あしびきの
山鳥の尾のしだり尾の
ながながし夜を ひとりかも寝む
うつし世に 変若水汲むところもなく
わが愛や誠実ごときにては
君の御身をば収むる範にあらず
今は亡き貴方に なお囚はるる我なり
酔ひ乱れて臥せど 傍に人影も見えず
さながら此処に座し給ふかと思ふほど
かの死拐の気を君は湛へ給へり
幾夜寝ざめつる 物気のたゆたひ
彼方の界の石榴を食みし君は
いかばかり艶に いかばかり美しからむ
貴方は 夜に咲散る花の如く
朧して とかく世の常ならず
露の身はここかしこにて消ゆるとも
心はひとつ 花のうてなのやうに
貴方を求むればこそ
かへって貴方を見失ひぬべし
売れぬ劇作の言もてる陳腐な台詞よ
貴方は これさへ陳腐と言はむか
いつしか干にけり みなの川
君はわが尺度の外へ赴き
人の理さへ跳び越えて
我が手の及ばぬほど遠くなりぬ
夜空の星にわが手及ばぬがごとし
貴方は生者には見えざる景色を見に往にけり
燃ゆる思ひを夜の水に流しつ
我は君を希ひ
もしや君 黄泉の岩戸を叩かば
ためらふことなく開け放ちてむ
瀬をはやみ
岩にせかるる滝川の
われても末に逢はむとぞ思ふ
いかなる結末の物語ともなりぬとも
ただ今宵 良宵ならばと願ふ
花の色は
移りにけりないたづら
わが身世にふる
ながめせしまに
作品データ
コメント数 : 13
P V 数 : 660.7
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-12-09
コメント日時 2025-12-12
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/14現在) |
| 叙情性 | 0 |
| 前衛性 | 0 |
| 可読性 | 0 |
| エンタメ | 0 |
| 技巧 | 0 |
| 音韻 | 0 |
| 構成 | 0 |
| 総合ポイント | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:660.7
2025/12/14 04時03分27秒現在
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これはまた力作ですね! 別れを詠んでいると思いますが、 >我は君を希ひ >もしや君 黄泉の岩戸を叩かば >ためらふことなく開け放ちてむ といった表現も秀逸です。 こういった作品はなかなか書きにくいでしょうけれど、また書いてほしいです。
1古典の美しさが身に染みます。 亡くなった「貴方」へのラブレターですね。 あなたへの恋しさとあなたのいない虚しさが、よく表現されていると思います。
1これほどにも死別が冷たくも美しいものかと 感じさせられた作品でした。 流れる様な言葉と共に 作中の主の悲しみが心へと 流れ込む感覚が作品へと没頭させられました。
1感想ありがとうございます。 ご指摘いただいた箇所は、少しひねりを加えたくて「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ」へと 自然に繋がるよう、二人を隔てる“岩”をモチーフにし古事記の要素を拝借して組み込みました。 まだまだ拙いところも多いと自覚していますが、これからも少しずつ書き続けていきたいと思っています。 また読んでいただければ幸いです。
0失礼、返答先を間違えました。 感想ありがとうございます。 ご指摘いただいた箇所は、少しひねりを加えたくて「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に逢はむとぞ思ふ」へと 自然に繋がるよう、二人を隔てる“岩”をモチーフにし古事記の要素を拝借して組み込みました。 まだまだ拙いところも多いと自覚していますが、これからも少しずつ書き続けていきたいと思っています。 また読んでいただければ幸いです。
0感想ありがとうございます。 古典の美しさや「貴方」への想いを感じ取っていただけたこと、とても励みになります。 これからも拙いながら言葉を紡いでいきたいと思いますので、また読んでいただければ幸いです。
1感想ありがとうございます。 死別の冷たさの中にも、どこか美しさを見いだせたと言っていただけて大変励まされます。 言葉の流れと共に、作中の心情を受け取ってくださったこと、とても嬉しく思います。 また読んでいただければ幸いです。 又、上記レモンさんへの返信をミスしています。連投になってしまうので直せません、申し訳ない。 ままならないものですね。
2私も百人一首は大好きです! 古文で書くとなぜこうも格調が高く美しい印象になるのですかね。 平安貴族のあの様式美な服と言葉の釣り合い、現代若者語なんかはティーシャツレベルかなあと感じます。このお話が創作でありますように。
1感想ありがとうございます。 百人一首がお好きとのこと、とても嬉しいです。 古文が格調高く感じられるのは、言葉そのものが美意識の上に練り上げられてきた歴史ゆえかもしれませんね。 平安の様式美に対して、現代語をTシャツにたとえるとは面白い比喩ですね。 この物語が創作であれと願ってくださったお気持ちにも、深く感謝します。 また読んでいただければ幸いです。
1柿本人麻呂~山口誓子~ これ、べつにケチ付ける気はないのだが、 作者名を最後に置くという、 必要はエチケットではないのかしらん?
1感想ありがとうございます。 細かい隅々まで読んでくださったようでご指摘ありがとうございます。 書き慣れていない身ゆえ、ご容赦ください。 以下、引用・参考にさせてもらった作者様です。 ・西行法師(小倉百人一首) ・柿本人麻呂(小倉百人一首) ・源兼昌(小倉百人一首) ・法然上人(御歌) ・陽成院(小倉百人一首) ・藤原実方朝臣(小倉百人一首) ・崇徳院(小倉百人一首) ・小野小町(小倉百人一首) ・その他多くの詩人から影響を受けています。 また読んでいただければ幸いです。
0死別を古文体で表現をしていて、泉鏡花の作品を彷彿してしまい、なんとも言えないノスタルジーと別れの痛さを切に感じました。 >売れぬ劇作の言もてる陳腐な台詞よ という箇所の「劇作」と「陳腐な台詞」という言葉がさっきまでの古文的文脈と対比していて何処か近代的な空気感を感じました。このバランスが癖に刺さり非常に良い作品だなと思いました。
1感想ありがとうございます。 泉鏡花を思い起こしていただけたとのこと、身に余るほど光栄です。 古文の質感のなかに、あえて「劇作」「陳腐な台詞」といった近代寄りの語を一点だけ置いたのは、時代の境目のような“ずれ”を作りたかった部分でそこに気付いていただけて本当にうれしく思います。 そのバランスを好ましく感じていただけたことが何より励みになります。 また読んでいただければ幸いです。
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