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目的地
好きな音楽が体いっぱいに流れる 自分の身体から周囲に音漏れしていないか心配になる 身体が横に揺さぶられながら、眩い光を一心に浴びて、漸く頭がおはようと私に手を振った 目を擦るサラリーマンのスーツにはシラミが浮き、僅かに口が開いたまま宙に視線を泳がせる 私は何となくその人を見ていたが、そのうちすぐに降車していった 自分の降りる駅にはあとどのくらいで着くかなと、路線図を見る。 いくつも並ぶ見慣れた駅名を眺めながら、私は自分に目的がないことに気が付いた そもそも私はどこに行こうとして電車に乗ったのか、何かあったはずなのに何も思い出せない 目的地があったのかもわからない それでも私は止まる駅一つ一つを見ては、ここは自分の降りる駅ではないと思った この先に私が降りなければいけない駅があると思った そんなものどこにもないということは自分が一番わかっているはずなのに、そう思わずにはいられなかった 私と一緒に乗ってきた人たちが、私に付き合いきれないとでもいうように一人、また一人とそれぞれの目的地へ消えていく さっきまであんなに騒がしかった音楽は聞こえない 電車の揺れに抗う力はなく、強い朝日は責め立てるように私を刺した ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい これは誰かのせいなどではない みんな私を支えてくれた 応援してくれた 励ましてくれた それなのに私は全て台無しにした 皆が与えてくれた目的地にすら降りられなかった もう私がいていいところなどない 自分でぶち壊してしまったのだから このまま電車が霊柩車となってはくれないだろうか 誰もいない世界へ連れてっていってはくれないだろうか それでも降りろというなら 皆を目的地へと導くレールの一部にしてください
目的地 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1040.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-10-16
コメント日時 2018-10-24
項目 | 全期間(2024/11/14現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
拝見しました。 目的地とはそもそも自らが決めて自らの意思で進むものなのに「目的地」などないといい、しかし認めたくないからとこの先に進むべき道があるのだと思い込み、自己嫌悪に陥りレールの一部になりにいく。そんな主人公の心の弱さが多分に盛り込まれた詩だと思います。また、特に私が良いと思ったのは最終行です。レールの一部になりたい、私はそれも立派な目標であり目的地だと思います。しかしあまりに悲観的な主人公はそのことすら気付けない。そんな皮肉めいたメッセージが、この文にあるような気がしました。
0電車が霊柩車にとか、レールの一部にして下さいっていうのが自殺する人のリアルな心情なのでしょうね。こういうふうな言葉で描写しているのが良いなぁと思いました。
0ご感想ありがとうございます。 詩を書くのは初めてでして本当にこれでいいのかと思っていましたが、内容を汲み取っていただけたようで本当によかったです。 これは実体験に沿って書いたのですが、そうですね。周囲の期待もあったからか、目的地がここでなければならないという思いと、ここじゃないんだという思いが混ざり合ったせいで、結局それ成し遂げることも、開き直ることもできなかったのだと思います。 最後の一行はどうしようかと最後まで悩んでいたので、そのように言ってもらえてよかったです。 自分的にはかなり悲観的に描いたのですが、それも立派な目標、目的地だと言っていただき、そんな見方もあるのかと思いました。本当にありがとうございます。
0「自分でぶち壊してしまったのだから このまま電車が霊柩車となってはくれないだろうか」 やはりここが印象的です。自分の乗って居る電車が霊柩車になってほしいという願望。三行も謝って居る詩行も印象的で、 「それでも降りろというなら 皆を目的地へと導くレールの一部にしてください」 こんな最後の二行も、自分をレールの一部に変えてまで、皆の役に立ちたいという尊い願望が出て来てさらに印象的です。最初の願望は、電車は自分以外も乗って居るのだから、手前勝手な願望とも言い得るわけですが、最後の二行の願望は、自分だけに限定した、他を巻き込まない、潔い願望だと思いました。
0統合失調症の症状を思い出させられました。 「それなのに私は全て台無しにした」がキーなのかなと感じました。
0自責の念と情景描写の見事な旋律に魅了されました!私は読者の心をつかむ殺し文句が入った4行程度の詩しか書くことができない文章力ですので、これだけ長い詩の全体統一をできるその手腕に圧倒されました!!
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