「私のキラー・フレーズ、一……
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ウエディングケーキ
ウエディングケーキ いや 円卓が重なっているだけ 上に行くほど ひとまわり小さなテーブルが 中心をきれいにそろえて 重なっている やはりウエディングケーキなのかも 一番上 若く美しい男女が笑顔で祝福されている 花畑が 約束された富に溢れて 貨幣のライスシャワーは痛くない いや スポンジも生クリームもない やはりテーブルが重なっているだけだ 上から二番目 高そうな外国の車 広い芝生の庭 いくつ部屋があるのか見当のつかない家 一年じゅう 春の風が吹く ショーケースの家族 上から三番目 給料明細にからかわれている人 通帳の数字をストローで誰かに吸い取られている人 才能を電車の中に忘れてきた人 下のテーブルに落ちそうになっている人 その人を遠巻きに撮影している人 ああ 自分が落ちそうなんだ 必死に 円卓のはじをつかんでいる 助けを求めたいが 体の力が足りない 周りの人は 心の中で手を伸ばす でも 口からも頭からも心臓からも 手は伸びない いちばん下 床 いや 床ならまだいいのかもしれない 寝っ転がって 一日じゅう 小さな画面を見つめる人 着た切りで うつぶせ そのまま 動かないが 何かぶつぶつ言っている人 動く前にあきらめる理由をたくさん考える人 職業に「自称」がつく人 上から落ちそうになっている人の 足を引っ張ろうとする人 下は楽だぞ 早く来いと聞こえてくる 誰がこんなものを作ったんだと 文句も言いたくなる しかし 自分は足を引っ張られ 糸の切れた凧 黄色い銀杏の葉 そんな理想じみたものではなく 畑に放り込まれた堆肥 といったところ 床に突っ伏して痛がっている 汗と垢と便の匂いが 肩をいからせて威嚇してくる ナイフをくるくるさせて 薄暗いが 何かの光が反射している 匂いは叫んでいるが よく聞き取れない 日本語ではあるらしいが 野生が強すぎて よくわからない 走ってくる ナイフが私の腹めがけて いや やはりウエディングケーキだと気付く 新郎新婦がナイフを共同作業 少し酔ってしまったらしい ぼんやりしたまま 周りの人たちの拍手が聞こえる 私もつられて ぱちぱちぱち
ウエディングケーキ ポイントセクション
作品データ
Ｐ Ｖ 数 ： 479.1
お気に入り数： 2
投票数 ： 3
ポイント数 ： 0
作成日時 2023-10-01
コメント日時 2023-11-11
| 項目 | 全期間(2024/04/28現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
うん。過酷な現実でありつつ、それが夢のように感じられます。 夢。描かれていることはウェディング、ハッピーでありながら そのハッピーを構成しているすべてがいとおしいと思いました。
1こんにちは。 ウエディングケーキから得た幻想（妄想？）を描いた詩のようですね。 ウエディングケーキの各段を、社会の階層あるいは社会的成功の度合いみたいなことに喩えているところが斬新で面白いです。 表現については、上から二番目の 「一年じゅう 春の風が吹く ショーケースの家族」 と、上から三番目の 「通帳の数字をストローで誰かに吸い取られている人」 それと、いちばん下の 「職業に「自称」がつく人」 などが、なるほど、と納得してしまうような巧みな表現だと感じました。 また、最後に幻想の中で腹をめがけてくるナイフと、新郎新婦が持つナイフをかぶらせているところが新鮮でした。 とても面白い詩だと思います。
1田中恭平 new様 ありがとうございます。最後はハッピーというか、何とか丸く収めようというか（笑）、そういう感じで作りました。私たちは過酷な現実の中にいますが、幸せでありたいですね。
0m.tasaki様 ありがとうございます。ナイフをきっかけに妄想から現実へ引き戻されるところは、思い付き（笑）です。自分でもよく考えたなあと感心します（笑）。また頑張って作ります。
0> 職業に「自称」がつく人 職業以外にも、多くの人に痛い角度から刺さりそうで、上手いこと言うなと思いました。 >下は楽だぞ 早く来いと聞こえてくる ここも本当に、社会でもネット上でも思い当たるシーンが多いです。 タイトルから勝手にハッピーな詩を想像しましたが、不穏で面白かったです。あ、でも最後はハッピーか。
1山本やま様 ありがとうございます。最後はね、ハッピーといえばそうですし、不穏なままといえばそうですし、本当にハッピーなのかなとも思いますし、いろいろなふうに読んでいただいていいかなと思っています。丸く収めようというか、詩を終わらせなければいけないというか、オチをつけなければいけないというか、そんな終わり方です（笑）。
0結婚したことないぼくにもわかります。
1田中宏輔様 ありがとうございます。どんなことでも、反応をいただけることはうれしいですし、「わかります」とおっしゃっていただけると、なおさら励みになります。今後ともよろしくお願いします。
0ウェディングケーキ。テーブルが重なっているだけかもと、幻想が重ねられているような始まりで、結婚式場での幻想だろうか。新郎新婦が最終連で出て来ます。ナイフが私の腹めがけてやってくる幻想。自分が落ちそうなシチュエーション。上で落ちそうな人の足を引っ張る人など、下は楽だぞ？みたいな誘惑も幻想度が高いと思いました。
1エイクピア様 コメントありがとうございます。幻想、そうですね、幻想度が高いのかもしれません。本人としては、もうちょっと言葉を削れないかなあ、ちょっと説明的なのかなあとも感じたりします。今後もよろしくお願いいたします。
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