ぼくが、一歩だけ、あぜ道をあるくと。
田んぼが、一歩だけ、後ろにあるく。
うるさいせみのなき声が、
ぼくにすっかりしみこんで。
まっすぐ一本のあぜ道が、
しずかにゆっくり滲んでゆく。
あぜ道のふうけい。
とけて混ざった空色は、
きっと、勿忘草。
おばあちゃんの、えがおの色だ。
ぼくは、また、はげまされて。
てくてくあるいてく。
田んぼの前で、ぴたりととまると。
せみに負けないおおきなこえで。
ひとり、「来たよ」とさけんだ。
じいちゃんは、田んぼでひとり。
こたえて、手をふりかえした。
忘れず、ぼくは、
むこうの空にも(来たよ)とさけんで。
空いっぱいに、おおきく、手をふった。
(ぼく、おおきく、なったでしょ)
おばあちゃん、笑ってくれるかな。
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 1545.1
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-08-11
コメント日時 2020-08-19
#現代詩
#縦書き
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2024/12/13 21時50分47秒現在
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> 忘れず、ぼくは、 >むこうの空にも(来たよ)とさけんで。 この、「忘れず」という言葉がとても優しくて素敵だなぁと思いました。 > ぼくが、一歩だけ、あぜ道をあるくと。 >田んぼが、一歩だけ、後ろにあるく。 成長してゆくものとしての「ぼく」と、田舎の風景がそこに留まるのではなく、どんどん「過去」へ歩んでゆく。そこに少しの寂しさを感じつつ、その先にいつも手を降ってくれる祖父母の姿が温かく思い起こされました。 素朴で素敵な作品だと思いました。 文章として、「〜と。」のような一般的に読点を用いるであろう箇所に使用されている句点には「ぼく」の年齢的な幼さを演出していると感じました。
1とても完成度が高いことを前提にしてコメントします。 少し抽象的になってしまうのですが、「ぼくが、一歩だけ、あぜ道をあるくと。/田んぼが、一歩だけ、後ろにあるく。」という空間把握、つまり田んぼなどの風景もまた人称化されるような空間把握が、とても印象的な詩だと思いました。ただ、この空間把握が詩の後半になると消えているような気がして、個人的には同じような空間把握のシーンか、もしくは亡くなったおばあちゃん(という解釈でよいでしょうか)との何かしらの対応関係を立体的に浮き彫りにするとより説得力のある詩になるのではないかと、邪推しました。 しかしながら、詩全体に広がるなんとも言えない風合いがとても心打たれる詩でした。
1杜 琴乃様 コメントを下さりありがとうございます。丁寧に読んでいただけたようで、大変嬉しいです。 「ぼく」は小学生くらいを想定しております。彼の幼さが伝わったようで、嬉しく思います。 「忘れず」に優しさを感じていただけたのは予想外でしたが、納得する部分もあります。悲しい話なのでぼかしていますが、実は「ぼく」の祖母は亡くなっています。「忘れず」以降は祖母の死に向きあい、祖母を想う部分なので、「ぼく」の優しさが現れたのかもしれません。
0白目巳之三郎様 ご指摘頂きありがとうございます。大変勉強になりました。ご指摘の通り、空間把握について、後半からは意識しておりませんでした。また、おばあちゃんについても、詩の中に投げいれたままで、工夫が足りなかったと気づかされました。 そんな拙い作品ですが、心打たれるといって下さり大変嬉しく思います。 改めてありがとうございました。
0読後感がとても気持ちの良い作品でした。しかし再読したいかと言われると難しいかなという気もします。とても丁寧に書かれているのですが、そこが手取り足取り親切が過ぎたのではないかと感じました。 つまり時間軸に添って心理、情景、ト書き、セリフが余すところなく描かれており、私には、想像力を必要とされずテキストを受け取ることに終始してしまったように思われました。 冒頭六行の情景描写はとても魅力的で引き込まれたのですが、その点が残念に感じたところです。
1斉藤木馬様 ご意見いただきありがとうございます。 想像の余地を残すということは、大切なことだと思います。改めてこの作品を見直しましたが、自分がやりたいことを詰めすぎて、余計な部分が多くなってしまったように感じます。いただいたコメントのおかげで、改善すべき点が見えました。ありがとうございました。
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