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花火
共感をぶち壊してやりたい。そうきみは死んでやりたそうな勢いで言った。ぼくは、流れる水ってきれいだよねと言った。きみは、水の気持ちを想像するのは、猫になるより少しだけむずかしくて、ベランダからは宇宙が見えると言った。それは夜というもので、それでも星は星だから、きみは半分合っていて、死ぬ必要はないよと言った。きみは、わかったと言って、月をずっと眺めていた。月は割れて地球に堕ちるけど、きみはそれを少しも気にしないで、花火って瞬間なんだよね、と言った。ぼくは、その台詞を聴いてから死ぬために、今日電話をしました。だから、今日も世界中のみんなが「またね」ときれいな声を出すのだろう。
花火 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 3502.0
お気に入り数: 4
投票数 : 8
ポイント数 : 15
作成日時 2021-05-08
コメント日時 2021-06-12
項目 | 全期間(2024/11/07現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 9 | 6 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 2 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 15 | 10 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.3 | 0 |
エンタメ | 0.7 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 5 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ああ、いいですね。 論理的に筋道だってないけれど、感情的に筋が通っている感じがしました。 一見ひねった文章に見えるかもしれませんが、とても素直なものなんじゃないかと思います。 >共感をぶち壊してやりたい。 ここで、夜空に花火が炸裂するような、この作品がパーンと花開くような爆発感があります。 それで、 >そうきみは死んでやりたそうな勢いで言った。ぼくは、流れる水ってきれいだよねと言った。きみは、水の気持ちを想像するのは、猫になるより少しだけむずかしくて、ベランダからは宇宙が見えると言った。それは夜というもので、それでも星は星だから、きみは半分合っていて、死ぬ必要はないよと言った。きみは、わかったと言って、月をずっと眺めていた。 のところで、夜空に散った火花が煌めきながら落ちて、闇に吸われていくような印象が出ていると思います。 >きみは、わかったと言って、月をずっと眺めていた。月は割れて地球に堕ちるけど、きみはそれを少しも気にしないで、花火って瞬間なんだよね、と言った。 ここで、次々と打ち上がる花火、花火を見ている「君」、花火を見ている「君」を見ている「ぼく」、そういう花火の場の雰囲気が出ていると思います。 >ぼくは、その台詞を聴いてから死ぬために、今日電話をしました。だから、今日も世界中のみんなが「またね」ときれいな声を出すのだろう。 そして最後のここでは、「きみ」と花火を見たあとの余韻にひたるような、きれいな思い出を自分のなかで何度も繰り返し確かめるような、そういう感覚を受けました。 引用部分でも重なっているところがあるように、全体にグラデーションのような流れを感じて、夏の花火大会の(ような)雰囲気がよく出ていると感じました。 湿り気をたくさんふくんだ爽やかさ、夜明かりのミストシャワーが心地いいような感じと言ったらいいのでしょうか。 なにより、花火大会の、日常と地続きな、非日常の特別さも出ていると感じました。 いい抒情詩だと思いますよ。
1これ、読んでよかったです。詩の定義とか散文とかの定義とかよくわかんないですけど、久々に社交辞令0でコメントできて人に紹介したくなる作品。作者さんの年代とかわからないけれども、サリンジャー読んだ感じですってコメントしときます。ついでにいえば、初期衝動「的な」作品って、ビーレビでもよく無自覚的にもてはやされたりするけれども、これには敵わないし、こういうの読んだら、もう詩とか書けないですよね。わたしなんか。
1これは、音楽を聴いて自然と鳥肌が立つような、理屈抜きに純粋な、美しい経験をしたような。 ありがとうございます。
1君と僕の、繋がらないが感情の温かさを感じるやりとりが、心地よく最後まで読ませてくれました。
1すみません…こちらで誤操作をしてしまったのか、自作への無言コメントが二つ送信されてしまったようです。 運営の皆さま、申し訳ありませんでした。大変失礼しました。
0お読みいただきありがとうございます。 たしかにいくつかの意味では繋がっていないのかもしれませんが、感情とか、抒情の線のような、温かみのあるなにかは二人には繋がっているのかなあと、書いた私も感じます。 心地よく読んでいただけたとのことで嬉しいです。ありがとうございました。
0お読みいただきありがとうございます。 とても嬉しい感想です。私は音楽が大好きですし、短歌も少し詠んだり(57577のリズムが好きです)、もしも音楽的な詩だと少しでも感じる方がいたなら、なによりだと思います。 「理屈抜きに純粋」というのも、私は理屈で説明するのがとてもヘタなので詩を書いているタイプだと感じているので、それも嬉しい感想です(逆に理屈、構築?的に詩が書けたり、批評ができる人に憧れる面もありますが)。 こちらこそありがとうございました。
1沙一さん、「月とペンギン」に引き続き、感想をありがとうございます。 「水の気持ちを想像するのは、猫になるより少しだけむずかしくて、」は、私も書き手としてとても好きな部分です。その他にもルミナスラインがいくつもあるとのことで、詩も喜んでいるかと思います。私からもありがとうございます。 ご指摘の通り、「幼い」感じが強いと思います。この詩は幼い気持ち(モード?)で書いた、もしくはそういう気持ちの時に書いたもので、たぶん、ついつい詩や文体や心が固くなりがちな自分に対して、理屈ではなく新しく詩を吐いて訴えかけてみた側面がある気がします。 「おわりに「だから、今日も世界中のみんなが「またね」ときれいな声を出すのだろう。」と、普遍性に結びつける手つきが鮮やか。」 →ここですが、投稿直前の推敲でふと、「きれいな」という形容詞を入れた場所なので、おお、と思いました。「きれいな」という形容詞を追記した効果の是非は私にはわかりませんが、とにかく「普遍性に結びつける手つきが鮮やか」という過分な評価をいただき、なんだか恐縮です。 「エモい」は私は抒情詩ばっかり書く人だと思いますし、自分でも「エモイな」とは思いました笑 お読みいただきありがとうございました。
0死にそうな君に、それ止めたいぼく。天体の月や星座は不変のようでいて日々動いている。花火の瞬間性。電話すら天体の一部ではないのかと思えるような詩でした。
2お読みいただきありがとうございます。 >論理的に筋道だってないけれど、感情的に筋が通っている感じがしました。 一見ひねった文章に見えるかもしれませんが、とても素直なものなんじゃないかと思います。 →詩の解釈は書き手を含めてもちろん多様でいいと強く思っているのですが、「わかるなあ」と思いました。すごく素直な気持ちで書いた気がします。もともと論理的な思考が苦手なので、論理を外れると私はわりと素直になれるのかもしれません。 ただ、トビラさんは詩を視覚的に解釈(再構成?想像?)をするのが(するのも)得意な気がしました。私は自分の詩でも、文章から視覚的なイメージを想像するのが苦手で、言葉のふわふわとした輪郭を捕まえて組み立てないというか、うまく言えないけどそんな感じがします。その時の文体にもよりますが。 逆に言えば、自分とスタイルの違いがありそうな解釈を受けると、やはり、おおっなるほど、という発見があって刺激になります。 >全体にグラデーションのような流れを感じて、夏の花火大会の(ような)雰囲気がよく出ていると感じました。 湿り気をたくさんふくんだ爽やかさ、夜明かりのミストシャワーが心地いいような感じと言ったらいいのでしょうか。 なにより、花火大会の、日常と地続きな、非日常の特別さも出ていると感じました。 →ここのまとめの感想が、詩を書いたら詩で返していただいた感じがして嬉しかったです。 ご感想をありがとうございました。
0お読みいただきありがとうございます。 詩を送られるような感想をいただき恐縮です。短い文なのですが示唆がたくさんあって、 ・はて、ぼくは止めたかったのかな? ・月や天体ってたしかに実は日々動いていて、瞬間の連続だな。 ・電話は(たぶん)ぼくときみの繋がりだけど、天体の一部のような存在かと言われると、そんな気もするな。 みたいに色々考えちゃいました。解釈をいただけるというのは嬉しいことですね。 ありがとうございました。
0ものすごく過分な評価を受けている気がして、ついシュッと引き締まってしまいますが、ともかくありがとうございます。詩も喜んでいるかと思います。 サリンジャーの著作は読んだことがないのですが、「ライ麦畑でつかまえて」はそのうち読みたいなと思っていました。とはいえ評価と作風のイメージは知っているので「サリンジャー読んだ感じ」と人生で言われることがあることに(もちろんサリンジャーっぽい、というくらいの意味かもですが)ビックリしました。ビックリしたので早めに読もうと思います。 私は詩の世界だとその時まで年齢、性別不詳でいたかったり、文体もけっこう時々で変わるタイプな気がするのですが、今作が特になにか響くものがあったならすごく嬉しいです。(以前、詩人のコードのお話をしていただいたことを思い出しますね)。 ありがとうございました。
0>共感をぶち壊してやりたい 共感という言葉に対して、私は良いイメージがありますが、「きみ」にとっては悪いものらしい。 対人関係の、たとえばいじめのようなトラブルを彼らが抱えているところを想起しました。 >月をずっと眺めていた >月は割れて地球に堕ちるけど 宙で輝いている月が示すのは理想で、地球は、思い通りにならない現実のように思いました。
1お読みいただきありがとうございます。 共感はいい時にはとてもいいし、わるく作動してしまった時には絶望的にわるい気がしています。 例えばいじめというものも時代が変わるごとに性質がずいぶん変わるものらしくて、とても難しいものなのですが、ともかく人間関係への葛藤とか疑問の歴史って、しばしば詩にも出てくるのかもしれませんね。 地球はたしかに月に比べるとずっと現実に近くて、思い通りにならないのですけど、でも月が割れて落ちてくるのはただ単にきれいな気がして、だから言葉として出てきた気もします。 私は詩を書いている時も書いた後も、あまり解釈や想起をしない(できない)のですけど、代わりにそういった感想を頂けるのはうれしいです。 ありがとうございました。
0この詩は〈流れる水ってきれいだよね〉《ベランダからは宇宙が見える》などの日常生活では言葉にすることの少ない台詞の周りに、さらに《共感をぶち壊してやりたい》《花火って瞬間なんだよね》などの台詞が配置されている。結果として、日常の会話の文言からは離れながらも、会話の底流には〈死ぬ必要はないよ〉《わかった》という気持ちのやりとりが挟み込まれている。 この「花火」という詩を読んで、人と人との会話の本質は、この言葉にこの返答という、順番じゃないと、あらためて思います。会話で示された言葉の表現力とでもいうべき詩の力なんだと思う。詩全体で伝わるものがありました。
1お読みいただきありがとうございます。 > 人と人との会話の本質は、この言葉にこの返答という、順番じゃないと、あらためて思います。 うれしい感想です。私は日常社会における日常会話が、口下手という意味でも、定型的なキャッチボールがあまりうまくできないという意味でもとても下手です。加えて勉強もあまりできない方なので、答えがあるものが怖い感覚も人より強いと思います。 なので詩を書いている節は否めないし、その感覚が詩に滲み出ているのかもしれません。本質に触れていただけた感触があり、うれしいです。 > 会話で示された言葉の表現力とでもいうべき詩の力なんだと思う。詩全体で伝わるものがありました。 この『花火』は「ずいぶん(ある種の)まとまりのある詩が出てきてくれたなあ」と書き手としても感じた作なので、詩の力、詩全体で伝わる、と言われてうれしいです。過分な評価がほんとうに多いのでずっと恐縮していますが、詩も喜んでいるかと思います。 ありがとうございました。
1打ち上がる花火のイメージ、またねという幕の引き際のイメージが上手く繋がっていると思います。 上から下に流れる水と、下から上に上がる花火、真逆のものが流麗な文体の中で生きていると感じました。
1お読みいただきありがとうございます。 今作は流れやまとまりがいい、と評価されることが多いのですが、たしかに花火と水、上と下、という真逆だったり別方向のイメージの接続がたまたまうまくいったのかもしれません。 流麗な文体と言われると恐縮してしまいますが、今作は自分の能力以上のよさのある文体がなぜか出てきてくれたなあと思っております。ありがたいことです。ご評価ありがとうございました。うれしいです。
0小林さん、コメントありがとうございます。 私は昔から人との話し方自体が上手くわからなかったり、きれいな日本語が話せなかったり書けなかったりしたから詩を書き始めた面があるので、その逆を褒められるのはとてもうれしいことです。言葉がわからないから言葉を逸脱しているのですが、それでも読者に通じる点やバランスを求めているところがあります。 それがたまたま上手くいって、詩情が良く拡散されているように小林さんが感じられたならなによりです。ありがとうございました。
1ひたすらに瑞々しいエモーショナルな詩と思いました。 令和詩人ですよこれは。 こんな感性をノリで書いてみたいものです。
1運営の貴音さんへ 今作は実はかなり軽いノリで書いて軽いノリで投稿したのですが(結果的にはその軽い文体がよかったようです)、私よりもずっとすごい方々に長く褒められているので、ビギナーズラッキー詩だったらどうしよう…と汗が止まりません。 ともかく、令和に詩を始めたので令和詩人としてゆっくり詩を書いていきたいです。 お褒めいただきありがとうございました。
1A「共感をぶち壊してやりたい」 B「流れる水ってきれいだよね」 A「水の気持ち(中略)ベランダからは宇宙が見える」 B「それは夜というもので、(中略)死ぬ必要はないよ」 A「わかった」 会話分析てきには、Bの最初の発言は話題をずらしているように見えます。あるいは、前の文脈によってはこの会話が無軌道でなければならないというルールのもとに行われているという場合も考えられますが、後をみると提示されたワードに対して反応する通常のルールがみられるようなので、そうではないでしょう。そうすると奇妙なのは、Bは、おそらくAが死んでやりたそうな勢いだったから一度話題を拒否したであろうはずなのにも関わらず、死に関する話題を提示するという点です。Bは非常にAが死ぬことを否定する理由をつけることを急いでいる。そして、今度はBが死のうとしていることが明かされる。 気合の入った詩だと感じました。たとえば、「死にたそう」ではなく「死んでやりたそう」と書くような微妙な言葉への配慮。「ぼく」という一人称。「ベランダからは宇宙が見える」や「月は割れて地球に堕ちる」といった詩のデフォルメであるかのような文言、というのも、これがまさにデフォルメ化された詩人一般の描写であるように思うからなのですが。たとえば、「半分合ってる」という表現、きみとぼくが同一のなにかであることを暗示しているようにもみえます。死の意思をきみからぼくが引き継いだかのように。ここで、投票入れておきますね。 でも、もうちょっと上手く書けると思います。最後の方に2点、この会話が電話上で行われていることが明かされる点と、またねというのが世界中のみんなであるという点で詩が大きく動くと思うのですが、動き方が弱いように思います。
0コメントをありがとうございます。 私は詩の解釈は読み手に任せる(書き手とちがってもかわまないし、書き手も一人の読み手である)というスタンスですので、会話の解釈(分析)については、なるほどこういう解釈もあるんだと興味深く読ませていただきました。 技術的な面についても賛否含め、個々の箇所を挙げてのフィードバックをありがとうございます。自分の中で技術の言語化が進んでいないせいで、詩の当たり外れが大きい節がある気がしています。なので他者からの詳細なフィードバックというものは大変参考になります。 ご評価ありがとうございました。
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