ゆうゆうとしろながすクジラ                 - B-REVIEW
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きょこち(久遠恭子)

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ゆうゆうとしろながすクジラ                    

岩の上で考えごとをしている 波濤を頭から被っているのに 濡れていない そこは海ではなく 台所だったかも知れない 台所ではいつも青い魚が 積み重ねられた詩集の上を泳いでいる 時折、頭にこびりついた藻を食べて ふるい釣り針を吐き出している そこは台所ではなく 非常階段の踊り場だったかも知れない 回収されるはずもない大型不燃物が 都市の吹き出物のように 行く手を塞いでいる 錆びた冷蔵庫の扉を開ければ 白骨化した生き物の すべての裏側がみえる そこは やはり 海であらねばならない 巨獣や深海魚たちの夢が顕ち 幼な子はいつもの羊水で顔を洗う 水平線といのちの垂直軸が交わるあたり 絶滅危惧種のしろながすクジラが 藻の付いた魚を ゆうゆうと頭から齧っている


ゆうゆうとしろながすクジラ                 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 14
P V 数 : 916.8
お気に入り数: 1
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2017-11-13
コメント日時 2017-12-07
項目全期間(2024/02/26現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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閲覧指数:916.8
2024/02/26 23時34分52秒現在
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    作品に書かれた推薦文

ゆうゆうとしろながすクジラ                 コメントセクション

コメント数(14)
弓巠
(2017-11-13)

こんにちは。 ライトレスになりますが、徹底して隠喩を使い続けることで、文字通り「ゆうゆうと」確かに、新しい認識に入っていけるような、作品であると思いました。 「そこは やはり/海であらねばならない」という言葉が裏打ちするように、「食べる」「白骨化」という、ある種生々しい言葉を使いつつも、それが幼子を抱く羊水でもあるような、海の暴力性と、それすらも優しく包み込むような大きさを感じさせます。

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なかたつ
(2017-11-13)

 最初は視覚的イメージから始まります。ただ、そのイメージ「波濤を頭から被っている」と身体的感触「濡れていない」という不一致が伴っています。ここは現実か否か。  次の連で読者は語り手に裏切られます。「波濤」という言葉が当たり前のように、読者に海を想起させるのですが、「そこは(…)台所だったかも知れない」と。ちなみに、この「そこ」というのは、波濤を頭から被りうる「岩の上」のことでしょう。このようにして、場面の展開ができるのも、「考えごとをしている」からであり、想像するならば、目をつむり何かに想いを寄せる、その行為によって、自らの意識を他の場所へ移すことができるのでしょう。  台所における主体は「青い魚」です。積み重ねられた詩集の上を泳ぎつつも、時折頭についた藻を食べているという。そして、ふるい釣り針を吐き出しているという。なぜ、このような行為が成立するのか、それは、青い魚が泳いでいる=生きている場所が「詩集の上」であり、つまり、詩集の表面に藻や釣り針が置かれているから、青い魚が泳ぐとそれらが引っ付いてしまうのでしょう。  そして、またしても裏切られてしまう。この作品全体の語り手の「考えごと」によって、いや、波濤を被りうるのは、非常階段の踊り場だったのかもしれないと。  どこにも回収されえない大型不燃物は、文字通り邪魔者として、行く手=通り道をふさいでいるという。それがきっと冷蔵庫であり、その中に「白骨化した生き物の/すべての裏側」があるという。ここに、二段階の裏側があります。 一つ目が、冷蔵庫の表=大型不燃物であり、人はそれを見た目で判断し、ただの邪魔者としか扱わないが、それを開けて中を覗くということ。中を覗くことによって、冷蔵庫の中=裏がようやく見えます。  二つ目が、白骨化した生き物の裏側です。そこに在るのは、生き物が白骨化しているという現在しかありません。きっとこの生き物も白骨化する前は皮を被って、地上だか海中だかを彷徨っていたのだろうと想像はできるが、それは目に見えていない。現在から過去は想像でしか補えません。それと同様に、過去から現在も想像でしか補えません。つまり、過去には皮を被って生きていた生き物の中身がどうなっているかを知る術はなく、現在になって白骨化しているからこそ、その生き物の中身を見ることができるということ。  いずれにしても、見えている部分がいわゆる表であり、見えていない部分を裏側とすると、冷蔵庫の表=大型不燃物、冷蔵庫の裏=中に何かが収まっているということ、生き物の表=生きている姿、生き物の裏=白骨化した姿、という二重構造の裏側がここには存在しています。見えていなかったもの=裏を見るということ。(もしかしたら、白骨化した生き物というのは、現在では絶滅しており、それが保存されていたのであるならば、それはそれで、現在では見ることのできない(=裏)生き物の姿とも言えるのでしょう)  そして、読者はまたしても裏切られます。「やはり/海であらねばならない」と。「考えごと」によって紆余曲折を経た上での結論なので、それはそれで仕方がないかと思わされます。決めつけではなく、思考した道のりがあるからこその結論です。  最終連は輪郭を失った世界観。「巨獣」「深海魚」という一般名詞によって、漠然と、珍しい生き物たちの存在を思わせ、人もまた水の中から生まれ出た存在であることを思わされます。そうして、水平に、水の表面が保たれている均衡に向かって、生まれ出るいのちの運動が波濤をもたらすのでしょう。いやいや、波濤をもたらしてのは、「しろながすクジラ」であって、詩集の上を泳いで、藻を引っ掛けてきた青い魚をゆうゆうと「飲み込んでいる」という当たり前の想像で締めくくられるのではなく、やはり最後も当たり前の想像が裏切られるのです。ダイナミックなくじらが、魚の頭を齧っているという、なんだかクジラの矮小さというかなんというかを思わされます。  それにしても、どうして「シロナガスクジラ」ではなく、「しろながすクジラ」なのでしょう。それは、勝手な想像ですが、「白を流すクジラ」なのではないかと思わされました。これもまた、「シロナガスクジラ」という当たり前をひらがな表記にすることで生まれた裏切りの表現であると言えます。「しろながす」「クジラ」は「白を流すクジラ」として、自らが白骨化して、絶滅はしないぞと、そんな白の世界を波濤の中へ流し込むような、そんなクジラなのだと邪推しました。

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白島真
(2017-11-16)

弓巠 さん 早速のレスをありがとうございます。 地元県の詩人集に乗せる予定の作品です。(事前掲載は問題ない) 詩書きの日常性と、内奥どこかに眠る母胎回帰願望、そんなものを表現してみました。

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白島真
(2017-11-16)

なかたつ さん 素敵な読解をありがうございました。 詳細に読み込んでいただき、お時間がかかったであろうレス、 感謝いたします。 その解釈の一つ一つに、これは正解、不正解は詩に限ってはありませんので、 ともかく解釈、ありがたい限りでした。 と言いますのも、私は詩は元々、何かを明確に言い述べたいがために作るのではなく、 その言おうとして言葉ならないものを、あえて表現していくものと思っております。 もし確固として言いたいことがあれば、それは散文で心ゆくまで手を替え、品を替えして述べるでしょう。 ですから、詩は隠喩がどこか自分の心象にひっかかる、そのような表現を心掛け、模索しております。 それが自己中心的なものか、広く理解(誤読含む)され得るものかに、詩の言葉を磨く意味がありそうです。 このような読み込みをいただけたことは、ですから本当に嬉しく思いました。 (私自身がなるほど~(^^♪と思う箇所もあったりで) 100人いれば100人が違う解釈をする、そんな詩を書いてみたいものです。 ありがとうございました。

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まりも
(2017-11-16)

そこは海ではなく 台所だったかも知れない そこは台所ではなく 非常階段の踊り場だったかも知れない そこは やはり 海であらねばならない この転換が、ユニークですね。飛躍するのに、違和感がない。青い魚、頭に藻が生えているあたり、なかなか面白い。緑の髪の毛を生やした、人面魚を想像してしまいました。自分自身を外側から見た時の、感情の断片というのか、自分の分身、のような・・・。 しろながす・・・聞き流す、読み流す、にも通じそうです。詩集の上を泳ぐ魚とは、語り手の胸の内から抜け出した詩情を体現したもののように思われました。 〈水平線といのちの垂直軸が交わるあたり〉世界、に屹立する個々の時間。いのち、とひらがなに開かれて、やわらかな感覚がありますが、一人一人の個々の時間が突き刺さっていくような鋭さもありますね。そんな「いのち」の姿を描きとったあとに、自分自身のユーモラスな分身を、バリバリ、頭から「喰って」いく、しろながすクジラ、とは、なにものなんだろう。時間そのもの(死にいたるまでの)でもあるかのようです。 積み重ねられた詩集の「海」、大型不燃物、白骨化した生き物・・・不要なもの、ですよね、一般的には。 詩集もまた、不要なもの、であるのかもしれない。でも、絵画のモチーフになるような存在感を持つ、置換不可能、そのものが意味を持つ、そんな存在でもある、ような・・・・。 ぶっ飛んでいるようでいて、冒頭の青い魚がロンドのようにまた戻って来たり、二行ごとに抑えていく詩行で形を整えたりしているので、整然とした落ち着きもありますね。

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田中修子
(2017-11-20)

わ~、やっぱり、いいですねぇ~。 そういえば、クジラの出てくる夢を、昔見たのをふっと思い出しました。 海で兵士たちが戦っていて、澄んだ海の中にいたるところにお刺身のような肉がポトポト落ちていました。 肺が綺麗に切りひらかれている兵士が、致命傷だろうに、巨大なクジラの中に寝て、私に話しかけてくるのでした。 (あぶない夢だな~~~) 白島さんの詩を精神分析家にかけたらどうなるんだろう?? と妄想~。 「魂にメスはいらない」谷川俊太郎,河合隼雄 河合隼雄さんは、もう亡くなっているけれど。

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白島真
(2017-11-26)

あれ?? 田中修子さんまでの3人に返信リプしたのに 反映されてない?

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白島真
(2017-11-26)

あー!! 反映されてないじゃん!! 何でだろ?

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白島真
(2017-11-27)

まりもさん >自分自身を外側から見た時の、感情の断片というのか、自分の分身 >語り手の胸の内から抜け出した詩情を体現したもののように思われました。 このあたりの読み、当たっています。 そもそも、明確な意味を最初から言葉に当て嵌めようとはしていないので、 いろいろな読み方があっていいと思います。 ただ、書いた言葉がそのときの自分の心情(これも曖昧な言葉ですが)に 合致しているか、していないかだけは厳しく自己チェックをしています。 整然とした落ち着きと言っていただいたのも、うれしいです。

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白島真
(2017-11-27)

仲程さん ゴルゴタは名前は知っていますが、参加したことはないので詳しくはないです。 しかし、最近「機関車」の詩も書いたので、リプの内容には心惹かれています。 時間をみて調べて、読んでみたいですね。 もし、URLを貼っていただけるなら、うれしいですが、 それは他サイトだからまずいかなw

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白島真
(2017-11-27)

田中修子さん 修子さんの夢は幻想小説そのものだなーw(ラブクラフトか!^^) たしか「魂にメスはいらない」の掌中で夢日記を書き綴った「明恵」のこと 紹介してたよね?(読んだのが大分前なので、違ってたらゴメン、本が手元にすぐ出てこないんで) 「明恵 夢を生きる」は河合さんの著書だったと思いますが、なかなか面白かったのでお薦めします。 明恵は鎌倉時代くらいの坊さんだけど、せっせ、せっせ、と毎日見た夢を書き続けた人で 夢の自己分析をフロイトなんかより数世紀早くやっている。 世界的にもこんな事例はそうないんでは?

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白島真
(2017-11-27)

静かな視界 さん 苦手と言われてしまうと書いた者としては少々辛いですが、ただ、好みはそれぞれです。 私なら苦手な作品には、レスをしませんが、レスをいただけたこと自体はうれしいです。 >このような作品にするためには散文のようなものを書き、添削し、一度壊し、さらに詩作品に向けてのメタファーを選択し、詩句を構成していくという、まさに根気の居る仕事なのだと思います。 まったく、こういうことはありません。 散文と詩はそもそも別のもの(小林秀雄が言ったように、散文の中にこそ詩はあるとは別の意味で)と考えていますから、散文を添削して詩を作るような私にとっては邪道と思える行為は詩作50年の生活の中では、一度もしたことはありませんし、できないと思います。 死生観と詩の対比というお言葉ももうひとつピンときませんでした(すみません) 私にとっては死生観そのものを言語表現したものが詩であると考えているので、対比すべきものでないという考えがあるからでしょう。 タイトルに関しては、いつも迷います(つけるのが下手なんです) 一般名称としてのシロナガスクジラ(カタカナ)ではなく、 私独自の幻想憧憬を踏まえて「しろながすクジラ」(ひらがな、カタカナ混在)とし 主題はそれが人智を越え、「ゆうゆう」と私の心象風景や憧憬の中に棲んでいる様を それこそ「現実生活」と「対比」させて描きたかった気持ちがありました。 絶滅危惧種はシロナガスクジラでもあり、同時に現代資本主義文明に侵されたわれわれ人類=私 ではないかという問いかけでもありました。

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白島真
(2017-11-27)

仲程さん ゴルゴダでなく即興ゴルゴンダでしたね^^ 訂正いたします。

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田中修子
(2017-12-07)

「明恵 夢を生きる」河合隼雄さん 持ってます グフッ。 (精神分析の先生がミョウケイさん、と呼んで印象に残っていました) 類型的でなく自分の生き方と照らし合わせて解析する、すごいですよね。自分の夢はよく分からないなぁ……。 本を持っていることだけをなぜかちょっと自慢したかったので返信させていただきました、この呟きへの返信はお気になさらず~!!

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