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花の種
久しぶりに袖を通した冬物のコートの ポケットに入れたまんまのレシートと飴の袋 記憶の漂流物に混じってぽつんと浮かぶ あの夏を共に生きた向日葵の種 遠すぎる空を見上げては 光ばかり追いかける明後日の視線が いつかこちらに向くことを 淡く期待して水を注いだ夏の日々 太陽の吐息が遠くなるたび 黄色い涙を土に落として 入道雲の記憶を閉じ込めた たった一粒を さよならの言葉も残さずにこの手に残していた 一度も見つめることのなかったその瞳は どんな色をしていたのだろう 今年育てた秋桜は 気が付けば花盛りを過ぎていて まばたきの隙に木枯らしが色を奪い去っていた 裸で命を燃やし続ける細く頼りなげなろうそくが どうか少しでも長く灯っていますよう 両手で包んで 最後にこぼれる一粒の涙だけ掬い上げて 何も残らなかったなんて勘違いをしては きっとまた忘れてしまう まっさらで無口なモノクロの土に 何度でも水を注いで 花冠の輪の中で巡り巡る季節を抱きしめて 思い出を置き去りにした身軽な体で またはじめましてをする 芽吹きの鼓動はそこにある たとえこの目に見えずとも 一年に一度のさようならを またポケットにしまって
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花の種 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 685.6
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-11-26
コメント日時 2024-11-30
項目 | 全期間(2024/12/10現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ポケットにしまったらまた来年に同じ展開が起こる。向日葵の種でさえも何か思い出を紡ぐ存在なのだろうと感じました。
1ポイントとなり一行はやはり、 >一度も見つめることのなかったその瞳は >どんな色をしていたのだろう リアルの方で出会うガサツな女に疲れているワタクシには、この”消極性”が貴重だし、心地よいのですね。でも、どうなんだろう、同性には好かれない作風なのかもな?とふと思ったりもします(「うだうだ、いいやがって...」とか思われてそうな)
1普通に考えれば、自分の育てる向日葵の顔が見れないなんてことはない。大切な人の比喩だと受け取りました。 永遠に咲く向日葵を見つければ、季節の巡り(別れの巡り)を共に越えられる人がいるならそこには、冬は訪れない。コートも着ることはなくなるのだろうなと、未来を想像させられました。
1気に入ったフレーズがいくつかありました。「入道雲の記憶を閉じ込めた」や「芽吹きの鼓動はそこにある」などです。行と行の繋がりや自分の拘りから、引用フレーズが少なくしてしまったのですが、ポケットの中に詩が仕舞われているような、そんな印象をこの詩から受けました。
1飴の袋はカンロ飴ではないのだろうと思いましたよーアレですよアレ!きっといちごみるく!これです!違いますね、すみません。季節の移ろいを足早に、それ以上に人の心の移ろいも早い早いよねー
1芯の強い主人公ですね!快い一服の詩ですね。
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