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10月分 フル選評(まりも)   

まりも 
作成日時 2018-11-09
コメント日時 2018-11-14

 

B=REVIEW 2018年10月投稿作品 選評 ◆はじめに 今までで最も多数の作品が投稿された10月。生きるとは何か。書きなれた手つき、まだ書き始めて間もないと感じさせる文体、そのいずれにも、同様の内向的な問いが含まれているものが多かったように思う。抽象的であれ、迫真的であれ、五感を通じた体感(人類っ共通の体感)を探って、それを自らの経験が学び覚えた言葉で表していく、そこに、詩の醍醐味があるように思う。 今回は投稿作品が多いということ、イベントなどが多く、こまめにコメントを付すことができなかった、ということ、その二点から、イレギュラーだがすべてを二行の寸評で鑑賞することにした。触れたいと思った作品をできるだけ多く取り上げたので、50を超えてしまったが、ご寛恕いただきたく。 ◆大賞候補 ★カオティクル・Converge‼貴音さん10/18「羽の日」https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2465 前半の力強い抒情(苦しんでいる者を見放していく者たちへの怒りとやるせなさ)後半の展開はエンターテインメント要素も持ちながら、魂の解放と昇天を祈る切実さに撃たれた。 ◆優良 ☆弓巠10/1「いくえ」https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2377 仮名と漢字の織り成すテクストの質感の心地よさ。とらえどころのないものを具体的に追うのではなく、死者たちの溶け込んだ夜が体内に沁み込んでくるような感覚を追っていく。 ☆あきら@ちゃーこ10/30「ほどける」https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2523 世界、とは?自らが体感する外界を内界において再構築し、そこに自らを再度投げ出すことによって感受するもの、かもしれない。他者(他物)の体感が作り上げるネットワーク。 ☆かるべまさひろ10/6「眩しい光」https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2402 人は何度でも生まれ直すことができる。その瞬間を包む光を「感じる」のは、その空間の存在を「知る」のは、その光を照り返す“あなた”がいてこそ。出会うために、今がある。 ◆推薦 ☆5or6 10/4「サルビア」https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2391 生まれてしまった、ではなく、産んでしまった、でもなく、産ませてしまった・・・はなす(話す/離す/放す)ことへの希望と絶望、そのジレンマ。リフレインが迫ってくる。 ☆蛾兆ボルカ10/20「雑談とままならぬ恋の詩」https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2475 ナンセンスかつ饒舌な議論で始まりながら、社会批判的視点も備えた「名」の持つ訴求力を問う散文と、実在し、仮名(源氏名)の女性の心情/真情に触れうる詩。詩論、存在論。 ☆夏生10/10「カーテンの向こう側」https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2425 丁寧に非日常の世界をとらえ、それをいかに「言葉」で表現しようかと心を巡らす。それは不安に耐えるための詩人の習性かもしれない。転がった言葉を拾う手の存在が優しい。 ☆二条千河10/25「一線」https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2497 オーソドックスな手法なので、物足りなさを感じる人もいるかもしれないが上手い。子供時代の無限の想像力へのノスタルジーと、人間関係の間の隔てを幻視の壁でまとめている。 ◆ひとこと選評  ・桐ケ谷忍10/2「筆舌に尽くしがたく」 〈私〉の体の中で渦巻く、無限に広がり、絡み合う心の営みの不思議。同じ不思議を抱え持つ〈あなた〉と、相対する奇跡への思い。最後の一行が、少し甘いか。 ・るるりら10/6「虹よ」 「かたち」が要請する圧力と、次々に浮かぶイメージとのせめぎあいが生み出す緊張感。火の粉、透明な火、ほむら・・・虹の七色より、白色の清らかな空間が開ける不思議。 ・湯煙10/9「コこロさん」 きっちりおさえた文章の流れるような上手さ。二次元の向こうにいた相手(妄想空間でのみ、会うことのできた女性)が、現実に侵入してくる、コミカルな怖さ。 ・クヮン・アイ・ユウ10/10「街のひ、果てるひかりに」 リーディング主体のイメージだったが、視覚効果を意識した読むテクストへの変化を感じた。介護の風景か。未練と解放の、アンビバレントな感情がにじむ。 ・渡辺八畳10/22「遺影」 遺影を撮影しながら、死んだ後の「ネット空間」への拡散の仕方を、これでもかという粘りで物理的に列挙していく。死後に作品が残存することへの執着にも通じる。 ・kikunae10/21「ひかり」 とつとつと綴る言葉(文体)、〈楽しくないよ~いやになる〉と、七五調をさりげなく組み込む口調の良さ。希望が叶わない時、羨望になるのか。〈ひかり〉が見果てぬ夢を象徴する。 ・みうら10/22「コーヒーを飲もうか」 バリバリ抒情の型をなぞりつつ、〈死ぬ時は一緒にいてください〉という一言に約束できずにいる悲哀。相手の寂しさを感受するのに、分け合えないこと、そのものへの悲哀か。 ・白犬10/1「きもちわるくってきもちいい」 身体の反応(感覚)と心の反応の乖離。接触や性器への刺激が快感なのではなく、魂をすり合わせるような一瞬が存在したか否か、その答えの出ない問いがテーマなのだと思う。 ・黒髪10/24「狭い」 自らが〈依存〉どころか〈接着〉してしまう、ほどに、狂おしく求める相手から、自らを引き離そうと揺れる心の切迫を感じた。遠く隔てられていても、〈狭い〉から近いのだ、と。 ・なかたつ10/15「募集中」 子であることをやめたい、のではなく、存在する以前の無の世界に帰りたい、という、究極の回帰願望を、様々なシーンから遡って辿っていく、そんな物語を読み取りたくなった。 ・羽田恭10/18「蠅」 鮮烈なイメージ、無駄のない簡潔な文体。執着を捨てきれない心が、死を受け入れるまでの葛藤は、精神の自覚と、亡き者への祈りへの執着であるのかもしれない。 ・仲程10/1「街の潮目」 金沢の「香林坊」も「東京」だった、〈身を委ねる場所〉は見つからない。移動すると共に心の潮目が変わり、郊外の景が詩形に現れ、どこにもない幻影の故郷(金沢)を憧憬する。 ・stereotype2085 10/2「夢の跡の別れ道」 構築性に圧倒されるが、詳述で繋いでいく小説のテーマと内容を、力業で作者の思う「詩的」な形と飛躍する文体の進行に収めている圧を感じる。〈僕は〉で止めた方がよかったか。 ・口三10/14「カー」 詩は書き出しで決まるという人が多いが、これはまさに書き出しが「降りてきた」一篇だろう。関節のみずみずしさと、異界へと越境する水路。中盤、少し迷い気味なのが惜しい。 ・yoshiya asato 10/7「アパートメント悪意」 5連目、虐待されている女性自身に同化してその痛みを感じ取り、共に歩む所が素晴らしい。初連と終連の枠が装飾に流れ、虐待者への怒りが戯画に収まってしまった感あり。 ・渚鳥10/20「癒ゆ」 流れるような描写の美しさ。訪れた世界は、死後の世界なのだろう。苺の群生が教える、現世の実態、その受容を学ぶことが癒しだというより、アジールがあると知ることこそ。 ・鬱海10/18「底」 ネットで発表される作品の発する詩情、その詩情の匂いの向こうに存在するはずの作者への思い。その朦朧としていて、しかし鮮やかな存在感を金木犀の香に譬えて成功している。 ・_ 10/17 「Mr.Gibson」 ヴァイオリンの〈悲鳴〉と狂気めいた笑いに彩られたバレリーナのイメージ。それを白紙に描き出す、という心象風景のようだが、少し流れが曖昧。リズミカルな進行が心地よい。 ・こうだたけみ10/9「円滑水槽」 潮の香を発散するのは、死が近いからか。酸素吸入のボンベを引く男が、箱型三輪車で疾走していく男に鮮やかに変容する。小気味よいテンポで繰り出される映像と音声が巧み。 ・杜琴乃10/26「光の干渉、或いは」 感性豊かな描写。指先のささくれの痛みと、子を叱った後の心の痛みが重なり、優しい雨の中で溶けていく。光は子の側から射してくるのだろう。柔らかく子に許されていく時間。 ・沙一10/14「探しもの」 聞きなれた比喩が多いが、それゆえに懐かしい語り物の世界を想起させる。生きること=なにかを探し続けること、ともいえるが、漱石の夢十夜などから続く詩的試みだと思う。 ・ふじりゅう10/21「『藤井龍平』の肉迫より。」 「灰の~」にも魅力を覚えたが、読みの呼吸の要請か、意味の切り崩しを意図しているのか測り兼ねた。本作は入れ子になったノンフィクション風の虚構が、真意に触れてくる。 ・帆場蔵人10/8「午睡の刻」 まっすぐに(恐らくわが子へ)捧げる祈り。いつか無数の花を咲かせることを誰よりも強く信じ、それが無残に摘み取られる先まで予見しつつも、乗り越える強さをも祈る清涼感。 ・社町迅10/6「一人合点」 感覚がとらえたことが、体内の経験値の蓄積によって「イメージ」に変換され、それが言葉に翻訳される。その不思議をとらえるという視点の取り方が非常に興味深かった。 ・岩垣弥生10/16「三日月に」 この短さで、題名と本文が被るのはもったいない。題だけで本文と同様の比重を持たせられる。三日月は神様の爪、という詩句を思い出した。インナーチャイルドへの目線。 ・はさみ10/22「断片」 自らを外から眺めて語る視点と、内から直に気持ちを吐露する視点の同居。観察の鋭さと、そこに意味を見出すのではなく、やり過ごす術を言葉にするユーモアのセンスに惹かれた。 ・南雲安晴10/23「新しい現在」 文体は固いが、確実に歩んでいこうという意志の力を感じる。人間の原罪とは何か。肉体の檻に沈められている魂が服さなければならない刑とは何か。問うことから始まる。 ・ゼンメツ10/31「テレビジョン」 世界中の悲惨に感応することはできない。しかしそれをニュースとして消費していくことへの違和感を失ったら、人ではなくなる気がする。子供の目線からの語りが成功している。 ・なつめ10/19「♡♡♡」(中央の♡は塗りつぶし) 流れ出てくるままに書き留めたようなユルサと、言葉を吟味して選び出したようなみずみずしい比喩との落差が心地よかった。はみ出すことを自制する理性と、希求する感性と。 ・柿原凛10/16「星にはなれないよ」 掲示板を目いっぱい活用したレイアウト、ひらがなと漢字の字面の印象が生み出すイメージ。漢字の部分が、ひらがな部分の告白を反映して変容していくかのアレンジが興味深い。 ・田無いなる10/15「白」 〈あなた〉の内面の声を聴くのは、何者か。白が〈薫る〉、遺骨の〈意外〉な硬さに生前の意志の反映や、語り手も測れない死者の精神性を見るのは、詩という文学ならでは。 ・小杉匠10/11「10月の雹」 雹と評。極度に甘い冒頭が、〈君〉が誠心誠意つくりあげたであろう〈処女作〉の内容を暗示する。〈もっと~〉からの畳みかけが、将来を思うがゆえの評の冷徹さに響いて切ない。 ・licaste 10/10「歩み」 文体の変化で年齢や状況の変化を示すという試みそのものは新しいものではないが、粘り強く、一人の主人公の歩みを描写していく手腕と安定した語り口に魅力を感じた。 ・豆塚エリ10/13「冥府へ」 読者を呼び込む舞台装置としての設定と、訴えたいこと、伝えたいこととの間のイメージの落差は、大きい方がよいのか、共有項が多い方がいいのか。考えさせられる作品だった。 ・根崎10/16「目的地」 列車のイメージが紡ぎだす人生の暗喩。エスカレーター的に周囲が用意した進路から外れる自分を、肯定しきれずにいる迷いが胸を打つ。自分の人生だ、そのまま進んでいこう。 ・Sunao Radio 10/27「冬の音楽」 脳内(心の中)に住む、多様な私。その複数のペルソナとの対話が、一人の人格を総合的に作り上げている。その“ひとり”を体感して具象化する感覚に興味を覚えた。 ・rura 10/26「最低」 〈わたし〉と〈あなた〉との関係。もう一人の自己との対話、をイメージしつつ、一方的な(わたし、と思しい語り手からの)告白になっているところに、孤の寂しさが滲む。 ・らくがき鳥10/26「ワンセコンドメモリーズ」 都会的な洒落た題が歌詞を連想させるが、その方向性に読者を導いてよいのか、そこに疑問が残るものの・・・時間を共有できない、孤の悲しみに触れようとする視点にひかれる。 ・HIROKI 10/31「寂花の雫」 瀞(とろ)と吐露が重ねられているのか・・・孤独と疎外は異なる。寂しさに耐えて、一人の静けさを持つとき、はじめて〈遠くで蜜を吸う/君の羽音〉が聞こえてくるのだろう。 ・まー10/28「躁」 肉体的なエロスを感じるものの、詩を書いて発表する行為の暗喩とも受け取れる要素も持つ作品だと思う。ひとつ転がる、裸体としての心を静かに見つめる視点を大切にしたい。 ・123123123 10/29「123123123」(最初の投稿分) 3の赤い羽根が印象に残った。裸の女性は、むき出しの心、慈善行為に生きる糧を見出す(依存する)彼女が、赤い羽根をまとって空を飛び、イカロスのように墜落する。文末が疑問。 ・舟鷹10/31「詩 第十五」 〈残像のような健やかさが〉〈残酷な優しさに〉というzの響きがつなぐ鮮やかな対句は個と不特定多数との対比ともいえる。感覚とイメージ、特に〈私は鳥。〉への飛躍がよい。


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杜 琴乃 (2018-11-09):

まりもさん有難うございます。先月は投稿作も多く、その中でもコメントを頂けたことを大変嬉しく思います。まりもさんすごい...!!!

༺❦柿原 凛☂༻ (2018-11-09):

ひとこと選評の中に僕のも入れていただきありがとうございました!とても嬉しいです!

鬱海鬱海 (2018-11-09):

ひとこと選評に入れていただけてうれしいです。これだけの量を書かれた労力を考えただけでも頭が下がります。いつも本当にありがとうございます。

オオサカダニケオオサカダニケ (2018-11-09):

ワイ将、落選

あきら@ちゃーこ (2018-11-09):

ありがとうございます。うれしいです。

みうら (2018-11-09):

この労力、感謝です。詩が好きでないと出来ないと思われ、その熱量に学ぶ。

ロ三 (2018-11-09):

ひとこと選評、ありがとうございます。参考になります。

二条千河 (2018-11-09):

推薦作にご選出ありがとうございます! 上手いと言っていただけて、励みになりました。

帆場蔵人 (2018-11-10):

推薦作への選出ありがとうございます。 励みになります。

HIROKIHIROKI (2018-11-10):

選んていただけて光栄です。 ありがとうございます。

桐ヶ谷忍 (2018-11-10):

ひとこと選評ありがとうございました。ぺこり。

まりも (2018-11-10):

皆さんありがとうございます 規定(目安?)に従い、大賞一作、優良三作、推薦四作を挙げていますが、その他にも優れた作品や惹かれた作品、心に残った作品、コメントしておきたい作品が多数あったので、イレギュラーですが(アーカイブ上は投稿作品欄になりますが)ひとこと選評、という形で、コメントを付させて頂きました。

田無いなる田無いなる (2018-11-10):

ひとこと選評、ぽわっと嬉しいですし、勉強にもなります、すごく。ありがとうございました。

るるりら (2018-11-10):

ひとこと選評ありがとうございます。今月はスランプで一作しか投稿できなかったうえに、ビーレビ祭に適したと思われる過去の作品の中から 壁に貼られていたら おそらく、にぎやかしにはなると思われるものを投稿させていただいただけでしたので、まさか とりあげていただけるとは 思ってなかったので びっくりしました。  とても嬉しいです。ありがとうございます。

stereotype2085 (2018-11-10):

まりもさん、一言選評ありがとうございます。「僕は」で止めた方が良かったとの理由。いつかお聞きしたく存じます。

蛾兆ボルカ蛾兆ボルカ (2018-11-10):

推薦への推薦、ありがとうございます。 選評も励みになります。

沙一 (2018-11-10):

ひとこと選評をありがとうございます。 夏目漱石さんの夢十夜、とても好きです。 それにしてもコメント欄に、まりもさんへのたくさんのお礼と感謝、それぞれ短文ゆえにいろいろなアイコンが連なっているように見えて、カラフルですねえ。

羽田恭 (2018-11-11):

一言選評に、「蠅」が。ありがとうございます! 死者への祈りの執着、一言でこの詩を言い当てているように思えました。

かるべまさひろ (2018-11-11):

「眩しい光」ありがとうございます。 一言選評……真似したくなりますね。

ゼンメツゼンメツ (2018-11-12):

ありがとうございます! 普段はなかなかちょっと伝わりにくいものばっか書いているので、今回さまざまなみなさんからコメントを貰えたのはとても嬉しく新鮮でした!

まりも (2018-11-14):

わらわら・・・という感じで、たくさん書いてしまいましたが、ひとりひとりには、ほんの少しに、なってしまい・・・これだ、という一言を、自分なりにお届けできていれば、嬉しいです。 コメントしよう、と思って読むと、だれかに、無意識のうちに話しかけたり、説明したりしながら読むと思うのですね。その、見えない対話を繰り返すうちに、おしゃべり苦手な人が、好きになったり、得意になったりする。 実際の人間関係でも、それがプラスに働くこともある。 コメントを書くことは、だから、生き方の潤滑油を自分で自分に補給することなんじゃないか、と、思うわけです。 まずは嘘だと思って、やってみてくださいね、ほんとだから。

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