MILK/THE WHITE ALBUM。 ──乳用牛ホルスタイン種の弛まざる品種改良に寄せて - B-REVIEW
新規登録
ログイン
PICK UP - REVIEW

エセ詩人

いでよ、エセ詩人!

コトダマ とはよく言ったものだ。 ハキダセ と 男は言う。 おまえは誰だ? わたしは何者だ?   

湯煙

硬派な作品

萩原朔太郎や中原中也のエッセンスを感じます。

千治

体験記『呆気ない宣告』

それはあなたの現実かもしれない。

大概のことは呆気なくドラマティックではない。そうした現実の丁寧な模写が作品に厚みを増している。

ほば

世界は自由だ━不死━

わかるということ

あなたにとっては何が、その理解が起きるピースになるだろうか?

ほば

ふたつの鐘がなるころは

鐘は明くる日に鳴る! いつでもそうだ!

運営在任中に出会った多くの作品の中のベスト。決して忘れない。

yasu.na

良い

シンプルに好き

あっす

パパの日曜日

パパの日曜日

いい

明林

終着点

生きる、その先に死地はない!

美しくさわやか、そして深い意味が込められたシーン、均衡の取れた心情と思想、強い意志で最終連へと迫る引き締まった展開、我が胸にこの詩文を抱いて!

yasu.na

九月の終わりを生きる

呼び覚ます声

夏の名残の暑さが去ろうとする頃、九月の終わりになると必ずこの作品のことを思い出す。

afterglow

こっちにおいで

たれかある

たそがれに たれかある さくらのかおりがする

るる

詩人の生きざま

言葉と詩に、導かれ救われ、時に誤りながらも、糧にしていく。 赤裸々に描写した生きざまは、素晴らしいとしか言いようがない。

羽田恭

喘息の少年の世界

酔おう。この言葉に。

正直意味は判然としない。 だが、じんわりあぶり出される情景は、良い! 言葉に酔おう!

羽田恭

誰かがドアをノックしたから

久しぶりにビーレビ来たんだけどさ

この作品、私はとても良いと思うんだけど、まさかの無反応で勿体ない。文にスピードとパワーがある。押してくる感じが良いね。そしてコミカル。面白いってそうそう出来ないじゃん。この画面見てるおまえとか、そこんとこ足りないから読んどけ。

カオティクルConverge!!貴音さん

あなたへ

最高です^ ^ありがとうございます!

この詩は心に響きました。とても美しく清らかな作品ですね。素晴らしいと思いました。心から感謝申し上げます。これからも良い詩を書いて下さい。私も良い詩が書ける様に頑張りたいと思います。ありがとうございました。

きょこち(久遠恭子)

これ大好き♡

読み込むと味が出ます。素晴らしいと思います。

きょこち(久遠恭子)

輝き

海の中を照らしているのですね。素晴らしいと思います☆

きょこち(久遠恭子)

アオゾラの約束

憧れ

こんなに良い詩を書いているのに、気付かなくてごめんね。北斗七星は君だよ。いつも見守ってくれてありがとう。

きょこち(久遠恭子)

紫の香り

少し歩くと川の音が大きくなる、からがこの作品の醍醐味かと思います。むせかえる藤の花の匂い。落ちた花や枝が足に絡みつく。素敵ですね。

きょこち(久遠恭子)

冬の手紙

居場所をありがとう。

暖かくて、心から感謝申し上げます。 この詩は誰にでも開かれています。読んでいるあなたにも、ほら、あなたにも、 そうして、私自身にも。 素晴らしいと思います。 ありがとうございます。みんなに読んでもらいたいです。

きょこち(久遠恭子)

カッパは黄色いのだから

良く目立ちます。 尻尾だけ見えているという事ですが、カッパには手足を出す穴がありますよね。 フードは、普通は顔が見えなくなるのであまり被せません。 それを見て、僕はきっと嬉しかったのでしょう。健気な可愛い姿に。ありがとうございました。

きょこち(久遠恭子)

永訣の詩

あなたが出発していく 光あれ

羽田恭

あなたには「十月」が足りていますか?

もし、あなたが「今年は、十月が足りてない」と お感じでしたら、それは『十月の質』が原因です。 詩の中に身を置くことで『短時間で十分な十月』を得ることができます。この十月の主成分は、百パーセント自然由

るる

だれのせいですか

どんな身体でも

どんな自分であっても愛してくれるか、抱きしめてくれるか、生きてくれるか SNSできらきらした自分だけを見せてそんな見た目や上辺で物事を判断しやすいこんな世の中だからこそ響くものがありました。例えばの例も斬新でとても魅力的です。

sorano

衝撃を受けました

ベテルギウス。まずそれに注目する感性もですが、詩の内容が衝撃。 猫。木。家族。犬(のようなもの)。女の子……。など、身近にあふれている極めて馴染み深いものベテルギウスというスケールの大きいものと対比されているように感じられました。

二酸化窒素

ずっと待っていた

渇いた心を満たす雨に満たされていく

afterglow



作品を
別枠表示

MILK/THE WHITE ALBUM。 ──乳用牛ホルスタイン種の弛まざる品種改良に寄せて    

●先斗町通りから木屋町通りに抜ける狭い路地の一つに●坂本龍馬が暗殺されかかったときの刀の傷跡があるって●だれかから聞いて●自分でもその傷跡を見た記憶があるんだけど●二十年以上も前の話だから●記憶違いかもしれない●でも●その路地の先斗町通り寄りのところに●RUGという名前のスナックが●むかしあって●いまでは代替わりをしていて●ふつうの店になっているらしいけれど●ぼくが学生の時代には●昼のあいだは●ゲイのために喫茶店をしていて●そのときにはいろいろなことがあったんだけど●それはまた別の機会に●きょうは●その喫茶店で交わされた一つの会話からはじめるね●店でバイトをしていた京大生の男の子が●客できていたぼくたちにこんなことをたずねた●もしも●世のなかに飲み物が一種類しかなかったとしたら●あなたたちは●何を選ぶのかしら●ただし●水はのぞいてね●最初に答えたのはぼくだった●ミルクかな●あら●あたしといっしょね●バイトの子がそう言った●客は●ぼくを入れて三人しかいなかった●あとの二人は日本茶と紅茶だった●紅茶は砂糖抜きミルク抜きレモン抜きのストレートのものね●ゲイだけど●笑●バファリン嬢の思い出とともに●あたたかい喩につかりながら●きょう一日の自分の生涯を振り返った●喩が電灯の光に反射してきらきら輝いている●いい喩だった●じつは●プラトンの洞窟のなかは光で満ちみちていて●まっしろな光が壁面で乱反射する●まぶしくて目を開けていられない洞窟だったのではないか●洞窟から出ると一転して真っ暗闇で●こんどは目を開けていても●何も見えないという●両手で喩をすくって顔にぶっちゃけた●何度もぶっちゃけて●喩のあたたかさを味わった●miel blanc●ミエル・ブラン●見える●ぶらん●白い蜂蜜●色を重ねると白になるというのは充溢を表している●喩からあがると●喩ざめしないように●すばやく身体をふいて●まだ喩のあたたかさのあるあいだに●布団のなかに入った●喩のぬくもりが全身に休息をもたらした●身体じゅうがぽっかぽかだった●ラボナ●ロヒプノール●ワイパックス●ピーゼットシー●ハルシオン●これらの精神安定剤をバリバリと噛み砕いて●水で喉の奥に流し込んだ●ハルシオンは紫色だが●他の錠剤はすべて真っ白だ●バファリン嬢も真っ白だった●中学生から高校生のあいだに●何度か●ぼくは●こころが壊れて●バファリン嬢をガリガリと噛み砕いては●大量の錠剤の欠片を●水なしで●口のなかで唾液で溶かして飲み込んだ●それから自分の左手首を先のとがった包丁で切ったのだった●真・善・美は一体のものである●ギリシア思想からフランス思想へと受け継がれた●美しくないものは真ではない●これが命題として真であるならば●対偶の●真であるものは美である●もまた真であるということになる●バラードの雲の彫刻が思い出される●ここで白旗をあげる●喩あたりでもしたのだろうか●それとも●クスリが効いてきたのか●指の動きがぎこちなく●かつ●緩慢になってきた●白は王党派で●赤は革命派●白紙答案と●赤紙●白いワイシャツと●赤シャツ●スペインのアンダルシア地方に●プエブロ・ブロンコ●白い村●と呼ばれる●白い壁の家々が建ち並ぶ町がある●テラコッタ●布団の上に横たわるぼくの顔の上で●そこらじゅうに●喩がふらふらと浮かび漂っていた●紙面に横たわる喩の上で●そこらじゅうに●ぼくの自我がふらふらと浮かび漂っていた●無数の喩と●無数のぼくの自我との邂逅である●目を巡らして見ていると●一つの安易な喩が●ぼくに襲いかかろうとして待ち構えているのがわかった●ぼくは●危険を察して●布団から出て●はばたき飛び去っていった●Everything Keeps Us Together●きのうは●ジミーちゃんと●ジミーちゃんのお母さまと●1号線沿いの●かつ源●という●トンカツ屋さんに行きました●みんな●同じヒレ肉のトンカツを食べました●ぼくとジミーちゃんは150グラムで●お母さまは100グラムでしたけれど●ご飯と豚汁とサラダのキャベツは●お代わり自由だったので●うれしかったです●もちろん●ぼくとジミーちゃんは●ご飯と豚汁をお代わりしました●食後に芸大の周りを散歩して●帰り道に嵯峨野ののどかな田舎道をドライブして●広沢の池でタバコを吸って●鴨が寄ってくるのに●猫柳のような雑草の毛のついたたくさんの実のついた●先っぽを投げ与えたりして●しばらく●曇り空の下で休んでいました●鴨は●その雑草の先っぽを何度も口に入れていました●こんなん●食べるんや●ぼくも食べてみようかな●ぼくは雑草の先っぽを食べてみました●予想と違って●苦味はなかったのですけれど●青臭さが●長い時間●口のなかに残りました●鴨の子供かな●と思うぐらいに小さな水鳥が●池の表面に突然現われて●また水のなかに潜りました●あれ●鴨の子供ですか●と●ジミーちゃんのお母さまに訊くと●種類が違うわね●なんていう名前の鳥か●わたしも知らないわ●とのことでした●見ていると●水面にひょっこり姿を現わしては●すぐに水のなかに潜ります●そうとう長い時間潜っています●水のなかでは呼吸などできないはずなのに●顔と手に雨粒があたりました●雨が降りますよ●ぼくがそう二人に言うと●二人には雨粒があたらなかったらしく●お母さまは笑って●首を横に振っておられました●ジミーちゃんが●すぐには降らないはず●降っても三時半くらいじゃないかな●しかも●三十分くらいだと思う●それから嵐山に行き●帰りに衣笠のマクドナルドに寄って●ホットコーヒーを飲んでいました●窓ガラスに蝿が何度もぶつかってわずらわしかったので●右手の中指の爪先ではじいてやりました●蝿はしばらく動けなかったのですが●突然●生き返ったように元気よく隣の席のところに飛んでいきました●イタリア語のテキストをジミーちゃんが持ってきていました●ぼくも●むかしイタリア語を少し勉強していたので●イタリア語について話をしていました●お母さまは音大を出ていらっしゃるので●オペラの話などもしました●ぼくもドミンゴのオセロは迫力があって好きでした●ドミンゴって楽譜が読めないんですってね●とかとか●話をしていたら●急に●外が暗くなってきだして●雨が降ってきました●降ってきたでしょう●と●ぼくが言うと●ジミーちゃんが携帯をあけて時間を見ました●ほら●三時半●ぼくは洗濯物を出したままだったので●夜も降るのかな●って訊くと●三十分以内にやむよ●との返事でした●じっさい●十分かそこらでやみました●前にも言いましたけれど●ぼくって●雨粒が●だれよりも先にあたるんですよ●顔や手に●あたったら●それから五分から十分もすると●晴れてても●急に雨が降ったりするんですよ●すると●ジミーちゃんのお母さまが●言わないでおこうと思っていたのだけれど●最初の雨があたるひとは●親不孝者なんですって●そういう言い伝えがあるのよ●とのことでした●そんな言い伝えなど知らなかったぼくは●ジミーちゃんに●知ってるの●と訊くと●いいや●と言いながら首を振りました●ジミーちゃんのお母さまに●なぜ知ってらっしゃるのですか●と尋ねると●わたし自身がそうだったから●しょっちゅう●そう言われたのよ●でももう●わたしの親はいないでしょ●だから●最初の雨はもうあたらなくなったのね●そういうもんかなあ●と思いながら●ぼくは聞いていました●広沢の池で●鴨が嘴と足を使って毛繕いしていたときに●深い濃い青紫色の羽毛が●ちらりと見えました●きれいな色でした●背中の後ろのほうだったと思います●鴨が毛繕いしていると●水面に美しい波紋が描かれました●同心円が幾重にも拡がりました●でも●鴨がすばやく動くと●波紋が乱れ●美しい同心円は描かれなくなりました●ぼくは池を背にして●山の裾野に拡がる●畑や田にけぶる●幾条もの白い煙に目を移しました●壁のペンキがはげかかったビルの二階のトイレ●そこでは●いろいろな人がいろいろなことをしている●ご飯を炊いて●それをコンビニで買ったおかずで食べてたり●その横で●男女のカップルがセックスしてたり●ゲイのカップルがセックスしてたり●天使が大便をしている神父の目の前に顕現したり●オバサンが愛人の男の首を絞めて殺していたり●オジサンが隣の便器で大便をしている男の姿を●のぞき見しながらオナニーしてたり●男が女になったり●男が男になったり●女が男になったり●女が女になったり●鳥が魚になったり●魚が獣になったり●床に貼られたタイルとタイルの間が割れて●熱帯植物のつるがするすると延びて●トイレのなかを覆っていって●トイレのなかを熱帯ジャングルにしていったり●かと思えば●トイレの個室の窓の外から凍った空気が●垂直に突き刺さって●バラバラと砕けて●トイレのなかを北極のような情景に一変させる●男も●女も●男でもなく女でもない者も●男でもあり女でもある者も●何かであるものも●何でもないものも●何かであり何でもないものでもあるものも●ないものも●みんな直立した氷柱になって固まる●でも●ジャーって音がすると●TOTOの便器のなかにみんな吸い込まれて●だれもいなくなる●なにもかも元のままに戻るのだ●すると●また●トイレのなかに●ご飯を炊く人が現われる●カーペットの端が●ゆっくりとめくれていくように●唇がめくれ●まぶたがめくれ●爪がめくれて指が血まみれになっていく●すべてのものがめくれあがって●わたしは一枚のレシートになる●田んぼの刈り株の跡●カラスが土の上にこぼれた光をついばんでいる●地面がでこぼことゆれ●コンクリートの陸橋の支柱がゆっくりと地面からめくれあがる●この余白に触れよ●先生は余白を採集している●それで●こうして●一回性という意味を●わたしはあなたに何度も語っているのではないのだろうか●いいね●詩人は余白を採集している●めくれあがったコンクリートの支柱が静止する●わたしは雲の上から降りてくる●カラスが土の上にこぼれた光をついばんでいる●道徳は●わたしたちを経験する●わたしの心臓が夜を温める●夜は生々しい道徳となってわたしたちを経験する●その少年の名前はふたり●たぶん螺旋を描きながら空中を浮遊するケツの穴だ●あなたの目撃には信憑性がないと幕内力士がインタヴューに答える●めくれあがったコンクリートの陸橋がしずかに地面に足を下ろす●帰り道●わたしは脚を引きずりながら考えていた●机の上にあった●わたしの記憶にない一枚のレシート●めくれそうになるぐらいに●すり足で●賢いひとが●カーペットの端を踏みつけながら●ぼくのほうに近づいてくる●ジリジリジリと韻を踏みながら●ぼくのほうに近づいてくる●ぼくは一枚のレシートを手渡される●ぼくは手渡されたレシートの上に●ボールペンで数字を書いていく●思いつくつくままに●思いつくつくままに●数字が並べられる●幼いぼくの頬でできたレシートが●釘の先のようにとがったボールペンの先に引き裂かれる●血まみれの頬をした幼いぼくは●賢いひとの代わりのぼくといっしょに●レシートの隅から隅まで数字で埋めていく●レシートは血に染まってびちゃびちゃだ●カーペットの端がめくれる●ゆっくりとめくれてくる●スツール●金属探知機●だれかいる●耳をすますと聞こえる●だれの声だろう●いつも聞こえてくる声だ●カーペットの端がめくれる●ゆっくりとめくれてくる●幼いぼくは手で顔を覆って●目をつむる●雲の上から降りてきた賢いひとの代わりのぼくは●その手を顔から引き剥がそうとする●クスリを飲む時間だ●おにいちゃん●百円でいいから●ちょうだい●毎晩●寝るまえに●枕元に灰色のボクサーパンツを履いたオヤジが現われ●猫の鞄にまつわる話をする金魚アイスの●どうよ●灰色のパンツがイヤ●赤色や黄色や青色のがいいの●それより●間違ってぽくない●金魚アイスじゃなくって●アイス金魚じゃないの●たくさんの猫が微妙に振動する教会の薔薇窓に●独身の夫婦が意識を集中して牛の乳を絞っているの●どうよ●こんなもの咲いているオカマは●うちすてられて●なんぼのモンジャ焼き●まだやわらかい猫の仔らは蟇蛙●首を絞め合う安楽椅子ってか●それはそれで癒される●けど●やっぱり灰色はイヤ●赤色や黄色や青色のがいいの●地球のゆがみを治す人たち●バスケットボールをドリブルして●地面の凸凹をならす男の子が現われた●すると世界中の人たちが●われもわれもとバスケットボールを使って●地面の凹凸をならそうとして●ボンボン●ボンボン地面にドリブルしだした●それにつれて●地球は●洋梨のような形になったり●正四面体になったり●直方体になったりした●ウンコのカ●ウンコの●ちから●じゃなくってよ●ウンコの●か●なのよ●なんのことかわからへんでしょう●虫同一性障害にかかった蚊で●自分のことをハエだと思ってる蚊が●ウンコにたかっているのよ●うふ~ん●20代の終わりくらいのときやったと思う●付き合っていた恋人のヒロくんのお父さんが弁護士で●労災関係の件で●それは印刷所の話で●年平均6本●とか言っていた●指が切断されるのが●紙を裁断するとき●あるいは●機械にはさまれて●指がつぶれる数のこと●ヒロくんは●クマのプーさんみたいに太っていて●まだ20才だったけど●年上のぼくのことを●名前を呼び捨てにしていて●歩いているときにも●ぼくのお尻をどついたり●ひねったりと●あと●北大路ビブレの下の地下鉄で別れるときにでも●人前でも平気で●キスするように言ってきたり●それでじっさいしてて●駅員に見られて目を丸くされたりして●かなり恥ずかしい思いをしたことがあって●そんなことが思い出された●ヒロくんは●大阪の梅田にある小さな映画館で●バイトしていて●一度●そのバイト代が入ったから●おごるよと言って●大阪の●彼の行きつけの焼肉屋さんで焼肉を食べたのだけれど●そうだ●指の話だった●ヒロくんと別れたあとだと思うのだけれど●4本か5本だったかな●ハーブ入りの●白いウィンナーをフライパンで焼いていて●そのなかにケチャップを入れて●フライパンを揺り動かしていると●切断された指が●フライパンのなかでゴロゴロゴロゴロ●とってもグロテスクで●食べるとおいしいんだけど●見た目●気持ち悪くて●ひぇ~って●気持ち悪くって●で●ヒロくんとはじめて出会ったのが●大阪の梅田にある北欧館っていうゲイ・サウナだったんだけど●彼って●すっごくかわいいデブだったから●決心するまで時間がかかったけど●あ●決心するって●ぼくのほうからアタックするっていう意味ね●で●ぼくみたいなのでもいいのかなって思って●彼に比べると●ぼくなんかブサイクだと思ってたから●あ●これ●ちょっと謙遜ね●で●近寄っていったら●勇気あるなあ●って言われて●びっくりしたので●くるって振り向いて立ち去りかけたら●後ろから腕をつかまれて●おびえながら顔を見上げたら●あ●ぼく180センチ近くあるんやけど●ヒロくんもそれぐらいあって●肩幅とか●横がすごくって●ぼくよりずっと大きく見えたんだけど●彼も180センチ近くあって●で●そのいかついズウタイで●顔はクマのプーさんみたいで●かわいらしくって●にっこり笑っていたので●ああ●ぼくでもええんやって思って●ほっとして●それから●ふたりで●ふたりっきりになりたいねって話をして●じゃあ●ラブ・ホテルに行こうって話になって●もちろん●ぼくのほうから●ふたりっきりになりたいって言ったんだけど●で●そうそうに●北欧館から出て●北欧館の近くにあった●たしか●アップルって名前のラブホだと思うんだけど●男同士でも入れるラブ・ホテルに行って●エッチして●それからご飯をいっしょに食べに行って●あ●お好み焼きやった●まだ覚えてる●そのときのこと●あつすけさんて●どっちでもできるんや●どっちって●どのどっちやろか●って思った●ぼくは彼の腕を縛ったりして遊んだから●でも●なぜかしら●ヒロくんがデーンと大の字に寝て●ぼくが抱きつきながら●頭すりすりしてたりしてたからかな●あ●一週間で●あつすけさん●は●あつすけ●になりましたけど●ヒロくんは基本的にタチやったから●まあ●それでよかったんやけど●ぼくも若かったなあ●やさしい子やった●ヒロくんは基本Sやったけど●笑●そういえば●ヒロくん●ピンクのプラスティックのおもちゃで●ロータリングっちゅうのやろか●お尻に入れて動かすやつ持ってきたことがあって●ぼくのお尻に入れて●スイッチが入ったら●ものすごく痛かったから●すぐにやめてもらったんやけど●ヒロくんのチンポコやったら●そんなに痛くなかったから●それにいつもヒロくんは入れたがったから●ぼくが受身になってたけど●ヒロくんと付き合ってたときは●なんか●やられることになれちゃって●10才近く年下やのに●ええんやろかって思ったりしたことがあって●で●一度だけ●ぼくが入れたことあるんやけど●ヒロくんはものすごく痛がって●かわいそうだから●その一度だけで●あとはずっと●ぼくが攻められるほうで●ヒロくんが攻めるって感じやった●それと●ヒロくんはいつもぼくのを飲んでたけど●なんで飲むんって訊いたら●男の素や●男のエキスやから●より男らしくなるんや●って返事で●そうかなあって思ったけど●それって愛情のことかなって思った●一度●風呂場で●電気消して●真っ黒にして●ヒロくんのチンポコをくわえさせられたことがあって●ヒロくんが出したものをぼくがわからないように吐き出したら●いま吐き出したやろ●って言って●えらい怒られたことがあった●ヒロくんは●仏像の絵を描いたものをくれたことがあって●ぼくが仕事から帰ってくるのを●ぼくの部屋で待ってたときに●描いてたらしくって●上手やった●仏像の絵を描くのがヒロくんの趣味の一つやった●ヒロくんのことは●何度も書いてるけど●まだいっぱい思い出があって●ぼくの記憶の宝物になってる●笑い顔いっぱい覚えてるし●笑い声いっぱい覚えてる●いまどうしてるんやろか●あ●お好み焼き屋さんで●その腕の痕●なに●って訊いたら●さっき縛ったやんか●って返事●ヒロくんの性格って●いまぼくが付き合ってる恋人にそっくりで●いまの恋人の表情ひとつひとつが●ヒロくんを思い出させる●きのう●恋人とひさしぶりに半日いっしょにいて●しょっちゅう顔を見てたら●なんや●って何度も言われた●べつに●って言ってたけど●人間の不思議●思い出の不思議●いま付き合ってる彼のことが愛おしいんだけど●ヒロくんの思い出をまじえて愛おしいようなところがあって●ひとりの人間のなかに●複数の人間のことをまじえて考えることもあるんやなあって思った●ヒロくんと撮った写真●たまに出して見たりするけど●ぼくが死んで●ヒロくんが死んで●写真のふたりが笑ってるなんて●なんだかなあ●ぼくは恋をしたことがあった●また会ってくれるかな●いいですよ●はじめてあった日の言葉が●声が●いつでもぼくの耳に聞こえる●あつすけ●ちょっと怒ったように呼ぶヒロくんの声●そういえば●きのう●恋人が●あほやな●なんでそんなにマイペースなんや●きっしょいなあ●腹立つなあ●めいわくや●って●笑いながら言った●あほや●とか●きっしょいとか言われるのは恋人にだけやけど●悪い気がしなくて●って●ところが●きっしょいのかなあ●ぼくは恋をしたことがあった●ヒロくんには●ぼくの投稿していたころのユリイカをぜんぶプレゼントして●吉増さんの詩集もぜんぶあげたことがあって●詩を書きはしないけど●読むのは好きな子やった●あ●ヒロくんよりデブってた男の子で●ぼくが耳元でぼくの詩を朗読するのを●すごくよろこんでた子がいたなあ●ヒロくんは剣道してたけど●その子はアメフトで●なんでデブなのにスポーツしてやせへんのやろか●わからんわ●はやく死んでしまいたい●あ●電話でジミーちゃんにヒロくんのこと●書いてるんだけどって言ったら●あの大阪の映画館でバイトしてた●双子座のA型の子やろって●ひゃ~●いまの恋人といっしょやんか●そやから似とったんやろか●そういうと●ジミーちゃんが●たぶんな●って●ふえ~●あ●そういえば●タンタンは双子座のAB型やった●なんで●機械する●機械したい●機械させる●機械する●機械したい●機械させる●機械は機械を機械する●機械に機械は機械する●機械する機械を機械する●機械を機械する機械を機械させる●機械死体●蜜蜂たちが死んで機械となって落ちてくる●街路樹が錆びて枝葉がポキポキ折れていく●ゼンマイがとまって人間たちが静止する●雲と雲がぶつかり空に浮かんだ雲々が壊れて落ちてくる●金属でできたボルトやナットが落ちてくる●あらゆるものが機械する●機械する●機械したい●機械させる●機械する●機械したい●機械させる●機械は機械を機械する●機械に機械は機械する●機械する機械を機械する●機械を機械する機械を機械させる●葱まわし●天のましらの前戯かな●孔雀の骨も雨の形にすぎない●べがだでで●ががどだじ●びどズだが●ぎがどでだぐぐ●どざばドべが!



ログインしてコメントを書く
ログイン







新規ユーザー登録はこちら

パスワードを忘れた方はこちら

MILK/THE WHITE ALBUM。 ──乳用牛ホルスタイン種の弛まざる品種改良に寄せて ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 9
P V 数 : 823.6
お気に入り数: 0
投票数   : 2
ポイント数 : 0

作成日時 2024-04-01
コメント日時 2024-04-08
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2024/04/30現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント00
 平均値  中央値 
叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合00
閲覧指数:823.6
2024/04/30 22時28分34秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。

    作品に書かれた推薦文

MILK/THE WHITE ALBUM。 ──乳用牛ホルスタイン種の弛まざる品種改良に寄せて コメントセクション

コメント数(9)
おまるたろう
おまるたろう
作品へ
(2024-04-02)

蓮實重彦もむせび泣く名作。

0
おまるたろう
おまるたろう
作品へ
(2024-04-02)

惹かれたのは私小説のような部分で、本当かどうかは知らんが、疑いがもてないレベルに達している。 生々しい。 「私小説として」(...の生々しさが欲しいんだぜー)だなんて、まったくナンセンスなのだが。

0
田中宏輔
田中宏輔
作品へ
(2024-04-03)

お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。

0
エイクピア
作品へ
(2024-04-03)

坂本龍馬のエピソードからジミーちゃん、ヒロくんとのエピソード。最後の機械を使った言葉遊びと言うのか、機械が続く概念と言うのか、フレーズに収束を見ました。具体性が強い詩の中に思想性が感じられる詩なのかもしれません。曰く言い難いのですが、全ての関係性を男と男の関係性に還元する思想性が隠れていると思ったからです。なので男と男の性的な関係の具体的な描写が続くのではないかと感じられたからです。

0
田中宏輔
田中宏輔
作品へ
(2024-04-04)

お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。

0
ryinx
作品へ
(2024-04-07)

>天のましらの前戯かな●孔雀の骨も雨の形にすぎない●べがだでで●ががどだじ●びどズだが●ぎがどでだぐぐ●どざばドべが!  衝撃的、かつ抒情的な締め括りに感じました。

0
田中宏輔
田中宏輔
作品へ
(2024-04-07)

お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。

0
メルモsアラガイs
メルモsアラガイs
作品へ
(2024-04-07)

先ずはタイトルがいいですね。専門的な知識を含ませる用語で、内容とは遠くてそれでいて五感的には近くも感じる。この句読点の形を打つ● これくらいの分量になるとこれも面白い趣向です。〇文字を空白にすると●それは銀河の中に引き寄せられる●〇星星の集まり。句読点なんかより正解かも知れないですね。

0
田中宏輔
田中宏輔
作品へ
(2024-04-08)

お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。

0
ログインしてコメントを書く
ログイン







新規ユーザー登録はこちら

パスワードを忘れた方はこちら

B-REVIEWに参加しよう!

新規登録
ログイン
推薦文を書く

作品をSNSで紹介しよう→

投稿作品数: 2