わたしが、
爪を裏返して
世界に触れたら──
涙で溶けるはずだった
心のよわさが震源地のように
脆弱にはがれ落ち、淋しさが裏返り
羽根を叩き落としてくれる。
世界の端で一人
少年のようにあまえて
支配者の心を強請る。
頬にすり込んだ赤いりんごは
唇に届かない。
音の生まれない瞳が熱く燃え
悩みの排出口を真黒に鬱ぐ
泣きつくす人々に羽根がない。
風が激しく 身体を値踏み
窒息したこの 世界の代わりに
咳き込んで、睨んだ──
少年の手が優しく光を拒み、種を掴む。
その柔らかな影が、瞳を盗み続けている。
いつも──
血のような怠い熱が
蜘蛛の糸のように 張り巡らされ
愛を一度孕んでも
また直後に阻まれる。
暗闇で奪った
羽根を鳴らす音が、
忍び足に似た恐ろしさを纏う。
わたしの肉へ 押し入ってくる。
罪にはならないけれど
手を繋ぎ合う能面のような世界から
埃のようにはたき落とされたら
天を切り離されたも、同じ事。
喉奥に吊るされた
真っ赤に萎れたロープが
わたしの内側からキツく喉を
縛り上げ、巻き込み
鎮まれと耳許へ囁く。
静かな光と夢を吸い込み
嘘も真も隠してわらう
共犯の電球が パチリと消えた。
あきらめの笑顔が瞬くまに
この人間ごと突き刺さる。
針山のような醜い街に
忽然と
光が
── あふれていた。
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 881.4
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-04-30
コメント日時 2025-05-10
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:881.4
2025/12/05 19時57分44秒現在
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のちほど、じっくり拝読し、コメントを付けさせていただきたく存じます。
01段と深みが増されましたね。 詩表現が抜群に上手く、 どこをどう切り取っても美しいです。 読んでるうちに、 哀しみが込み上げてきて、泣きたいような気持ちになりました。 印象的なフレーズばかりで、とても贅沢な気分です。 特に >支配者の心を強請る。 このフレーズは、支配者の逆転を感じさせて、 大好きです。 欲を言えば、 汽笛の音が聴こえなかったことくらいですかね。 私はワインはあまり好きではないのですが、 この詩は、年代物の貴腐ワインのような芳醇さがあると思います。 とても良い詩です。 ありがとうございます。
0こんばんは、ありがとうございます。 汽笛を鳴らすのをわすれました。 悪い車掌ですね。 替わりにあなたが泣いて下さい。
1ひとつひとつの単語の組み合わせ方が素敵だなぁとおもいます。 爪を裏返して、の文章で惹き込まれてしまいました。
0ありがとうございます。 爪を裏返すと、 なにに触れられるか 考え倦ねた冒頭でした。
0やはり始まりがインパクト大ですね。 こっちの爪までヒリヒリしてきそうです。
0ありがとうございます。 なんのきなしに書いた部分もあるので、思えば少々僕は残酷かもしれません。
0僕…とコメントにもありますが、おそらく男性の方ではないでしょうね。男性ならばこのような人称では入らない。決めつけ過ぎ、思い過ごしでしょうか?笑 表現の移行がいいので、間も自然に流れて読めてきます。 何かしら題材を元に想像されたのかしら?そんな物語性も感じます。 ただね。タイトルですね。「孤独の汽笛」 汽笛?船でしょうかそれとも列車でしょうか? この詩からはそんな姿印象も見えてこない。 「孤独の汽笛」。ああ!電球とか書かれてあるので昭和を意識されてるのかな? でも、あまりにも物語的で遠くてちょっとダサいですね。50~60年代の日活映画のタイトルみたい。 もっと他にないのかなあ…という感想も。
1ありがとうございます。 グーグルによると、 カスタマイズ可能な性らしいです。 題材は、自分の中の孤独と、未完の詩文達をさらに混ぜて煮て こんな感じになりました。 タイトル、ダサいかあ、切なあい イメージとしては、遠くから自分の孤独が汽笛として聴こえてくる やって来る 迎えに来る そんな感じです。
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