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クロソイド曲線
国境のトンネルを 口下手な父の背中を 後部座席に寝ているふりで 長い時間きいていた にぎわう峠のドライブインで いったい何を食べたのか 今はもう覚えていない 見知らぬ町 見知らぬ人々 いつもとは違う顔の父がいた ナトリウム灯に 群がるように雪がふる 硬く白い路面に 縦型の信号機に雪がふる 促されるまま 55個のカーブの のこりをひとつ、 またひとつ数えて からだが右左に傾くたび 父と子のぎこちない言葉が すこしずつ解けだした 最初で最後の二人旅 今年、父と同い年になる
クロソイド曲線 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 6122.3
お気に入り数: 8
投票数 : 14
ポイント数 : 11
作成日時 2021-01-22
コメント日時 2021-02-15
項目 | 全期間(2024/12/15現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 11 | 11 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.8 | 1 |
音韻 | 0.3 | 0 |
構成 | 0.3 | 0 |
総合 | 2.8 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
- 思い出すことと思い出さないこと。あるいは、語ることと語らないこと。 (中貝勇一)
父子の冬の情景が広がりました。 >父と子のぎこちない言葉が すこしずつ解けだした 最初で最後の二人旅 華美でありませんが、確かにお父様と心が通いあった暖かみが伝わって来ました。
3滋味深い、そういう言葉が読後にふと思い浮かびました。 2箇所だけある読点の使い方(あるいはスペースの使い方との差異)が気になりました。
1こんにちは。背中で語ることしかできない口下手な父親の声なき声に耳を澄ませていたのかな。 家のなかでは父―子という関係についつい縛られていても、旅行のような非日常のなかでは相好を崩すこともある。ドライブインでの出来事は幼い語り手にとって、父の違う一面として驚きを伴って映ったことでしょう。あれはなんだったんだろう?と。 そんなことを思い出しながら雪道を車で走る現在の語り手の姿を目に浮かべることができます。言われるままにカーブの数を数えることで、ほぐれていく息づまるような空気。「緩和曲線」とはよく言ったものです。 だけど、そういうふうでなく、そういうふうにしかできなかったのだとしても、もっとちゃんと下手でもいいから、言葉で言ってくれればよかったのにね。 けれども同い年になるまで生きて経験してきた語り手も、そううまくはいかないことを知ったことでしょう。 在りし日の父の姿を思い出しながらいつしか自分の現在の姿と重なっていくとすれば、昔抱いていたわだかまりもほぐれて、父―子の愛情はここでようやく、遅ればせながらの交差をしたのかもしれません。まさに「緩和曲線」ですね。 当時と同じ道を車で辿りつつ、語り手のなかで変容する父―子の関係性が遠近感をもって表れているように感じます。 多くを流暢に器用に話すだけがいいとは限らない。父が言葉少なくともなんとか言葉にならないものを伝えようとしたことを語り手も継いでいこうとするかもしれません。この作品のように。
2車中と車外の描写が丁寧に書かれていて、それが心情をしっかりと伝えてくれる、カーブに合わせて身体が左右に揺れる、その揺れがこれまでの隙間を埋めて気持ちを通わせる、そんなふうに感じました。 タイトルが最後に心に戻ってくる、そんな気がしました。 素敵な詩です。
2美しいなぁ。なにより美しいのはこの景色をとらえた筆者の眼差しだと思います。それを強く感じさせる第一連 >国境のトンネルを/口下手な父の背中を/後部座席に寝ているふりで/長い時間きいていた 「口下手な父の背中を」「きいていた」という詩句。多くを語らない父と、同じく沈黙する筆者の抑制されたコミュニケーション。 ドライブインでの思い出も、外食で何を食べたかよりも「いつもとは違う顔の父」が印象に残っている。 作中の「ナトリウム灯」というどこかレトロな響きが自然と歳月の経過を感じさせます。 最後に明示されている「今年、父と同い年になる」ことについて、思いを巡らせれば到底語りつくせないでしょう。それをあえて語らず、感情を極限まで抑えた丁寧な風景描写によって美しく厳粛に書かれた父子の思い出が、素敵で羨ましくも思いました。
2>55個のカーブの >のこりをひとつ、 >またひとつ数えて >からだが右左に傾くたび 散々、似た感想が書かれているから特に印象深い所を書きます。引用した箇所、これを読むとき現在の語り手が自分で道を走っている姿が浮かび過去の描写と重なりました。丁寧に描かれた作品でタイトルも含めて味わい深い作品でした。
2父との思い出は私にもあります、まだ健在ですがこの登場人物は父との思い出を大切にしているのがひしひしと伝わってきます
2ウィキペディアに 「クロソイド」という名は、人間の運命の糸を紡ぐとされるギリシア神話の女神クローソーに由来するもの とあり、その意味でもこの題がつけられたのかもしれませんね。 >最初で最後の二人旅 > > >今年、父と同い年になる 父と同い年になっても一緒にクロソイド曲線の道路を曲がっているのでしょうか。 言葉が少ないながらいい関係だったようにも思えます。 印象深い作品でした。
2> 国境のトンネル という半ば固有名詞と化した言葉の使い方が非常に上手く白旗を挙げるしかないな、と感じました。 そこに付与されたイメージの強さに負けないだけのメッセージが込められていて引用のお手本を見た思いです。 非常に楽しめました。
2コメントありがとうございます。タイトルはこの作品の舞台となっている場所をWikipediaで調べている時に見つけました。素顔さんが感じたように、作者であるぼくも読み手としてそこへ戻ったような不思議な気持ちになりました。
0コメントありがとうございます。作品のテーマが伝わったようでよかったです。今冬の大雪があって書けたようなものなので……なんていうのか、幸せな体験をしました。
0コメントありがとうございます。 読んでくれて嬉しかったです。
0藤さんはいつもコメントで作品に寄り添ってくれますね。 読んでもらえて嬉しいです。ありがとうございます。
0すでにコメントがたくさんついている詩に私も一言残すことはあんまりしないんだけど、まぁ読んでしまったからね。いわれている通り良い詩です。 下手するとほんとに悪い意味で道徳的な、お涙頂戴になってしまいそうな題材でありつつもそうなっていないのは、やはり端々の表現が丁寧だからだろう。急ハンドルをきっていないんだよね。それこそクロソイド曲線のように、無理のない道筋を描きつつ最終行へと向かっている。 3連目もね、これがあることで記憶の淡さが表現されて良い。 あとやはりタイトルね。本文とは切り離されたものであるからこそ、タイトルで飛躍を起こせれば詩の魅力は倍増する。それの実践がこれ。
3この作品で、最初に惹かれたのは、 車中の描写です。 語り手の幼い記憶の中で、 それはまるで揺り籠のように、子供の頃の語り手を包み込んでいたのではないかと思いました。 雪の溶けるように、幼い頃の、父と子のさまざまな想いは、いくつもの曲がり角を経由しながら、多くの時間の中、やがてより暖かく寄り添うように変化していったのではないかと思いました。 − 最初で最後の二人旅 今は亡き父と共に、旅を続けてきた軌跡を思いました。
1コメントありがとうございます。もう朧げな記憶を辿りながら書きました。 読んでくれて嬉しいです。
1先にコメントしてても後から投票できると思ってたらできないシステムだったんですね(汗 ついでに他の方のコメント読んで、なるほどなあ!と思いました。特に渡辺さんの《下手するとほんとに悪い意味で道徳的な、お涙頂戴になってしまいそうな題材でありつつもそうなっていないのは、やはり端々の表現が丁寧だからだろう。急ハンドルをきっていないんだよね。それこそクロソイド曲線のように、無理のない道筋を描きつつ最終行へと向かっている。》ってのは大きく頷けるし、語り過ぎてないのがいいですね。
1コメントありがとうございます。 ナトリウム灯の橙色の光はぼくにとって非日常の象徴でした。 眼差しを美しいと感じてもらえて嬉しいです(照)
0↑ ミスです
0コメントありがとうございます。 現在の語り手の姿にまで思いを馳せてもらえて嬉しかったです。
0コメントありがとうございます。家族の数だけ思い出がありますね。読んでいただけて嬉しいです。
0コメントありがとうございます。そうなんですね!タイトルからイメージを膨らませていただけて嬉しいです。
0コメントありがとうございます。冒頭の部分で川端の作品を思い浮かべた方、多いだろうなと思います。 楽しんでいただけたようでよかったです。
0コメントありがとうございます。 タイトルは初めからこれでいこうと決めていました。
0なんか最後の文読んだら映画始ったときみたいなあのブルブルって感じがしました 適当みたいでごめんなさい でもほんとです 語彙力が無いもんで とても良い作品だと思います
2最初は、クロソイド曲線という耳慣れない言葉と、お父様とのさりげないエピソードに違和感があるなあ、という印象だったけれど、その違和感が逆にこの詩の魅力を引き出しているように思います。平易な文章に、難解な言葉を落とし込む。そしてとても読みやすいので、テクニックをぜひ真似したいです。
2コメントありがとうございます。 八畳さんが褒めてくださり、推敲を重ねた甲斐がありました。 タイトルの力を忘れないようにしたいです。
0今は亡き父との事想い出す。私の人生半分程は碌に口も利いていないのだが、想い出絵面は益々出づるばかり。カーブの数を数え身体揺れる度に父子の言葉溶け出す、という所が大好きです。
2コメントありがとうございます。 ぼくは車の運転が好きです。運転しながら見る景色は過去の記憶を呼び起こすことが多くて、まるでタイムマシンのようだなと思うのです。
2再びの登場ありがとうございます。 皆さんのコメントを拝見しながら当時も、それから後もずっとわからなかった父の気持ちが少しずつ見えてくるような気がしています。
0お読みくださりありがとうございました。
0一つ一つの言葉が無駄なく美しくつながっているように思い、感動しました。 完成度の高い作品ですね。
2コメントありがとうございます。 そういう感覚、わかります。 そしてまた始めから読んでくださると嬉しいです。
0コメントありがとうございます。タイトルに一見して難解に見える言葉を選んだのは本文中に書かなかった場所を示すためでもあります。試しに検索してみてください。
0ぼくが亡くなった父親と同い年になるには、あと11年たたなければなりません。
2コメントありがとうございました。
0カーブを数えるところがいいと思いました。
2コメントありがとうございます。 今回推敲した時にそこを意識していましたので嬉しいです。
0そうなんですね。 人の寿命ばかりは思うようにならないのが悲しいです。 コメントありがとうございました。
0コメントありがとうございます。 カーブ毎に標識が付いているのでヘッドライトに照らされたのを声に出して読み上げたように覚えています。
0もう一度頂いたコメントを読んでいて、見逃していた言葉に愕然としています。 「滋味深い」という言葉を普段の生活のなかで使ったことがなかったのです。 意味を調べて、なんて素敵な褒め言葉だったのだろうと、今頃になってじんわりと嬉しさが染みてきています。味わってくれてありがとうございました。
1コメントありがとうございます。 軌跡を想像してもらえて、この作品を書いて良かったなと思います。 読み手がいつのまにか車中に一緒に同乗してきたようで嬉しいのです。
1幾星霜を 生きてこられた お父様の言葉は 重いのであろうなあ。と、思いました。 そして、5 5個のカーブとあるので、作者は55年の年月を 通して、お父様を 思っておられるのかもしれないと、思いました。
1コメントありがとうございます。 残念ながら作者はもっと若いです 笑
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