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唸る絵筆と折れた傘   

作成日時 2017-07-18
コメント日時 2017-07-27

景色が水彩で染められる 顔の無い画家 彼或いは彼女に自画像は無く 筆名もタイトルも「無」の絵画 対価に虚無を 油絵に火烟を 朽ち果てたアトリエ 水彩画の溺死体 焼死体の可能性も否めないと かつて空襲に叫んだ群衆は呟く 無……に突き動かされる銃剣 無……に轢き潰される兵士達 擦れ違う半裸の車輪 気が違う全裸の車窓 傍観する太陽は暗い血で澱む 神の名の下に蹴り殺された輸血 希望はいつも絶望に変換される 赤が散る世界では造花すら枯れて 俯く人々は正解の○ではなく 曖昧、中立な▲を求め続けている 宗教 胎教も曖昧さで不協和音を奏で始め それでも艶やかな絵筆 その無邪気な筆先は 少しずつ世界を塗り替えてゆく 気紛れに描く歪んだ太陽 気が触れたように描く凍てつく寒空 やがて色を失った絵筆は死を選び 代わりに握られた拳銃 6が刻む色は赤と黒しか無く―― 巻き起こる絵具の騒乱 キャンバスの反乱 病んだ叫び 止まぬ雨に仮面も剥げかけ 我先にと買われる憂いのビニール傘 その均一な傘たちを黒く塗り潰せば 絵筆が折れるように骨折する 雨にうたれる人々の狂乱 雨に隠されたリボルバーが唸る 雨に濡れる涙が濁る 雨に洗われた血が潤う 無名の画家の嘆きと銃弾 匿名のレインコートを纏うのは誰? 君に殺されるAを奪うBは誰だ? ――訪れる刹那の青空 泥塗れのパステル 白日の下 傘の刺さったレインコート %もアメダスも狂った此処で 私は空の鬼ごっこを眺めている 太陽が鬼か 曇天が鬼か それすら解らないまま


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2019/11/18 08時53分38秒現在
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コメント数(8)
仲程 (2017-07-19):

すごく強い意志のあふれる言葉が続いて圧倒されます。 その感情を絵画などから感じるほうが直感的だけど、詩から感じるのは久しぶりです。 一行、一行が、あふれている。と感じます。 また、タイトルだけでも秀逸

北村灰色 (2017-07-20):

仲程さま コメントありがとうございます。絵画を描くように書いた詩というか、感情や情景を表すことをとにかく意識して書きました。 タイトルは傘も絵筆も折れてしまえば終わってしまうという刹那的な共通点、また、絵筆が絵具をキャンバスに塗り潰す様は、さながら唸っているみたいだとふと思い、このタイトルを付けました。

まりも (2017-07-22):

唸る絵筆、のイメージは、アクションペインティング。雨傘、のイメージは、私の場合はマグリット、でした・・・(もちろん、極めて個人的な感覚ですが)。 表現主義的な激しさと、冷静な筆致による、超現実の世界、を予感しつつ読み進めていくと、水彩と油絵、溺死体と焼死体、相反するイメージが連続で出てきます。強度を持った言葉が畳みかけられて一句、その連続が積み上げていく残像は、戦争画でしたが・・・現実世界を反映させる、未だ描かれていない絵画のイメージと、それを表現しようとして葛藤する画家、炎の激しさと水の沈鬱、その両極に引き裂かれながら創作に向かおうとする画家の内面・・・を追体験しているような気持ちになりました。 〈宗教 胎教〉とか、〈気紛れに~/気が触れたように〉というような、言葉の音韻が意味に先立って次の言葉を生んでいくような感覚とか、言葉の響きが引き出す対句、のような表現が多用されていて、それが作品を先へと薦める駆動力にもなっているのですが、水と火というような、象徴的な意味というのか、イメージそのものに重みがあるものも、たくさん対句的に多用されているので、ひとつひとつのイメージが、意味を削ぎ取られて軽くなってしまうような感覚もありました。 戦争画を描かざるを得ない(でも、描きたくない、雨によって、血を洗い流してしまいたい)画家の葛藤を二連、三連から強く感じたので・・・対句的な表現が、装飾過多と感じられないように、もう少し整理した方が、より迫真力が増したかもしれない、とか・・・最終連で、出て来るパステルのイメージは何だろう、とか・・・(相反するものの止揚?) 最終連が、その前の重さや強度に比べると、バランスが弱いかな、ということも感じました。

蛾兆ボルカ (2017-07-22):

こんにちは。 拝読していて、僕はフジタが戦争協力して描いた(とされる)絵を、ふと想いました。実物は見たことがないのですか。 ただ、僕が想起するフジタ作品とこの詩の情景は細部が一致しないし、フジタは積極的に戦争協力したと思われることとか、彼は無名ではなかったことなどから、フジタがこの詩の主題とは思いませんでした。もっと後悔しながら戦争画を描いたひとを想像しましたが、あまりはっきりせず、作者の感動の在り方がわからない、という印象でした。 この詩は、色面、空間構成、量塊など、絵画的な要素を言葉で表現しようとする苦闘みたいなものは、私にはあまり感じられなかったし、主題も曖昧なように私は思いました。

北村灰色 (2017-07-23):

まりも様 コメントありがとうございます。確かに水と火はそのものに重い意味がありますね。70年代のロックバンド・FREEに『Fire And Water』というアルバムがあるのですが、彼らがブルース的な暗喩で用いたと思われるそのタイトルでも、火と水という単語そのものが持つ力強さがやはり印象的です(音数の少なく説得力がある感じも含め)。そう思い返すと、対句的な描写を減らした方が確かに良いような気がしました。 最終連は止揚というのもあり、色彩の変化、濃い色彩から淡い色彩への変化というのはあったのですが、無くてもいいかなとは御指摘頂いて思いました。

北村灰色 (2017-07-23):

蛾兆ポルカ様 コメントありがとうございます。想起して頂いたフジタ作品、初めて耳にしたので調べてみます。 (現実的な)戦争というのがテーマでは無く、明確さも感動も別に……な詩なのですが、戦争を連想させる単語を多く用いてしまったので、確かに朧気な感じになってしまったような気がしました。

蛾兆ボルカ (2017-07-23):

アバウトな紹介をしてしまい、すみませんでした。 僕が連想したのは、藤田嗣治の、アッツ島玉砕、という絵です。 画像検索してみたところ、残念ながら、形が分からないまでに低品質な画像しか私は見つけられませんでした。この絵には、ところどころに花が描き込まれています。それが判別できる画像がもしありましたら、その絵です。 しかし、関連書籍や、図版を収録したムックは多く出ていると思いますから、後日、図書館へ行く機会がありましたら、観ることができるかもしれません。

北村灰色 (2017-07-27):

蛾兆ポルカ様 藤田嗣治のアッツ島玉砕の絵、教えて頂きありがとうございます○近々図書館(関東某ローカルの小さな図書館ですが。。)に行く機会があるので調べてみます。

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