優しさの香水をまぶした
コートの第一釦を留め、
鏡の前で ピアスを弄る。
わたしのこのリップの
発色の美しさは
自分の
ご機嫌を取るためにある。
心の泥濘
今朝は気苦労が九割を占めている。
やらなければいけないことを
こなすための準備が
体力を奪い
詐欺師のように周到で
人懐こい笑みを浮かべている。
気づかれても困る
色んな意味で
他者はお客様のようで
淋しいけれど申し訳ない。
猫なら許されるか犬が好きだけれど
ぐったり、してみたい。
きまぐれに とびきり
油断して
誤字脱字を酸素に
招き入れるような
会話をして欲しい
睫毛のカーテンをそっと閉める。
撓やかに
街が静まり返るときわたしは
白い雪を捕まえて
その一粒一粒を黒く染めてみたくなる。
あれもこれも気にしていない。
そう誤魔化した瞳は、
月曜日のオフィスの化粧室の中ではらはらと埋もれていった。
あれは本当は気にしなければいけないことで
その場で「傷ついた」と
反論しなかった自分に肩を落とす。
あらゆる惰性や犠牲に
加担してしまっているようで
自分自身にがっかりした。
深夜の泥濘
今度は浴室の鏡の前で肩を晒す。
タトゥーシールを台紙から
なるべくゆっくり剥がした
恐い、 言いたくない 本当は?
〝 〟
充血した瞳が怒っている。
文字を打つのを止めた
こんなに
急に話すのが虚しくなるのは
脳のせいなのか
時、めくように
憎、しむように
高、揚しながら鏡の首を絞めた
確信はないが
わたしの優しさは
いずれ消える香水みたいに
瓶の中 コロンの隣に とじこめられている。
臆病な私の肩を熱く痺れるようにインクが通過して行く。
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 107.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2025-12-18
コメント日時 8 時間前
#ビーレビ杯不参加
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/19現在) |
| 叙情性 | 0 |
| 前衛性 | 0 |
| 可読性 | 0 |
| エンタメ | 0 |
| 技巧 | 0 |
| 音韻 | 0 |
| 構成 | 0 |
| 総合ポイント | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:107.4
2025/12/19 08時20分33秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
香水みたいに、 優しさを纏えるのは素敵ですね。 たとえ、それが元々の自分を繕うものであろうとも。 最終行のインクが唐突に現れたように思えたので、再読しました。 >白い雪を捕まえて >その一粒一粒を黒く染めてみたくなる。 この部分から、インクが導き出されたのでしょうか。 香水は、意識してないときにふと香り、 自分を勇気づけてくれることがあります。 優しさの香水も、そんな感じで良いのでは?と思いました。
0気怠さを感じる優しさの香水 同じ香水でも付ける人によって香りが異なる 誰かにとっての癒しじゃなく自分への癒し その優しさを無意識に瓶に閉じ込めている。 「睫毛のカーテンをそっと閉める」のフレーズが私は好きです。 香水も優しさも強すぎない方が良いのかもですね。
0