風の音はあるが
風と、音は
いない
兄が帰って来たような気がする
さびしかったら引力の言うことを聞いてるだけでよかった
お醤油の匂い
しかも僅かに焦がしたこおばしい匂い
到達し得なかった事柄は残らず影になる
いつか庇ができた
私だけでなく誰であろうと
一息の間守ってもらえるだけの大きさの庇
もうあなたのことは何とも思ってないよ
忘れた頃にその声は、やって来ては繰り返す
針飛びのようにそこだけ
何度でも
そうして敷き詰められた声を折り畳んでは重ね
積み上げる
午後は紅茶を変えてみた
占いのページに手垢が付いて
おまけに旅券は往路のみ
白いパジャマに木星のコーラスが似合う
何度目でも恋は懐かしい
もうベッドにまで相談するくらいだ
かつてよく口ずさんだ歌の冒頭部分
抜けないささくれの痛み
短くなった鉛筆をそれでも削る
いつか形を失い
指から落としてしまうまで
野生の足音に怯えながら暮らす
風の音がしないと不安になる
風の声なら、ある
使われなかった音が根こそぎ青信号に変わる
と、取り残される
私ならそこには
いない
人は容易く曇るものばかりを集めて
もう私のしでかしたことなんて
何とも思ってないのだろう
作品データ
コメント数 : 12
P V 数 : 872.4
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-02-28
コメント日時 2025-03-19
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:872.4
2025/12/05 20時47分03秒現在
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初めまして。 赦せない、と思っていました。 愛せない、と思っていました。 赦したい、と思います。 愛したい、と思います。 あなたは私の「鏡」のような方です。 観れば、私自身の姿が映っています。 初めて出会った時の気持ちを 大切にします。 ありがとうございます。
1「ある」と「いる」。「兄」と言う存在。「風」と言う存在。「あなた」とは「兄」の事なのか。野生の足音は怯えるばかりなのか、ウンハイムリッヒなものはハイムリッヒなものでもあるのではないのか。何れにしても、最後の三行は印象的でした。
1良い詩だったのでのちほど、コメントさせていただきます。 まずは投票を。
1こちらこそはじめまして。コメントありがとうございます。 人は赦しても赦せないと思った気持ちは大事にしていった方がいいのかなあと思います。問い続ける人生、決まったものなど本当は何もない筈。 たぶん誰も、何も違わない海の中、お腹を空かした魚ばかり。鏡は大事。女の子にとっては特に。
1心のこもった返信、 ありがとうございます。
1ありがとうございます。まさにそれ、ウンハイムイッヒリーベディッヒユーハイムハイルヒットラーシャウエッセンでございます。ハイムリッヒは中に入るのが無理な状態を指す言葉で、ウンハイムリッヒはそれでもどうしても中に入るという強い意志を表す言葉です。ドイツ語は美しいですね。
0こもらせた、あなたの素晴らしいコメントがそうさせたのです。ここで天井から紙吹雪。
0投票ありがとうございます。世界は博愛に満ちています。小学生の頃、畜産センターの見学に行った時に、柵から出ていた豚の鼻を掴んだらその豚にめっちゃ怒られたことを思い出しました。
2「引力」の動き、円環、往復というイメージが詩全体に通底しているように思いました。 兄の帰省、「やって来ては繰り返す」、「針飛び」→レコード、「何度でも恋」、「歌」などなど、要素は多いです。 だからこそその中で目立つのは、たとえば鉛筆を削ること。それは循環的ではなく、必ず終わりを確認できる。しかし、それまで無限性を持ったモチーフが出てきたためか、この「鉛筆」も最後まで削り切ることはできないのではないかという、無限性を持っているようにも感じました。 「いつか形を失い/指から落としてしまうまで」 という所に、それまでの流れから果てしなさが加えられています。 何かが無くなるなんてことはない、それは、一度上空に放ったモノがまた地に落ちてくる法則の信用でしょうか。だからこそ、「風」と「音」の帰還を、詩全体で待ち望んでいる。「風」と「音」の「影」、それは描かれた放物線という残像でしょうか、それを孤独に集めているような。 最終連、「容易く曇るもの」とは何だろうか。「容易く曇るもの」は、一方で「容易く晴れるもの」とも言えそうである。無闇な消費社会を批判しているよう。 放ってはいつ、返ってくるか分からない、引力が効かずに果てへと飛んだままになってしまうのではないか、と思うモノを、集めるべきだと訴えていそうである。 凄く抽象的になってしまいましたが、そう感じました。良い詩でした。
1タイトルに惹かれました 人は容易く曇るものばかりを集めて もう私のしでかしたことなんて 何とも思ってないのだろう ここ、とても好きです。 容易く曇るもの。うん。いい。
1私の書くものの特徴としてぶわーっとイメージをぶちまけるようなのが多いですね。詩としてどうなのか、というのをたぶん1ミリも考えないで書いてるからでしょうか。 何かが終わってくモチーフは私の書くものには必ずと言っていいほど入ってますね。もう年齢のせいでしょうか。終わりが楽しくてしょうがないんです。 容易く曇るものは私はどちらかというと肯定的にとらえていて、それが許される世界でももういいんじゃないかと。晴れやかに終わりを迎えるイメージだったりですね。 丁寧な読みをありがとうございました。 最後にどうでもいいことなんですが、私、ミハイさんをスペースで声を聞くまでずっと女性だと思ってました。ごめんなさい、それだけ。
1コメントありがとうございます。 寒冷地に(信州安曇野)住んでますとですね、フロントガラスってホントに容易く曇るんですよ。またかよ!ってな具合で。 最初は曇りどめのスプレー使ってたんですが、あれガラスがギトギトになるから嫌なんですよね。
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