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ひとりぼっちの夜に
窓際に肘をついて、一秒ごとに点滅を繰り返すビルの紅い灯を見つめる。 あれは航空障害灯と言うんだよ、と面白げもないことを言ってベッドに寝転がる君を横目に。 キミはいつもそうだったね。 灯の数だけ生活があって、 生活の中に人は宿る。 隣りから聞こえるとびらが開く音だとか、 ベッドがきしむ音だとか、 それが“生きている証”なんだと、私は思う。 時計の秒針が立てる音は、 いつだって現実を刻みつける。 BPM60にあわせて鼓動するキミの心臓は ちょっとだけ灰色にみえた。 丑三つ時に人生を諦める。 4月1日はすべてが終わり、そして始まる日。 そんな夜にベッドから抜けて 熱っぽい体を抱え自転車に乗れば、 少しだけ楽になれた気がした。 ひとりぼっちの夜、キミのいない街。 私だけの夜、ひとりぼっちの世界。 自分に都合のいいものだけを見て、 見たくないものには蓋をして、 綺麗なままの世界だけ、愛していたかった。 ベッドには生ぬるいキミのぬくもりだけが残っていて。 あぁ、キミも生きているんだね、この夜を越えて。 そう、思ったりもした。
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ひとりぼっちの夜に ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 356.8
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-04-13
コメント日時 2024-04-18
項目 | 全期間(2024/05/02現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
不思議と注意をひきつけるもののある作品でした。 何かがあるのだが、それが何かをうまく表現できません。 おそらく、文字列の向こうにいる、作者の人格の部分だと思いますが。 それは、ラカンのいう「対象a(アー)」かもしれない...
0シミュレーション仮説と、それに抵抗していくような詩だと思いました。 隣の部屋から聞こえる音が「生きている証」だとして、シミュレーション仮説などバーチャルな思想が生まれている現代、世界の鼓動はそうやって聴いていくのかもしれない。視覚でだけ捉えるのではなく、音でも。 けれど「キミの心臓」は残酷にも規則的。「私」は自転車の運動で、無機質な世界の有り様から逃げようとしているよう。シミュレーション仮説のように世界を割り切れればいいが、そうなると遠くにいる「キミ」の生を感じられなくなる。ぬくもりが永遠と記憶に残り続ける、この「記憶」という触覚のような感覚も現代、大切ですね。
0BPM60って普通よりおそいぐらいの鼓動なんですよね、これを意図しておいているかどうかは作中に見えないのだけど、周りの人に比べて私たちの時間がゆっくりと過ぎていたとして、私がひとりぼっちになったとき、それでも、導べとして、航空障害灯や時計の秒針が、生活する音が、キミが生きている証として、宿っているから。私も生きていける。そんなふうにすっきりと読めました。 ただ五連目の 『・自分に都合のいいものだけを見て、/見たくないものには蓋をして、/綺麗なままの世界だけ、愛していたかった。』というところ、これは浮気や喧嘩、恋愛模様を想像させる。そういった含みを置くと私の感情がリアルに浮いてしまうのですね。共感は生まれるでしょうけど。詩は小説ではないので、伝えたいこと、一人ぼっちの夜の私の事だけが必要であって、キミとのこと、私の今。それだけでじゅうぶん伝わるようにしっかり書ききれているので、蛇足かなとおもいました。 詩に対してしっかり向き合って書かれてあり、じっくりと考慮された文面がうつくしい一篇として存在していると思いました。よいね。
0不思議な感じに思える詩だった。どことなく現実というものから浮遊していて、それでいて地面に足を付けているような、そんな気がしました。
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