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虚構に棲む三位一体
死神、悪魔、星という古典的なモチーフを借りながら、恋愛の愚痴、職場の人事、医療と救護といった現代的な要素を軽やかに混ぜ込んだ本作は、読めば読むほど解釈が分岐する迷宮です。 軽妙さと深刻さ、滑稽さと切実さを同時に抱えるこの詩を、ぜひ多くの人に読んでほしいと思い、推薦文を書きました。 死神である「私」から語られるのは女子高生のような恋愛の愚痴。かつての恋人である「星」に対する感情が、あまりにも人間的で、可笑しくも切ない。死神の役割を「リユース」や「救護」として描くアイデアも斬新で、死と医療、終わりと継続の二面性が重ねられているのが印象的です。 一方で悪魔のロアちゃんは、星にしがみつかれて恐怖に力を抜かすという、従来の悪魔像を裏切る存在。悪魔らしからぬ優しさを持ち、むしろ「助けを必要とする側」として描かれる点が、この詩に新しい陰影を与えています。星もまた、甘い好意をばら撒き、人を翻弄する「人たらし」として現れる。死神と元恋人でありながら、次のターゲットを探す軽薄さも見え隠れし、読者の解釈を揺さぶります。 星が意識を失った理由は何だったのか。悪魔が首を切ったせいなのか、それとも死神を助けるための仕掛けだったのか。それとも。。死神が切ったのか?!きちんと医療行為を施し、理性が本能に勝ったところをみると、もしかしたら死神が切ったのではないか。理性というより罪悪感で。あなたはどう考えますか? 人事部が登場し、会社のような舞台装置に置き換えられるユーモラスさも光ります。組織の一員としての死神や悪魔、そして星の立ち位置が、現実の職場劇にも見えてきます。 読み進めるほどに「いったい悪いのは誰なのか?」という問いが深まります。星なのか、悪魔なのか、死神なのか。そして、「あなた」とは、いったい誰なのか?読者への語りかけなのか。第四の壁を越えて問いかけられるとき、この物語はただの虚構ではなく、読む者を巻き込んで完成する劇へと変わる展開ともとれます。
虚構に棲む三位一体 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 613.8
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投票数 : 0
作成日時 2025-09-07
コメント日時 2025-09-07


(自分、B-REVIEWに投稿し始めてそろそろ7年ぐらいなのですが、自分の作品に対して推薦文が来るのは初めてです!これ通知来ないんだ……) 一応、こちらの元の作品は過去作「悪魔を愛した星の唄」( https://www.breview.org/keijiban/?id=14100 )、「星に害された悪魔の唄」( https://www.breview.org/keijiban/?id=14296 )から続くシリーズの3作目です。最終章としてあともう1作、投稿予定でもあります。 なお(ご存知かもしれませんが)タロットの「死神」と「星」はそれぞれ黄道十二星座の「蠍座」と「水瓶座」に対応するとされていて、この両者はあまり仲良くありません(他の星の配置でどうにかなる範囲)。 では「悪魔」は、「山羊座」に対応するとされており、蠍座と山羊座は仲が良い組み合わせです(他の星の配置次第では……)。念のため書きますが山羊座の方への誹謗中傷などではありません、歴史的にそうなっているだけです…… 推薦文タイトルにもある「虚構に棲む」の部分、個人的にはWin版東方Projectの20作品目シューティングゲームのエクストラボスを想起しちゃいました。 投票もありがとうございます。非常に嬉しいです。
0タロットはあまり詳しくないのですが、蠍座(死神)と水瓶座(星)は相性があまり良くない。 → 死神と星が元恋人という設定、蠍座(死神)と山羊座(悪魔)は仲が良い。 → 死神と悪魔が旧知で親しいという物語設定とも符合してますね。 つまりこの詩、タロットや占星術の対応を踏まえると、関係性にさらなる裏付けがあるということがわかるので、仁川路さんのコメントを拝見できてますます面白くよむことができました。 山羊座の人を貶める意図はない、とフォローも入れていて下さりありがとうございます! 「虚構に棲む」で連想されたのは、東方虹龍洞 〜 Unconnected Marketeers. ZUNさんの「東方Project」シリーズの第18弾にあたりますでしょうか? そのエクストラボスって飯綱丸龍のことですかね?ちょっとググってみました。
0(今年頒布された「東方錦上京」のEXボス、渡里ニナさんのほうです……二枚貝の妖怪ですね……)
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