美貌の青年が
雨も遮らずに路上を歩いている
行き先は不明瞭で、
右腕をダラリと垂らし
足取りも危うく、あやしげだ
にも関わらず
青年の目は揺るがず
自分の価値を信じている
僕は切らしたタバコを買って
そのまま部屋には戻らずに
階段の踊り場から
下の階を見ている。
昨日の夜、トー横キッズの一部
ほんの一握りの集まりが、
暴徒まがいの行動を起こして
警察とやり合ったらしい
その騒動の最中にも
先の青年はいたらしいが、
一度も目をくれることなく
遠方へ、ただ遠方へと
足を進めていった。
その姿は
泥を何度塗られても
自分の偉大を信じて疑わない
画家のクールベ、
あるいは、
情欲の化け物、クリムト。
ブラッドムーンに乗じて
港に乗り込んだ移民たちも、
ジハードを唱え
最後の夜を楽しむムスリムも、
彼には敵わない。
今年も八月の風が吹く
年月を重ねても
繰り返される八月の風が。
だからこそ、と青年は言う。
ビルがくずれ、硝子がくだけ
空から降ってきたとしても、
光を見据え、揺るがず
強く立つ人であれ、と。
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 566.4
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-10-04
コメント日時 2025-11-05
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
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| 可読性 | 0 | 0 |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
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| 構成 | 0 | 0 |
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閲覧指数:566.4
2025/12/05 19時57分34秒現在
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おはようございます。 降り続く雨のようにシトシトと、短編小説などで読んでみたいなと思いました。甘すぎない雰囲気がいいですね。 >>足取りも危うく、あやしげだ >>にも関わらず >>青年の目は揺るがず >>自分の価値を信じている という連、 >>その姿は >>泥を何度塗られても >>自分の偉大を信じて疑わない という、連が特に好みでした。
0ぼんじゅーるさん、コメントありがとう。このまま流れていきそうな笑 作品にスポットをあててくれて嬉しい。 この作品の肝はやはり画家のクールベ、とかブラッドムーンの箇所だと思う。最後まで悩んだけど投稿してよかった。
0意気込み、鼻息だけという感じ。描写、という感じ。目的地は見えない、その血走った目だけがこちらを向いている。
0あっ、そという印象のコメ。あましび氏にはそう見えたんだなとの感慨を抱いた。
0八月の風に抒情を感じます。美貌の青年。ブラッドムーン。ジハード。イメージを喚起する単語たちがそれぞれ雰囲気を作っていると思いました。
0エイクピアさん、コメントありがとう。 イメージを喚起する言葉、がこの詩には多くて、それがこの詩を何とか読めるものにしていると思う。個人的には、クールベが自分の偉大さ、ではなく偉大、を信じて疑わないというところがとても気に入っている。
0画家のクールベ、情欲の化け物、クリムトですか。最後の夜を楽しむムスリムなど、印象的なフレーズが多い中でブラッドムーンはさらに印象的な単語でした。青年と僕。ガラスが砕け、空から降ってきたら、どうするだろうかとリアルなレヴェルで考えると、何か詩的感興には浸れないかなと思いました。
0エイクピアさん、コメントありがとう。ガラスが砕け、空から降ってくる。これを比喩として捉えないと相当危機的な状況だ。ビルが破壊されているのだから。この表現はリアルなシチュエーションを彷彿とさせながらも、だが比喩という構図になっている。もう一度そういう形で楽しんでくれると嬉しい。
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