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30480517 地球にさよならを   

作成日時 2018-10-22
コメント日時 2018-10-26

灰色の呼吸をして、僕は地球にさよならをした。 砂埃や赤土は君が生きていた名残だけど、君の声や肌触りを感じられないのなら僕にはどうでもいいや。この星で子供達が死んだのは君のせいでもないし、僕のせいでもないからね。とりあえずニュースペーパーを丸めてシリアルでも食べようか。 ダイエット・コーラを飲んでうなだれていたのは昨日の話。軍隊の砲弾は音を響かせて、赤子の眠りさえ妨げるけれど、彼らはきっと国を守っているんだ。だから。 仕方ない。 そう言えば昨日君が笑っていたシンガーの交通事故。相手は事故死しちゃったらしいね。道化が犯した少女はリストカットをした挙句、精神病棟に収監されたそうだ。秋雨の下、水溜りで跳ねまわる子どもの傍を戦車が進軍していく。ネットで人気の歌い手は鬱病で、夜は恋人の胸で泣いているそうだ。何やら悲しいことばかりだ。でもそれもこれもこの星を賑やかにして、話の種を生むためだから。 仕方ない。 僕は何か用事があったはずだけど、花屋で売っていたベゴニアが余りに綺麗だったものだから、見惚れて、家を出た用事も忘れて、そして。 もうどうでも良くなった。 何もかも。 子供番組を流しっ放しの部屋で、まだ若い母親は洗濯物を畳むのをやめた。傍にいる赤子はオモチャで遊ぶのにも飽きてしまったみたいだ。モニターの向こうの着ぐるみは陽気に振る舞っているけれど、着ぐるみの奥ではきっと人が一人泣いているんだろうね。インターフォンが鳴っても母親が動く気配はない。疲れてしまった。多分そうなんだろう。そしてただ。 それだけ。それだけのこと。 何だか悲しい話ばかりだ。君と一緒にいたのはついこの間だったはずなのに、もう君の手触りや体の温度を忘れてしまった。母に贈ったベゴニアも枯れてしまって、今は色づきや香りも失った。でも僕はもう未練もないし、悔いもない。涙を流すこともなくなったし、怪我をした足の痛みも感じることはない。だから。だから僕は。 地球にさよならをしたんだ。 灰色の息を吐き出して。 何の未練もなく。 地球にさよならを。


項目全期間(2020/01/23現在)投稿後10日間
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2020/01/23 21時27分25秒現在
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コメント数(19)
༺❦柿原 凛☂༻ (2018-10-22):

戦争をしていても実生活では平和なのにその平和を謳歌できないのならば何のためにさらなる平和を求めて戦争するのかっていうメッセージなのかなと思いました。

みうら? (2018-10-22):

本作を読んでわかった。ステレオ作品とは一体なんだろうかと作品を読むたびに考えていた。本作でわかったこと、ステレオさんはプロットに弱いのだと思う。前作が素晴らしい傑作だったのは、テクニカルなものが優れていたから。言葉を置いてゆく作りの技巧に驚愕した。しかし、プロットが魅力としてなければならない作品の場合、魅力がガタ落ちしている。(そんないう程でもないかもしれないが)前作がよかっただけに、今作は今ひとつ。

stereotype2085 (2018-10-22):

みうらさん、コメントありがとうございます。何の権限で、どの立ち位置から「ステレオ作品」なるものをカテゴライズしたのか分からないが、勝手に「ステレオ作品」とカテゴライズした上、「プロットに弱い」などという負のレッテルを貼られてはこちらもいい迷惑である。「花魁」「別れ道」と二作連続で好評を得たことで私の作品へのハードルが上がったのは私自身も分かっている。だが例えるならば「花魁」と「別れ道」はスケールの大きな教会の壁画で、この作品は籠の上の果物を描いた静物画だ。みうらさんの評は「壁画は良かったのに次は静物画を描いてきたから今ひとつ」と言っているのと同じレベルの批評にしか見えない。氏の批評に「今一つ」と思ったのはこちらの方である。加えてみうら氏は「別れ道」のコメント欄において「三角フォルム以降をなぜ普通のフォルムにしてもらえなかったのか(要約)」と感想をこぼしてもいる。しかし今作においては「(三角フォルムのような)テクニカルなものに優れていた前作と比べて今一つ」と、暗にテクニカルな要素をも含んでほしかったと仄めかす趣旨のコメントを残している。こうもあからさまな二重基準の批評を書かれては、こちらは理解に苦しむばかりである。ただ、みうら氏が私へ更なる飛躍と進歩を期待して、あえて辛辣なコメを投げたと言えば納得も出来よう。私はただ次回も良作を志すだけである。では。

社町 迅 (2018-10-22):

登場する誰も彼もが諦める行動を選んでいて、詩の一番最後に残ったのはそんな人達がいっぱいいる地球。そして話者はどこかへ飛んでいってしまった。 この夢も希望もないテーマが、なんか良いような、と感じました。

クヮン・アイ・ユウ (2018-10-23):

>>「傍にいる赤子はオモチャで遊ぶのにも飽きてしまったみたいだ。」 僕は赤ちゃんについて詳しくないのですが、乳児には、何かに飽きるという概念のようなものはあるのかな。幼児にはありそうだなということを考えていました。 つまり、場面を飽きているように評価しているのは私で、実際はどうかわからない。 たくさんの場面の中で、私はこの場面に最も作中の私のものの見方があらわれているように感じました。 花への喜びをなくしたこと、痛みをなくしたこと、手触り、温度君、未練、涙。 それらをなくしたことに、私は気づいていて、意識している。その悲しみを知っている。 私はまだ地球にいるのかなと考えていました。 一時だけ、意識だけ解離したのかなとも思われました。 私はこのような感覚で、一時地球をおやすみすることがあるので、読ませていただいてありがたかったです。

かるべまさひろ (2018-10-23):

これは3048年5月17日なのかな、と読みました。(かるべが実は普段からSF的な妄想で機械的な人体を描写する癖があるのもありまして) きっと、そんな未来でも、このように嘆息が出るような出来事は変わらずあるのだろうな、という無情感と、現代人もさのなかをたくましく生きているんだぞ、という安心感を覚えました。 この「30480517」の数字がなんなのか、読み解きようがないのが、あえて言えば気になりました。 まぁただ人物のIDなのか、ある特定の戦争で亡くなった人間の数なのか、僕が読んだように未来の日付なのか、etc... 妄想は膨らませられる詩の内容ではあったと思います。もしかしたらこうして想像するだけでも作品として成功してると言えるかもしれませんが。少し気になりました。

かるべまさひろ (2018-10-23):

さのなか→そのなか です。失礼いたしました。

stereotype2085 (2018-10-24):

柿原さん、コメントありがとうございます! 戦争をしても平和を感じられないのに、更なる平和を求めて戦争をする。とても鋭い指摘だと思います。この作品は近々未来において、その時点においてもまだなお、今現在の日本と変わらぬ、疲れ、倦怠、倦むところが存在するのを描写しており、そのような世界から離脱する、まさに何の未練もなく離脱する話者を描いています。恐らく彼の心情の一つとして「争うことが好きな世界」にさよならを、というメッセージがあったと思います。閲覧ありがとうございました。

じゅう (2018-10-24):

拝読しました。時間に置いていかれてついていく気力も失った現代人の様子、リアルに感じながら読みました。確かに何かが不足している感が拭えない現代では、実際、何が足りないのでしょうね。永遠の疑問です。

オオサカダニケ (2018-10-24):

素人の私にも読み取れたことはstereotype2085さんがたくさんの種類の要素、つまり景色や道具や行動を描写なさっているということです。筆力が高く、世界のあらゆる場所に置かれた定点カメラを思わせる作品で、それはニューヨークの喧騒や田舎の学校の教室、子どもたちの秘密の話し合いや老人の憂鬱など様々な物や言葉をを詩の中におさめておられるという印象を受けました。「灰色の呼吸をして」この表現はただ視点や語彙が豊富なだけでなく、言語ならでわの表現で、冒頭のこの視点でひきこまれました。

ふじりゅう (2018-10-24):

拝見しました。 落ち着いた雰囲気の詩です。落ち着いたと申しましたが内容の話ではなく、詩の言葉選びに落ち着きを与えるように作られた、という背景が読み取れそうです。 しかし中身は決して穏やかなものではなく、1.主人公は「地球にさよなら」しようとしている。2.君は生きていない。3.地球に対してもしくは現実に対してどうでもよさを感じている 少なくともこうは言えると読み取れます。さよならがどういった意味なのかがこの作品の方向を決めるように思いますが、私は単純に死の事だと考えました。また君が生きていないという描写に関しては、単純に君が何らかの要因で死んだのか、それとも主人公の近くからいなくなったのかという所も微妙ではあります。そのあと世の中の悲しいニュースへと視点が移ります。「でもそれもこれもこの星を賑やかにして、話の種を生むためだから。」と考える主人公。この文は本当に素晴らしいです。主人公は何だか悲しい話ばかりだ、と考え、そして君の感触をどんどん失うことに絶望のようなものを覚えます。最後はまた「さよなら」をします。さよならをする理由はそれぞれですが、主人公は内側で絶望を巡らせ、フロー出来ることなく「さよなら」してしまいます。フローすることの大切さや自分で抱え込んでしまうことの危うさのようなものを考えさせられる気がしました。

stereotype2085 (2018-10-25):

社町 迅さん、コメントありがとうございます! 誰もが諦める行動を選んでいて。そうですね。この作品は世の矛盾や不条理を受け入れて、諦念を抱いている人物たちにスポットをあてることで、ある種の美しさを描き出しているのかもしれません。夢も希望もないテーマ。話者が「地球にさよなら」をして向かった場所に、それこそ「夢や希望」が潜んでいるのかもと思います。話者の向かった先。それは世界の諸々の価値観と縁切りをした場所でもあるのですが、それが別世界なのか、別宇宙なのか、別の惑星なのか、はたまた死後の世界か、それとも精神的な次のステージを指すのか、それは僕にも知り得ません。話者のみが知るところなのでしょう。閲覧ありがとうございました。

stereotype2085 (2018-10-25):

クヮンさん、コメントありがとうございます! 赤子が「飽きた」ように見えたのは、ご指摘の通り話者がそう感じただけなのかもしれません。これから人生がスタートする赤子が何かに「飽きた」ように見えるなんて、それこそ話者の悲劇ですよね。痛みや未練や涙、花への喜びを無くしてしまったこと等々。そのことに話者は気づいていて、尚且つ悲しみを知っているというご指摘。中々に鋭いですね。この話者、男性は諸々の価値観とさよならしようとしている、もしくはさよならをするのですが、それがどれほど悲しみに満ちたものであるか「知っている」のです。だからこの男性、話者はひょっとしたらこれもクヮンさんのご指摘の通り、一時的に意識が地球からかい離し、別離しただけで、気力が満ちればまた地球に戻ってくるかもしれないのです。そこに希望があるとすればまた希望があるのかもしれません。的確で興味深い感想、ありがとうございました。

カオティクルConverge!!貴音さん (2018-10-25):

これからはこんなものを書くと良いと思います❗ます❗ます❗ ぼうけーんしていて、こっちもうっきうきでーす 洗脳、搾取、虎の巻流したいですね 今度流してくださいね

stereotype2085 (2018-10-26):

かるべさん、コメントありがとうございます! 「30480517」はお察しの通り3048年5月17日での出来事、という意味です。加えて整理番号「30480517」で処理された案件、という意味も持つダブルミーニングになっています。未来でも現代と同じように、非常に身近な悲しむべきことは起こり得る、散見出来るだろうとの想いからもこの詩は書きました。社会の些事が詳細に記録される現代から、1000年以上も経てば、「ああ、やっぱり世界は変わらないのか」と嘆息する人々はいるだろうし、またその人々に逃げ道を与えたいとの想いもこの詩には投影されています。何れにせよ、想像を膨らませられたという点だけにおいてもこの詩は成功しているのではないか、とのこと。閲覧及び評価、ありがとうございました。

stereotype2085 (2018-10-26):

じゅうさん、コメントありがとうございます! 「時間に置いていかれて」というのはこの詩に出てくる人々を表すのにかなり適切なのではないかと存じます。彼ら、彼女たちは時代の変化にある種乗り遅れ、あるいは適応出来ずに迷いながら生きている類の人々でもあるのです。彼らの救いはこの詩の話者のような、どこかの誰かが自分の人生にスポットをあててくれることであり、知ってもらうことでもあるのです。どんな些細なことであれ。 何かが足りない欠損感。おそらく心理面で補えるものでしょう。それは分断された社会、世間が今一度一つに収束し、助け合い、補い合う世界からもたらされるのかもしれません。それらは本当に「永遠の謎、疑問」とも言えますね。閲覧及び評価ありがとうございました。

stereotype2085 (2018-10-26):

オオサカダニケさん、コメントありがとうございます! 定点カメラを思わせる視点で書いているという趣旨のコメ。とても鋭く、的確で嬉しく思います。この作品はまさに世界のあちらこちらに、話者が定点カメラを設置したかのように、心の感度とアンテナを張り巡らせて拾い上げた小さなトピックの数々で構成されています。普段私たちの心へ知らず知らずの内に入り込む情報と情景を、この話者は他人事と認識しつつ、気負いなく、フラットな心情でくみ取り、ですが自身の境遇に照らし合わせることの可能な出来事として処理しています。その人物が「地球にさよなら」をする。何とも物悲しく、虚無的で、無辜な印象すらする展開だと思います。また「灰色の呼吸をして」はまさに白でも黒でもない話者の心情を表しており、産業被害を受けた体の異変とでも言うべきものも表しています。この一節、とても気に入られたとのこと。嬉しく思います。ありがとうございました。

stereotype2085 (2018-10-26):

ふじりゅうさん、コメントありがとうございます! 厳密に言うとこの詩において「君」は死んではいないのですが、話者にとって手の届かない存在になってしまった、失われてしまったという点では「死んでいる」と言ってもいいかもしれません。「君」が話者から心理的に失われたことで、彼の視点は冷静に淡々とこの世界の物憂うべき、小さな出来事に移っていきます。そこで話者は物事をスルーしながらもやはり悲嘆し、地球にさよならをする心情に落ち着きます。これは先の返信でも書いているのですが、肉体的な離別なのか、心理的で一時的な離別なのかは僕にも分かりません。ですが彼は地球の諸々の価値観とは決別するのです。この辺り僕自身とても詩的情緒を感じていて、気に入っています。またフローすることの大切さという点では同意です。ただこの詩の話者は物事をフローしていながらも地球と決別する。蓄積ですね。個人的なものか、世界を俯瞰したゆえにかはこれも分かりませんが、蓄積により離別の決断をする。そんな詩になっています。「別れ道」に次いでこの詩にも深いコメントをくださり感謝の極みです。ありがとうございました。

stereotype2085 (2018-10-26):

貴音さん、コメントありがとうございます! こんなものを書くと良いとのこと、ありがとうございます。前々作の「花魁」あたりから僕自身模索べき方向性というものが定まってきた感じがするので、その後押しをしていただけて嬉しいです。冒険しているとの評も嬉しく思います。「洗脳、搾取、虎の巻」は貴音さんがキャスにいらっしゃった時に流したいと思います。昨日も準備していたんですよ! 何れにせよ短い中に最大限の評価をしていただきありがとうございました。

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