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明るい部屋   

survof 
作成日時 2017-12-01
コメント日時 2017-12-20

 

深く潜ってそれでも指先は忙しく、ただただ表面を叩いて叩き続けながら、歪んだ視界を決められたリズムで次々と改行していくその先は細かくて透明な幾何学。形を捉え損ねてぴくぴくと輪郭を縮めたり広げたりしながら数は一つずつ階段を登って降りてシナプスを繋ぎながら躊躇って、行ったり来たりを繰り返すような小心な指先、かき混ぜたら四角い粒々になって柔らかにぷつぷつと泡立ちはじめてすっと浮かび上がったそれは、花びらがぶるぶると小刻みに痙攣したかと思うと今度は澄ました顔で冷たい呼吸を雌しべのなかへ次々と吸い込んでいくようなそんな薄い色の朝だった。 息を深く吸い込んで広がる音像に、面積を広げながらじわじわと乱気流の中を下降するその幻は風を焦がしながら遠くのあなたを追いかけて、求めるようにすっと伸ばされた手の先は光に照らされた蜃気楼の揺らめき、あなたは振り返ることもなく満ちていく潮のただなかでただただ茫然とやはり幻を見つめているのだろうか、朦朧として聞こえたのはあなたを呼ぶ声で、それは、シャッターが瞼を開けて閉じる間の少しばかりの隙間でフィルムの外へ何もかも追い出してしまうようなそんなビタースイートな朝だった。 ひたすら決められたリズムでコップを裏返しながら、また掌を返して裏切って返した悪夢、激しい裏拍などは決して刻んだりしないそれは、ただただ淡々とドアを開けたり閉めたりしながらゆっくりと階段を登って登って、あなたはとても傷ついた目をしてこちらを見つめていた、そんな薄っぺらな嘘の刺激で空っぽの部屋を色彩で満たそうとしていつまでたってもグミは食べ終わらないね、しまいには胃がひどくもたれてしまってそれでも食べる手は止められない、それは洗面所の前で黒い水を口から吐き出したようなそんな薄暗くて深い群青色の朝だった。 深く潜って忘れたら繋がり出して紡ぎ出す数の列は二進法。残像は浮遊して重なり合って深さを増して深まって残像は、連なる倍音を配列に押し込めながら揺らめき出して残響。入れ子は入れ子になってフラクタル、輪郭は浮遊して茜色、染まった頃には浮かび上がって薄っすらと忘れていた記憶を呼び戻してまた指先に指令しはじめて次々と改行するその先は緻密で繊細な幾何学。諦めて思い出してふと思いついてぱたんと閉じたらそこは陽だまりで、沢山の抜け殻が目をつむって眠りながら浮遊していたそれは、明るい部屋に閉じ込められた白くて美しい朝だった。


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沙一 (2017-12-01):

たくさんの色彩や輪郭が、浮かんでは消える。 指先や思考は忙しなく動くけど、詩のなかの当人は、部屋から動くことはないんですね。 それでも各連の終わりは、朝。始まったばかりの、これから出来事で埋まる前の、朝。 空想の氾濫から経験への、期待のようなものを感じる詩でした。

survof (2017-12-01):

沙一さん 「指先や思考は忙しなく動くけど、詩のなかの当人は、部屋から動くことはないんですね。」と書いてくださいましたがまさしくその通りなんです。「空想の氾濫」と「経験」。確かに私の日常や意識はこの狭間でいつもいったりきたりしているような気がします。とても嬉しい言葉いただきました。コメントありがとうございました!

まりも (2017-12-05):

冒頭の、透明な幾何学、で思い出したのは、目を酷使したあとの痛みで腫れぼったい目玉を、ぐうっとまぶたの上から圧迫したときに見える、バザルリが描き出したような、歪んでいてしかも整然と並ぶ市松紋様が球体状に浮遊する、蒼い光の点滅する暗闇。 自己の内部に沈潜しようとキーボードを叩き続けて、体が浮き上がったまま幻想が脳裏を流れていく景に気持ちが巻き上げられていくのを感じている、徹夜明けの朝の感覚。 あのとき、こうしていたら、あのとき、ああしていれば、平行宇宙が陽に焼けた本の背表紙のようにめくれあがる、その裏側の肉色の空白を、触れるのを恐れながら手を差し出さずにはいられない、その衝動に駆られた視界の端を、あなたの眼差しが鋭い視線を刺して行き過ぎる、その棘は悲しみなのか怒りなのか絶望なのか軽蔑なのか、思いばかりが渦巻いて、ノートパソコンを閉じる朝の感覚。 感想を書こうと思ったら、詩のようになってしまいました、ご容赦。

survof (2017-12-05):

まりもさん ほとんどリライトしてくださったといってもいい感じ詩のような素敵なご感想ありがとうございます!

杜 琴乃 (2017-12-06):

読点で紡がれた長い文なのに、リズムが良くてストレスを感じずに読めるのが凄いです。最終連はいくつかの句点によって断定されている…まるでとめどなく思案することを諦めたように。ああ、詩を書いている時は本当にこんな感じだなぁとしみじみ思いました。 そこに詩がいるような気がして、開けたドアの先はぼんやりと明るい部屋。良く見えなくて一度閉めたけど、やっぱり何か見えたような気がしてまた開けて…バタン、バタンと開閉する音だけが響いている。この現象の名前が分からなくて上手く言い表せない、いまもまたバタン、バタンとだけ聞こえます。つまり私は、「ああ、そうなの、そうなの」としか言えなくて、何だかダラダラとすみません。何度も読み返したくなる詩です!有難うございます。

survof (2017-12-06):

cotonoさん とても嬉しい感想ありがとうございます!何かを書こうとするとき、何かを考えている時、仕事で問題を解決しないといけない時、思考の扉がバタンバタン。cotonoさんのおっしゃる通り「この現象の名前が分からなくて上手く言い表せない、いまもまたバタン、バタンとだけ聞こえます」。なんだか感覚が共有できた気がしてとても嬉しいです!頑張って書いた甲斐がありました。

百均@B-REVIEW ON/ (2017-12-19):

一文が長く、樋口一葉の文体みたいだ。一葉は本当に読めなくて、何やってるのか分からない。でも言葉は美しくて、音読する度に綺麗だと思うが、何をやってるのか分からないという感じを思いました。 相性が悪くて、文章を意味で捉えてしまいがちな僕には、無い感覚だ。でも、その一方で、この明るい部屋は美しい物だと思う。そういう瞬間が無い訳じゃないが、なぜそう思うのか分からない。一葉に重ねることで無理矢理読んでいるのは、僕の中にない物は、既視感で補う事によって多分無理矢理形にしようとしているからだと思う。そう、この文章が掴み所のないように、それでも最後の「美しい朝」という帰結に嫉妬を覚えるくらいに読んでそう思う感覚が脳内で暴れている。 結局の所、朝がなんで美しいのか、僕は良く表現の中で使いますが、まともに考えた事がなかったのかもしれません。そういう事を思いました。美しいと思う事や、美しいと思う事を提示するのは難しいと思いますが、僕は僕の思ってもみなかった方法で美しさを提示されてしまった事に困惑しました。そのような作でした。

survof (2017-12-20):

百均さん コメントありがとうございます!がっつり読んでくださって本当に嬉しいです。樋口一葉さんほど洗練された言葉をつかえているかどうかは自信が全くないですが、ひとつ本質的な違いをあげるとするとこの作品では物語性を排除しているということだと思います。詩にはいろいろな形があると思いますが、あえて詩という形式でしかできないこと、その形式でしか伝えられないことを伝えたいという思いが強くあり、論理的な文章という形では捉えきれなかったもの あるいは捉えられないものを捉えたいという気持ちが強くあります。ですので「この文章が掴み所のない」ものであるというご指摘はまさに的を射たもので、逆に掴みどころのないものを言葉やイメージの断片を紡ぐようにしてなんとかして掴むことはできないものか、という私なりの試行錯誤の結果でもあるのかな、と感じます。そして私が捉えたいと思っているものの中核にはいつでも何かしらの「美しさ」があるのだと思います。ですので「何をやってるのか分からない」けれども、「それでも最後の「美しい朝」という帰結に嫉妬を覚えるくらいに読んでそう思う感覚が脳内で暴れている。」とうご感想はそれこそ暴れたくなるほど嬉しいものです。非常に感覚的で意識の潜在的なところに訴えかけるもの、理屈では解体できないものを創りたいと願っているからです。そして、私はこの世のすべての美しさ(あるいは醜さ)はそのようなものだと思っています。コメント本当に嬉しく思いました!ありがとうございます。


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