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無題
数えるほどしか履かずに褪せたコンバースが、いまでもくっきりと足跡を残しやがって、また苛々させられる。そもそもコンバースって靴はマジで雑魚だ、どしゃ降りの雨に当たったらそのイチゲキでオシマイだ。なんならいっそ歩きながら土へ還りでもすれば突き抜けてエコってことでタイソー褒められんのに。誰にだ。キミはきっとアレさ、もう一人も話し相手がいないもんだから、退屈と空腹の区別がつかなくなってんだ。なので早速コンビニへ行き、ゼロカロリーのコーラと「ひねり揚」とかいう、屈強な名前に対してあまりにも幸の薄そうな体格をもった菓子を購入した。始めのうちはその語感に割とシメられていた、しかし思ったよりずっと食べ飽きる量が入っていて、逆にその節操のなさに腹が立ってきた。どうしようもなく、結局むしゃくしゃしている。僕は近所の植物ばばあどもに「言い得ぬ不穏」をばら撒いてやろうと、一番でっかい枯れた鉢植えにコンバースをツマ先から半分ぶっ刺してやった。しかし古くなった土がボロボロですぐに倒れたので、わざわざ靴紐を枯れたラベンダーに巻き付けて補強を加えた。そこまでしてやっとバカらしくなった。やっとだ。ラベンダーは一年草じゃなかったらしい。僕はこいつの花々が枯れたあとに木だと知った。そこに木が残ってるんだからそうなんだろう。ただそれが死んでんのか死んでないのかはどれだけ眺めても判らなかった、そこにはまだ「来年フツーに生えてくんじゃないの感」すら残されていた。僕はしばらくのあいだ水をやり続けた。まあ、どこで気付いたのかは忘れたが、結果としてそれは死んでいた。なにも悲しくはないけれど、昔彼女がサガンの話をしていたことを思い出したから、一冊だけ読み直すことに決めた。本当は今でも小説が苦手なんだ。ひとつの同じものが長く続くことを考えると、知らない臓器に違和感を覚える。そんなだから当時読むまでにどれほど掛かったのかは覚えていない。読み終えてからどれほど経ったのかも。彼女と話しながら、数冊の本を買い、それよりずっと多くの名前を、聞いてそのまま忘れてしまった。いつのまにか彼女は彼女じゃなくなっていた。それだけ聞いたらいい意味に取れる場合もあるかなって気付いた。ちなみに例のコンバースは彼女と会うために買っただとか、ベツにそういうもんじゃない、てかコンバースの事はもういいだろ、ほんと、 ほんとね、さっさと死にたいです。
無題 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2934.4
お気に入り数: 4
投票数 : 0
ポイント数 : 1
作成日時 2018-07-16
コメント日時 2018-08-15
項目 | 全期間(2024/12/15現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合ポイント | 1 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 1 | 1 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
コンバースに水をやる行為で作者の感情や内面をもっとぶち込むとコンバースに花が咲くような気がします。 作者の心情は隠した方が俺は好きですね。手品のタネ見ている気分になります。 面白かったです。
0コンバースの靴ですか。コンバースの上着を昔着ていたような気がします。直ぐ水が染み込んで来るのでしょうかね、そして空腹と退屈の区別がつかないと。コンビニで買ったゼロカロリーとお菓子。近所の植物ばばあども。「言い得ぬ不穏」をばら撒いてやろうとする意志。サガンも出て来ますね。小説が苦手な僕。サガンは昔彼女が話してくれたもの。ただのお御喋りにも見えますが、話体詩を離陸させようとしている努力の痕跡だとも思えました。知らない臓器に違和感覚えるところなど、詩性があると思いました。
0コメントを書いて投稿したはずが電子の藻屑と消えてしまった。 なのでうろ覚えで同じ文章をもう一度書こう。「電子の藻屑」って古いな。 5or6(ゴロちゃん。)様 僕はどうしようもないやつなので、作品もどこかで台無しになっているようなものが好みです。ほんとサイテーな性癖です。 この詩は、ラストの一文で作者から強制的にベクトルを弄られて、読感がわけわかんなくなった後、 もう一度読み直して曇って欲しいと考え、あの部分から書き始めました。 ありがとうございました。 エイクピア様 水も浸みますし、糊が剥がれてばっこばこに分解しちゃうんですよね。 いわゆる詩的なテキストにすることなく、詩情だけを書きたかったです。 推敲時に饒舌になりすぎていた部分は、勿体無いな、とそれなりにウジウジしてから全部消しました。 ありがとうございました。
0花緒@B-REVIEW様 これは嬉しい批評です。 ありがとうございます。それは僕の理想とした読まれ方の一つです。実際作者の僕がこんなことを言うのもなんなんですけど、突き放して僕が読んでも実際のところ死なないだろうな。と思っております。僕が感じるに、文学の界隈って、本気の作品(という言い方はあまり正しくないのですけど)では、「死ぬ」を慎重に、0か1かで扱い過ぎていると思うのです。でも現実ってどうなのかな。実際はもっと軽々しく、唐突に、意味もなく、なのに時に本気で、死にたくなり、そうでなくとも死にたいという言葉が飛び交っているんじゃないかな。それは、実際実行に移すかどうかはまたベツの話で、衝動が本物かどうか、だけだったり。とても幅があります。ライオンはともかくとして、中には衝動が軽くてもたまたまもういいやって選んじゃう人もいるんじゃないかな。この位の感覚がリアルで、僕にとってその時100パーセント死ぬであろう「死にたい」を描くほうが、ずっと、人の感情にゼロ距離ではないものに思えるのです。つまり、作中でどうしようもなく描かれた「僕」の言葉に真実味が感じられないのは想定した読まれ方であり、それを踏まえてそんな軽薄な死にたいという言葉の先に何を感じたのか。が読み手それぞれの揺れの部分なんじゃないのかな。と考えております。もちろん、絶対にこう読んで欲しいとかじゃなく、一つの理想の読まれ方として、です。花織さんの読まれ方は実に創作者の目線らしく、僕はとても嬉しかったです。本当にありがとうございました。
0文体の方向性としてはとても好きな作品だな、と感じました。ただ散らかりきれていないし、まとまりきれていない、という印象がありました。もっとうまくまとめて散らかってたら古くなったコンバースのスニーカーが醸し出すゴミきれのような、かといって愛着を捨てきれないようなあの独特の「汚さ」と「ほんとね、さっさと死にたいです。」に言い表されたなんとも投げやりな人生観がうまくマッチしてよりリアリティーのある形で迫ってきたのではないかな。。。と感じました。古くなったコンバースが作品のひとつの鍵になっているところはめちゃくちゃ好きです。「数えるほどしか履かずに褪せたコンバース」という言葉だけで伝わってくるものが多々あります。
0survof様 僕はなんかもう推敲がめっちょくちょヘタクソで、手を加えるほどひとりよがりになる地獄の悪癖があるので、自分でもあんまり長い間弄り回さないようにと気をつけてたんですけど、けっきょくその日の気分みたいなものでどっち付かずになっちゃったのかもしれません。もっともっと客観的な目線を磨けるようにがんばりたいと思います。ありがとうございました!
0※このコメントは7月選評です。作者様でなく閲覧者に向けて書いています。※ 【ほんとね、(自分が死なせたラベンダーのように)さっさと死にたいです。】 これがこの作品のオチであり、核心は「コンバースよりラベンダー」と思われます。 【例のコンバースは彼女と会うために買っただとか、ベツにそういうもんじゃない、】 つまり、そのコンバースの靴紐を巻き付けられ、コンバースと「結ばれた」ラベンダーのほうは【そういうもん】であると。 彼女との終わった恋を象徴する枯れたラベンダーについて、語り手は黙秘しています。 【てかコンバース(の靴紐を巻き付けた枯れたラベンダー)の事はもういいだろ、ほんと、】 とコンバースの話でごまかして、ラベンダーのことを隠蔽しています。もう思い出したくないのでしょう。語り手は彼女との恋を、ラベンダーごと枯らしてしまいました。枯れたあとでその恋が【来年フツーに生えて】など来ないことを知りました。 それを【なにも悲しくはない】やら、彼女との恋が【長く続くことを考えると、知らない臓器に違和感を覚える】やらほざくスキゾ気取りの語り手には、失恋の悲しみを表現する能力がありません。悲しむことができないから【結局むしゃくしゃ】するしかなく、自分のように雑魚なコンバースに八つ当たりし、その靴紐を思い出のラベンダーに巻きつけ「彼女と結ばれたかった自分」を思い知ったりして、 【そこまでしてやっとバカらしくなった。やっとだ。】 【ほんとね、(自分が死なせたラベンダーのように)さっさと死にたいです。】 なんかもう、語り手には申し訳ない感想ですが、ほほえましいですね。 *** 密度の高い文章です。平たく言えば「戻ってくると思ってた彼女が、戻ってこないから俺はいまこんなんなってる。」というだけの哀愁が、どれも非常な説得力のあの手この手で語られています。一言一句に豊富な含意と強靭な必然性があり、コンバースのように雑魚な語り手の心境を、これでもかというほど深めています。わたしはスキゾでもスキゾを気取りたくもないので笑ってしまいましたが、共感し感動しより豊かな読解を成す人もいるだろうと思います。 初見一発目からおもしろく、再読すればさらにおもしろく、しかも難解でなく、およそ欠点がありません。あえて瑕疵を挙げるとしたら、場面転換が雑すぎることですが、その雑さ(割愛)にも意義を持たせてしまえています。高校現国の教科書に載っても支障ないような文章力です。きっと多くのかたから高く評価されることでしょう。
1(ビーレビはレスしても反映されずどこかの無に帰すことが多いので、投稿前に全文コピペしております。そして今も消えました。ときあかせないなぞです。) 僕も一度放流したら、解釈する読み手それぞれ(僕も含めて)のものだと考えているくちなので、つまり書き手である僕がこの先にこんなことを書くと、読み手の頭にリミッターやらストッパーやらパワステやらをかけちゃうからよくないよなとは思うんですけど、けど、澤さんの批評は僕が意図してサラダ島のレタス城の奥に隠した財宝であるプチトマト(小さな頃に読んだ絵本にそんな話があったような、城じゃなかったかも。関係ないけど僕はトマトが超好き)をこれでもかこれでもかというほど掘り起こしていただけたので、僕はいまワルい書き手になってしまいたい。いや違う。僕は嘘をついている。だってなんでこんなにまで可読性を高くできるだけ高く高くって試みていたと思ってんだ、そりゃあ様々な解釈で読んでほしいさ、なかには本当に僕の描いたものより僕を感動させる読みもあるさ、でもちげーんだ。本当は意図したとおりに読み解いて欲しいから、共有してほしいから、そうに決まってんだろ、この批評を読んで「ひとつの解釈としてステキですねー」なんて心抑えて口にできるものか。ごめんなさい。僕は超ワルい書き手になります。だって澤あづささんの読解は、僕の意図とドンピシャなんですから。と言ってしまうから。 「密度の高い文章です。平たく言えば「戻ってくると思ってた彼女が、戻ってこないから俺はいまこんなんなってる。」というだけの哀愁が、どれも非常な説得力のあの手この手で語られています」 ふだん僕は、何をどんなに書いてもそこまで読まれないんだろうなーとか、わりとやさぐれながらも手グセで書き込んでしまうのですけど、ここまで気付いてもらえると、読み解いてもらえると、本当に感動しますね。僕の説明なんかもう不要です。 「わたしはスキゾでもスキゾを気取りたくもないので笑ってしまいましたが、」 ここ、ここもです。読後感は読解の先でまた千に万にと枝分かれしていくものです、わかってるんです、です、けど、作者的にも「自分自身の読後感」みたいなものはやっぱりあって、ここもまたドンピシャなんです。読んだあと、うっわーバカだなーこいつって鼻で笑ってもらいたかった。それで、でしょーバカでしょーえへへ。みたいな。そんなやりとりで救われてしまいたいものがあるんです。もちろん、わかりますーウルウルみたいな感想をもらえたら当然僕もマジでウルウルです。嘘じゃなく、読後感ってほんと、なにをもらっても良いんですよね。 またまた凄いのが、場面転換の雑さの話のなんですけど、いや、もちろん、力不足です!ってのもきっとあるんですけど、僕が作品を作るときって、描きたい作中話者の思考回路から創作していくタイプなので、つまりその話者のリアルを求め、距離を縮めるためにできる「こと」は、僕の最大筆力なんかよりもはるかに優先される。と考えて書くタイプなので、この部分まで切り込まれたことはいまだかつて無かったです。はい、なんかもうキリがないですね、でも僕にとってはこの「他者からの自作品の解体」が夢だったので、今回の澤あづささんの批評はですね、ほんと、ほんとね、もうサイコーに嬉しかったものなのです。
0はじめまして。 初読は作中人物のイライラが感染して読んでいるこちらもイライラしたのですが、コメントをざっと読んでからもう一度読んでみたら、最後にふふっと笑えました。たのしかったです。 それにしても、澤さんに評を書いてもらえるだなんてうらやましい。私も解体されたい。って思いました。
0はじめまして! こ、これは、とても嬉しい読まれ方です。読み解き方によって読後感が変わる作品にしたかったのです。そして同時にコメントと解説に、感謝! の気持ちです。本当に解体してもらえたこと。もうきっと一生忘れられないほど、めちゃくちゃ嬉しかったです。
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