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夏の露店
広場の露店で 買ったレモネードは 透明さを歪めることなく 褪せた値札をぶら下げている 昨年 灯ったばかりの灯は 酷暑に攫われ 茹で上がりのパスタを テレビに叩きつけながら 消えてしまい 残された空洞は 埋めきれぬ渇きを 潤すべく 広場の片隅に 露店を出したのだ ひとくちずつ 喉の奥へと注ぎ込み 無音の震えを待つ 琥珀の夜 広場では 怒声の灰が舞い 炎上の火種は 風よりも早く 客の記憶を焼き払う いつか 露店が潰れて 碑になったとしても わたしの名は どこにも刻まれない わたしは自分のために 買ったのだ ひとくちの灯が 世界の底で まだ かすかに呻いていて わたしの舌は 売れ残った氷片とともに 黒い袋に詰められていく
夏の露店 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 729.2
お気に入り数: 1
投票数 : 2
ポイント数 : 28
作成日時 2025-09-11
コメント日時 2025-09-13
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 5 | 5 |
| 前衛性 | 2 | 2 |
| 可読性 | 5 | 5 |
| エンタメ | 2 | 2 |
| 技巧 | 5 | 5 |
| 音韻 | 5 | 5 |
| 構成 | 4 | 4 |
| 総合ポイント | 28 | 28 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 5 | 5 |
| 前衛性 | 2 | 2 |
| 可読性 | 5 | 5 |
| エンタメ | 2 | 2 |
| 技巧 | 5 | 5 |
| 音韻 | 5 | 5 |
| 構成 | 4 | 4 |
| 総合 | 28 | 28 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


廉価だけどむかしから透明さを失わないレモネードは 作者ご自身のことかと思われます。 喧騒の絶えない広場とはSNSや詩投稿サイト やテレビなどの表現媒体などを暗示しているように わたしには見えました。 広場の片隅に出された露店とはそういう広場 の喧騒や騒動から離れてようやく作り出された 小さな安息の空間なのでしょうか。 そこもいつまでもつかわからない。 いずれ回収車に回収されていく如き 運命にあるとしても 「わたし」が凛と静かに透明なレモネードを 口に運ぶ姿が印象に残る作品でした。
0コメントありがとうございます。 「レモネード=作者」と捉えていただけたことに驚きました。確かに意識せずとも、自分自身を重ねていた部分があったのかもしれません。 しかし、なかなかそうなれない(透明になれない)ジレンマを抱えています。 「広場の喧騒」や「片隅の露店」を、SNSや表現の場と読み取っていただけたのもこちらの意図したものと一致していたので驚きました。 喧騒な世の中で、純粋であるが故に色々言われて、もしかしたらいつかなくなるかもしれない露店が本当にありまして。 でも、takoyo2さんのコメントを拝見し、その露店がある限り、透明なレモネードを大切に口にする自分でありたい、と改めて思いました。 丁寧に読んでくださりありがとうございます。
2こんばんは、つつみさん 一読してこれはもう詩とビーレビューのことだろうと読みました。 >広場の露店で >買ったレモネードは >透明さを歪めることなく >褪せた値札をぶら下げている 重厚な建物のデパートではなく露店なのですよね。季節限定の儚さというか、一夜限りの儚さとでもいうか、でも夏の露店はキラキラと輝いていていて活気に満ちている。売られているのは〝透明なレモネード(詩)〟作者はそれらを〝売って〟いるのっはなく〝買って(読んで)〟いる。 これらの記述から作者がこの場所と詩をとても儚く美しいものとして捉えているのを感じました。〝褪せた値札〟というのは否定的な意味ではなく〝詩〟という昔からあるものとして使われているのだろうと読みました。 >残された空洞は >埋めきれぬ渇きを >潤すべく >広場の片隅に >露店を出したのだ >ひとくちずつ >喉の奥へと注ぎ込み >無音の震えを待つ そしてテレビという一方的なメディアでは埋められない空洞を満たすために、自らも露店を出す。〝昨年〟というくだりもつつみさんがビーレビに姿を見せなかった時期にちょっと重なりました。 〝ひとくちずつ 喉の奥へと注ぎ込み 無音の震えを待つ〟この記述が美しく作者がいかに大切に詩を読み、書いているかがわかります。実際につつみさんの批評も作品もそういった丁寧さと風情みたいなものを感じます。 >いつか >露店が潰れて >碑になったとしても >わたしの名は >どこにも刻まれない ビーレビューが一年後にアーガイブ化され閉じられることはサーバーの権利を持つ三浦氏と取り交わされていますから〝碑〟はそのことを指し示されているように思いました。つつみさんの名前も残るでしょう? なぜ刻まれないと記述されているのか… >わたしは自分のために 買ったのだ ここからをどう解釈するか、なのだと思うのですが…三浦氏が「サーバー権を他の人に移した。その人も決定には賛同している。」と書いていましたが、今サーバー権を持っているのはもしかして!?…深読みしすぎだろうか、まぁ私の妄想・誤読ということで答えて頂かなくて良いです。ややこしくなりますから。笑 >ひとくちの灯が >世界の底で >まだ >かすかに呻いていて >わたしの舌は >売れ残った氷片とともに >黒い袋に詰められていく つまりアーガイブ化=閉鎖を望んでいないのだろうと解釈しました。それはこれからも息づくはずの詩の息吹が、生かされるべき詩という命が葬られるような結末が、作者の悲しみになっている。 私にはそう読めました。 とても良い作品を読ませて頂きました。(あなたのような方が運営に相応しかったね)
0広場の片隅の露店。最後の連で出て来る氷片。勿論、ひとくちの灯。広場の露店で買ったレモネードの褪せた値札など、印象的なフレーズを味読しながら、この詩を味わってみました。
0コメントありがとうございます。 とても丁寧に読み込んでいただき感謝します。私自身は、ビーレビューを念頭に置いて書いたわけではなかったのですが、こうして読んでくださる方の中で自然に結びついていくのは面白いなと思います。 「褪せた値札」を昔からある「詩」の象徴と受け取ってくださったのは新たな気づきでした。ネガティブな意味合いでなく、歴史や積み重ねを帯びたものとして読んでいただけて、自分の言葉が別の響きを持つことに気づかされました。 また「昨年」という箇所を、私が少し姿を見せなかった時期と重ねて読んでくださっていて、ronaさんが、私が詩を書いてない時期を覚えててくださっていたことも嬉しく思います。 自分の中では特定の出来事を指していなかったのですが、確かにその時期の空白の感覚と響き合うものがあるのかもしれません。 碑やアーカイブ化の解釈についても、なるほどと思いながら拝読しました。もちろん私はサーバー権などは持っておりませんが、このビーレビューという場所が特別であることを改めて実感させてもらえましたし、「いずれ碑になるとしても」という読み方はとても胸に残ります。 読んでいただけたこと、そしてここまで丁寧に受け止めていただけたことが、私にとって大きな励みになりました。本当にありがとうございます。
1コメントありがとうございます。 とても丁寧に読み込んでいただき感謝します。私自身は、ビーレビューを念頭に置いて書いたわけではなかったのですが、こうして読んでくださる方の中で自然に結びついていくのは面白いなと思います。 「褪せた値札」を昔からある「詩」の象徴と受け取ってくださったのは新たな気づきでした。ネガティブな意味合いでなく、歴史や積み重ねを帯びたものとして読んでいただけて、自分の言葉が別の響きを持つことに気づかされました。 また「昨年」という箇所を、私が少し姿を見せなかった時期と重ねて読んでくださっていて、ronaさんが、私が詩を書いてない時期を覚えててくださっていたことも嬉しく思います。 自分の中では特定の出来事を指していなかったのですが、確かにその時期の空白の感覚と響き合うものがあるのかもしれません。 碑やアーカイブ化の解釈についても、なるほどと思いながら拝読しました。もちろん私はサーバー権などは持っておりませんが、このビーレビューという場所が特別であることを改めて実感させてもらえましたし、「いずれ碑になるとしても」という読み方はとても胸に残ります。 読んでいただけたこと、そしてここまで丁寧に受け止めていただけたことが、私にとって大きな励みになりました。本当にありがとうございます。
1二重送信申し訳ございません。
1コメントありがとうございます。 印象的なフレーズを一つひとつ丁寧に味読していただけて、とても嬉しいです。露店や氷片、ひとくちの灯など、私自身も大切にしたイメージをすくい上げてもらえた気がしました。読んでくださる方の眼差しに触れて、詩がまた別の透明さを帯びるのを感じます。
0丁重なレスポンスありがとうございます! 『願望的読解』でしたね。笑 (つつみさんがサーバー権持ってたら良かったのになぁ…) 読解って色んなスタイルがあるけど自分の読解が多分に願望である気がしました。笑 いずれにしても素敵な作品です! では。
1広場感、夏感と郷愁に似た空気と孤独と癒しのセットに(違ってたらすみません)グッと来ました。露店っていうか、露店並ぶ琥珀の時空間ってそもそもいいですよね
0コメントありがとうございます。 広場感や夏感に郷愁と孤独と癒しが重なって見えたとのこと、とても嬉しく拝見しました。 >露店並ぶ琥珀の時空 という言葉が素敵で、まさに自分の中で思い描いていた景色にぴたりと重なったように感じます。
0テレビは少し唐突に思いましたが、全体的に、夢と現実の入り交ざった詩の世界で、やや現実味を強く持とうとした方向で、いろんなものが主張を持っていると思います。露店の永遠は、レモネードの中に。それを飲むことの描写の仕方。相当の実力者だと思いますが、最近の作品は、どれも出来が素晴らしく、進化も止まらないように見受けられます。
0コメントありがとうございます。 テレビが唐突に映ったというご指摘、実はそこにはとある悲しみを託しているのですが、それを直接語るのは少し野暮かと思い、あえてお伝えはしません。 しかし、こうして読者が違和感として受け止めたことを、伝えてくださることで、書き手としての視点を広げてもらえました。 >露店の永遠はレモネードの中に という言葉には、私自身もハッとさせられました。レモネードを飲むひとときの儚さや、そこに宿る確かな光をこんなふうに受け取っていただけたことを嬉しく思います。 最近の作品についてのあたたかいお言葉も、大きな励みになります。ありがとうございます。
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