ハーメルンの斑な笛吹き The Pied Piper of Hamelin - B-REVIEW
新規登録
ログイン
PICK UP - REVIEW

エセ詩人

いでよ、エセ詩人!

コトダマ とはよく言ったものだ。 ハキダセ と 男は言う。 おまえは誰だ? わたしは何者だ?   

湯煙

硬派な作品

萩原朔太郎や中原中也のエッセンスを感じます。

千治

体験記『呆気ない宣告』

それはあなたの現実かもしれない。

大概のことは呆気なくドラマティックではない。そうした現実の丁寧な模写が作品に厚みを増している。

ほば

世界は自由だ━不死━

わかるということ

あなたにとっては何が、その理解が起きるピースになるだろうか?

ほば

ふたつの鐘がなるころは

鐘は明くる日に鳴る! いつでもそうだ!

運営在任中に出会った多くの作品の中のベスト。決して忘れない。

yasu.na

良い

シンプルに好き

あっす

パパの日曜日

パパの日曜日

いい

明林

終着点

生きる、その先に死地はない!

美しくさわやか、そして深い意味が込められたシーン、均衡の取れた心情と思想、強い意志で最終連へと迫る引き締まった展開、我が胸にこの詩文を抱いて!

yasu.na

九月の終わりを生きる

呼び覚ます声

夏の名残の暑さが去ろうとする頃、九月の終わりになると必ずこの作品のことを思い出す。

afterglow

こっちにおいで

たれかある

たそがれに たれかある さくらのかおりがする

るる

詩人の生きざま

言葉と詩に、導かれ救われ、時に誤りながらも、糧にしていく。 赤裸々に描写した生きざまは、素晴らしいとしか言いようがない。

羽田恭

喘息の少年の世界

酔おう。この言葉に。

正直意味は判然としない。 だが、じんわりあぶり出される情景は、良い! 言葉に酔おう!

羽田恭

誰かがドアをノックしたから

久しぶりにビーレビ来たんだけどさ

この作品、私はとても良いと思うんだけど、まさかの無反応で勿体ない。文にスピードとパワーがある。押してくる感じが良いね。そしてコミカル。面白いってそうそう出来ないじゃん。この画面見てるおまえとか、そこんとこ足りないから読んどけ。

カオティクルConverge!!貴音さん

あなたへ

最高です^ ^ありがとうございます!

この詩は心に響きました。とても美しく清らかな作品ですね。素晴らしいと思いました。心から感謝申し上げます。これからも良い詩を書いて下さい。私も良い詩が書ける様に頑張りたいと思います。ありがとうございました。

きょこち(久遠恭子)

これ大好き♡

読み込むと味が出ます。素晴らしいと思います。

きょこち(久遠恭子)

輝き

海の中を照らしているのですね。素晴らしいと思います☆

きょこち(久遠恭子)

アオゾラの約束

憧れ

こんなに良い詩を書いているのに、気付かなくてごめんね。北斗七星は君だよ。いつも見守ってくれてありがとう。

きょこち(久遠恭子)

紫の香り

少し歩くと川の音が大きくなる、からがこの作品の醍醐味かと思います。むせかえる藤の花の匂い。落ちた花や枝が足に絡みつく。素敵ですね。

きょこち(久遠恭子)

冬の手紙

居場所をありがとう。

暖かくて、心から感謝申し上げます。 この詩は誰にでも開かれています。読んでいるあなたにも、ほら、あなたにも、 そうして、私自身にも。 素晴らしいと思います。 ありがとうございます。みんなに読んでもらいたいです。

きょこち(久遠恭子)

カッパは黄色いのだから

良く目立ちます。 尻尾だけ見えているという事ですが、カッパには手足を出す穴がありますよね。 フードは、普通は顔が見えなくなるのであまり被せません。 それを見て、僕はきっと嬉しかったのでしょう。健気な可愛い姿に。ありがとうございました。

きょこち(久遠恭子)

永訣の詩

あなたが出発していく 光あれ

羽田恭

あなたには「十月」が足りていますか?

もし、あなたが「今年は、十月が足りてない」と お感じでしたら、それは『十月の質』が原因です。 詩の中に身を置くことで『短時間で十分な十月』を得ることができます。この十月の主成分は、百パーセント自然由

るる

だれのせいですか

どんな身体でも

どんな自分であっても愛してくれるか、抱きしめてくれるか、生きてくれるか SNSできらきらした自分だけを見せてそんな見た目や上辺で物事を判断しやすいこんな世の中だからこそ響くものがありました。例えばの例も斬新でとても魅力的です。

sorano

衝撃を受けました

ベテルギウス。まずそれに注目する感性もですが、詩の内容が衝撃。 猫。木。家族。犬(のようなもの)。女の子……。など、身近にあふれている極めて馴染み深いものベテルギウスというスケールの大きいものと対比されているように感じられました。

二酸化窒素

ずっと待っていた

渇いた心を満たす雨に満たされていく

afterglow



作品を
別枠表示

ハーメルンの斑な笛吹き The Pied Piper of Hamelin    

Dramatic Lyrics ハーメルンの斑な笛吹き The Pied Piper of Hamelin 童話 A CHILD’S STORY. (W.M.の若君のために書かれ、これに献ず。 Written for, and inscribed to, W. M. the Younger.) Robert Browning I.  ハーメルンの街はブランスウィックに、 かの有名なハノーバー市のそばに。  ヴェーザーの川、深くも広く、  南側に立つその壁洗う、  またとあるまい愉快な地。 そこに我が歌始めると、  概ね500年ほど前、  民草いたく悩めるを見る  害獣により、憐れにも。  HAMELIN TOWN’S in Brunswick, By famous Hanover city;  The river Weser, deep and wide,  Washes its wall on the southern side;  A pleasanter spot you never spied; But, when begins my ditty,  Almost five hundred years ago,  To see the townsfolk suffer so   From vermin, was a pity. II.   鼠共! 犬を蹴散らし猫をも殺し、  揺りかごに休む赤子に噛みつき、  桶から零れたチーズを喰らう、   料理の匙からスープ舐め取る、 魚の小樽も割り開き、  旦那の帽子は巣にされた、  主婦のおしゃべり聞こえない   語るところに重なって   金切り声にチューチュー鳴き声 50も違った声色で。    Rats! They fought the dogs and killed the cats,  And bit the babies in the cradles,  And ate the cheeses out of the vats,   And licked the soup from the cooks’ own ladles, Split open the kegs of salted sprats,  Made nests inside men’s Sunday hats,  And even spoiled the women’s chats    By drowning their speaking    With shrieking and squeaking In fifty different sharps and flats. III. とうとう民衆一体となり  襟を正して役場に詰めかけ 「明らかに」と皆叫ぶ、「うちの市長は抜作だ。」  「加えて我等の議員達は……腰抜けだ。」 「オコジョのガウンを我等が買ってやるのか  決断できずしようともしない間抜け共に  害獣駆除に何すりゃ良いかと!  歳食って恰幅良いから願うのか、  ぬくぬくと毛皮纏える市民で居たいと?  目を覚ませ、各々方!ついてる頭を絞れ  策を見つけろ、我等になかった、  さもなければ覚悟しろ、お前ら全員押し込んでやる!」 これには市長も議員たちも 周章狼狽、震え戦くばかり。 At last the people in a body  To the Town Hall came flocking: “’Tis clear,” cried they, “our Mayor’s a noddy;  “And as for our Corporation—shocking. “To think we buy gowns lined with ermine “For dolts that can’t or won’t determine “What’s best to rid us of our vermin! “You hope, because you’re old and obese, “To find in the furry civic robe ease? “Rouse up, sirs! Give your brains a racking “To find the remedy we’re lacking, “Or, sure as fate, we’ll send you packing!” At this the Mayor and Corporation Quaked with a mighty consternation. IV. 皆で会議に1時間ばかり、  やっと市長が沈黙破り 「我がオコジョのガウンを1ギルダで売り、  1里も離れて居ったなら!  人の脳みそ貶すは容易く……  乏しき頭は痛むしかなく、  ない知恵絞るも、全て儚く。  罠を策をと、皆ちくちくと!」 こう言った途端、何が起きたか 議場の扉にコツコツと? 「すわっ、」と市長が叫ぶ、「何事?」 (議員と共に座っていたが、  驚異的デブが小さくなって。  その目に艶なく潤いもなく  口を開け過ぎた牡蠣より悲惨、  お昼に鳴り出す太鼓腹を養うは  緑色にねばつく亀の料理とか) 「靴をマットで拭ってただけ?  鼠か何かの物音みたいで  私の心臓ぴったぱったと!」 An hour they sat in council,  At length the Mayor broke silence: “For a guilder I’d my ermine gown sell,  “I wish I were a mile hence! “It’s easy to bid one rack one’s brain— “I’m sure my poor head aches again, “I’ve scratched it so, and all in vain. “Oh for a trap, a trap, a trap!” Just as he said this, what should hap At the chamber door but a gentle tap? “Bless us,” cried the Mayor, “what’s that?” (With the Corporation as he sat, Looking little though wondrous fat; Nor brighter was his eye, nor moister Than a too-long-opened oyster, Save when at noon his paunch grew mutinous For a plate of turtle green and glutinous) “Only a scraping of shoes on the mat? “Anything like the sound of a rat “Makes my heart go pit-a-pat!” V. 「入り給え!」と市長は呼んだ、尊大に。 して入ってきたのは、なんと超ド派手な出で立ち! 頭から踵まで伸びたロングコートは 半分黄色く半分真っ赤、 その体つきは背高く痩せぎす、 鋭く青い目、画鋲のよう、 伸ばしたなりの明るい髪に浅黒い肌、 頬に房なく顎にも髭なく、 口元に笑みが行ったり来たり 親類縁者は思い当たらず 誰ひとりよく感心できず のっぽな男の風変わりな服に。 一に曰く「まるでうちの曾祖父さんが、  秘法『審判』のラッパの音に動き出し、  塗り直した墓石から此方へ歩いてきたような!」 “Come in!”—the Mayor cried, looking bigger: And in did come the strangest figure! His queer long coat from heel to head Was half of yellow and half of red, And he himself was tall and thin, With sharp blue eyes, each like a pin, And light loose hair, yet swarthy skin, No tuft on cheek nor beard on chin, But lips where smiles went out and in— There was no guessing his kith and kin: And nobody could enough admire The tall man and his quaint attire. Quoth one: “It’s as my great-grandsire, “Starting up at the Trump of Doom’s tone, “Had walked this way from his painted tombstone!” VI. 議場を進んで壇上に立ち 「どうか皆様ご清聴」と、「僕にはできます、」 「とある秘密の魔法を使って、連れて行くのが。  陽の下に生ける生き物全て、  地を這う、泳ぐ、翔ぶ、走るものを  我が後に、見た事もないように!  特に我が魔法使えるは  人々害する生き物に、  モグラやヒキガエルや毒蛇やらに。  人呼んで斑の笛吹き、ここに参上。」 (ここに至って皆が男の首元見れば  スカーフ巻くは赤と黄色の縞模様、  そっくりそのまま外套にもある縞四角。  そのスカーフの端に笛吊るし。  男の指先、見るからに落ち着かぬ様子、  吹いていたいと言わんばかりに、  この笛近く、揺蕩うように  甚だ古風な服の上から。) 「まだまだ拙い笛吹きながら、  タタールではカーンを解放しました、  この6月、生じた虻の大群から。  アジアではニザームを慰撫、  化け物じみた吸血コウモリの1団から。  それで当惑されているとは存じますが、  もしこの街の鼠を僕が一掃できたなら、  1千ギルダばかり頂戴できますか?」 「1?50でも!」との感嘆が 圧倒された市長と議員たちから。 He advanced to the council-table And, “Please your honours,” said he, “I’m able, “By means of a secret charm, to draw “All creatures living beneath the sun, “That creep or swim or fly or run, “After me so as you never saw! “And I chiefly use my charm “On creatures that do people harm, “The mole and toad and newt and viper; “And people call me the Pied Piper.” (And here they noticed round his neck A scarf of red and yellow stripe, To match with his coat of the self-same cheque; And at the scarf’s end hung a pipe; And his fingers, they noticed, were ever straying As if impatient to be playing Upon this pipe, as low it dangled Over his vesture so old-fangled.) “Yet,” said he, “poor piper as I am, “In Tartary I freed the Cham, “Last June, from his huge swarms of gnats; “I eased in Asia the Nizam “Of a monstrous brood of vampire-bats: “And as for what your brain bewilders, “If I can rid your town of rats “Will you give me a thousand guilders?” “One? fifty thousand!”—was the exclamation Of the astonished Mayor and Corporation. VII. 歩める笛吹き、通りにあって  微笑みまずは僅かに浮かべる、 眠る魔法を諳んじたのか  鳴らす前しばしの笛に。 して音楽の大家よろしく、 かの笛吹くに唇皺寄せ、 鋭い両眼青や緑に瞬くは、 塩を振った蝋燭の火さながら。 してかの笛、高音きりきり三発するや 軍勢の囁くかに聞こえ。 その囁き次第に呟きとなり。 その呟きやがてゴロゴロ畏るべく鳴り。 遂に家々から飛び出す鼠共の鳴り響む。 大きな鼠、小さな鼠、鍛えた鼠、逞しい鼠、 茶色い鼠、黒鼠、灰色鼠、褐色鼠、 よぼよぼ歩きの年寄りに、若く陽気な暴れん坊、  父親、母親、叔父叔母、従兄弟、 尻尾突っ立て、ひげ生やし、  10や12の家族ごと、 兄弟姉妹、夫に妻、…… かの笛吹きに従うさま見事。 通りから通りへ笛吹き進めば 一歩一歩と連れ立ち踊って ヴェーザーの川に至るや そこに皆落ち、群れ全滅! ……1匹除くはジュリアス・シーザーな鼠 泳ぎ渡って辛くも逃げ延び (同じく大事に原稿抱えて) 鼠の国に、意見して言う 「高音きりきり鳴った最初は、  胃が縮むような唸りに聞こえた、  それがよく熟したりんごを突っ込む  圧搾機のきしみみたいになった。  そして漬物桶の蓋を引きずるみたいな、  ジャム置き棚を閉めかけたみたいな、  油瓶一列の栓を次々抜くみたいな、  バター樽の箍が弾けるみたいな音に。  そして声がしたみたいな (琴や琵琶よりもずっと甘く  密やかに)呼ばわって、『鼠たちよ、喜ぶがいい!  世界は大いなる食料品店となった!  むしゃむしゃ、ぼりぼり、お八つ召せ、  朝食、夕食、お昼召せ!』  そして巨大な砂糖の大樽のようなものに  穴を開ける準備ができて、偉大な陽の光のように  輝かしい貴重品がほんの目の前に来て、  こう言われたような気がした、来れ、孔を穿て!と。 ……気がつくとヴェーザーの波を被っていた。」 Into the street the Piper stept,  Smiling first a little smile, As if he knew what magic slept  In his quiet pipe the while; Then, like a musical adept, To blow the pipe his lips he wrinkled, And green and blue his sharp eyes twinkled, Like a candle-flame where salt is sprinkled; And ere three shrill notes the pipe uttered, You heard as if an army muttered; And the muttering grew to a grumbling; And the grumbling grew to a mighty rumbling; And out of the houses the rats came tumbling. Great rats, small rats, lean rats, brawny rats, Brown rats, black rats, grey rats, tawny rats, Grave old plodders, gay young friskers,  Fathers, mothers, uncles, cousins, Cocking tails and pricking whiskers,  Families by tens and dozens, Brothers, sisters, husbands, wives— Followed the Piper for their lives. From street to street he piped advancing, And step for step they followed dancing, Until they came to the river Weser, Wherein all plunged and perished! —Save one who, stout as Julius Csar, Swam across and lived to carry (As he, the manuscript he cherished) To Rat-land home his commentary: Which was, “At the first shrill notes of the pipe, “I heard a sound as of scraping tripe, “And putting apples, wondrous ripe, “Into a cider-press’s gripe: “And a moving away of pickle-tub-boards, “And a leaving ajar of conserve-cupboards, “And a drawing the corks of train-oil-flasks, “And a breaking the hoops of butter-casks: “And it seemed as if a voice “(Sweeter far than by harp or by psaltery “Is breathed) called out, ‘Oh rats, rejoice! “The world is grown to one vast drysaltery! “So munch on, crunch on, take your nuncheon, “Breakfast, supper, dinner, luncheon!’ “And just as a bulky sugar-puncheon,、 “All ready staved, like a great sun shone “Glorious scarce an inch before me, “Just as methought it said, Come, bore me! “—I found the Weser rolling o’er me.” VIII. よく聞こえたことだろう、ハーメルンの人々が 教会の尖塔も揺れよと鳴らす鐘の音。 「行け、」と市長は叫ぶ「物干し竿とか持ってこい、  巣をつつき出して穴を塞ぐんだ!  大工や棟梁たちと相談しろ、  この街から跡形一つも残さぬように、  鼠共の!」その時ひょっこり顔を 上げたは、広場を沸かせた笛吹き男 「さて皆様如何でしょう、僕の値段は1千ギルダ!」とか何とか。 You should have heard the Hamelin people Ringing the bells till they rocked the steeple. “Go,” cried the Mayor, “and get long poles, “Poke out the nests and block up the holes! “Consult with carpenters and builders, “And leave in our town not even a trace “Of the rats!”—when suddenly, up the face Of the Piper perked in the market-place, With a, “First, if you please, my thousand guilders!” IX. 1千ギルダ!市長は一気に青ざめた、 議員達とて御同様。 会議の晩餐まず恙無く 並べたワインはクラレットにモーゼル、グラーヴ、ホックと。 予算の半ばで満たすに足りよう セラー最大の樽にラインワインを。 これを合わせた金を払えと、宿無しの奴に ジプシーみたいな赤と黄色の服着た奴に! 「さてさて」宣う市長は曰くありげに目配せくれて、 「我等の仕事はかの川の淵に成された、  我等はこの目で害獣沈めるを見た、  死んだものが生き返ることもあるまいて。  ゆえ友よ、我等萎縮せるものには非ず  そなたに何か飲み物を与える義務から、  そなたの袋に入れる路銀のことから。  しかしギルダに関しては、我等話したこと  あれは、君もよくよく判っているように、冗談に過ぎぬ。  しかも我等は損失により、倹約せざるを得なくなった。  1千ギルダとは!それ、50をやろう。」 A thousand guilders! The Mayor looked blue; So did the Corporation too. For council dinners made rare havock With Claret, Moselle, Vin-de-Grave, Hock; And half the money would replenish Their cellar’s biggest butt with Rhenish. To pay this sum to a wandering fellow With a gipsy coat of red and yellow! “Beside,” quoth the Mayor with a knowing wink, “Our business was done at the river’s brink; “We saw with our eyes the vermin sink, “And what’s dead can’t come to life, I think. “So, friend, we’re not the folks to shrink “From the duty of giving you something for drink, “And a matter of money to put in your poke; “But as for the guilders, what we spoke “Of them, as you very well know, was in joke. “Beside, our losses have made us thrifty. “A thousand guilders! Come, take fifty!” X. 笛吹きの顔は曇った、そして怒鳴った 「下らないことを!それに僕は、待っては居れない!  晩餐の時間までに行くと約束したんだから  バグダッドに。最高のを頂くんだから  料理長のポタージュを。財産すべてを  残して死ぬところだった、カリフの厨房で、  蠍の巣1つを1匹残らず始末したので……  安売りはしないと彼にも教えたのに  あなたときたら、鐚一文負けてやるものか!  災いあれ我が怒り煽る者共に、  見よ高らかに鳴る笛の恐ろしきを。」 The Piper’s face fell, and he cried “No trifling! I can’t wait, beside! “I’ve promised to visit by dinnertime “Bagdat, and accept the prime “Of the Head-Cook’s pottage, all he’s rich in, “For having left, in the Caliph’s kitchen, “Of a nest of scorpions no survivor— “With him I proved no bargain-driver, “With you, don’t think I’ll bate a stiver! “And folks who put me in a passion “May find me pipe to another fashion.” XI. 「ほほう?」市長は怒鳴り返した、「許されるとでも、  儂を料理人風情より貶めるのが?  ぐうたらな下衆に侮辱されるのか  いんちき笛持つだんだら服の?  脅かすつもりか貴様?やってみろよ、  ぶっ壊れるまで笛でも吹いてろ!」 “How?” cried the Mayor, “d’ye think I brook “Being worse treated than a Cook? “Insulted by a lazy ribald “With idle pipe and vesture piebald? “You threaten us, fellow? Do your worst, “Blow your pipe there till you burst!” XII. 今一度男は通りを歩み  またしても唇すぼめるや 滑らかな直杖よろしく長い笛構え  吹く音は三発(ごく甘やかに 柔らかい音色はプロの音楽家ですら中々  そこまでうっとりした空気にはできぬほど) ざわめきしたのは、何か賑わいのようだった お祭り騒ぎに色々投げ出し押し合い圧し合いするような、 小さな足がパタパタと、木靴もカタカタいうような、 可愛い両手がパチパチパチと、可愛い舌がぺちゃくちゃ言うような、 そして麦の穂バラバラになった農場の鳥のような、 出てきた子供たちがかけっこするような。 可愛い男の子たちに女の子たち全員、 バラ色の頬と亜麻色の髪をして、 きらめく目と真珠のような歯を見せて、 ウキウキらんらん、陽気に続いて走って 素晴らしい音楽に、キャッキャウフフして。 Once more he stept into the street  And to his lips again Laid his long pipe of smooth straight cane;  And ere he blew three notes (such sweet Soft notes as yet musician’s cunning  Never gave the enraptured air) There was a rustling that seemed like a bustling Of merry crowds justling at pitching and hustling, Small feet were pattering, wooden shoes clattering, Little hands clapping and little tongues chattering, And, like fowls in a farm-yard when barley is scattering, Out came the children running. All the little boys and girls, With rosy cheeks and flaxen curls, And sparkling eyes and teeth like pearls, Tripping and skipping, ran merrily after The wonderful music with shouting and laughter. XIII. 市長は口も利けなくなる、議会の者は突っ立ったまま 木の塊にでもなったみたいな、 一歩も動けず、呻きもせずに 愉しげに跳ねる子供たちの側に…… 目だけついていくのがやっと 笛吹きについていく愉しげな集団に。 どんな台に市長が上がろうと 哀れな議員の動悸がしようと知らぬ気に 笛吹きは大通りから向きを変え ヴェーザーが逆巻く方へと正に 息子たち娘たちを持って行くのでは! と思いきや南から西へと曲がり コッペルベルクの丘へと歩を向けた ぎゅうとその背に子供たち、 喜びふくらむ皆の胸。 「奴とてあの高嶺は越せまいて。 吹いてる笛は落っことすしかなく、 子供たちも止まるに違いない!」 時に見よ、山の麓に皆達したところで、 不思議な大門広く口を開く、 いきなり洞穴でもくり抜かれたかのように。 そこに笛吹きが進み、子供たちが続く。 そして最後の者まで全員入ると 山腹のドアはさっと閉まってしまった。 全員と言ったかな?違う!1人足萎えの子が、 踊れず全然ついて行けなかったのだった。 後になって、しょげ込む彼に何か文句を 言おうものなら、つくづくとぼやくこと 「遊び仲間が居なくなって、つまらないよこの街は!  もう気になってどうにかなりそうだよ  みんなが見ている愉快な光景全てが、  笛吹きが僕にも約束したものが。  彼は僕等を誘って言ったよ、喜びの土地に、  町に来ないかと、こう、手を差し出して。  そこでは泉湧き出し果物の樹が育ち  花に現れる色合いは妖精さながら、  すべてが見た事もなく新しく。  スズメがここでは孔雀より華麗、  犬は此方のダマジカより速く走り、  ミツバチは針も持たなくなって、  産まれる馬は鷲の翼持つ。  そして僕を安心させるように  この動かない足もすぐに治るでしょうと。  笛の音が止んで、僕は取り残された、  気がついたら丘の外に居たんだ、  心ならずも一人ぼっちにされて。  だから未だにびっこ引き引き歩いてる、  あの国のことはそれからもう聞いたことがないよ!」 The Mayor was dumb, and the Council stood As if they were changed into blocks of wood, Unable to move a step, or cry To the children merrily skipping by— And could only follow with the eye That joyous crowd at the Piper’s back. But how the Mayor was on the rack, And the wretched Council’s bosoms beat, As the Piper turned from the High Street To where the Weser rolled its waters Right in the way of their sons and daughters! However he turned from South to West, And to Koppelberg Hill his steps addressed, And after him the children pressed; Great was the joy in every breast. “He never can cross that mighty top! “He’s forced to let the piping drop, “And we shall see our children stop!” When, lo, as they reached the mountain-side, A wondrous portal opened wide, As if a cavern was suddenly hollowed; And the Piper advanced and the children followed, And when all were in to the very last, The door in the mountain-side shut fast. Did I say, all? No! One was lame, And could not dance the whole of the way; And in after years, if you would blame His sadness, he was used to say “It’s dull in our town since my playmates left! “I can’t forget that I’m bereft “Of all the pleasant sights they see, “Which the Piper also promised me. “For he led us, he said, to a joyous land, “Joining the town and just at hand, “Where waters gushed and fruit-trees grew “And flowers put forth a fairer hue, “And everything was strange and new; “The sparrows were brighter than peacocks here, “And their dogs outran our fallow deer, “And honey-bees had lost their stings, “And horses were born with eagles’ wings: “And just as I became assured “My lame foot would be speedily cured, “The music stopped and I stood still, “And found myself outside the hill, “Left alone against my will, “To go now limping as before, “And never hear of that country more!” XIV. 哀れなるかな、ハーメルン!  街住み連中の頭に去来するのは  天国の門は、とある文が語るには  金持ちにも容易く開くものと ラクダが針の穴を通れる程度には! 市長は東西南北に人を遣る、 笛吹き捜すに、口説すべく  どこであろうと見つけた人には 心に思う金銀をと。 もしや男が通り道を引き返すなら、  子供たちを連れて来てくれたなら、と。 しかし、彼等の努力は空振ったまま、 笛吹きと踊る子供たちは永遠に去ったと見るや、 皆で法曹に対し1つの布告発した  正式に物事を記録する日付はかくなければと 当日のその年月日の後に、 次の数語を置かざること罷りならずと。 「1376年の  7月22日に  ここで起こった事からどれだけ経ったか」 そして、より良く記憶に刻んでおくために 最後に子供たちが出ていったところを 名付けて呼ぶに、斑なる笛吹きの通りと。 そこでは誰でも笛や太鼓を鳴らすなど したが最後、その勤めを失うものと 宿屋や酒場の類は申すまでもなく  静粛なる街路に浮かれ騒ぎ有るまじく それはそれとし、かの洞窟の場所に向き合って  この物語は柱に書かれた、 大きな教会の窓にもまた描かれた 同じように、世界中によく知らしめんと どのように子供たちが連れ去られたかと、 それ今日なおも、そこに立つものと。 そしてこれは言っておかねばなるまい トランシルヴァニアに住む部族の1つは 外国人に由来すると見られる 風変わりな風習服装を持つ そのことで隣人たちの強調するには、 その祖先が嘗て上ってきたとか 地下の牢獄か何かから 罠に嵌められ入っていたのが はるか昔に大いなる1団となり ブランズウィックの国にあるハーメルンの町から。 しかしなぜ、どのようにかは、彼等もわかっていないとか。 Alas, alas for Hamelin!  There came into many a burgher’s pate  A text which says that heaven’s gate  Opes to the rich at as easy rate As the needle’s eye takes a camel in! The mayor sent East, West, North and South, To offer the Piper, by word of mouth,  Wherever it was men’s lot to find him, Silver and gold to his heart’s content, If he’d only return the way he went,  And bring the children behind him. But when they saw ’twas a lost endeavour, And Piper and dancers were gone for ever, They made a decree that lawyers never  Should think their records dated duly If, after the day of the month and year, These words did not as well appear, “And so long after what happened here  “On the Twenty-second of July, “Thirteen hundred and seventy-six:” And the better in memory to fix The place of the children’s last retreat, They called it, the Pied Piper’s Street— Where any one playing on pipe or tabor Was sure for the future to lose his labour. Nor suffered they hostelry or tavern  To shock with mirth a street so solemn; But opposite the place of the cavern  They wrote the story on a column, And on the great church-window painted The same, to make the world acquainted How their children were stolen away, And there it stands to this very day. And I must not omit to say That in Transylvania there’s a tribe Of alien people who ascribe The outlandish ways and dress On which their neighbours lay such stress, To their fathers and mothers having risen Out of some subterraneous prison Into which they were trepanned Long time ago in a mighty band Out of Hamelin town in Brunswick land, But how or why, they don’t understand. XV. さればウィリーよ、君と僕とは身綺麗に在らん その勘定方はどんな人にも、…殊に笛吹きとか。 笛吹き追い払えるがドブネズミであろうとハツカネズミであろうと、 何事であれ約束したなら、その約束は守らねばな。 So, Willy, let me and you be wipers Of scores out with all men—especially pipers: And, whether they pipe us free from rats or from mice, If we’ve promised them aught, let us keep our promise.


ハーメルンの斑な笛吹き The Pied Piper of Hamelin ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 5
P V 数 : 1201.8
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 3

作成日時 2020-06-19
コメント日時 2020-06-25
項目全期間(2024/04/26現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ22
技巧11
音韻00
構成00
総合ポイント33
 平均値  中央値 
叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ11
技巧0.50.5
音韻00
構成00
総合1.51.5
閲覧指数:1201.8
2024/04/26 09時22分33秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。

    作品に書かれた推薦文

ハーメルンの斑な笛吹き The Pied Piper of Hamelin コメントセクション

コメント数(5)
萩原 學
萩原 學
作品へ
(2020-06-19)

この有名な物語は諸説あり、ブローニングはNathaniel Wanley "Wonders of the Little World"に拠った。Piedとはカササギ(magpie)のように斑模様な服装を意味する。ハーメルンの教会にあったというステンドグラスの模写(Wikipedia)を参照。なお、ステンドグラスの記述では1284年6月26日の事、笛吹き男は「色とりどりの衣装で着飾った」とされている。 このバラッドは1842年春、William Macready の求めに応じ、病床にあったその息子 Willie のために書かれたもので、発表予定はなかった。詩人の妹 Sarianna がこれを写して Alfred Domett に見せたところ、非常に高く評価され是非とも新作に含めるよう強く勧められ、収録に至った。その描写は終始、魔術的雰囲気にあり、当時の詩人の趣味が窺える。詩人は後年、妻を霊媒が騙すところを見て一気に冷めてしまうのだが。 Brunswick:ドイツ語読みで「ブラウンシュヴァイク」。ブラウンシュヴァイク公家が1277年に守護職の権利を得て後、ハーメルンはブラウンシュヴァイク公国に属した。そもそもハーメルンはフルダ修道院の所領に属したものを、12世紀から13世紀にかけてエーフェルシュタイン伯家に実権を奪われた。ハーメルンの支配権を見限ったフルダ修道院は1259年、ミンデン司教区に売り飛ばし、ケルン大司教に認められた。これに反発したエーフェルシュタイン伯家およびハーメルン市が1260年、ミンデン司教軍とゼーデミューンデに戦い、ハーメルン市民軍は壊滅。捕虜はミンデン司教区に連行され処刑。ミンデン司教区は戦後、エーフェルシュタイン伯家と対立したブラウンシュヴァイク公家にハーメルンの禄を与え、ここにブラウンシュヴァイク公が登場。つまり連れ去り事件は権力の移行期に起きた訳である。 Rats!:鼠については、実は当初の記録になく、1559年以降に付け加えられたと判明している。黒死病の最初の流行は1347-1351年。 ermine:オコジョの毛皮。英国王室御用達にも定められた高級品で、裁判官や貴族が正装に用いた。ここでは政治家の法服を指すが、ブラウンシュヴァイク公国で通用したかは定かでない。 Corporation:英国では自治体の議会を言う。 trap :「罠」であり「計略」であり「窮状」であり「口」でもある。いずれとも読み取れる。 pit-a-pat:本邦では「ドッキドキ」という辺りだが、それだと韻が踏めない。 great-grandsire: sire はラテン語 senior に由来する古い言葉で「先達」ここでは「父親」を意味する。この曾祖父の趣味がアヴァンギャルドであったのか、笛吹き男が死霊に見えたのかは語られていない。 Trump of Doom’s tone:『ヨハネの黙示録』では7人の使徒がそれぞれラッパを吹き、「最後の審判」が始まる。タローカードの大アルカナ(=Trump)第20『審判』は、その思想を承けてラッパを吹く大天使を描き、その音に死者も墓から蘇る。ブルトンの詩集Arcane 17 を訳して『秘法17』とする例に倣った。 painted tombstone:欧米の墓は一般的に、復活を願って土葬し、墓石が傷んできたら塗り直すものであった。 self-same:言及済みのものと同じであることを言う。 cheque:checkに同じ。neck と韻を踏むため、pied に代えてこの語により市松模様を指す。ファッションとしては、Checkeredが規則正しい格子縞、Checkedは不規則でも四角に区切られたパターン全般といった違いがある。 pipe:パンパイプなどの縦笛。パンパイプはギリシア神話の牧神パーンが使ったというほど古い歴史と魔術性を備え、日本では排簫と呼ばれた。モーツァルトのオペラ『魔笛』に登場する笛もパンパイプ。そのネタとなった欧州の古い伝承では、魔法の笛を聞いた誰もが踊り出す。魔法なので止まらない。 Tartary:モンゴルやテュルクを欧州ではタタールまたはタルタルと呼んでおり、この語は『韃靼』『たたら』に当たる。元は突厥が諸部族を総称したテュルク語。後にタタルを自称する部族も現れ、これが欧州に知られたもので、蔑称ではない。 Nizam :インドにあったムガル帝国の一部が独立した国の君主。王号は称さずニザーム(統治者)と名乗り、その国はニザームの国あるいはハイダラバードのニザームと呼ばれた。 three shrill notes: 3 はフリーメイソンの聖数。オペラ『魔笛』の台本は、その世界観に合わせるため、かなり無理をしている。 muttering;grumbling;rumbling;tumbling:いずれも「(不平不満の)呟き」「(雷が)ゴロゴロいう」の意味があるのを段階的に使い、その音が次第に大きくなるのを表す。 dancing :聞く者を踊らせるのは、魔法の笛本来の効能。物語によってはヴァイオリンに置き換える。 Julius Csar:シーザー"Caesar"の綴りを一部略。ラテン語読みで「ユーリウス・カエサル」。記録魔だったカエサルは、アレキサンドリアの船上に敗れた時も、書類のみを抱えて泳ぎ逃れた。一説にそれが『ガリア戦記』原稿だったとも。カエサルの故事はラテン語初心者の教科書に使われ、Willie 少年もこれを知っていたらしい。 psaltery:ツィターに似た昔の弦楽器。drysaltery と押韻。 drysaltery:英国に昔あった薬局を兼ねた乾物屋。 nuncheon:軽い飲食物を指す古語。 All ready staved:初出では"R eady staved"。何を以て ready とするかは定かでない。人が樽を開けるにはバールのようなものを用意するが、鼠は歯を以て齧るのみ。 A thousand guilders! :夜の女王が悪役へ転じるように、市長は支払いにあたり豹変する。以下その強欲が描かれるものの、マッチポンプを疑うようでもある。 Grave:ボルドーワインの産地。当時の名声は今のメドックに匹敵する。 Hock:ラインガウのワインをいう。 To pay this sum:約束した1,000ギルダとは、議会の大晩餐会に銘酒をもれなく列べた上に、(安酒用の)大樽にも銘酒を蓄える予算に匹敵する大金だ(そんなの支払えるか)と言っている。 Bagdat:ハーメルンからバグダットまで4,600km。魔術師としての異能を強調している。が、余計に嘘つきにも見える。 scorpions:蠍は古くから食材としても利用されてきたが、残念ながらそういう話ではない。物陰に潜む奴等と穴を掘る奴等に分かれるが、穴を掘るタイプにしても一つの巣にうじゃうじゃ群れるわけではない。 stiver:オランダで使われた最低の硬貨。ダッチ・ギルダの1/20 。 to another fashion:初出は"after another fashion"。「物事の違った側面」とすると訳語が嵌らないので意訳する。決まり文句か呪文にも見える。 “With idle pipe - :強欲な市長が胡散臭い笛吹き男を怪しむ。七つの大罪を制覇しそうな市長はこれで唯一、この物語に於て血の通った人物となっている。 long pipe of smooth straight cane:cane は籐杖を指すので、詩人は杖を笛にしたようなものを想像したようだ。パンパイプは葦や竹で作るので、案外間違っていない。 There was a rustling that seemed like a bustling:ここから始まる ling 祭りは訳出困難、しかし勢いばかりで意味はあまり無いようだ。 The wonderful music with shouting and laughter.:Led Zeppelin "Stairway to Heaven"は、この行と次の節を変形して引用する。 on the rack:rack は「棚」「台」に当たるが、the rack というと「拷問台」を意味した。 portal:今ではWorld-Wide Web 上の一サービスとして知られるこの言葉は、元来『キエフの大門』のような正式の門または入口をいう。 cavern:鍾乳洞などの洞窟をいう。tunnel とはしておらず、照明など装備も持たず、ワープゲートの1種を想定したようだ。 he was used to say,—:居残った子の話はグリム童話に類似し、より古い記録には無い。付加された可能性が高いにも関わらず、「此処より住みよい異邦の地」を語るところは、実際に行われたであろう宣伝工作を彷彿させる。 As the needle’s eye takes a camel in!:マタイによる福音書19章24節「また、あなたがたに言うが、富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい』。」 their records dated duly:正式な記録について日付の起点を定めたとは、ここで改暦したことを意味する。実際、ハーメルンの記録はこの事件から始まっており、これが政変劇であったことを示している。 “On the Twenty-second of July,“Thirteen hundred and seventy-six:”:1376年7月22日という日付はWanleyではなく、その引用元 Richard Verstegan "A Restitution of Decayed Intelligence in Antiquities"に拠る。語呂の良さを採ったらしい(W & K)。ヴェルステガンの同書は、ハーメルンの笛吹き男を紹介した、英語では最初の本。但し典拠不明。 trepanned:caught in a trap (W & K) So, Willy,:最初と最後に話し手が登場するのは、物語詩であるバラッドの特徴。ここでは私信を兼ねた。 さて史実はどうだったか。1260年のゼーデミューンデ戦にハーメルン市民軍が敗れたとき、親を喪った子が多数出たであろう。1284年に連れ去り事件が起きたなら、あるいは30歳を過ぎ、既に要職に居たかもしれない。そんな彼等が、親の仇と繋がったブラウンシュヴァイク公を歓迎したとも思えない。 一方、新品の服を誂える事が贅沢だった時代にあって、色とりどりの柄に着飾るのは、相当の富あるいは権力の存在を暗示する。加えて当時は lokator と呼ばれる移民斡旋者が、権力者の意向を受けて各地を回っていた。というのはさて置くとしても、大掛かりなエクソダスを実行するなら、よく目立つ者を先行させないと迷子も出るであろう。 この事件でブラウンシュヴァイク公の支配権が確立した以上、出ていったのは旧支配層に属した旧勢力の筈。しかも当時のハーメルンは城塞都市だったから、門番までもグルになっていないと出ることも叶わない。実際は低年齢層ではなく市長以下、働き盛りの労働力が中心となり、何らかの外部勢力と繋がったからこそ、大脱出が成功し新支配者に痛手を与え、記録されるに至ったと考えられる。旧勢力の怨念を聞く気がするのは、訳者だけであろうか?

0
白目巳之三郎
作品へ
(2020-06-20)

これだけ長い詩の翻訳、お疲れ様です。よくやるわなとため息をもらしてしまいました。 この詩の不思議な所は、街の大人たちが最初に登場してから全く出てこなくなるところだと思って、そう考えると確かに、街の大人たちは旧勢力の人々であり、それの象徴として子供たちが出てきて、街から出ていくという流れになっていると思えなくないところがあるなあと感じました。 このお話がいまだにどこか人々を引き付ける部分があるのは、私は様々な物語の混成体であるというところに原因があるような風にも思っています。まず、私はこのお話を聞くと、理由があるという訳ではないのですが、『屋根の上のバイオリン弾き』の映画を思い出してしまい、どこかユダヤ的なエッセンスが組み込まれているようにも感じています。 また、久しぶりにこのお話を考えて思ったのは、ギリシャ神話のヘルメスとの関連です。ゲーテがこのお話を描く時にハーメルンの笛吹きの楽器を竪琴に変えたのはおそらくヘルメスとアポロンの物語の影響下に私はあると考えていて、その後ヘルメスはヘルメス・トリスメギストスと形を変えることを思えば、魔術的なニュアンスが物語の中に加えられていくのも個人的には合点がいくところです。かなり深い部分で、当時の魔術や錬金術の観念と結びついているはずだと邪推しています。 でも、やはり、このお話がなぜか私にとっては決して悪い話ではないような気がしてしまうのは不思議な所です。取り残される子供がいる、というのも面白く、彼らが身体的な障害を持っているというのも、今風な観念で短絡的に考えるとハーメルンの笛吹きから差別的な扱いを受けていると思えるところでもあるのですが、逆にそれでよかったのかもしれない、つまり、彼らは決して不幸だとは言い切れないと考える思考が心の片隅に残ります。 約束を破ると罰されるという神話は考えてみたらいわゆる見るなのタブーによくある神話な気もしていて(イザナギとイザナミの神話や聖書のロトの妻の話など)、なかでもオルフェウスの物語の見るなのタブー(ほぼイザナミとイザナミの物語と同じような話で)は面白いところであると思っています。オルフェウスはまず竪琴と関連づけられる人物であり、さらに彼の開いた宗教であるオルフェウス教の神話の中でザグレウスというゼウスを継ぐはずだった少年神のようなものが出て来ます。結局ザグレウスは殺されてしまい、人間がつくられる原因の一つとなるのですが、そのような流れを考えると、大枠ではハーメルンの笛吹きの物語はかつてギリシャ神話の中でゼウスを継ぐはずだったザグレウスの再生物語のようにも捉えられると、かなり曲解ですが妄想しました。そして残される子供たちはそれとは別に生きる人間の象徴、として現れている、つまり人間とは不完全で何か不具を抱えている、と言ったところでしょうか。 少々長くなりまして申しわけありません。いろいろと考える機会をいただけて、とても興味ぶかい内容でした。ありがとうございます。

0
萩原 學
萩原 學
作品へ
(2020-06-21)

最初の伝承が『魔法の笛』伝説を下敷きにするのは当然として、『出エジプト記』も混ざっているように思えます。『魔法の笛』自体、ギリシャ神話に由来する筈だけど、どうもパンパイプは一時期、欧州では忘れられていたようで。オーボエのような縦笛がステンドグラスには描かれていました。当時の笛は、今で言うリコーダーに近い縦笛が大半だったようなのですが。縦笛が廃れて後には横笛の絵も出てきたり。笛そのものの描写が曖昧なのは、その辺を後から作った話なのかも。 1箇所だけ触れたレッド・ツェッペリン『天国への階段』で冒頭に吹くのはリコーダーのようですから、パンパイプを知らなければそんなものかな。

0
羽田恭
作品へ
(2020-06-25)

予想以上の力作ぶりに驚きました。 ビーレビに投稿されたものの中でも有数の労力が投じられた作品ではないでしょうか。 あまりの力の入れようにおじけづいたのか、コメントが少ないのが残念に思います。 言えるのは一言、ご苦労様です。

0
エイクピア
作品へ
(2020-06-25)

第4章まで読んで、よく知られている話で、最後は笛を吹きながらの子供を大量に連れ去ってしまうと言う、こんな現象が本当に起こるのだろうかと言う議論は詩的には意味がないかもしれませんが、実際に類似した事件が起こって居る事を知れば、襟を正さざるを得ません。

0

B-REVIEWに参加しよう!

新規登録
ログイン

作品をSNSで紹介しよう→

投稿作品数: 1