山域は乳白色となり、雨粒が地面を叩く音が、朝未明から始まった。決まって七月は、雨が多いと、誰彼なく言うのだった。
雨が満ちてくる。体の中にも脳内にも、まるで人体は海のように静まり、宇宙のように孤独になる。
半眠りの意識の中、タオルケットの感触が心地よくて、そして柔らかく寝返りを打てば、雨音が骨まで入り込む。私という人体模型は、雨を歓迎しているのだろうか。
七月は、どこか物悲しい。半袖に突き出た二の腕のまとわりつく湿気が、ニイニイゼミをよぶ。
空は粘っこく泡立ち、息を止めている。
どうか、助けてください、
声にならない声が小窓から出ることなく停滞している。
七月は、湿り気で飽和され、落としこまれた安寧が発酵し始める。ぶつぶつと菌が活動をし始め、巨大な入道雲を、埃っぽい陽向のにおいを、待っている気がする。
作品データ
コメント数 : 30
P V 数 : 3302.9
お気に入り数: 5
投票数 : 8
ポイント数 : 14
作成日時 2021-08-01
コメント日時 2021-08-14
#現代詩
#縦書き
#受賞作
項目 | 全期間(2023/09/26現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 8 | 7 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合ポイント | 14 | 9 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1.6 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.4 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.6 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.2 | 0 |
総合 | 2.8 | 1 |
閲覧指数:3302.9
2023/09/26 01時25分47秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
異界は人体桃源郷だったのですね。
0声にならない声が小窓から出ることなく停滞している。 うまいなと思いました。
1はじめまして。 雨の日の、雨の多い季節の空気感が、筆者の感情を通して目に見えるように伝わります。 ミルフィールみたいに重なっていく、本当に美しい文体ですね!
1早瀬野卑さん、おはようございます。 なんか、思いつきで詩句をさがしたりししてると、ふと見つかることがあるのですが、そんな感じでしょうか。御批評、ありがとうござしました。
0田中宏輔さん、おはようございます。田中さんのお目に留まる詩句があったようでうれしく思います。 御批評、ありがとうございました。
0YUMENOKENZIさん、おはようございます。本来、武骨な作品がメインなのですが、今回は女性的な部分(私は男ですが)をちょっと意識して書いてみました。気に入っていただけて嬉しく思います。ありがとうございました。
1とても美しいと思いました。 言葉のひとつひとつの連なりに必然性があり、 ひとつの小宇宙を覗き込んでいるような想いです。
0雨の表現が上手だなと感じました。 まるで人体は‥の表現が好きです。
1ryinxさん、こんばんは。 ありがとうございます。今回は、従来の朴訥な山野に関する詩というよりも、内面的なものを意識した結果、うまく到達できた気がしています。過分な御評価うれしく思います。
2キチガイの私さん、こんばんは。 雨は私にとって、以外に嫌ではなく、休養できるという安心感のような気が致します。なので、自分の許容範囲の中に降り続ける雨は、どちらかというとドラッグのような一面を持っているのかもしれません。御批評、ありがとうございました。
1ハービーさん、どうもありがとうございます。
0読んでいて、どこか心に天気雨が降る心地がしました。素敵な詩ですね。
1/まるで人体は海のように静まり、宇宙のように孤独になる。/ /半袖に突き出た二の腕のまとわりつく湿気が、ニイニイゼミをよぶ。/ この部分が良いと感じました。
0素晴らしい独特の世界観、表現、言葉の選び方などなど私にはまだまだ及ばない詩の奥の深さを感じました。
1ブンゴクの頃から、あんまり変わってないね。 正直言って、良いと思わないかな。 このくらい書けてあたりまえじゃないのかな。 それとも、これを評価している人は、このくらい、もかけないレベルなんだろうか。 普通でしょう。このくらいかけて。
0仄秋チズさん、こんばんは。感じるものがあったようでうれしく思います。どうもありがとうございます。
1深尾貞一郎さん、こんばんは。 お気に留まる部分があったようで、よかったです。ありがとうございました。
0セインSKさん、こんばんは。 いろいろと手探りで言葉を探しているのですが、小手先だけの部分も多々ございまして、まだまだ勉強中の身です。ありがとうございました。
0cold fishさん、こんばんは。 そうですか、ただ、私的には文学極道時代よりは幾分すっきりしているかな?という認識があります。 御批評、ありがとうございました。ところでどなたでしたか?
0たしかにすっきりはしているけれども、それだけではやっぱり足りなんじゃないかな。 どこかで見たことあるようないかにもな比喩ではなくて、貴方の感性や視点によるものが あったほうが良いと思うよ。山の荒れ具合を動物に例えたり、雨音が骨に入るとき、もしかしたら 骨は普段と違う音がするだろうし、雨を含んだ骨は今までと違う質感もしれない。そうなったら、 それは、人でない何か別の生き物として感じられるかもしれない。 もう一歩踏み込んだものがあったほうが良いと思うよ。もう一歩踏み込んで書けない人は、そらこの 作品ぐらいで良いと思うかもしれない。実際、このサイトは書けない人が圧倒的に多いからね。でも、 それではつまらないよね。
0cold fishさん、以前あなたに、そういう路線で行くなら宮沢賢治を読めばいい、そんなことを某サイトで言われたことがあります。ただ、その当時、私には宮沢賢治は難しすぎた。何年か過ぎ、また久しく読んでみようと思います。一見、毒舌的でありながら、親身にアドバスをしてくれる存在はなかなか居りません。このサイトでは貴重な書き手だと思います。
1真清水るるさん、ポイントありがとうございます。
0自分の中にも似た感覚があり、親近感を覚えました。 言葉の選び方が繊細で感情をそこに上手く投影されているなぁと思いました。 こんな詩が書きたいです。
0華乃さん、こんばんは。過分な御評価うれしく思います。 言葉を選択するにあたり、ああでもない、こうでもないとワンパな言葉選びに辟易することがあります。なので、最近はあまり言葉選びの固執せず、オリジナルな感覚で書いてみようと思っているのですが、なかなかの頭の悪さなので、困っています。御批評、ありがとうございました。
0ニイニイゼミのところが印象的でした。独特の解釈だと思いました。
0エイクピアさん、おはようございます。 蝉はそれぞれエゾハルゼミ→ニイニイゼミ→エゾゼミ・アブラゼミ→ミンミンゼミ→ツクツクホウシと秋の終わりまで種類を変えては鳴き声を聞くことができます。 微妙な部分を感じ取っていただけた酔いで安心しました。
0わたしは山道入り口に住んでいるのですが、現在は雨が降ってます。この詩を読んでいると この詩に描かれている空間と 私が息をしている空間とが、さくらんぼの実のように ふたつの空間が つながっているかのような臨場感がありました。 余談となりますが、この詩に投票をおこなったのですが、コメントがない場合は どうやら無効票となるようです。票だけを入れた方は 何かコメントをお書きになると、良いかもしれません。
1真清水るるさん、こんばんは。そうですか、メビでしたでしょうか、真清水さんのお住まいのお話を聞いたことがありましたが、同じような環境なのですね。共通の部分で感じ入ることができて私も嬉しく感じます。ありがとうございました。 余談についてですが、コメントをつけなくてもポイントは付けられると認識しておりましたが…、違いましたっけ?
0