ようやく神様がやって来た
この星に
この手に
だから僕はまず
もう出勤をしなくてもいいんだと
本当に安堵した
カーテンを開けると
街のビルのど真ん中に大きな
神様が立っていて
おはようと拝んで
カーテンを閉めるまでに
僕は何回か陽をつぶした
神様は動かない気でいる
どうしてここに降りてきたのか
分からないといった表情の中に
憶測のラクガキは消されつつあり
みんな
腹が減っているのだねと
果物を持ち寄って自撮り
神様の踵の前で踊って
足の爪々はベンチになり
若者二人組が神様の肩に上がる動画は
この上なく炎上した
そういえば
果物を足元に供えるのでなく、その少し開いた口に投げ込むと
そっくりそのままお尻から排泄されるらしい
科学は負けて
その果物を食えば不死になると争った人たちの血で
あの神様の街は立ち入り禁止である
眼をつむると
神様が動いた気がする
インターホンが鳴る
カーテンを開ける
神様はそこにいる
後ろ歩きで玄関に向かう
荒れる息の音と
にじむ汗を確かめるように
神様は僕らを動かない
ようやくやって来たからね
ずっと居たとも
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 859.0
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 96
作成日時 2025-09-18
コメント日時 2025-10-02
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/06現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 20 | 20 |
| 前衛性 | 10 | 10 |
| 可読性 | 1 | 1 |
| エンタメ | 10 | 10 |
| 技巧 | 20 | 20 |
| 音韻 | 15 | 15 |
| 構成 | 20 | 20 |
| 総合ポイント | 96 | 96 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 20 | 20 |
| 前衛性 | 10 | 10 |
| 可読性 | 1 | 1 |
| エンタメ | 10 | 10 |
| 技巧 | 20 | 20 |
| 音韻 | 15 | 15 |
| 構成 | 20 | 20 |
| 総合 | 96 | 96 |
閲覧指数:859.0
2025/12/06 00時13分56秒現在
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すごく良い詩ですね。 感動しました。
1とても興味深く拝見しました。 いくつか、どういうことなのだろうと思う箇所があり、私なりにいろいろ考えてみました。 >科学は負けて >その果物を食えば不死になると争った人たちの血で >あの神様の街は立ち入り禁止である ここで「科学は負けて」というフレーズが入るのはなぜなのか。 普通なら科学的に説明したり検証したりするはずの事態が、群衆にとっては「神話的事実」「信じられる奇跡」として支配してしまった、という状況のように思えます。 >神様は僕らを動かない 神様は動かない、じゃなくて、僕らを、を足したのは、神様が動かないことで「僕ら」も動けなくなる。 そこにずっといることで「見守られている」ような圧力を与え、僕らの行動を制限する、というイメージがわきました。出勤はしなくてもいいけど、自由も奪われたのかなと。 良作だと思いました。読ませていただき誠にありがとうございます。
まるで漫画みたいなお話で、漫画を描いたほうが強いような気がいたしました。 詩として読むと、物足りない気持ちになるのは、読み手の想像力に委ねられている部分があるのかもしれないです。 想像できてしまうと、漫画として読んだほうがいいかな、という気分になります。
1ありがとうございます。 結局、神様が自らは「何もしていないこと」が大切なのだと思います。確かに、「僕ら」も動けなくなる。しかし、「神様」の不動がかえって「挑発」となり、人々を突き動かす(=争い)。 「僕ら」と「僕」を分けて考えるか、含まれていると考えるかなども、面白いかもしれませんね。
1ありがとうございます。 「強い」という言葉が、どのような意味かによって変わると思います。 「想像」できるものに、漫画によって一つの「像」を作り手側が当てはめてしまうことのリスクは、浮かんできてしまいます。 ただ、詩でしか書けないものを目指すばかりに、何か息の詰まる感覚をたまに覚えるので、こういうのが出てきてしまうのかもしれません。
1凄くいい。凄くいいから嫉妬しちゃってコメするのやめようと思ってたぐらい。ただ現在あまり話題になっていないのでコメする。率直に言って一つ前のヴァルプルギスより遥かにいい。なぜか。この詩には官能性や、敗北の耽美が随所に盛り込まれているからだ。しかも日常の延長戦上にあるような描写の中で。神様が来たから、もう出勤しなくていいと安堵する、や「科学は負けた」なんてどうしてこうも官能的で甘く、敗北感も滲むのだろう。それを割かしあっさりとした透明感のある文体で、文章で詩の中に放り込んでくる。この詩は透明性に満ちた日常の、官能が描かれている。断定気味に言ってみる。僕がこの詩で良く思ったのはズバリそこだ。途中もっと絞れたというか、もっと整理して、神さまが来ることでの恩恵が人間にとっては文明にとっては怠惰であり、官能であるという点にしぼった描写があったら、しかも日常で使うような言葉で!そうしたら僕はうなっていたことだろう。とにかくとても良かった。神様は僕らを動かない、は動かさないの脱字かなとも一瞬思ったけど、何かリリックが壊れる演出だとしたらそれはそれで凄い。総じてとても楽しめる「現代の」詩であった。?
0投票。珍しいんですよ、stereoさんが投票するの。
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