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記憶の川、真昼の星   

永峰半奈 
作成日時 2018-11-08
コメント日時 2018-11-11

 

天気雨に濡れて光る線路 雨雲と晴天の合間 真昼に星を探したばかりに迷子になって 未解決事件の捜査現場を野良犬が見つめている 痩せて浮き上がったあばら骨の 曲線に川が流れている 淀んだ記憶の川を湛えた野良犬は 興味もなさそうに踵を返した すれ違う電車にかなしみはないのに あの駅へ向かうと いつもかなしくなってしまう 夜がくる 死にたいとは言わない、けれど 嬉しいとも楽しいとも感じない 子供たちのための夜が 薄い繭にまもられているような夜 真水を湛えた部屋の、あかるい走馬灯 毎日こうなんだ 毎日記憶の渦が僕の部屋を流れる 感情の代わりに記憶を背負って 走り、去り行くものたちよ 僕を置いて行くものたちよ 野良犬は恨めしげな目でゴミ捨て場へ向かい 線路は陽に乾いて 電車は記憶の器たちを乗せて走って行く


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羽田恭 (2018-11-09):

どうにも気になる作品です。 視覚的にはっきりしていて、その上寂しい感じが。 野良犬と電車ははたしてどこに行き、僕はどこに佇んでいるのか、考えてしまいます。

さかさまほうびん (2018-11-09):

感情の代わりに記憶を背負って、というフレーズがぴったりな詩だと思いました。心のざわめきが落ち着いていく感じがして好きです。

永峰半奈永峰半奈 (2018-11-10):

羽田恭さま コメントありがとうございます。人の心に引っかかる作品を作りたいと常々思っているので「どうにも気になる」という言葉が嬉しいです。 寂しさもキャッチしていただいてありがとうございます。感覚的なところが伝えられたような気がして嬉しいです。 さかさまほうびんさま コメントありがとうございます。自分でも気に入っているフレーズです。「心のざわめきが落ち着いていく感じ」と読まれる方もいるのだな、と発見がありました。どうもありがとうございました。

みうら (2018-11-10):

言葉が丁寧であり思念と言葉の乖離が微少に思える。その言葉から組み立てられる情景は輪郭がはっきりとしている。つまり、それは比喩だ。 >薄い繭にまもられているような夜 認知しているはずの記憶の不確実性をメタファーとして、比喩を使っている作品に読めた。レトリックで組み立てられた野良犬の様は表情がある。ただ野良犬が持つ固有の不気味なイメージを、丁寧な書き方が逆に消しているようにも思う。

永峰半奈永峰半奈 (2018-11-11):

みうらさま 丁寧な評をありがとうございます。作者としてとても嬉しいです。 いただいた言葉について拙作と突き合わせながらじっくり考えてみようと思います。 本当にありがとうございました。

stereotype2085 (2018-11-11):

「未解決事件の…」から始まる二段目からこの詩は、急速に淀みながらも輪郭がはっきりする。荒廃した近々未来の場末での出来事でもあるかのように語り手の心情が情景描写によって描かれ、走り去る列車に語り手の喪失感が託されている。記憶という単語が四度も出てくるが、そのどれもが独特のアプローチで用いられており、既視感、繰り返しの感覚は読み手にはない。僕個人としては記憶の器たちを乗せて、電車が走って行くという描写が好きだった。

永峰半奈永峰半奈 (2018-11-11):

stereotype2085さま コメントありがとうございます。 記憶がこの詩の重要なモチーフなので、複数回使ってもマンネリに陥らないかが不安なところでした。が、成功したようで作者としては大変嬉しいです。 おそらく普通は忘却が喪失と結びつけられるのだと思いますが、私は記憶を喪失と結びつけたいと思っています。それは語り手にいかに重い記憶を背負わせるかという試みでもあります。そしてその上で詩になっていること。今回はこの試みが成功したと思っていいのかな、と皆さまのコメントに励まされております。 ありがとうございました。

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