮名を用いたフレーズが来ていたら、印象はだいぶ違っていたと思う。

ishimuratoshi58ishimuratoshi58 (2018-11-11):

stereotype2085さま ご高覧ならびにコメントありがとうございます。ご感想を伺って、もし新仮名遣いでかいたらどうだったろう、と本作を頭の中で仮名遣い変換してみましたら、耐え難いほど貧相なものになってしまいました(笑)仮名遣いを変えたら、自分がかく詩そのものも変わってくるのだろうな――そんなことを思いました。

帆場蔵人 (2018-11-12):

きざまれた言葉がまた次の言葉を引き出していくような、静かでありながらたくさんものに満ちた詩ですね。ひたすら沁み入ってくる情感に酔いしれました。

桐ヶ谷忍 (2018-11-12):

抒情的で味わい深い詩文ですね。 情景がたやすく浮かび上がり、さらさらと流れて、まるで清流のようです。 締めくくりには、やられた!っていう痛快な思いが沸き上がりました。 三浦さんも仰っておられるけど、私も、この詩、私が書けたなら、と強い憧れをもちました。 良い詩をありがとうございます。

ishimuratoshi58ishimuratoshi58 (2018-11-12):

帆場蔵人さま ご高覧ならびに温かいお言葉ありがとうございます。「きざまれた言葉がまた次の言葉を引き出していく」とのご感想は、「少しずつずらしてノリで貼り付けていくように、川や子供たちを重ねて行く」というまりもさんの言葉に通じていますね。当人にはあまり意識がないのですが、そういう技巧を俺は使っていたのか、なるほど、とようやく意識することができました(笑)長いことかいていますが、技巧への意識はちっとも向上しません。 桐ヶ谷忍さま ご高覧ならびに身に余るお言葉に恐縮しきりです。ありがとうございます。私もよく「こういう詩がかけたらなあ」と溜息が出る思いで讃嘆したくなる作品に出合いますが、菲才にしてその念願が叶ったことはありません(笑)ですが、そういう心境でひとのかいた詩を見られるようになってから、むしろ自分の詩をかくことが楽になったような気がしております。

仲程仲程 (2018-11-12):

どこの世界なのかなあ、と思いながら、かつてどこかで見たことあるような、また、次の世界に入るときに見るかもしれないような、そんな気がして、心のひだにふれて、すこしいたみも感じます。 いい詩ですね。(もっとうまいコメント書きたいけど)

ishimuratoshi58ishimuratoshi58 (2018-11-13):

仲程さま ご高覧ならびに過分のお言葉ありがとうございます。って、なんか、現フォのコメントのレスみたいなお返事で失礼しました。つい、いつもの癖というやつで(笑) >心のひだにふれて、すこしいたみも感じます。 してやったり、じゃないですけど、読んで下さった方がそういう感覚を持っていただけるというのは、作者冥利に尽きます。励みに致します。

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下弦の彼岸花、蝉時雨の福音   

北村灰色 
作成日時 2018-11-12
コメント日時 2018-11-13

 

下弦の彼岸花が太陽を覆う 金貨に粉砂糖が絡みつく、ビーカーに溺れるローズマリー 紫陽花が黙視した朝焼けに太陽は琥珀色の霧雨を零すが、 そこに渇ききった12ダース・キャンディは存在せず 海と花束、『架空のノンフィクション』が曖昧な世界線を無音の旋律で浸して やがて(あるべき)世界は終わらない夕暮れに染まり 鴉たちの台詞は「私の書く字は血のついたナイフだ」のみとなってしまった セカイが血に染まっても蒼き孤独と翡翠色の万華鏡は冷感を保ったまま そのスカートを汚さないままで漂っている 数字が金言と化し、死と詞がカウントダウンを刻むとき 抽象的なObject Bellは彼女の眼球へとすり替わる スクリーンに揺らめく色彩の果と蝉時雨の不協和音 君の手を白日の下へと切り分けるのはそう、眠り人形の手に添えられた牛刀だったから 君はあの日のライ麦畑と祈りが再審を請求するけれど、「9月にリプレイは存在しない」 私が磔に処されたホテル404 ゴルゴダの硝子を愛撫するL/Rの瞳が凝視しているのは―― 灰色に濡れた白昼空と彼岸花か、それとも——


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stereotype2085 (2018-11-13):

本当に北村さんの作品は、一つ一つのフレーズが洗練されていて、尖っている。またこの情報量に身を委ねれば、相当な心地よさが得られると思う。だが逆に言えばもし北村さんの作品がもっとスリムになったらどうなるかも見てみたい。余白とか空白を用いつつ、時にエッジの効いたフレーズを持ち込む、というような。充分に北村さんの作品は、独自の味が出ているのだから、「削る」という試みをした作品も見てみたいです。

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工場午睡   

芦野 夕狩 
作成日時 2018-11-11
コメント日時 2018-11-13

 

果物農家の放した蜜蜂が山茶花の生け垣を越え 襲来している昼休み 陽のあたるベンチに腰掛けた老工が 彼らの数を数えている 数えられた一匹が空を差す彼の手の甲にとまる 気づかぬのか気にしないのかわからない様子で あれはもう致死量だね、と 喫煙所で隣の女がわらう 琥珀色の蜜がとろりと注いでいるのではないか 老人とベンチは何万年かが経たのちに 化石のように発掘されるのだろう そんな空想も更けゆく秋のせいにしてしまえば 枯葉も愛を語りだすだろう タバコの煙の行方は いつでも 帰る家の方に流れていく そこには昨晩またヒステリイを起こしてしまった妻が 布団にくるまり全てを 更けゆく秋のせいにしているのかもしれない 機械に油を差しておかねば 妻の歯車はよく回るのにバネは弛んでしまったのかと ふと昨晩のことを思い返す あなたは機械じゃないのよ でも俺は機械工だよ 答えにならぬ答えが妻のネジを軋ませてしまったのか 椅子に倚る 少し うとうとして 蜜蜂よ 秋は折れ曲がっている、その指から手首から肘から 秋は記憶を失い置き去りにした帽子が道路に飛ばされて何度でもトラックに轢かれている 秋は花の名を知らない、蜜蜂よ、秋を彩るのはただ経血の赤ばかりではないか 秋は暮れる 秋は血を流す 蜜蜂よ 秋は大樹に倚り お前の羽を毟っているのではあるまいか 少し うとうとして


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stereotype2085 (2018-11-11):

スペインの片田舎の情景。なぜかそんな情景を想い起こしました。この作品は洋風でエレガントなんですよね。感覚的な感想で申し訳ないが。僕個人としてはこの詩の核心には迫れなかった。それは筆者様及び作品のせいではなく、ひとえに今現在「砕けた詩世界」「生身の体を感じる詩世界」を志向している僕自身に原因があるのだと思う。筆者様が書籍の世界にいて、美しい象牙の塔にいて、僕はボロボロの現実世界にいるという印象。ヒステリイ起こしてしまった妻が…の下りはとても僕好みでした。この作品は品格と優雅さという点で多くの方に好まれると思います。

芦野 夕狩芦野 夕狩 (2018-11-11):

けいせいさんこんばんは。けいせい組鉄砲玉として遅参ですが馳せ参じまいりました。 ご感想嬉しく賜りました。もしかしたらスペインというのはビクトル・エリセとか好きなのかな、と想像してました。 ただ、僕は肉体労働者で、まさに昼休みのあの身体も疲れ果てて脳が程よく弛緩している時に空想したものだったので、そう読まれてしまったことには僕の力不足を感じます。 機械の油に塗れながら、 芦野

enokizenokiz (2018-11-12):

純粋に綺麗な日本語に頭があがりません。もう職人さんみたいな技巧というか言葉の使い方、選択が絶妙で繊細な日本語らしい美しい作品だと思いました!素晴らしいです!

芦野 夕狩芦野 夕狩 (2018-11-12):

enokizさんこんばんは お読みくださりありがとうございます。褒めすぎだと思いますが素直に感謝申し上げます。 題材があまり綺麗なものではなかったので、せめて体裁だけでも、と取り繕ったところはもしかしたらあったかもしれませんね。 重ねてありがとうございました。 芦野

帆場蔵人 (2018-11-12):

日常的な風景のなかでふと、現れる不思議な感慨のような二連目が印象的でした。まさに琥珀の中の何万年前かの泡を見るようです。言葉の巧みさに憧れすら抱きます。でも何より、惹かれたのは妻との噛み合わない会話に強く現実を感じて詩、全体が素晴らしく輝いて見えました。

芦野 夕狩芦野 夕狩 (2018-11-13):

帆場蔵人さんこんばんは とても良いようにお読みくださりありがたく思いました。 少し、冒頭と妻との場面との接続が悪いように自分では思っていたので、そのように仰っていただき、少しだけ許せるような心持になりますね。 地を這う亀を書くために、淀んだ曇天を描く、みたいな、少しうまく言えませんが、そういう迂遠さを、と思っておりましたので、全体としてそれが帆場さんの読みのうちに結実していたら嬉しいな、と。 お読みくださりありがとうございます。 芦野

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傘泥棒   

ゼンメツ 
作成日時 2018-10-19
コメント日時 2018-11-13

 

彼女と出会ったのはほんの二日前のはなしだ。ひと気のない湖畔のキャンプ地で、たまたまソロ同士だったから、あと大量に持ってきたお酒が切れなかったから、なりゆきのままお互いにお互いのことは何も聞かず、ただただ、というよりとにかくだらだらと一緒に過ごしていたのだけれど、今日たったひとつだけ、子供のころ傘泥棒と呼ばれていたんだ。と、笑って話してくれた。理由を聞くと本当にそのまんまで、それで少し恥ずかしそうにしながら、月のあかるい夜にはうちの浴槽にも小さな波ができるんだよ。そういって湖面越しの月を指さし、飛び込んだ。水から上がるとぼくの手をひいて、それからは肌で水を打つ快感を求めてなんどもなんども飛び込み、すこし飽きれば付近をひとしきり歩いた。彼女は濡れ髪のまま風を切り、ためらいもなく花々をけりとばしながら進む、それなのに花の歌なんかをくちずさむ。そのせいか、はだかになっても全身花粉だらけで、着水するたびに、水面をとりどりに染めあげた。 たまに魚を見かけた。このちいさな湖には不釣り合いなくらい、わりと大きい魚が泳いでいるんだ。知らない魚だ。彼女にも伝えようとしたけれど、知らないもののことを上手く伝えるのは難しくて。彼女が知っている魚とはサンマのことだと思う。それは湖にはいなかった。その代わりに知っている星のなまえをいくつか挙げ、湖面に映るそれとほんものとで絵合わせをはじめた。しかし星はだいたいみな同じかたちをしていたのでしばらくすると彼女は眠ってしまった。魚は同じかたちをしていない。花もかろうじてそうだ。眠る彼女を眺めていると、そのかたちはすこしだけあやふやに見えた。ぼくはしずかに焚き火をまもりながら、いくつかのさかなの味を思い出していた。間違ったことを想い、彼女もそうしている。今日はなにも思い出せない。ぼくは味覚障害かもしれない。 いつのまにか眠っていて、目が覚めると雨が降っていた。雨に理由をつけるのはとても簡単だ。強いのか弱いのかだけをみて、それに合わせたウェットな出来事を思い起こせばいい。そうすると雨は少しだけ特別なものになる。ぼくたちは傘を持ってきていなかったから、彼女と二人で、子供の時分の彼女に盗まれたいくつもの傘について考えた。そういえばそれって、家に着いたあとはどうしていたの? だいたい近所の河原に捨ててた。そっか。だって見つかったらたぶん怒られるしそもそも誰のかも知らないから持っててもどうしようもないし。そっか。ビニール傘なんて水中に沈んでしまったら溶けてなくなればいいのに。そうかも。ねえきみは自分の家に帰ったらどうするの? どうしよう。缶ハイボールをいくつか開けているうちに雨は弱まり、風で小刻みに葉が擦れる音が聞こえはじめた。月は見えないけれど、湖面にはちいさな波が立っている。


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かるべまさひろ (2018-10-20):

二人の会話を連綿と書くことを、自分もしたことがあって、いつもそのスタイルを読むと星の王子さま的な対話を思い起こします。 流れも含めて、ある優しさが胸に染みました。

ゼンメツゼンメツ (2018-10-20):

>かるべまさひろ さん ありがとうございます! インフルエンザでふらふらななか深夜に一気に書き上げたものを投稿したので、しょーじき推敲したいところが数カ所あるんですけど、しかしビーレビは編集ができないので「無推敲版」としてさらけ出します。なんだかちょっと恥ずかしいですね!

みうら (2018-10-22):

ゼンメツさんが現在、何処へ向かおうとしているのかが少しわかってきた作品。月並みなな言葉ですが、人と人の関係ってこれぐらいのドライさがあった方がいいし、それの方が悲しいと思うし、そもそもが悲しい。というようなこと。

ゼンメツゼンメツ (2018-10-22):

>みうら さん ありがとうございます! 僕はなんかもう漠然と、月に2作出さなきゃなーって思いながら書いていて、それはインフルエンザ真っ只中でも書くくらいなので、僕の中で体調より優先されることではあるみたいなんですけど、ほんといったい何処へ向かって、何をしたいのでしょう。ただ、ぼろぼろの中で書いたものって、ハッハーおまえはこの程度なんだよ自分の底を知れーい感があるのでなんかいいですね。ちなみに僕は満たされたくて書いているのに、とっても孤独ですんごく退屈でめちゃくちゃ渇いてないと一切筆が進みません。すごくかわいそうだしじつに悲しいですね。

鬱海鬱海 (2018-10-24):

初めて読んだときから、すごく好きで何度か読み返しているのですがやっぱりすごく好きな作品です。別の方が書かれているように、二人の関係はある種ドライですが、子どもの頃の体験を語るということの持つ、ごく私的な場に人を引きこむという効果がうまく効いて、二人の間や読者との間にほどよい距離感を生んでいるように思います。このちょうどいい距離感がとても好みでした。ライトレスですみません。

ゼンメツゼンメツ (2018-10-27):

>鬱海 さん ありがとうございます! とてもとても嬉しいです。この詩で描かれているものに共感出来るような人は、日々がちょっぴり生き難いタイプかもしれませんね。お互いこの世をどうにか生き抜いてやりましょう。レスを頂けるのにライトかどうかなんて嬉しいことには変わりませんが、そもそも詩を掴んでいただけている素敵な感想だと思います。

オオサカダニケオオサカダニケ (2018-10-27):

おこがましいのですが自分の作品とあまりにも似ているような気がしました。「成長としての」という詩です。というよりは私が目指している形式の作品だと思いました。出だしのもの悲しさから美しい場面への構成は私からすると学ばせて頂けることが多いです。とても美しく格調高い詩です。

ゼンメツゼンメツ (2018-10-29):

>オオサカダニケ さん ありがとうございます! 長い詩なのに読んで好意的な批評をいただけて嬉しいです。僕もサリンジャーが好きなので、なにやら通じるものがあるのかもしれないですね。

ゼンメツゼンメツ (2018-10-29):

運営さま運営さま。 やっぱり誤字もあってあがるたびにモヤモヤして内臓がねじれそうなので、本文を下記のものに差し替えられたらとてつもなく嬉しいのですが。ついでに差し替えたのちにその「下記」のコメントが消えたらすっきりしてさらに嬉しいのですが。申し訳ないのですがどうかお願いできないでしょうか

ゼンメツゼンメツ (2018-10-29):

彼女と出会ったのはほんの二日前のはなしだ。ひと気のない湖畔のキャンプ地で、たまたまソロ同士だったから、ぼくが張ったタープの面積がなんだか気合い入り過ぎだったから、あとは大量にもってきたお酒が切れなかったから、なりゆきのままお互いにお互いのことは何も聞かず、ただただ、というよりとにかくだらだらと一緒に過ごしていたのだけれど、今日たったひとつだけ、子供のころ傘泥棒と呼ばれていたんだ。と、笑って話してくれた。理由を聞くと本当にそのまんまで、それで少し恥ずかしそうにしながら、月のあかるい夜にはうちの浴槽にも小さな波ができるんだよ。そういって湖面越しの月を指さし、飛び込んだ。水から上がるとぼくの手をひいて、それからは肌で水を打つ快感を求めてなんどもなんども飛び込み、すこし飽きれば付近をひとしきり歩いた。彼女は濡れ髪のまま風を切り、ためらいもなく花々をけりとばしながら進む、それなのに花の歌なんかをくちずさむ。そのせいか、はだかになっても全身花粉だらけで、着水するたびに、月暈をとりどりに染めあげた。 たまに魚を見かけた。このちいさな湖には不釣り合いなくらい、わりと大きい魚が泳いでいるんだ。知らない魚だ。彼女にも伝えようとしたけれど、知らないもののことを上手く伝えるのは難しくて。彼女が知っている魚とはサンマのことだと思う。それは湖にはいなかった。その代わりに知っている星のなまえをいくつか挙げ、湖面に映るそれとほんものとで絵合わせをはじめた。しかし星はだいたいみな同じかたちをしていたのでしばらくすると彼女は眠ってしまった。魚は同じかたちをしていない。花もかろうじてそうだ。眠る彼女を眺めていると、そのかたちはすこしだけあやふやに見えた。ぼくはしずかに焚き火をまもりながら、いくつかのさかなの味を思い出していた。間違ったことを想い、彼女もそうしている。今日はなにも思い出せない。ぼくは味覚障害かもしれない。 いつのまにか自分も眠っていて、目が覚めると雨が降っていた。雨に理由をつけるのはとても簡単だ。強いのか弱いのかだけをみて、それに合わせたウェットな出来事を思い起こせばいい。そうすると雨は少しだけ特別なものになる。ぼくたちは傘を持ってきていなかったから、彼女と二人で、子供の時分の彼女に盗まれたいくつもの傘について考えた。そういえばそれって、家に着いたあとはどうしていたの? だいたい近所の河原に捨ててたかな。そっか。だって見つかったらたぶん怒られるしそもそも誰のかも知らないから持っててもどうしようもないし。そっか。ビニール傘なんて水中に沈んでしまったら溶けてなくなればいいのに。そうかも。ねえきみは自分の家に帰ったらどうするの? どうしよう。缶ハイボールをいくつか開けているうちに雨は弱まり、風で小刻みに葉が擦れる音が聞こえはじめた。月は見えないけれど、湖面には小さな波が立っている。

stereotype2085 (2018-10-30):

全体として人としての焦燥感、急く感じがある。それはゼンメツさん、個人のものであるのかこの詩のみに託されたものであるのか分からないが、得も言われぬ「焦燥感」がこの詩を味わい深くしている。ラストの「月は見えないけれど、湖面にはちいさな波が立っている。」ようやく落ち着く場、着地点を見つけた、という印象です。

ゼンメツゼンメツ (2018-10-31):

>すてれお さん ありがとうございます! 焦燥感わかります。とりあえずこいつは湖なんて気にしていないでマシュマロくらい焼くべきだと思います。マシュマロを、特に紅茶味のマシュマロを焼けるようなヤツなら、もしかするとこの先もやっていけるかもしれません。

仲程仲程 (2018-11-12):

これはきれいな世界だなぁ と思いました。もちろん精神的なことを含めて。 誰かに朗読してもらってるのを、目を閉じて聞いてみたいです。

ishimuratoshi58ishimuratoshi58 (2018-11-13):

 非常に洗練された、スタイリッシュな現代の名文というのが第一印象でした。このくらい神経の行き届いた散文は、書店に並ぶ単行本や文藝(?)雑誌においてもほぼお目にかかることはありません(大半は私の世代の感覚では「中学生の作文」レベルですからね)。漢字とかなの使い分けのセンス、文の長短やテンポ、リズムの扱いの巧みさなど、作者の筆力は相当なものと感嘆させられます。第二連の「たまに魚を見かけた。」という書き出しなど、思わず「わあ、こりゃ巧いなあ」と唸らされました。描かれている情景も鮮明で魅力的。「彼女」との触れ合いのメルヘンティックな、快い甘さにも非常に心惹かれます。  非常に描ける作者様なので、ただの読み手として(つまり自分のことは棚に上げて)少々贅沢を述べさせてください。  エッセイやスケッチではない、自立した詩作品として本作に対峙してみると、ここに描かれているような「彼女」との美しい親和が、私たちの生きる現実世界とは共存し得ないということへの痛み、哀しみが感じられない点が、読み手として不満といえば不満です。非常によく描けているにもかかわらず読後の印象がいささか「軽い」のは、文体の軽やかさゆえではなく、読み手の真情に痛切に突き刺さってくる「もののあはれ」の乏しさゆえではないかと感じました。詩情が切実なリアリティーに至らず、完成されたスタイリッシュさの裡に自足している観がありました。決してないものねだりではなく、作者様の力量であれば、単なる「感心」を超えた感動をもたらしてくれるのではと期待しています。

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