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俯瞰   

なかたつ 
作成日時 2018-10-31
コメント日時 2018-11-14

 

オー・エルの臀部に 赤いボールペンで描かれた 赤いぐるぐるが踊っていた 「切り取って、世界」 今日と明日の境界線は見えないけれど 朝帰りしなくてはならないから 仕方なく、明日の中に体を浸す 轢死すれば 赤いぐるぐるが宙に舞って 夏を終わらせる 「切り取られて、世界」 羽搏きの音が聞こえた、気がした 音になるには不十分すぎる唇の震えもまた 美声だと言えるのだろうか (響き、瞬く間に、飛ぶか、咲かせよ、花) 「きみ、サボテンでも買ってみたら」 の二週間後には 部屋の窓際に四本のサボテンが並び 朝を求めて屹立している その外、二階の高さで 蝶が交尾している 「曲線が、まっている、ね」 オー・エルの笑い声が デスクを照らして、ハエが踊る 「切り取って、ね、世界」 肩をトンと叩かれてから 狭い居酒屋が広く感じられて あの時から 赤いぐるぐるは、まっていた 「まって、まって、蝶のように」 ( そういえば、ぼく、轢死してたよ 会社からの帰り道で 家の駐車場に車を止めてから 家に入るまでの5メートルの間で 色褪せた白いセダンだったかな 「ねえ、まって、まって」 まぼろしだったんだよ、まぼろし 彼女はもう姿を消して あとを追いかける人はいなかったよ 入社して2ヶ月で何を手に入れたのかな でも、赤いぐるぐるはまぼろしじゃなかった 「ま、ぼ、ろ、し?」 轢死したんだって、ぼくは だから、いっぱい歌って欲しい ぼくは歌が上手くなかった 声もよくなかったから きみの声が聞ければいいのかもしれない 轢死する前にもっと耳鼻科にいけばよかった そういえば 窓際に置いておいたサボテン 花を咲かせたかな 「取り残されて、世界、羽搏く、世界、まう」 ) オー・エルの臀部にあった 赤いぐるぐるは 洗われてしまって 躍る方法を忘れてしまったから その場に留まることにした そのように誰かが後日談として 語り継いで、秋 「あれは、とんぼ、かさなる」 もうサボテンはいらないね だから、帰らないことにしたよ 今日もデスクで 黒いぐるぐるをぐるぐる 「汚した、世界、切り取って」 分断した明日を追いかけて 轢死したぼくを見ている


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じゅう (2018-11-01):

拝読しました。壊れた、不連続な動画を見ているようでした。正直なところ、難解で言わんとするところが良くわからなかったのですが、むしろそれが雰囲気をさらに高めていると思います。好きな詩でした。

なかたつ (2018-11-03):

じゅうさん 正直なところ、僕自身も難解で言わんとするところがよくわかりませんが、こういう風な詩を書こうと思って書こうとしたんだと思います。ありがとうございます。

こうだたけみ (2018-11-10):

なかたつさんがそれを踏まえて書いているか本文からはわからないのですが、私は、ここに出てくる〈オー・エル〉にアウトラインをかけて読みました。 どういうことか説明をします。 AdobeのIllustratorというソフトウェアで作成したデータを共有するときは、共有相手が使用フォントを持っていないせいで起こる文字化けを防ぐため、 フォントにアウトラインをかけます(フォントのアウトライン化とは、文字データを図形として保存すること。文字の修正はできなくなるが、文字化けは起きなくなる)。そのアウトライン済みデータのファイル名には、「〇〇_ol.ai」(.aiはイラレデータの拡張子)というように、outline=ol、OLと表記するのが慣例となっています。 そんなわけで、イラレデータを扱う人間は〈オー・エル〉という文字を見ると、オフィスレディ以外に、アウトライン済みのデータを思い浮かべるのです。 さて、アウトラインとは輪郭のことですが、転じて物事の大枠、大要という意味でも使われます。アウトラインを掴むには細部だけを見ていてはダメ。俯瞰が必要です。ここでタイトルの〈俯瞰〉へつながります。 電話中や会議中など、いつのまにかメモ帳に出現している〈赤いぐるぐる〉や〈黒いぐるぐる〉。それに重ねるようにして、ランダムに思い出されては描写される記憶の細部。その細部からズームアウトで全体を俯瞰して、散りばめられた五つの赤い点と一つの黒い点をつなげば話者の生活のアウトラインが浮かび上がる。それは、どうも薄っぺらくて奥行きがないみたいで、Macの画面上でアウトライン化されたフォントを見ている気分になる。話者が見ているという〈轢死したぼく〉には、カートゥーンアニメで車にひかれた登場人物のようにペラペラで、風が吹けば飛ばされてしまうくらいの軽薄さを感じる。その体にフォーカスすれば、紙が破けるほどの筆圧で描かれた赤と黒のぐるぐるでできているのがわかるだろう。 以上、こうだはこのように解釈し、視点の切り替えがおもしろい作品だなあと思いました。

なかたつ (2018-11-14):

こうだたけみさん イラレ、僕も遊びで弄ったことある程度で、なるほどなあ、ということで「視点の切り替えがおもしろい」と言っていただけましたが、こうださんもこの作品の「ぐるぐる」のように、ぐるぐるしていただいて、イラレの話からうまくアウトラインの話へとぐるぐるしていただいたなあ、と思っています。 というよりも、「話者の生活のアウトライン」が浮かび上がる、という指摘が、すごくよくて、僕たちの日常でも、目の前にいる相手と四六時中時間を共にしているわけではないので、会話とかから、その人そのものを想像する時、会話もまたアウトラインでしかないんだなあ、と思うんです。それが悪いってことじゃなくて、むしろ、それって、日常的なことなんだなあ、って。で、この作品、僕も読解できないですし、いろんな出来事が散りばめられて書かれてあるので、まさに、アウトラインというか、本質は掴めない。その掴めない感じがぐるぐるぐるぐるってものに昇華されてるのかなあ、と。 どっちかと言うと、僕がぐるぐるしているというより、誰かに書かれてしまったぐるぐるを見てしまったという感じな気がしますが、やっぱり、ぐるぐるしていまありがとうぐるぐござるぐるいまぐるぐしたる。

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