アチョウ!と一声叫んで
きみは、あたたかい手のふちで
月を裂いた
水面が、すぐに回復して
きみは、首をかしげた
ぼくの手のひらに、ため池のしぶき
ちらちら反射して
握って、よせた、月の皺
居酒屋から放たれる談笑は
あさぎ色に燃え上がり
ぼくの足をも染める
(足は相変わらずの無垢そのものなんだな)
背後を追い越すサラリーマンの酒臭さ
鼻の中を焚きつける、ごまかしみたいだ
(無垢さに価値を与えるのは、健康優良不良少年か)
(平べったい瞳を持つ奴くらい)
日の出は、
細いひものように、ゆるまった
午前三時の新聞配達のバイク音を暗示する
月を喰らう
「ぼくは」と言う合図で、月を喰らう
がぼがぼと口を暴れ回る酸素を捕まえるべく
動き出した、きみのセピア色
未だ掬いとれない、わだかまったあどけなさ
めっそうもないよ、
口から垂れた水と共に、きみに目を向けるなんて
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 1676.8
お気に入り数: 3
投票数 : 3
ポイント数 : 0
作成日時 2020-10-11
コメント日時 2020-11-03
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/10現在) | 投稿後10日間 |
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閲覧指数:1676.8
2024/12/10 18時39分25秒現在
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>アチョウ!と一声叫んで という文章が面白そうだなと思わせるような始まりで良いと思います。 そのあと、月の神秘さと居酒屋などの日常がハーモニーを奏でてミックスされてるような素敵な作品でした。
0すごい良いなあ。 とても高度なことを力を抜いてやってるなあ、と思いました。 描写に欲張りがなくて重すぎなくて、とてもスラスラと読めて、でもオリジナリティがありますね。 今のところ10月ベストです! いいなあ、いいなあ、と唸りながら読みました。
1くおんさん、コメントありがとうございます。 詩の導入部分に一声上げるイメージを入れたら、すっと詩の中に入っていけるのかもしれないという半ば実験心でした。生活の中で感じる色合いと空気感を感じてもらえたなら、とても嬉しいです。
0楽子さん、コメントありがとうございます。 そう言ってもらえてすごく嬉しいです!毎回表現や言葉に欲張ってしまい、冗長になってしまったり、本質とすれ違ってしまうことが多々あるので、力を抜いて読んでもらえてよかったです。
1すごく面白い。いろんな動きがあって、五感をびしびし刺激してきて気持ちがいいです。出だしの部分、「面白そうだな」と思っていたけど最後まで読んでみてよかった。
0いいですねぇ。好きです。 一連目の「きみ」が水面の月を割ってすぐに回復するさまに首をかしげる、とか、 「ぼく」も、そのしぶきを手に受けて眺めているさまとか、とてもコミカルに描きつつも神秘的で、皆さんがおっしゃるように本当に個性的で素敵です。 つづく二連目に「居酒屋」「酒臭いサラリーマン」など非常に身近で生活感あふれる言葉が出てきますが >(足は相変わらずの無垢そのものなんだな) とか >鼻の中を焚きつける、ごまかしみたいだ という独特な感性が差し込まれていて、現実と幻想が拮抗している不思議な世界が作り上げられています。「きみ」と「ぼく」は、子供と大人、純粋なものと不純なもの、それらが混ざり合う領域にいるようで、そんな日を懐かしく思ってセンチメンタルな気分になりました。
0最後の“めっそうもないよ、”の余韻にやられました。 “月を喰らう”からの躍動感から一気に静まり返るような、波だった湖面が突然凪ぐようなメリハリの際立ったラストに感動しました。
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