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以上でも、以下でもない
あまりにも平成的だった僕は 令和になったから、精神病院に入ることにした 外の空気はすっかり取り替えられて 何年も前から僕は青い空を見ていないし 部屋の隅で塩漬けにされたように もう全くどこにもいけない予感が悲しくて 「僕のお父さんになってくれますか?」と言ったら、医師が苦笑いを返した 幼い物語は、僕の身体を驚くほど蝕んでいて 引き剥がそうとするとひどく痛かった 痛み止めの薬を飲んで部屋にいくと ラジオから久しぶりにアリストテレスの声がした 「ニャーオ、ニャーオ、ニャーオ」 「うふうふうふ」 「初恋の人は?」 「男の子だよ」 「気持ち悪いねえ」 「気持ち悪いかな?」 ぷつっ ここの患者は(患者なんだろう)誰も終末に怯えていなかった 僕が相対性理論が嫌いだと言ったら、すぐに取り外してくれるような そんな雰囲気があった 僕はこれでいいような気がした いつまでもここにいればいいと思った 病室のカーテンを開けたら、 ちゃんと雨がふっていた
以上でも、以下でもない ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2018.2
お気に入り数: 2
投票数 : 0
ポイント数 : 10
作成日時 2020-06-30
コメント日時 2020-07-05
項目 | 全期間(2024/12/10現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 10 | 10 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.3 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.7 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0.3 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3.3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
先ほどサイトへ登録し、今ほど作品を拝読しました。 「精神病院」というのがありがちだなあと呼んでおりましたら、言葉の置かれ方に驚きました。 今は自分が読んだ詩から得た感情を表現する言葉が欲しいです。 自分の体験をちょっと引きはがされて目の前に出されるようなそんな感覚を覚えました。
0沙一さん コメントありがとうございます。 今回は言葉が宙ぶらりんにならないように、慎重に書いたので そこを見ていただけて嬉しいです。 後はどうすれば詩になるのか、を考えて書きたいと思っています。
1かずやさん はじめまして。 最初に読んでいただいたんでしょうか。嬉しいです。 精神病院は素材としてはありがちですね(よく考えるとありがちではないと思いますが)。 できるだけ体験から書きたいと思っていますが、まだフィクションかもしれないです。
0獣偏さんへ 「精神病院」というのが、よくあるモチーフとして登場しているのか実体験として登場しているのかどっちだろうなと思いながら読んでいました。なぜそう思ったのかというと、冒頭二行がとても軽い言い回しだったからです。 そして最後の二行を読んで、冒頭二行はここまで軽くしないといられないということなんだろうなと思いました。自分自身を保つために。 “体験を書く”というとき、実際にあったことを事細かに書けばいいかというとそうではなくて、出来事を一度自分の中に取り込んで咀嚼してやがて吐き出されたものが作品としての強度を持つのではないかなと考えています。獣偏さんの今後の作品もたのしみにしています。
0言葉が足りずに失礼いたしました。 何と申しましょうか、自分の体験ではないのに知っていると申しましょうか、親しくないのに共感してしまうという。 全てが体験である必要はなく、表現として名前を使うのも構わないと思います。 そうした言葉が自分自身から溢れてくること自体がもう体験なのだから。 とそんなことを考えさせられました。 非常に好きな作品です。
0こうだたけみさん コメントありがとうございます。 精神病院の話は、体験としてはもうだいぶ前のことになるのですが 咀嚼して、揺るぎない詩に昇華するのはまだまだ時間がかかりそうです。 (そんなことばっかりですが)
0こちらこそ読み違えて申し訳ないです。 僕もそうであればいいと思います。深い部分で共感してもらえたとしたら、とても嬉しいです。
0以上でも、以下でもない-平均。 令和でも、昭和でもない-平成。その >幼い物語は、僕の身体を驚くほど蝕んでいて >引き剥がそうとするとひどく痛かった という二行で、アンチクライマクスのように読めないですね。 意識が、この "躁" の部分では内向的で、そうでない "鬱" の部分では外に向くのも共感できます。 その最たるものが冒頭の二行で、切れ味抜群と思います。
0アリストテレスのくだりが面白いですね。哲学者の名前を猫に付けている作家の事を思い出しました。
0鳴海幸子さん 僕は言いたいことを先に言ってしまう質ですね。 共感できる部分を見つけてくれてありがとうございます。 なんとなく精進したくなる、嬉しいコメントでした。
0エイクピアさん 僕は種々のものにアリストテレスと名付けています。
0好きです。前作の、秘密、も好きでした。でも、なんだろう、読み解きたいとか、コメントしたいって思わなくて、ただその空気感に、じっと立ち止まって、癒されていたいと感じますね。でも、コメントしないと伝わらないので、コメントいたします。応援しております。また、楽しみにしております。
0白川さん コメントありがとうございます。 あまりこういったことを語るのは野暮だと思いますが、僕は詩とは風景のようなものだと考えています。 水や土や空気があるように、意識も偏在しており、それが凝結したものが詩なのだと 僕はそのように思います。
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