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親愛なる灰へ   

作成日時 2017-04-27
コメント日時 2017-05-08

友達を燃やした。 大事な友達だった。 私達が小さかったころ、 川辺で、一緒にシロツメクサを探した。 私は彼女に冠を作り、 彼女は私に首飾りを作った。 彼女は私の思い出。 私達が制服を着ていなかったころ、 一緒に、アイスクリームを食べた。 私の頬には、チョコチップとミント。 彼女の頬には、あどけないそばかす。 彼女は私の苦み。 私達が初めて髪を染めたころ、 階段から落ちて、代わりに彼女が怪我をした。 私の右足は髑髏の刺青を彫られ、 彼女の左足は折れてしまった。 彼女は私の代わり。 ずっと前の話。 私達は一緒に悪戯をして、一緒に先生に呼び出された。 私は抱きしめられ、 彼女は叱られた。 彼女は私の優しさ。 私達が大人になったころ、 一緒に、とても高い場所に立っていた。 私はビルの底に飛び込み、 彼女は私の手を掴んだ。 私は煙を吐き、 彼女は煙を吸い込んだ。 彼女は私の夢。 彼女がくれた、たくさんの幻想。 彼女にあげた、たくさんの痛み。 私が彼女に薬を打つと、 彼女は安楽椅子に座った。 ガムテープを持っていた私は、 彼女がもう逃げなくていいように四肢を括った。 泣かなくていいように口を塞いだ。 折れた左足は元には戻らないのだ。 彼女の目は訴えている。愛しているよねと。 私は笑ってあげる。愛しているよねと。 私は彼女の傷になる。 ガソリンが彼女をずぶ濡れにして、それから床を腐らせる。 彼女は私を抱きしめる為にもがく。 燐寸を擦った。燃えた。 投げて捨てた。私は部屋を出た。 燃え上がる影が揺らめいている。 「マッチが一ぽん、マッチが二ほん、マッチが三ほん……」 ドアを閉めたら子守唄を歌おう。百数えたらおやすみなさい。 彼女が私の傷になる。 「さよなら、また明日」 枯らせずに腐って叱られて捨てた草の冠。 ミントの香料と甘かったチョコレートは何もかも安物。 洗剤の泡は流れ落ちて別物になって今は全部剥げた。 皮膚をなぞる細い針はちくちくした。 病院のプラタナス。の下を飛び去った虫の大群。 燐寸箱の傷は古かった。 灰が掻き消してしまったあなたの歌。 油の匂いがする。 友達を燃やした。 大事な友達だった。


項目全期間(2019/09/16現在)投稿後10日間
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2019/09/16 05時43分42秒現在
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コメント数(8)
花緒 (2017-04-28):

彼女=わたし、として読みました。わたしの中のナイーブな部分として。それだけなら、ありきたりですが、私は彼女の傷になる、彼女が私の傷になる、と、彼女とわたしが入れ替わり、円環を描きはじめます。友達を燃やした、とラストの締めがありますが、わたしが燃やされたのか、彼女が燃やされたのか。面白く拝読しました。なお、枯らせずに腐ってーの連はわたしにはイマイチ読めなかったけれど、全体として、良作のように思いました。

朝顔 (2017-04-28):

この詩は、自分の中に突き刺さるものがありました。私の遅過ぎた青春時代に、確かにこういう友人がいたからです。お互いに痛みを分け合い、とても深いところで気持ちが繋がっていると思っていた。分身ですね…。でも、成長って残酷なもので、そういう分身のような存在 。鏡を投げ捨てなければならない時が来るんです。人間って社会的動物ですから、もっともっと多くの人々と繋がってゆくためには、鏡を割る必要性があるのです。とても切実で正直な詩だと感じました。

み う ら (2017-04-28):

初投稿有難う御座います。素晴らしい作品ですね。私の中では、4月の最高傑作だと思います。

み う ら (2017-04-28):

追記:「私」と「彼女の」が多用されていることについて。置かれた言葉に必然性を感じます。その多用が、本作を即興的な雰囲気にしており。良いのではないでしょうか。

クヮン・アイ・ユウ (2017-04-28):

「制服を着ていなかったころ」、こんなにも美しい表記があるんですね。 「枯らせずに腐って」という箇所についても、ほんとうに驚かされました。きめ細かな言葉の定義づけと、それゆえの最奥を照らしうる光の強さを感じました。

まりも (2017-04-28):

一行目の衝撃的な立ち上がりは、「ありえない」情景であるがゆえに何かの比喩だ、と思って読んでいて・・・そうではない、「ほんとうに」燃やしたのだ、と明かされていく展開に驚嘆しました。 「私」と「彼女」が頻発するけれども、不思議とうるさくない・・・繰り返されていく感覚が、ある種の酩酊感を醸し出すからかもしれません。 ロジックがとてもしっかりしていて・・・「彼女」は「私」に「幻想」を与えてくれる、夢を見させてくれる。その代わり、「彼女」は「私」の代わりに傷を負う。語り手(私)が魂で、魂が見ている「彼女」が肉体、であるように思われてなりませんでした。 具体的に、リアルな手順で「彼女」を燃やすところは、詩を語る主体(私)が、焼身自殺を詩の中で完成させた、ようにも思われました。 冒頭のシロツメクサの花冠を作る場面が、〈枯らせずに腐って叱られて捨てた草の冠〉として最後にまた現れる。(ガソリンが床を腐らせる、という言葉も出てきますが、これは、最後の草冠を腐らせる、を導くために置かれた伏線、なのか・・・ここは、若干、違和感がありますね・・・)ドライフラワーとして美しく保存するのではなく、腐らせてしまった子供時代の魂と肉体の蜜月の記憶・・・いつまでも子供でいるんじゃない、と言われ続けて、無理やり自身を引き裂いて大人になる、ある種の通過儀礼でもあるようです。マッチで燃やす、という設定も、マッチ売りの少女を連想し、自らの夢を燃やしていくかのような痛みを感じました。

poppocider (2017-04-29):

はじめまして。温かいご感想をくださり、とても嬉しかったです。本当にありがとうございます。 この詩はある外国の曲のMVに強く影響を受けています。そのMVではクライマックスに自分で自分を燃やすシーンがあり、しかしここで本当に別人の友達(親友)を燃やしてみたらどうだろうという所謂「サイコレズ」的な発想がきっかけになっています。しかし実際にはそこまで近い距離感を描くとなると「他人」を描くことができず、結果的に「自分」になってしまったのです。それが少し心残りではあります。私個人の解釈としては、この「友達」とは、岩原裕二さんの漫画「いばらの王」に登場する分裂症の少女アリスとその空想上の友達ラルーのような、自分の中の別人格をイメージしています。(その漫画の中でもアリスが家ごとラルーを燃やす描写があります)痛みを分け合う、というのはその通りだと思います。痛みはこの詩で強く表現したかったことでもあります。 一文一文に意味を込めるというよりは、頭の中で想像した光景をそのまま描写している感覚でした。「枯らせずに腐って……」の連は、象徴的な意味を持たせるというよりは、走馬燈のイメージです。「枯らせずに腐って」という表現は、最初「腐って」のみにしていたのですがよく考えたら普通腐るというより枯れるな、と気づいて書き直したので、偶然できた表現でした。「床を腐らせる」とは、意図せず被ってしまったので、推敲が足りなかった点だと思います。

百均@B-REVIEW ON/ (2017-05-08):

 私と彼女がくどいくらいというか、実際くどく書かれて最後に燃やしてしまう所で、私と彼女っていうのが同一的な存在であり、分裂したもうひとりの私であるという事を思います。  あんまり突っ込み所がない。表現として、しっかり整えられている感じがします。故にちょっと前半部分の私と彼女との思い出パートみたいなのは少しつまらなさの方がむくっとはしました。その積み上げがあるからこその最後のオチに繋がるのは分かるいっぽう、それだけ個々の比喩については普通という感じなのかもしれないですね。そういう所でちょっと小説的かなぁと思ったりしました。これは贅沢すぎる要望だとは思いつつなのですが。 >病院のプラタナス。の下を飛び去った虫の大群。 >燐寸箱の傷は古かった。 > >灰が掻き消してしまったあなたの歌。 >油の匂いがする。 > >友達を燃やした。 >大事な友達だった。  しかしながら、この最後のオチは凄く好きです。そこから翻ってタイトルを見たときにじんわり胸に焼きついてくる感情は言葉で形容しがたいですね。お見事だと思います。

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