別枠表示
窓
わたしが幼い窓だとして、 そこに集うちいさな鳥々が、花の種を無意識に蒔く手伝いをすることを、ありあまる救済と呼びたい、 姉は、この世で唯一、ホットミルクを作ることを許されて、わたしはその能力を妬むことなくやすらかに賛美する、 母に抱きつくとき、ラベンダーのポプリの香りが不安定にわたしの胸を満たす、 父からはしない、母だけの香りを抱きしめて、わたしはとても静かな子だった、 わたしを形容することばを、持たない人々は、やはり、わたしを静かな子だと言った、 そのうちに、わたしのもとに、家庭教師が現れ、わたしにあらゆる知識を教え込もうと、 やはり、知は力なり、などと、言って、彼はいつも、ペン先を潰す天才的才能を発揮するため、 今日もたくさんの筆記用具で膨れた黒い革製のペンケースに、ちいさな綻びがある、 わたしは彼から課される、じつにたくさんの筆記試験をうけながら、その実、知を疑っていて、 しかし、家庭教師が、若さゆえにおかしてゆく、非情な過ちとしての母との不貞をみるにつけ、やはり知は力なのかもしれないと、 彼からするラベンダーの香りは、いつも幾分かのタイムラグを含み、わたしに届いた、 父の弟は、十分に有能な、家庭教師であり、わたしは静かな子だったので、 何にも気づかずに、 物語を閉じて、眠りにつく、 窓の向こうに、ジョナサンと呼ばれる、庭番が女給と逢引をしている、姉のいれたホットミルクに口をつけ、牛乳の膜をあじわいながら、恋とはどんなものかしら、 やはりわたしは、幼い窓のまま、朝を迎えて、そこについた朝露を自らの手で拭うところから、朝は始まり、わたしはとても静かな子だった、
ログインしてコメントを書く
窓 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1070.0
お気に入り数: 1
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2025-12-21
コメント日時 2026-01-10
| 項目 | 全期間(2026/01/14現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


こんな練達の書き手が投稿してくるなんて 想像もできなかった。正直、読めてうれしいです。 ただ、 この不倫物語を目撃する"わたし"の感性は、 本質的には日本人の発想ではないし日本のはなし でもないような気がする。 あえてそういう世界に仮託しているのでしょうけど でも「家庭教師」という言葉は日本的です。 private teacher(プライベート・ティーチャー)の 訳語なんですが、 タイトルが「窓」でなく「家庭教師」ならば、 家(か): いえ 庭(てい): にわ 教(きょう): おしえる 師(し): せんせい ということなのですが、そうなると「窓」と いうタイトルの静寂さとは逆にいっそう痛烈な 皮肉が漂う作品になったような気がします。 それにしても──こんなところに、といっては 運営に失礼ですが、こんな良質の詩の投稿が あるとは、朝から儲かったような気持ちです。
1この詩をほんのすこし深堀りしてみました。 人によって違うでしょうけどボンクラのわたしには 幼い窓のまま、朝を迎えて、そこについた 朝露を自らの手で拭うところから、朝は始 まり、...... というフレーズがわからなかった。ふつうの人たち にとっては分かりやすい比喩だったのでしょうけど よく考えてみると、 窓についた露は視界を遮るものです。そして露はと きに溶けて涙のようにガラス面を伝い、その伝った ところだけ透明になって外がみえる。 それを自ら拭うということは、「見てはいけないもの (身内の汚れや裏切り)」を見てしまった自分を、自 分一人で受け入れ、整理するという孤独な作業を指し ているのでしょうね。 つまりこの物語の中心にあるのは家庭教師(父の弟) と母の不倫という家庭内=身内の世界の破綻です。 このことを知ってしまった書き手は本来なら相談で きる家庭内に誰一人、告白する相手がいない。自分 ひとりで窓の汚れというか視界を遮る露をぬぐわな ければならない孤独をしめしている。しかし過去形 の「静かな子だった」書き手は、さて、今はどうし ているのでしょうか。おそらく三十代か四十代にな って過去を思い出しているのでしょうけど、それが 気になります。 冒頭では、鳥が種をまくことを「救済」と呼び、姉 のホットミルクを純粋に賛美していた。しかし、最 後の一節でその無垢な世界が変質している。 朝露を拭うことは、夜の間に起きた不穏な出来事 (不倫や秘密)をリセットし、澄ました顔で朝を迎 えるための儀式です。つまり「美しい恋」にぼんや りとした期待や想像をふくらませていた書き手が大 人の世界の愛の醜い現実を知ってしまった。その傷 心のこころをだれにも黙って大きくなっていった静 かな子は、さて、どんなふうに成長したのか、次の 詩が詠んでみたいところです。 「知は力なり」といっていた家庭教師の(父の弟) は繊細なペンの穂先をへし折ってしまった。書き手 の心はその暴力と知への不信に耐えて静かに生きて いく。 こうみるとこの詩の物語には『ハムレット』の悲劇 の構造が垣間見られます──。 まだまだ語りたいことが山ほどあるのですがこの辺 で。
1コメント頂きありがとうございます。初出の際はタイトルを『比喩』としていたんですが、朝方にビーレビに投稿する際に誤って『窓』と入力してしまい、後の祭りなのです。タイトルの違和感に気づいていただき嬉しいです。また読解もとても丁寧にしてくださってありがとうございます。
0十分(充分)に~日本語の読みは気を使いますね。10分はじっぷんと読むのが普通らしい。誤りではないにしても僕は充分と書き込むでしょうね。 まあそれはいいとしても、 この中で不思議に思えるのが、~ジョナサンと呼ばれる庭番が女給と逢い引きをしているという。このジョナサンという外国名の使われ方ですね。 おそらくこの話が国内の事象でないだろう。ということが感知されてくる。 女給仕を取り上げた不貞の物語は西欧ではいくらでもある。少し古い映画でも観た記憶がある。題名忘れてしまった。VHSは持ってるけどね。 そして庭番の不貞と言えばやはり、O.H.ローレンスの「チャタレイ夫人の恋人」でしょうか。性描写が過激なことで有名な問題小説ですね。 冒頭に置かれた~幼い窓~同様に、度々出てくる~わたしは静かな子だった。または、静かな子だと言われたという、このわたしの扱いはキーワードですね。 ~牛乳の膜を味わいながら、恋とはどんなものかしら~ 語尾が思わせぶりに働いて、この物語る感覚からは客観的な距離を感じてしまう。(このような語尾使いは何方か(SSさん)の匂いに思われてもきますが、 考えてみれば冒頭から、わたしが幼い窓だとして~この語尾も例えのように置かれている。 何れせよ。幼い頃の記憶を辿っている風に見せて、 実はそのことと下地にある何かの題材を結び付けているのではないかしらん。 という感じが推察されてくるのです。 それは初恋の思い出としての父親の弟に対する恋慕からなのか、 父親に対する距離感なのかは、わからない。 そういえば、わたしも覚えがある。 仕事の最中、小さな窓枠からじっとこちらを見つめていた女性がいた。 彼女はおそらく知的か身体的な障害者だろうと思われた。 物憂い顔をして外を眺めていましたね。~出られない理由でもあるのだろうか? 憶測で考えていたらなんだかせつなくなってきました。 タイトル「窓」は、実は「比喩」の誤植だった。 わたしも先の作品で、巨体と書かなければならないところを巨大と書いてしまいました。笑 ですが、話全体が「比喩」に覆われた作りであれ、「窓」のほうがミステリアスでいいじゃないですか。? 何れにせよ、 この詩の内容は、 何かの物語から筆者の内情を混作に重ねた作りだと思いました。
0年をとると何かにつけてとろみをつけてほしくなるんですね。実際ラーメンもすすれないっすよ。むせるんだもの。この作品はやはりということばが気になる。私に頷けって言ってるのか?
0コメント頂きありがとうございます。丁寧に読解していただき感謝です。筆者として想定していなかった読みもあり、出して良かったと思いました。ありがとうございます。
0とろみは大切ですよね。
0全編、こまやかにコントロールされているレベルの高い作品だと感受しました。家庭をモチーフにしている、日常にちょっとした狂気を混ぜることで言語表象を揺らせていく手法、、な等々から、たぶんあの作者さんかな?云々、思いながら読みました。 ホットミルクという見慣れたものを不思議に不気味に見せるのは才能でしょう。 タイトル「窓」の意味はなんでしょうね。(ごく平凡な発想ですけど)アイデンディティとの結びつきを喚起しますが。 窓にも種類があります。
0わたしが幼い窓だとして、と言う表現でいきなり躓いてしまったのですが、その後読み進めて行く過程で、真実の詩、つまり過去に遡行するのでもなく、現在に淫するのでもない、歴史的現在に留まる勇気としか言いようのない、真実が有る詩だと思いました。母だけの香り、家庭教師、ラベンダーの香り、知力、庭番、タイムラグ、全ての言葉がこの詩に奉仕する、宝であると思いました。
0牛乳の膜まで味わう心情を忖度して見ました。「静かな子」の意義。彼のペン先を潰す才能。何か詩的雰囲気と言うよりは外部を希求して居るのかもしれません。詩の外部にこそ、そこにこそ本当の詩が有るのではないかと言う探求の詩だと思いました。
0これってもう名前表示されてますか?
0コメントありがとうございます。 窓にも種類がありますね。そういうところまで視野がある作者になりたいです。頑張ります。
0コメントありがとうございます。エイクピアさんのコメントの良さがこの詩のパワー?を上回ってます。素敵なコメントありがとうございます。
0こんばんは、読み終えた後に 内容を振り返ったとき 題名がもうこの作品を読ませることに成功していると思います。 「窓」 読み進めていく内にそれが確信に変わるので幼い窓の中が鮮明に 複雑な網目のように根を張り、色が帯びてきます。 詩文に隙がなく ありあまる救済とは 読み終えた後に 振り返ってしまう作品だと思いました。 フレーズを上げたらキリがないので、それほど無駄がなく引き締まった文だと感じます。
0引き締まった文と言っていただけてうれしいです。これからも頑張ります。コメントありがとうございました。
0