夏陽がじっくりと焦がす
白い坂道の曲がり角
大樹の木陰、繁り合う枝葉
セミの声
見上げる少年と虫捕り網
身体を揺らしながら
爪先立って手を伸ばす少年
ぼくは坂を下り
空の虫籠に
短い命を入れてやった
片手で押さえた麦藁帽子
ぼくを見上げる夏の顔
昆虫と引き換えに
ぼくが受け取った笑顔は
最上の贈り物だった
足早に坂をかけ上る少年
脇に挟んだ虫捕り網
揺れる虫籠
白い坂道
夏の日
いまはまだ大きく揺れる虫籠も
いつの日か、きっと
その紐が切れるぐらいに
重くなるだろう
そのとき少年は振り返って
坂道を下りてくる
腕は太くなり
胸は厚くなって
少年は、少年を越えた日に
坂道を下りてくる
そのとき彼は
大樹の陰に見るだろう
幼かった日の自分を
輝きに満ちた日を
懐かしいときを
世界がまだ自分より
ずっとずっと大きかった
あの頃を
あの日々を
あの夏の日を
夏と
少年と
白い坂道
ぼくのなかでは
何もかもが輝いていた
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 766.4
お気に入り数: 1
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2025-02-02
コメント日時 2025-03-06
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
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| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:766.4
2025/12/05 19時06分46秒現在
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人がその歩みを始める時に見上げる坂道は白くまだ何も書かれていない未知の世界ですね、きっと。 小さな命に目を輝かせていた子の虫籠を、成長と共に重たくするのは、責任だとかそんなありきたりなことしか思いつかないのですが、何でしょうその重さ故に今度は坂道を下り始める。 まあ、私くらいの年齢になるとこの詩の一言一言が胸に響きます。 こんな詩がさらりと書けるなんて本当にうらやましい限りです。
0BGMはもちろん井上陽水の「少年時代」で。
0お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
0この世界で恋愛よりも恋人よりも少年時代のさわやかと穢れなきほど美しいものはないと私は思います。
0ジリジリと汗が滲み出す暑さと強烈な光線を体に浴びなら、それを撥ねつけるように外遊びをした夏休みの一コマをまるで昨日のことのようにリアルな映像として思い出しました。
0万太郎さん、秋乃 夕陽さんへ お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。 この詩は実景を言葉にしたものです。 学生時代に坂道で見た光景を思い出して書きました。
1こんばんは。 まず、 正統的な詩に、背筋が伸びました。 少年が男性へと変わる時空的超越を、 「坂道」で上手に繋いでいる。 一言で言うなら、「人生だな」。です。 ありがとうございます。
0田中宏輔さんの漢気を感じる。そして少年は熊系男子にたくましく成長して、坂道を下りてくる…ソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤ…!!
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