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背高泡立草(序章)
❶「スノーフレーク」 「月が綺麗ですね。」と。 横浜駅前、ひび割れた地面。 二つの影が一つに寄り添っていた。 何者にもなれない私が、何者にもならない君に ありふれた言の葉を垂らすには正しすぎたから。 言葉を失い、遺書を破いた。 そんな冬夜に月が落とした、ひとつの物語。 ❷「境界線」 瞼を擦る。 珈琲を一杯。 服は着替えず、寝癖も直さず、ただ帽子をかぶる。 ローファーを履く。靴紐はない。 人がいない道を、枯れ葉のみが歩いている。 家から徒歩二分のコンビニで水を買う。 20分歩き、駅に着く。 人がいる。 イヤホンを付け、遮断する。 歌詞はない。声もなく、ピアノだけが鳴り響く。 改札を抜ける。 秋風が頬を少し赤らめる。 人の声はピアノに溶け、聴こえない。 電車に到着し、人が降りる。 逆光するように、僕は乗り込んだ。 人がいない。 いや、人がいた。 変わらない日常を、今日もまた一歩。 三十五分の、長くも短い微かな揺れ。 車内に貼られた多種多様で馬鹿げたポスター。 対向窓に映る、帽子をかぶった僕。 目に映るの描写は1秒経たずとも変わっていく。 田舎から下町に変わるこの瞬間。 感覚の収束線となり、心安らぎ、人となる。 下車駅のふたつ前。 ドアが開くと人が増え、感覚が沈んでいく。 目に見える人、皆、猫背になっている。 滑稽だ。いや、美しい。 駅員の声がする。 下車駅の高低で、 私のなかに、喜びが満ちた。 ❸「31m」 酔いが覚めても、 自分に酔って、 水光なき花が今日も咲いて 憂いに寄り添っている。 薄青色が曙色を押し寄せて、 今日もむせた煙を落とし、酔い回す。 電車が通り過ぎた後の静寂が雑音になる今、 自由の恐怖が黙らす馬鹿げた愛嬌。 に塵まみれの東京の回廊。 幾らと並ぶビルを眺める170cmの小さな僕。 心一つ売らず、体は売れず。 有りもしない詩を並べては煙をあげ、人となり。 寝転んだ指の隙間に5つの風景。 描写は変わり、輝度変わらず。 光は死んで生きている。 風向きはいきなり、都会に交わり。 枯れないように、わずかに水を落とす。
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背高泡立草(序章) ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 18.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 3 時間前
コメント日時 3 時間前
| 項目 | 全期間(2025/12/06現在) |
|---|---|
| 叙情性 | 0 |
| 前衛性 | 0 |
| 可読性 | 0 |
| エンタメ | 0 |
| 技巧 | 0 |
| 音韻 | 0 |
| 構成 | 0 |
| 総合ポイント | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文

