私たちは立っている
気の遠くなるような奇跡の上に
だから同じ奇跡には気付かないし
同じ奇跡が信じられない
なぜなら、鏡を見るのが怖いから
奇跡を当たり前と決め付けた日から
自分の奇跡を受け入れられず
受け入れている人が疎ましく見える
奇跡に化粧をする
奇跡に口紅をひく
奇跡が今日は寝不足で
顔色悪くて鬱になる
それでも、愛しい奇跡に会いたいと願う
一足先に進化を遂げた生命を
「生命」とは呼ばないルールがあって
見えない筈の奇跡が見えたら困る
さらにそれがずっと続いてくなんて
気持ちが悪いし都合も悪い
美しいと見とれていたものが
ある日突然未完成だと告げられて
歴史のいちばん最後のページに
慌てて書き加えられる
火の星で火のような
真っ赤な空を見上げながら
デッキチェアーに腰を沈める
青い星のことを想像しながら
海の家で食べる焼きそばと
冷えたビールを喉に流し込んで
帰りにはあそこのお土産屋さんで
アイスクリームも買いたいねと話す
隣で寝息をたててる人もまた奇跡
でも私の奇跡とは少し違うみたい
いいえ、だいぶ違うみたい
私たちは恋をする
胸騒ぎはきっと上の人のいたずらか
もしくは気を利かせたつもりの隠し味なのだろうと
でも今はそんなの要らないね、だって
奇跡を「奇跡でした」と知るのは何万年先、いや
何億年先のことか
その頃にはたぶん
もっと美味しい焼きそば食べて
もっとお洒落なTシャツ買って
もっと豪華なホテルに泊まる
絶対にあの青い星を超えてみせる
そうほくそ笑んだ、だって
手足の数ならもう超えている
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 1184.8
お気に入り数: 1
投票数 : 3
ポイント数 : 175
作成日時 2025-09-11
コメント日時 2025-09-20
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 50 | 50 |
| 前衛性 | 20 | 20 |
| 可読性 | 5 | 5 |
| エンタメ | 20 | 20 |
| 技巧 | 30 | 30 |
| 音韻 | 10 | 10 |
| 構成 | 40 | 40 |
| 総合ポイント | 175 | 175 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 50 | 50 |
| 前衛性 | 20 | 20 |
| 可読性 | 5 | 5 |
| エンタメ | 20 | 20 |
| 技巧 | 30 | 30 |
| 音韻 | 10 | 10 |
| 構成 | 40 | 40 |
| 総合 | 175 | 175 |
閲覧指数:1184.8
2025/12/05 20時15分22秒現在
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とても興味深く拝見しました。 宇宙や進化のような時間・空間的にとてつもなく大きな話と、食べ物や恋の胸騒ぎのような身近な体験が同じ詩の中で並列されています。 「人間の小さな営みもまた大いなる奇跡の延長線上にある」という視点が浮かび上がってきました。 トーンの変化も面白いと思いました。 前半は「奇跡を信じられない」「受け入れられない」と葛藤しています。 中盤は「焼きそばやビール」「寝息を立てる人」に奇跡を見つけて、柔らかい親密さが出てきます。 終盤では「絶対にあの青い星を超えてみせる」と挑戦的で未来志向の声に変わっていく。 この構成が「奇跡」をただ受け入れるだけじゃなくて、「奇跡を疑い、見つけ、乗り越えようとする」という人間の営みそのものを描いているように思えました。 「奇跡とは崇める対象ではなく、私たちが生きて感じて挑む営みそのもの」 っていう視点を示しているようにも感じました。
私たちは奇跡を一つしか知らないのかもしれない。たった一つの奇跡が他の奇跡からはどう見えるのか。とりあえず美味しいビールが飲みたい。鶏皮は塩で食べたい。恋人とチューしたい。何も間違ってないよね、ってことが言いたかったのです。ありがとうございます
1なぜ、鏡を見るのが怖いのか。近未来日記なのか、遥かに遠い未来なのか。タイトル通り、この詩では奇跡に拘って居ます。火の奇跡とは何か。奇跡と鏡の相関性。「生命」とは呼ばないルールとは。何か謎解き的な側面がこの詩にはあると思いました。
1コンセプトとしては、奇跡を星の上で起こす、ということでしょうか。すこし、詩文から意味が取りづらいところがありました。最後の、手足の数とか。僕には読み込めませんでした。しかし、試みとして、斬新だと思う詩でしたので、読んでいて興味深い詩でした。
1地球がもしももう一つあったとして、そのもう一つの地球から今の地球を見たらどのように見えるのだろう?と思って。 違うものも多いけどきっと同じものだってあるはず。同じ気持ちだってきっとある。 以上がヒントです。
0手足の数はまあ、言ってみればオチみたいなものですので、わからなかったらわからないままでいいです。わかった人だけのお楽しみで。 試みとしては、えーと、現代詩をおちょくってるのは確かかもしれないなう。
1或いは、ネリリし、キルルし、ハララしているのかもしれませんね。 奇跡という言葉が深く染み込む、とてもよい読後感を得られました。
1ありがとうございます。懐かしいですね、ネリリとキルル、ヘドバとダビデ、ナオミの夢、と書こうとして調べたらなんと谷川俊太郎じゃありませんか。なるほど先駆者がいらっしゃったんですね。火星人からしたら逆に私たちのしてることなんてみんなネリリとキルルとハララなんですよね。しかもウララだと狙い撃ちなんですよね。困っちゃうな。
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