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私の輪郭
私は私が母と呼んでいた女の息子である 私は女の腹から生まれ違う女を孕ませた 二人の息子はすでに巣だっている 私はひとつの物語である 物語はつねに途中までしか書かれていないので つづきを書いてゆかねばならない 私は電車を運転する 自分の足で 手で 体で 軋りながらレールの上を走る 複雑な路線をトレースしてゆく 石と枕木とレールを噛み砕いてゆく ときに路線は狭く単線となり 被さる樹木の枝の殴打を浴びる 逸脱し飛び出そうとするたびに 癇に障る雑音 錆びの味 周波数の合わない夾雑 ベッドで眠れない病気の徘徊 私の病を運転している 不安と動悸に比例して速度は上がる 換気をしよう 換気をしてくれ ありとあらゆる窓を開け 凍えるほどの寒風を頼む 潮風や焼けた夕風 喉に痛いほどに 私の中を駆け抜けるよう 私は風を受けて進む帆船である 私は郷愁のなか出奔する 牙をむく波を乗り越えて どこか遠いこころへ到着するのだ ボン・ヴォヤージュ おお、船旅 満ちてくる光への憧れ 私の内側の小鳥たちがいっせいに羽ばたく 野蛮な太陽が目覚めさせる秘密 いつか私は歌うだろう すばらしい理屈や屁理屈を 幸せについて語りさえするだろう 私はへたくそな詩を書く 私のなかには盗掘された場所ある なくなった財宝、私のからっぽが 明澄な光りに晒されている そこに何があったのかは 今となっては自分でもわからない ときどき 自分が誰なのかが分らなくなる 私が誰であるのか 名前はなんというのか そんなことに意味があるのだろうか 大胆に言ってしまえば 私は誰でもないのかもしれない 私は私でなく 私という額縁の外に私をみいだしてみたい だが 私は私である 煙草はやめました 珈琲をがぶがぶ飲む 休日は空を見て暇をつぶす 気持ちを落ちつかせる薬と 睡眠導入剤を飲む 私は私の混乱と不安のなかで生きる 完璧であることなんか望みようもない ただ心臓の鼓動に従うまでだ 私は生きなければならぬ どのような日々であろうとも
作成日時 2018-11-14
コメント日時 2018-12-05
私の輪郭 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 928.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 21
項目 | 全期間(2023/02/09現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 21 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 21 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 21 | 21 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 21 | 21 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
きしみながらレール(定められた進路)の上を疾走する自分自身、そこからの解放を切に願う、という流れに共感しました。残念、もったいないと思った点と、素敵だなと思った点について書きます。 残念な点は、荘重に始まりますが、母、を客体化するところまでは至り切れていないのではないか、ところ。〈私は電車を運転する〉の連から始めた方が、自然に読者を作品に導入できるように思いました。 また、日本語は「私」を明示することが少ないので、全体に翻訳詩を読んでいるような印象を持ちます。(このあたりは好みでもありますが) 素敵だなと思ったのは、以下のようなフレーズ。 〈換気をしよう 換気をしてくれ ありとあらゆる窓を開け 凍えるほどの寒風を頼む 潮風や焼けた夕風 喉に痛いほどに 私の中を駆け抜けるよう〉 〈私のなかには盗掘された場所ある なくなった財宝、私のからっぽが 明澄な光りに晒されている〉 〈私の内側の小鳥たちがいっせいに羽ばたく 野蛮な太陽が目覚めさせる秘密〉 このあたりに「詩」がある、と感じました。
0まりも様 はじめまして。お読みいただき、コメントをありがとうございます。 〈私は電車を運転する〉の連から始めた方が、自然に読者を作品に導入できるように思いました。 とのこと。何度か読み返してみましたが、ご指摘の通りに書き直した方がよさそうですね。一人で書いていては、なかなか分からなかった部分です。ご教示ありがとうございます。 50歳から詩を書き始め、約10年書いてきましたが最近はスランプで書けなくなりました。刺激をいただこうと、こちらに投稿をすることにしました。 書ければなるべく新作を出しますが、書けない場合は旧作の投稿となります。よろしくお願いいたします。
0こんにちは。最終連、まとめにかかった印象があります。詩が小さくなっているように。あるいは、三~五連のあいだで広げすぎたか。《大胆に言ってしま》うなら、《私は誰でもないのかもしれない》というより「誰でもない」としたほうが適当だと思います。後半から詩の言葉の生き生きとした動きが弱まって、意思表明の表現に収まるのはもったいなく思います。 ちなみにスランプであれ書く機会をなくすのはもったいないですよ。発表とはまた別なわけだから。発表は「月に一編」だってかまやしないんだし笑。
0藤 一紀様 今度は最終連についてのご指摘ですね。どうもこの詩は連と連との繋がりがいまいちしっくりいってないのかもしれないと思えてきました。書いていただいたように、前段と比べると最終連は少し異質ですね。単純に最終連をとってしまうのか、全体にいじってゆくのか、考えてみます。
0修正しました。 「軌道」 私は電車を運転する 自分の足で 手で 体で 軋りながらレールの上を走る 複雑な路線をトレースしてゆく 石と枕木とレールを噛み砕いてゆく ときに路線は狭く単線となり 被さる樹木の枝の殴打を浴びる 逸脱し飛び出そうとするたびに 癇に障る雑音 錆びの味 周波数の合わない夾雑 ベッドで眠れない病気の徘徊 私の病を運転している 不安と動悸に比例して速度は上がる 換気をしよう 換気をしてくれ ありとあらゆる窓を開け 凍えるほどの寒風を頼む 潮風や焼けた夕風 喉に痛いほどに 私の中を駆け抜けるよう 私は風を受けて進む帆船である 私は郷愁のなか出奔する 牙をむく波を乗り越えて どこか遠いこころへ到着するのだ ボン・ヴォヤージュ おお、船旅 満ちてくる光への憧れ 私の内側の小鳥たちがいっせいに羽ばたく 野蛮な太陽が目覚めさせる秘密 いつか私は歌うだろう すばらしい理屈や屁理屈を 幸せについて語りさえするだろう 私はへたくそな詩を書く 私のなかには盗掘された場所ある なくなった財宝、私のからっぽが 明澄な光りに晒されている そこに何があったのかは 今となっては自分でもわからない ときどき 自分が誰なのかが分らなくなる 私が誰であるのか 名前はなんというのか そんなことに意味があるのか 大胆に言ってしまえば 私は誰でもない 私は私でなく 私という額縁の外に私をみいだしてみたい
0さらに修正を加えました。これを決定稿といたします。 「軌道」 私は電車を運転する 自分の足で 手で 体で 軋りながらレールの上を走る 複雑な路線をトレースしてゆく 石と枕木とレールを噛み砕いて進む ときに路線は狭く単線となり 被さる樹木の枝の殴打を浴びる 逸脱し飛び出そうとするたびに 癇に障る雑音 錆びの味 周波数の合わない夾雑 ベッドで眠れない病気の徘徊 私の病を運転している 不安と動悸に比例して速度は上がる 換気をしよう 換気をしてくれ ありとあらゆる窓を開け 凍えるほどの寒風を頼む 潮風や焼けた夕風 喉に痛いほどに 私の中を駆け抜けるよう 私は風を受けて進む帆船 郷愁のなか出奔する 牙をむく波を乗り越えて ボン・ヴォヤージュ おお、船旅 満ちてくる光への憧れ 私の内側の小鳥たちがいっせいに羽ばたく 野蛮な太陽が目覚めさせる秘密 いつか私は歌うだろう すばらしい理屈や屁理屈を 幸せについて語りさえするだろう 私はへたくそな詩を書く ときどき 自分が誰なのかが分らなくなる 私のなかの盗掘された場所 なくなった財宝、私のからっぽが 明澄な光りに晒されている そこに何があったのかは 今となっては自分でもわからない 私が誰であるのか 名前はなんというのか そんなことに意味があるのか 大胆に言ってしまえば 私は誰でもない 私は私でなく 私という額縁の外に私をみいだしてみたい 私はどこか遠いところへ到着するのだ
0おはようございます。 拝読させていただいて、この方はは私と 同じ方向を目指しておられる同志だと感じました。特に以下の箇所で、そのように感じました。 >おお、船旅 >満ちてくる光への憧れ >私の内側の小鳥たちがいっせいに羽ばたく >野蛮な太陽が目覚めさせる秘密 >いつか私は歌うだろう >すばらしい理屈や屁理屈を >幸せについて語りさえするだろう >私はへたくそな詩を書く この箇所は、まるで わたし自身(るるりら)のようです。 一行一行に私にも心当たりがあります。そして 一行一行に該当する私自身(るるりら)の書いた詩のようなモノ(詩作品)が 浮かびます。 わたしこそ、いつも夾雑物がまじってしまって、詩として昇華しきれず喘いでいます。 自身と自身ではないモノの境界を とっぱらった境地を知りたい。と、私も喘いでいます。同志だと お知らせしたいのは、同志を見つけたのは幸せなことだからです。 ほらね。 わたしも、幸せについて語ってしまいます。 病をおしての御詩作でらっしゃるようですね。真摯さを得るには、なにかを失っていると自覚してしまうときしかないのかもしれません。私は、galapaさんに ご自身を超越した。もしくは ご自身を超越させてくれる言葉の発露が、きっとおこると信じます。 またのご投稿を 楽しみにさせていただいています。ぜひまた 詩作品を読ませていただきたいです。
0るるりら様 詩は孤独に書いているわけですが、同志だなんて書いていただけて、それだけでここに投稿した意味がありました。腕を上下に二十回(嬉しいの表現)です。 るるりら様の作品もいくつか読ませていただきました。少しずつ全体を読みたいと思います(読むのが遅いので)。「時鳥」を読みましたが、その感覚,感性の豊かさに圧倒されました。読んで大正解の素晴らしさでした。感想を述べるのが不慣れで下手で申し訳ない。いやー、いろいろ感じるところがあったのです。 なにはともあれ、今後ともよろしくです。酷評も可ですので、厳しい目でお付き合いください。友好の印を意思表示してくれたことに感謝いたします。
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