『ふたたび殺戮の時代』のためのスケッチIII - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

体験記『呆気ない宣告』

それはあなたの現実かもしれない。

大概のことは呆気なくドラマティックではない。そうした現実の丁寧な模写が作品に厚みを増している。

ほば

世界は自由だ━不死━

わかるということ

あなたにとっては何が、その理解が起きるピースになるだろうか?

ほば

ふたつの鐘がなるころは

鐘は明くる日に鳴る! いつでもそうだ!

運営在任中に出会った多くの作品の中のベスト。決して忘れない。

yasu.na

B-REViEWは終わった

詩を愛するすべての方へ

詩投稿サイトは終わったのか、そもそも始まっていたのか、ただひとつわかっているのは、作品をとおした交流が求められているということ——

沙一

良い

シンプルに好き

あっす

パパの日曜日

パパの日曜日

いい

明林

終着点

生きる、その先に死地はない!

美しくさわやか、そして深い意味が込められたシーン、均衡の取れた心情と思想、強い意志で最終連へと迫る引き締まった展開、我が胸にこの詩文を抱いて!

yasu.na

九月の終わりを生きる

呼び覚ます声

夏の名残の暑さが去ろうとする頃、九月の終わりになると必ずこの作品のことを思い出す。

afterglow

こっちにおいで

たれかある

たそがれに たれかある さくらのかおりがする

るる

時の名を考える

奇妙な味わい

時の名前、おもしろい発想です。黒髪ワールド炸裂です。

yamabito

声明 流木から

詩人の生きざま

言葉と詩に、導かれ救われ、時に誤りながらも、糧にしていく。 赤裸々に描写した生きざまは、素晴らしいとしか言いようがない。

羽田恭

喘息の少年の世界

酔おう。この言葉に。

正直意味は判然としない。 だが、じんわりあぶり出される情景は、良い! 言葉に酔おう!

羽田恭

魔法はある 犬ver

うまいと感じました(内容は15禁)

レスが少ない順から眺めていったんですが、埋もれてましたので掘り出しました。

yamabito

誰かがドアをノックしたから

久しぶりにビーレビ来たんだけどさ

この作品、私はとても良いと思うんだけど、まさかの無反応で勿体ない。文にスピードとパワーがある。押してくる感じが良いね。そしてコミカル。面白いってそうそう出来ないじゃん。この画面見てるおまえとか、そこんとこ足りないから読んどけ。

カオティクルConverge!!貴音さん

あなたへ

最高です^ ^ありがとうございます!

この詩は心に響きました。とても美しく清らかな作品ですね。素晴らしいと思いました。心から感謝申し上げます。これからも良い詩を書いて下さい。私も良い詩が書ける様に頑張りたいと思います。ありがとうございました。

きょこち❤️久遠恭子 霊視も出来るアーティスト

これ大好き♡

読み込むと味が出ます。素晴らしいと思います。

きょこち❤️久遠恭子 霊視も出来るアーティスト

初恋

輝き

海の中を照らしているのですね。素晴らしいと思います☆

きょこち❤️久遠恭子 霊視も出来るアーティスト

アオゾラの約束

憧れ

こんなに良い詩を書いているのに、気付かなくてごめんね。北斗七星は君だよ。いつも見守ってくれてありがとう。

きょこち❤️久遠恭子 霊視も出来るアーティスト

藤の花

紫の香り

少し歩くと川の音が大きくなる、からがこの作品の醍醐味かと思います。むせかえる藤の花の匂い。落ちた花や枝が足に絡みつく。素敵ですね。

きょこち❤️久遠恭子 霊視も出来るアーティスト

冬の手紙

居場所をありがとう。

暖かくて、心から感謝申し上げます。 この詩は誰にでも開かれています。読んでいるあなたにも、ほら、あなたにも、 そうして、私自身にも。 素晴らしいと思います。 ありがとうございます。みんなに読んでもらいたいです。

きょこち❤️久遠恭子 霊視も出来るアーティスト

犬のしっぽ

カッパは黄色いのだから

良く目立ちます。 尻尾だけ見えているという事ですが、カッパには手足を出す穴がありますよね。 フードは、普通は顔が見えなくなるのであまり被せません。 それを見て、僕はきっと嬉しかったのでしょう。健気な可愛い姿に。ありがとうございました。

きょこち❤️久遠恭子 霊視も出来るアーティスト

あなたのために

永訣の詩

あなたが出発していく 光あれ

羽田恭

十月

あなたには「十月」が足りていますか?

もし、あなたが「今年は、十月が足りてない」と お感じでしたら、それは『十月の質』が原因です。 詩の中に身を置くことで『短時間で十分な十月』を得ることができます。この十月の主成分は、百パーセント自然由

るる

だれのせいですか

どんな身体でも

どんな自分であっても愛してくれるか、抱きしめてくれるか、生きてくれるか SNSできらきらした自分だけを見せてそんな見た目や上辺で物事を判断しやすいこんな世の中だからこそ響くものがありました。例えばの例も斬新でとても魅力的です。

sorano

死んだベテルギウス

衝撃を受けました

ベテルギウス。まずそれに注目する感性もですが、詩の内容が衝撃。 猫。木。家族。犬(のようなもの)。女の子……。など、身近にあふれている極めて馴染み深いものベテルギウスというスケールの大きいものと対比されているように感じられました。

二酸化窒素

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『ふたたび殺戮の時代』のためのスケッチIII    

    2019/2/12 忙しい日々の合間に、自問するばかりだ。分娩室にて、一体どんな タイミングでシュコーシュコー言いながら〝I'm your father...〟と つぶやけば、最大のウケが取れるだろう? ベイビーがほんぎゃー ほんぎゃーと泣き出したら、きっともう誰も私のつぶやきなど気に しまい。何しろ子の一生に一度しかない機会であるからぜひとも最 大の成果を挙げたい。妻にそう相談すると、「見える、見えるよ! 助産師さんはもちろん愛する妻にも無視された哀しみから闇落ちす る父の姿が!」と言われた。ダークサイドの力を思い知るがいい! 「去りゆくときには すべてをあげよう  わたしのものではなかった空を わたしの風として」 「たったひとりのあなたに 吹くものとして」 「わたしの持たなかった孤独を あなたにあげよう」   「生まれ来たあとでは すべてを奪おう  あなたのものであったひとを わたしの父として」 「ひとりになれないあなたに 吸いつくものとして」 「あなたの抱えた孤独を あなたから奪おう」   「水面をまなざすあなたを 背後から包み」 「そこに映る影はあなただと 耳元でささやこう  そののちあなたの見るものすべてから」   「わたしのまなざしがあなたに届くだろう  去りゆくときには すべてを奪い」 「生まれ来たあとでは すべてをあげよう」 2019/3/18 生後十一カ月の三つ子の次男を床にたたきつけて死亡させたという 母親が、傷害致死で懲役三年六カ月の実刑判決を言い渡された。育 児を一人で抱え込んでいた彼女に、実刑判決はあんまりだ。おとな 一人だけで新生児一人だけを育てる場合でもすでにかなりむりがあ るのに、出産直後のズタボロの状態の母一人だけで新生児三人を世 話するなど、発狂しないほうが逆におかしい。助けられなかったの はどう考えても社会の落ち度だ。 ゆりかごになると おまえの落ちていく世界が からだのなかに生まれ 果てがさらに広がるほど 重たくなっていく おまえは手をだらりと垂れて 分かるよ 泣き疲れたおまえのかなしみ 眠るときはひとり きっと最期まで それがおまえに唯一与えられた祝福だとしても おまえは蝶になり なるべく遠くへ飛ぶ だがわたしは隣を行くことができない わたしは世界そのものだから 2019/4/2 「令和」は素直に読むと「美しい国、日本」という意味。「令」は、 漢字二字の単語で二字目にあるときは「おきて」「上から下への言 いつけ」を意味するが(法令、軍令、命令、指令など)、「令和」 のように一字目にあるときは「美しい」「清らかな」「よい」を意 味する(令月、令室、令嬢、令名、令聞、令色など)。「和」は、 中国から見た東の辺境または蛮族「倭」と同じ音に、よい意味の字 を当て直した呼称。要するに、安倍晋三が二〇〇六年総裁選から使 ってきたスローガンが、新しい元号になる。政府発表の意味以外で 受け取るべきではないという主張をする人については、人生で何度 か大きな詐欺に遭っているのではないかと心配になる。だが私は不 親切だから、あなたはだまされていると教えてあげたりはしない。 なきごえだ 聞こえないか そう おまえもみどりごのころ 夢のあと世界に耐えきれず 母を探したろう 思い出せないか またなきごえだ 聞こえないか そう おまえもおとなになり 目覚めてもなかずにいられるようになって 何を失ったろう 思い出せるか 決して帰らないものを待ち 決して行かないところを思い描き 決して見たことのない壁の向こうを見通しながら 帰るべきところを探してさまよい 見つからずともいつのまにか帰りついてしまうと知った ああおまえ いきもののうたごえだ 思い出したか 2019/6/1 ミーティングで、最後あたりに震災の記憶の話が出た。そういえば 私の生業は震災から始まったのだ。二〇一一年三月、大学院の研究 発表に向けて資料を作っていた。あの日、形容できないほど凄まじ い揺れが来て、舞い上がった埃が午後の陽光に照らされて室内を異 常に輝かせ、まさか東京が核攻撃にでもあったのかという疑いが脳 裏を一瞬よぎった。外へ出て下町の混乱を走り抜け、公衆電話を見 つけて、のちに妻になる人と実家へ電話をかけた。十七時ごろラジ オをつけると「仙台青葉区で数百の遺体」と聞いて震撼し、阪神大 震災の経験から被害者の数字がはるかに増えることを直感して、あ まりの衝撃にひとり慟哭した。研究発表は当然中止になった。困っ ている人に迷惑をかけたくなかったので、電気を消してしばらく水 道水だけで生き延びていた。四月、震災にともなう原発事故の余波 で疫学系の翻訳者がみな忙殺されて人手不足になっていたとき、私 にとって初めての翻訳案件(疫学)が舞い込んできた。自宅から出 ることなく仕事をすることができた。翻訳が多くの女性の非正規労 働によって成り立っている仕事であることはまだ知らなかった。 けれども 輝かしい沈黙を分光していくきみたちの瞳の内奥へ 今日死んだ子どものうえに広がる青空が砕け散れば 傷つけられた網膜に残る紅い風船を捕まえるために 同じように動く限りただ一心に手を伸ばしただろう 2019/8/6 「『表現の不自由』展」展示中止問題は今すぐアクションを起こさ なければならない緊急事態なのに、朝から晩まで仕事と家事と子育 てで少しも手が空かない。子は血便が続いている。複数の医者に何 度も見せたが原因不明、超音波でもレントゲンでも異常認められな いから原因究明には内視鏡検査しかないが、それは全身麻酔が必要 だからできれば乳児にやりたくないというわけで、とりあえず血便 の量が増えるとすぐさま病院に飛んでいっている。加えて三ヵ月く らいから哺乳びんから全く飲んでくれなくなったので、完全母乳育 児。妻はもう、へとへとだ。私は五月なかばからずっと在宅勤務し ていて、子どものいる部屋のとなりで耳をそばだてつつひたすら仕 事をして、手が足りなそうなときに飛び込んでいく。おむつを替え たり、買い出しにいったり、掃除洗濯をしたり、メシを用意したり。 家計簿つけるのも。子の世話はとてもやりがいがあるが、やはり、 父もちゃんと制度的に保障された育休がほしい。特別休暇二日では ぜんぜん足りない。在宅勤務を認める会社だから何とかなっている けれど、この状態は心身ともに結構疲弊するし、キャリアに響くの ではという不安はぬぐえない。 わたしが母になれるなら そのときこの乳房は どうか どこの国のことばでも 発音できない母音のかたちをしてほしい   わたしが父になれるなら そのときこの腕は どうか 驚かせたりちからづけたりする どこからも見える感嘆符のかたちをしてほしい この胸ははるかな未来のために息のつける読点になってほしい わたしがこいびとになれるなら 果てない空色をした零のようにこの眼はひらいてほしい わたしが子どもになれるなら そう 答えのない疑問符の反りで愛撫してほしいこの手は もしも もしも わたしがわたしになれるなら 2019/9/28 私のことをこれまで何度か軽蔑的な意味で「学者」と呼んでいた上 司が昨日、私を嘲笑的な意味で「主婦」と呼んだので、転職を決意 した。安月給をいただきつつ博士号持ちのリサーチ力と文章構成力 で前例なしの分野における新規顧客開拓に貢献した私を評価しない のは結構だが、学者も主婦もなめんなよ。 2019/11/16 進歩的な変革のかげで、その意義を無化するもう一つの変革が同時 に行われていることがある。例えば男女雇用機会均等法と労働者派 遣法が同じ一九八六年に施行されたことは偶然ではない。資本家は フェミニストの訴えに譲歩するかのように見せかけて、依然として 安い労働力を確保しながら団体交渉阻止のために労働者間に分断を 設けておく必要があったので、労働者を性別で差別するのではなく 正規か非正規かで差別することにしたのだ。そして親世代に根強く 残る性差別のせいで女子の大学進学率は男子と同等までには上がら なかったので、就職氷河期時代には就職市場で勝ち上がれない多く の女性が非正規または低賃金の仕事を担っていくことになった。差 別は解消されたかのようで、実際には残りながら不明瞭に複雑化し た。階級はなくならず、再編成を繰り返された。 2019/11/26 セックスできない。愛撫して触れ合うということすら。わかってい る、私たちはそれどころではない。もちろん子の血便は九月以来ほ とんどなくなった。それはリンパ濾胞増殖症であり、生後半年から 一年ほどで出血はみられなくなると予測した四人目の医師がおそら く正しい。しかし不安材料がひとつ減っただけだ。相変わらず子は 母乳以外飲もうとせず、離乳食もほとんど進んで食べようとせず、 妻は数時間おきに子の口に乳を含ませている。子は母子手帳の成長 曲線からいって平均よりずっと大きく成長しているので、本当によ く飲む。母乳は血液から作られるから、妻はさかんに血を作り出し てはこの平均よりはるかに重い子を抱きながら血を失い続けている。 四十を越えて第一子を産んだ妻の体力は限界に近づいている。だか ら私は妻の疲れを癒そうとして、ときどき肩や背中をマッサージし ている。それでも残念ながら態度に滲み出してしまったらしい。妻 は最近、一度なかばやけになったように、その気がないのに決然と して今晩しようと言った。私はたまらなく辛い気持ちになった。妊 活のため仕事を辞めた妻のぶん、私はひたすら努力して稼いできた が、その結果として私が権力を持ってしまった。妻が望んでいない ことを妻に言わせられるほどの力を持ってしまったのだ。だから私 はその夜、私のとなりに横たわった妻の髪を撫でて、何もしなくて いいから最近辛いと感じていることを教えてとささやいた。妻は最 初きょとんとしていたがしばらくするといつものように疲労を訴え た。私もいつものようにマッサージをした。「いやだ」と言われな いからといって「いい」わけではない。「いやだ」と言わせないよ うにしてはならない。「いい」と言われたからといって、その「い い」がよくない「いい」である可能性を考えなければならない。当 たり前のことを今頃になって反芻するとは思っていなかった。 一羽の鳥を思い描こうとすれば 空が広がるだけ 誰であれこの無限に耐えきれない だからうたったのだ おまえは 砂漠をゆく影を塗ろうとすれば 旋律が流れ出すだけ 誰ももとの歌詞を思い出せない だからさらわれゆく砂粒のように ただ思いつく言葉を乗せれば 愛している そうくりかえすだけ くりかえすほどに 手をのばして 風の傷口をふさごうとすれば 見えない鳥は 愛しているよ 愛しているよとくりかえすだけ 2019/12/23 私の転職が決まったとたん、職場でチームビルディングなる名目で 飲み会が開かれることになった。ひとり毎月五千円まで会社から金 が出るという。言いたいことは三つある。一、フリーランスに還元 しろ。どう考えても今の状態は搾取だ。フリーランスが幸せに働け ない限り、納品物の品質は上がるはずがないのだから、社員の幸せ もありえない。二、日常業務のシステムを変えろ。全員個人プレー 状態を作り出している今の体制が続く限り、助け合いや信頼関係に 基づくチームワークは生まれようがない。社員に飲ませても尿にな って排泄されるだけだ。三、上層部はこれ以上の人材流出を防ぎた いなら中間管理職ではなくその部下たちの声をじかに聴け。そうす れば現場が感じている苦しみと、中間管理職が報告している問題の 間に、ギャップがあることがわかるだろう。中間管理職はとりあえ ず今の状況を乗り切ることしか考えていないので、自分には解決の 糸口が見えない問題を上層部に報告したがらない。 2019/12/26 父親になる前は、フェミニズムは私にとって選択肢だった。誰より もまず、パートナーとともに歩む自分自身のために選択したほうが よい正義だった。逆に言えば「降りる」こともできる何かだった。 だが父親になると、フェミニズムが指摘するさまざまな問題は圧倒 的現実として本当に自分自身の視界の至るところに現象しており、 その敵は私自身の個人的内面から、家庭、職場、社会、市場、国家、 世界までのすべてのレベルをどこにも逃げ場なく支配していること が改めて明らかになった。とくに家事、出産、育児のことを考える と、そうした無賃労働を女性に押し付けている限り労働者男性は資 本家男性による搾取に加担しているのだということがますますはっ きり分かってきた。「降りる」ことができるものだという認識は間 違っていたのであり、降りたと思い込んだとしても実際には現実か ら目を背けることにしかならないのだ。 なぜ学び、教えるのか? 自分が誰の奴隷にもならず、誰も自分の 奴隷にしないためだ。 これが二〇代後半からの私の信条だ。その信条に従って、私は marxist feminismについて学び始めることにした。 雨ではない場所を 作者が思うと 子どもたちはいっせいに軒下から駆け出した 手をはためかせ ランドセルに追いつかれないように速度を上げながら 濡れた赤や黄色を淡くエコーさせた 誰の声でもなかった ただいのちが響きわたった ここでわたしは何をいいたかったのか 百字以内で記せ 鉛筆を転がしかけたが選択問題ではなかった いつからか いくら考えても答えのわからない空欄はすべて 肯定で埋めることにしていた YES それからあとは試験終了まで 窓の外を見つめて 雨ではない場所を思いつづけた 2020/1/18 最終出社まで一週間。今日も仕事の引き継ぎのために後任の翻訳者 の訳文を校正していた。翻訳対象は、ジェンダーフルイディティを 擁護するファッションブランドが新しいメンズコレクションを発表 したことに関する記事。当然、コレクションのテーマはマスキュリ ニティを多元化すること。メンズウェアをまとってランウェイを闊 歩するモデルたちの中に、男性ばかりでなく女性も、どっちかわか らない人もいるうえに、ときどきこれはどう見てもウィメンズだよ ねっていうウェアも登場する。これはフェミニズムの視点に立つこ とが必須だなと思って後任者の訳文を見ると、パースペクティブが ぜんぜん見えない。きわめつけは、Aという事実の指摘の文の訳が おかしいだけではなくて、接続詞whileが置かれてからBという表 現の解説の文が続くのだが、それが対比のwhileであることが訳文 に表現されていない。AとBはフェミニズムの視点に立つといわば イエローとパープルに見えるが、後任者にはオレンジとレッドくら いに見えているらしい。そこでフェミニズムについて尋ねた。 「そういう考えを持つことは自由だと思います」と彼女は答えた。 「かなり距離がある言い方ですね」と私は返した。「知らなくても かまいません。私もよくは知りません。でも関心はありませんか。 共感するところはありませんか」彼女は首を横に振った。「友だち の中にもそういうことを話す人はいません」私は少し考えてから言 った。「いいでしょう、もちろんあなた自身のお考えはそれでかま いません。しかし私たちは翻訳者なので、いったんは翻訳対象の人 そのものの側に立たなければいけません。例えば、言葉を話してい る人が〝I〟または〝we〟と言ったら、その通訳者は『彼女は』 『彼女たちは』とは言わずに自分から離れてその人になりかわり 『私は』『私たちは』と言うでしょう。それと同じ、あるいは俳優 と同じです。翻訳者はいわば『このライターが日本語を書くことが できたら、こう書いていたのではないか』と考えながら、そのライ ターになりかわって日本語文を書くんです。その人になりかわるか らには、たとえ内容が自分自身には同意できないことであっても、 バックグラウンドを知っておくべきです。専門知識や経験はそのた めに不可欠ですが、それ以上に根本的に必要なのは関心または共感 を持つことです。完全な他人ごとにはできないし、かといって完全 な自分ごとにできると思い込むべきでもない。翻訳者がその間に立 てず、どちらか片側にしか立てないなら、ライターが言いたいこと は理解できないか、ライターから話しかけられている人がどう思う かが分からないため、メッセージは伝えられないでしょう。だから、 いえ、まだ知らなくていい、でも関心を持ってください」彼女はし ばらくぽかんとしてから言った。「原口さんはこの最新コレクショ ンの記事に共感するんですか?」「はい、例えば私はメンズスカー トを履いてみたいです」「ええっ?!」この目はよく見たことがあ る。人が均質な集団の中に危険な異分子を発見するときの目だ。単 に私がいつもユニクロを着ているから、こんなダサいやつがと思わ れただけではない。「私はこんな体型だしお金もないから履かない だけです」それから私が話したことのどれくらいが彼女の記憶にと どまっただろうか。しかし四の五の言っていられない。あと一週間 で彼女にスタートラインへ立ってもらわなければならない。それが 私自身のスタートラインでもある。      

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作成日時 2020-08-25
コメント日時 2020-09-19

『ふたたび殺戮の時代』のためのスケッチIII ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 13
P V 数 : 2246.4
お気に入り数: 4
投票数   : 0
ポイント数 : 14
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2023/02/09現在)投稿後10日間
叙情性32
前衛性00
可読性11
エンタメ11
技巧62
音韻00
構成31
総合ポイント147
 平均値  中央値 
叙情性11
前衛性00
可読性0.30
 エンタメ0.30
技巧22
音韻00
構成11
総合4.75
閲覧指数:2246.4
2023/02/09 07時37分50秒現在
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※自作品にはポイントを入れられません。

    作品に書かれた推薦文

『ふたたび殺戮の時代』のためのスケッチIII コメントセクション

コメント数(13)
沙一
作品へ
(2020-08-27)

巧く書けているとか書けていないとか、そうした批評を一切受けつけないであろう作品。作品と云うことさえ僭越ではないかと思われるほど。というのも、ここに顕れているのは、剥き出しの生き様そのもの。真に迫るエクリチュールを受けて、心は震えるしかない。

0
雨野小夜美
雨野小夜美
作品へ
(2020-08-27)

はじめまして。実は、急ぎの用があったのですが、この作品だけは面白過ぎて、全部読んでしまいました。フェミニズムとか、難しい事は私にはよくわかりませんが、単純に面白いです。

0
原口昇平
沙一さんへ
(2020-08-28)

沙一さん、ありがとうございます。過大なお言葉をいただき恐縮です。迫真性というか切実さは私自身といたしましても今作だけでなく過去作でも追求してきたことですから、ご感想をいただけてうれしいです。ただ技術論や形式論の観点からの検討もぜひ自由にしていただきたいところですし、生き様かどうかを棚上げにして詩としてどうなのかというところも忌憚なく問うていただければと思っています。

0
原口昇平
雨野小夜美さんへ
(2020-08-28)

雨野小夜美さん、ありがとうございます。わりあい長い分量のテキストでしたから、忙しい日々を過ごされている皆さんには果たしてお読みいただけるのかどうか少しばかり懸念していましたが、雨野さんが全部お読みくださったということは私にとってうれしいことです。

0
白目巳之三郎
作品へ
(2020-09-02)

何故か、読み返してしまう詩でした。何と言ったらよいのでしょうか、ここまで自己に正直につづった文章というのも珍しい、と言ったらよいのでしょうか。(もし、書かれている内容が全て創作でしたら、それはもう、僕は天才と呼ばせていただきます笑) 特に面白かったのは、主体の揺れ動きです。悪く言うと、主体に一貫性がないのですが、しかし、そのために非常に人間味あふれる文章になっているのを感じました。 例えば、 『妻/は最近、一度なかばやけになったように、その気がないのに決然と/して今晩しようと言った。私はたまらなく辛い気持ちになった。』 などというように、ある時は、優しく良識的な夫としての自己像を語るのですが(悪く言えば自分を優しく良識的な夫だと見て欲しい主体と言ってもよいかもしれませんが)、ある時は 『この目はよく見たことがあ/る。人が均質な集団の中に危険な異分子を発見するときの目だ。』 と少々攻撃的で才気がかった風の粋がりだと考えてもよい思想を表明し、それでいてある時は、 『自分が誰の奴隷にもならず、誰も自分の/奴隷にしないためだ。/これが二〇代後半からの私の信条だ。』 と少年のような理想主義を掲げる、この一貫性のなさが絶妙でした。 しかもそれが、流れで読んでいくと一貫しているように見えるというのが、これまた面白く、個々を分解した場合明らかに一貫性がない部分がありつつも、それらがつながっているように見える(それゆえに人間味を感じると僕は思ったのですが)、その面白さを感じた詩でした。 少々長くなりました。もし、揚げ足取りのようなコメントに感じたらすみません。しかしながら、久しぶりに長い詩なのにも関わらず、何度も読み返した、深みのある詩に出会ったと個人的には思っています。

0
原口昇平
白目巳之三郎さんへ
(2020-09-07)

白目巳之三郎さん、ありがとうございます。日記もまた創作だと私は考えています。これは実際のところ自分自身の日記から一部を修正しつつ抜き出して、当時書いた詩やもっと前に書いた詩と織り交ぜて仕上げたものですので、もちろん作為は含まれています。もっとも主体の一貫性のなさは私本人の一貫性のなさに起因するものである気がします。長い詩であるにもかかわらず何度も読み返していただけたとのことで、私はこれは読まれないのではと思っていましたから、ひたすら感謝するばかりです。

0
水上 耀
作品へ
(2020-09-08)

“殺戮の時代”や“『再び殺戮の時代』のためのスケッチ”を拝読し、それ以来スケッチが更新される度にこの感銘を伝えたいと思っていたのですが、うまくまとまらないので一文だけ失礼します。 “再び殺戮の時代”を拝読できる日を楽しみにしております。

0
花緒
作品へ
(2020-09-08)

「ダサめの詩文とパヨクの日記」 率直に言うとこれが嘘偽らざる本作への感想です。 が、流石にそれで終わっては宜しくないでしょうから、何を思ったかが第三者から見てもわかるよう、もう少し書きます。 なお、ビーレビューに投稿されている作品の中では相対的に優れた筆力で書かれていることをお認めした上での酷評です。 本作では繰り返し弱者(特に弱者としての女性)に対する目線が出てきます。そして弱者への眼差しとともにシステムに帰責しようとする傾向が随所に見られます。 例えば、生後11ヶ月の子供を叩き殺す母親。どうして母親が発狂しない方が可笑しい、社会が悪い、になってしまうのかなあと思います。子育ての大変さを軽視する気はないにしても、発狂して殺人しない方が変、社会が悪い、は何だか妙です。どうしていきなり社会のせいになるのだろう。誰かを頼ったり、何かできることがあったのでは?と少なくとも裁判所は判断するでしょうし、殺された子供の視点がありうるなら社会のせいだけだとは思わないのじゃないか。3つ子ができること=子殺しを免責されるべき、ではないですよね? システムや組織に帰責する態度は快挙にいとまが無いのだけれど、「上層部はこれ以上の人材流出を防ぎたいなら中間管理職ではなくその部下たちの声をじかに聴け。」などと愚痴って無いで、ええ歳の大人だったら自分で言いに行けよ、と思ってしまうのですよね。利益を産んでると自負するなら、交渉力もあるんだろうと。そうじゃなくて、上層部に掛け合えない程度の利益しか会社にもたらしてないなら、ぞんざいに扱われるのもしょうがないんじゃないでしょうか。自分の力で状況を打破するのが大人であり、父権を引き受ける人としての振る舞いじゃないのかなあ。発想が大人じゃない感じします。 一番私が違和感を覚えたのは、今晩しようといった妻への対応ですが、権力者たる夫のために望まないセックスを差し出す売女としての妻を発見し、そうした理解を優しさの名のもとで妻に伝えなくて良いのではないかなあ、などと思いました。もし真にそういうことなら、夫が「優しさ」を示したことに女性は傷つくでしょうね。まあ他の家庭のことなどはよく分かるはずもないのですが、少なくとも私が一読した限りにおいては本当にそれは優しさなのか、良識的な夫を演じるためのポーズに過ぎず、実のところ共感性の欠いた振る舞いではないかとも思いました。 別段揚げ足取りに終始したいわけではなく、何が言いたいのかというと、どうして作中話者は弱者(特に女性)への視点ばかりを持ち出し、システムや組織に帰責したがるのだろうという違和です。別のコメント欄で、通俗的な差別意識を再生産することに何らの異和を覚えられない作者の振る舞いをみていることも影響している可能性がありフェアな読みでなくなっているかもしれませんが、どうしてこうも執拗に弱者としての女性への眼差しばかりを書きつらねたいんでしょうね、それって優しさや愛情故なのでしょうかね、という疑問を覚える次第なのです。 子供がいて、子育てに忙殺されクタクタになってる妻にとって、欲しいのは良い意味でのマッチョな、権力者としての夫ではないでしょうか。ガンガン稼いで、お手伝いさんを雇ってくれて、何でもいい感じに差配してくれて、女性に負担をかけない男。そうしたマッチョな男を求める感受性の中には当然に何らかの形で「女性蔑視」が混じっていないとは言えませんが、大変な時に、いきなりマルクス主義フェミニズムを勉強し始める夫より、「権力者」をきちんと演じ切れる男の方が遥かに女性に都合が良いのでしょうね。 要すれば、マッチョな生き方が出きない、権力者であることを引き受けられない自分に向き合わず、「俺っち優しい共感性の高い夫」、「悪いのは基本、システムや組織」という態度。こうした前提に対して踏み込んだ記載がなされない限り、決して面白い読み物にはならないことを思いました。 >わたしが父になれるなら >そのときこの腕は どうか >驚かせたりちからづけたりする >どこからも見える感嘆符のかたちをしてほしい 父であることを引き受けられない人のポエムな感じします。

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原口昇平
水上 耀さんへ
(2020-09-09)

水上 耀さん、ありがとうございます。いただいたコメントに私も思いをうまくまとめられずにおります。「ふたたび殺戮の時代」を完成させられるときが来るのかどうかよく分からないのですが、何とかものにしたいなと思っています。

0
原口昇平
花緒さんへ
(2020-09-09)

花緒大先生、もったいなくも貴重なお時間を割いてお読みくださってありがとうございます。「パヨク」という批評性の欠片もない言葉から始められているように全体的に相変わらずくだらない逆張りから入るゲスなコメントを書くのだなあと思いながら私のごとき俗物とは異なる花緒大先生のご高説を拝読したのですけれども、大部分つまらないのですが本質にいささか触れている部分もありますのでそのことについて応答します。作中話者は搾取的なシステムに対して、会社をやめるところに表れているように逃げられるなら逃げようと考えており、また社会や家庭への姿勢に表れているように逃げられないならそれを変えようと努力するか自分だけはせめてできるだけ搾取的ではないように学びながら行動しようと考えています。花緒さんは前者の部分について「発想が大人じゃない」とお感じになり、後者の部分について「マッチョになればいいのに」と思っておられるようです。作者としての私は、作中話者が彼の妻とのできごとを通じてかえって信頼が強まったとか、転職前に上層部と交渉中に管理職登用を提示されたとか、はたまた転職先でより高い年収を得たとかいうエピソードは作品全体のテーマから見ると蛇足にすぎるので作中に書くつもりがなかったのですけれども、花緒さんのような逆張り好きの方に「大人じゃない」「マッチョじゃない」という感想を表明してもらえたのでやはり書かずにおいて正解だったなと思いました。何かを「大人」または成熟、「マッチョ」または理想の父と呼ぶ人のイデオロギーがかえって可視化すると私は考えているので、そのような感想は私にとって望ましいところです。本当にありがとうございました。

1
花緒
原口昇平さんへ
(2020-09-09)

本スペースへの書き込みは禁じられていないはずですが、他方で、作者が不快感を示した時や荒れる可能性がある時は議論を停止する、ことがこの場では求められているはずですから、他スペースでの運営の裁定も踏まえ、以降、本スペースを含めて貴兄との通交を控えることが適当と判断します。 よって、貴兄の反論についても対応することは致しません。苛烈なワードや相手をなじる言葉が時折混じるといった範疇を明確に逸脱してあからさまに乱れた言葉遣いをされると、この場では結果的に相手の言論を封殺する事になるということをきちんとお考え頂きたく思う次第です。 ただ一点、私は逆張りなどはしておらず、文を読み、思ったことの核となる部分が率直に表現されることを企図してコメントを書いているということだけは申しあげておきたいと思いました。 では、ご健筆を。

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原口昇平
花緒さんへ
(2020-09-09)

花緒大先生、最初に「パヨク」とおっしゃったあなたがそのようなことをのたまわれるとは、本当に感服いたします。私はいずれにせよあなたも含め他の人の感想の中に分からないことがあれば今後も率直に質問するつもりです。ごきげんよう。

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戸ヶ崎朝子
戸ヶ崎朝子
作品へ
(2020-09-19)

昇平さん、今日は。あんまり難しくて私の頭では無理でした。勉強します。

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