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秋桜   

作成日時 2019-12-01
コメント日時 2019-12-07

あらゆるたしからしいものが剥がれて、ある底部をなす床のようなものから落ちた感覚でした。枯れ野の乾いた匂いを嗅いで茫と立ち尽くした神無月の下旬、まだ衰えていなかった裸眼の先。夕の帷にけぶる秋桜の青白い顔が死者のようだと見つめながらこの身体の輪郭も半透明のまま形が溶けていたので、かぎりなく幽霊に近かったと思います。そして一度死んだ者はこの世から存在の座標ピントがずれ続けるのだと今になって思い知ります。私(たち)は、不可逆的な死者として肉体的生を送り続けるのだと、交換したての蛍光灯に照らされながら、鰯が焼けたと告げるタイマーの電子音に鼓膜を叩かれて。 秋桜やㅤ逆さ水よとㅤ夕餉とる 後を濁す白鳥の鳴く声は思いの外醜いものだと、生硬な飯とともに口に放られた鰯の焦げた皮と骨とを咀嚼しながら私はまだ成仏出来なくて、とても歯がゆいのです。


項目全期間(2019/12/12現在)投稿後10日間
叙情性33
前衛性11
可読性00
エンタメ11
技巧22
音韻00
構成11
総合ポイント88
 平均値  中央値 
叙情性11
前衛性0.30
可読性00
 エンタメ0.30
技巧0.71
音韻00
構成0.30
総合2.73
閲覧指数:901.0
2019/12/12 08時46分41秒現在
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コメント数(10)
エイクピア (2019-12-02):

後を濁す白鳥の鳴く声。白鳥の歌と言うフレーズがあり、比喩的な意味があり美しいと思っていました。後を濁す白鳥とは詩的韜晦でしょうか。魅力的なフレーズともとれるのですが、やはりこの詩では 秋桜やㅤ逆さ水よとㅤ夕餉とる このコスモスの句が印象的でした。

yamabito (2019-12-02):

鋼で出来たような作品ですね。 余分なものを削ぎ、たたずんでいる姿が痛々しい。…といった印象です。 言い方を変えると遊びがなく、饒舌な部分が何一つないという感じですか。 評価を言う事すら控えたいという気分です。

なゆた創a.k.a.NORANEKO (2019-12-02):

エイクピアさんへ ご批評、ありがとうございます。 「後を濁す白鳥の歌」については、「白鳥の歌」と「立つ鳥跡を濁さず」を掛けた洒落として書いたものです。詩的韜晦とまで言えるほど凝ったレトリックではないかなぁと個人的には思います。 秋桜の句を気に入っていただけたなら何よりです。

なゆた創a.k.a.NORANEKO (2019-12-02):

yamabitoさんへ ご感想、ありがとうございます。

コーノ@基本的に眠い人 (2019-12-03):

好きです。 最果タヒ、という詩人がいますが、その方の文体に似ているなぁ、と個人的に感じました。 淡々と、しかしある種の主題を持ちつつ文を進めていく中に、ふと挿入される一個人的な感情の言葉。そういうものが深く突き刺さってくる作品であると感じました。あぁ、好きだなぁ。 素敵な作品を生んでくださりありがとうございます。 これからも良い詩生をお過ごしください。

つつみつつみ (2019-12-04):

>あらゆるたしからしいものが剥がれて、ある底部をなす床のようなものから落ちた感覚でした。 死後の様子が描かれているように感じましたが、落ちた感覚というところが新鮮でした。 >交換したての蛍光灯に照らされながら、鰯が焼けたと告げるタイマーの電子音に鼓膜を叩かれて。 死生観溢れる詩の中に突然出てくる、生活感。好きです。 >生硬な飯とともに口に放られた鰯の焦げた皮と骨とを咀嚼しながら私はまだ成仏出来なくて、とても歯がゆいのです。 成仏できぬまま、お供え物を食べているのかなと捉えました。そうだとしたら、面白いと思います。

沙一 (2019-12-04):

そして一度死んだ者はこの世から存在の座標ピントがずれ続けるのだと今になって思い知ります。 そう思い知った理由はなんだろうかと、作中では語られてはいないけどたしかに存在するであろうそれこそ、不可視的で幽霊じみているように感じられました。 私(たち)は、不可逆的な死者として肉体的生を送り続ける といった言葉から、寺山修司の詩「懐かしのわが家」の一節を想起しました。 ぼくは不完全な死体として生まれ 何十年かかって 完全な死体となるのである

なゆた創a.k.a.NORANEKO (2019-12-06):

コーノ@基本的に眠い人 さんへ お読みいただき、ありがとうございます。正直、何度か“最果タヒさんに似ている”とのご指摘を受けたことがあるものの、未だに自分のなかのタヒさん成分がよくわからず不思議に思っています。 これからもがんばります。

なゆた創a.k.a.NORANEKO (2019-12-06):

つつみさんへ お読みいただき、ありがとうございます。 お供え物を食べる死者の独白という読み方を与えてくださったことに感謝します。なるほど、そうとも読めるのかと思いました。

なゆた創a.k.a.NORANEKO (2019-12-07):

沙一さんへ お読みいただき、ありがとうございます。 たしかに、私―物語性を持たせるならば、“一度死んだ”経験をどこかに感じさせたほうがよかったかもしれません。 また、寺山修司にそのような詩の一節があることを知ることが出来てよかったです。私の生に対する違和と虚無に言葉を通す回路を与えてくれたのは萩原朔太郎ですが、寺山修司もきちんと読みたいと思いました。(映像作品はすごく好きです)

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