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破顔
煉瓦の上で鳩のような生きものが息絶えていた 体液に付着して離れない羽根が二、三枚 ちいさく風に揺られている 趾に向かうまっすぐな骨が、 どこにも溶けていけない様が、 少しばかり、さみしい *** 冷蔵庫から逃げ出していった晩秋を 駆け上がった先の小春日和がつかまえる 黄蘗色のリビングに猫 少年時代の残り香で埋もれたフローリング 二足歩行は不便だと 言いたげなあしおと 寝室に飾られた造花も かけっぱなしの音楽も 膨張していく あたかも平穏な顔をして 冷めてふやけた現実を越えていくようで すべて遠ざかっていく なんでもあるという、感情の無さが、 一瞬で生ける屍にさせたのか 分からない 鍵はすぐそこにあって、届かない 生活はあまりにも静かで、狂う 端正な、 丹念な、 手ざわりの良い安穏に抗っていたのかもしれない 見限られたように 浴室の窓から光は射さないのである 排水溝に模られた汗と毛髪 水だけが行き場をあたえられ シャワーヘッドからはじかれる 沈黙を破るように蒸発しはじめ カルキの匂いをさせながら つまらないなりゆきでぶっしつにまとわる 撥ねる、 流れゆく。 ただそれだけで、 まるごしの木曜日が過ぎ オドロオドロシイ 金曜日をデキャンタに入れて、 いつまで経っても味わえないでいる。 夜が明ければ土気色 信仰に絡まった久遠を啜り 一番星に似た声に酔う 疑うわけがなかったんだよ。 笑う、 頬の深いえくぼを 今にも触れることが出来る気がする でもそれも、 枯れ葉と共に吹かれてしまったのだった 遠く、深く…… 五臓に流れる緩慢な空 軟く冷たい地面から 飛び立つ鳥の影を見送る 因果の坂道であなたの骨を秘めやかに転がし 抽象の海で性別を落とす そうしてまた、 ひだまりのなかで適応する心音 シャワーを浴びる 服を着替える 道を歩けば 紅いマフラーがはためく午後 繰り返される淡い命が、 叡智の箱庭に刻み込まれて笑う。笑う。笑う。
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破顔 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 970.5
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2026-01-15
コメント日時 2026-01-24
| 項目 | 全期間(2026/01/25現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


佳い詩でしょうか? 上手い作りだとは思う。 まださあっと読んだだけだけど、 長いし、上手(美味)すぎる。 読んで味わいはあっても中に入り込めない。 「破顔」 タイトルもそれっぽくていいけど、 イマイチピンとこないです。 長過ぎて気が散ってしまう。 見栄えもいい上等な料理をたくさん並べられても食べきれない、 っていう感じは損だな。 という印象がしましたが、再読してみますわ。
2秀逸な選語ばかり気になって流れが平坦だね。 掴み所が無いというか、メリハリのアクセントも弱い。 それほど個性的な文体でもないしね。 語り手の言いたげな素振りばかり目立って、 筆者が何を言いたいのかわからないんだな。 テクニカル派か、詩として損だな、と思う。
1確かに面白い作品ですね。 日常生活の中での詩的な言葉を追い駆けるうちに 日々が過ぎてゆき明日を憂う顔が破顔してゆくけれど それも自分の中での小さな箱庭での出来事にしか過ぎない。 でも箱庭の中にも光と闇・生死が有る。 私も自分の箱庭を読み返してみようかと思いました。
1寝る前に読ませてもらったので朦朧とした読みになってしまったのかも知れない。 まだ寝起きの朦朧としたあたまだが、少し冷静に読ませてもらった。 厳しい言い方をしているが、それだけ優れた文章ではある。ということでご勘弁を願いたい。 鏡を前にして己を振り返るとき、刻まれた皺には苦い記憶も浮かんでくるというもの。 印象としては伝わるのです。 ただ表現的にあちらこちらに言葉が飛び火し過ぎて煽られた火も消す術がない。 という、そんな勝手にわかりにくい表現で印象を終えておきます。 決してつまらない読みものではない。
1濃厚ですね。 ギュッと詰め込まれている印象。 最初の鳩だけでも、ひとつの詩になるのではないか?と思いました。 詰め込んでいるだけに、読後は結局、何が言いたいのか良く分からなかったので、タイトルに立ち返りました。 「破顔」と言えば一般的に良いイメージなのですが、この詩は同じ笑うと言っても、嘲笑に近いものがあるように思えました。
1ポエジーが海を泳いでいるようでした。もはや自由自在で、詩語に羽が付いて居ますね。鳩と言えば、今日公園を見て回った帰り、鳩が印象的な羽ばたきで木から木へ移動して居ました。冷蔵庫の第3連目。四連目で遠く、深く。最終連で笑う笑う笑う。五連目で、服を着替える、道を歩けば。詩の流れを目で追うだけで精いっぱいだった様な気がします。
1メルモsアラガイs 様 白い影法師 様 レモン 様 エイクピア 様 はじめまして。「破顔」をお読み下さり、また忌憚なきコメント誠に感謝申し上げます。これほどのご意見・ご感想頂けると思っていなかったので驚いております。このように感想や考察を頂くのは初めてですが嬉しいです。 本作品は私のなかで印象的な出来事が元ではありますが、それを自分の中できちんと咀嚼せず、勢い任せに足し算足し算で投稿に至ったというのが正直なところです。やはり簡単に見抜かれてしまいますね。 私にもっと技量や人生の経験値があれば、独りよがりでなくもっとビシッと読ませる「詩」になるのでしょうか。 「ほんとうに、言葉は短いほどよい。それだけで、信じさせることができるならば」 太宰治の短編の一節ですが、私はいつまで経っても湧き出る言葉に溺れてしまいます。 すみません、あまり書き手がごちゃごちゃ語るのも野暮ですのでここで失礼します。 初めてで慣れず、纏めての返信になってしまい恐縮ですが、再度じっくりコメント読ませて頂きます。有難うございました。
2前作と併せて読ませて頂きました。 前作は、握りしめていたはずのものが零れ落ち、手のひらが空っぽになった世界を捨てて前に進めるか 今作は、踏み込んだ先の世界が膜を覆ったように遠く、「あった」はずのものが「なくなった」世界で、自分の体の温度を1度ずつ下げながら世界に冷たく迎合していく そんなように読ませて頂きました。 美しい言葉たちは、祝園さんのテクニックというより、ただ心のうちに沈んでいた言葉がワッと湧き出てきたように見えました。 骨が溶けないのは、たしかに、すごく寂しいです。
1こんばんは。 「破顔」そして前作共に読んでくださり、そして震えるような読解に感謝申し上げます。 仰る通り、この二作には共通して喪失と前進(迎合)という流れがあります。 砂柳さんのコメントが素晴らしいなと思うのは >自分の体の温度を1度ずつ下げながら世界に冷たく迎合していく という部分でして、目を見張る表現で芯を食われたぞとひとり感動致しました。さすがとしか言いようがないですね。 鳥の骨のさみしさと我らが骨のいく末。深いえくぼの持ち主の笑顔と淡い命の笑顔を、同じ体温で見つめることは出来ませんでした。しかし、命とは連綿と続くものなのだと、俯瞰すれば緩やかな前進となるのでしょうけれど。ここがごっちゃになって詩作としては皆様の評価の通り……なのでしょう。 湧き出る言葉に翻弄されながら書いています。テクに振れてみたいと思いつつ、それもまた息を吸うようでなければ見透かされる、それが詩なのだなあと実感しております。
1溶けていけない骨や、風に揺れる羽根の描写が、死、そのものというより、「行き場のなさ」や「置き去り」にされた感情を見ているようで、静かに胸に残りました。 途中から現れる生活の描写について、猫の足音、造花、かけっぱなしの音楽、シャワーの水。 どれもとても具体的なのに、どこか現実感が薄れていくようで、「平穏な顔をした安穏」が、逆に人を狂わせるという感覚が伝わってきました。 特に印象的だったのは、曜日や時間が味わえないまま過ぎていくところと、 >疑うわけがなかったんだよ という一文です。 信じていたもの、触れられると思っていたものが、いつの間にか枯れ葉のように遠ざかっているような痛みを感じました。 それでも服を着替え、道を歩き、紅いマフラーがはためく午後へ戻っていく流れに、生きることの残酷さと、それでも続いてしまう優しさの両方を感じました。 >笑う。笑う。笑う。 が、救いなのか、皮肉なのか、読み手に委ねられているように個人的にはそう思えて、とても好きな作品です。
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