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点 (atomism)
たとえば、 椿のまんまるな寝息をそばに、 じぶんをふたつに折りたたむ。 折って、 たたんで、 また折って、 はんぶんにして、 そのはんぶんにして、 そんなことを繰り返して、 あれから何度目かの椿がぽっとり落ちた頃に、 わたしも点となりたい。 菊の花が手向けられている、寝息もないひとに。 折り畳まれゆくひとが点となりゆく最中、 刃のように鋭いその折り目を、 白衣の人はかちかちの名詞で呼んだ。 最初はひとつだったにちがいない、 折り目は増えた、 オノマトペすら拒絶して、 不可分をまっすぐ企図するように。 ひとつひとつを生々しく覚えたままの、 固まったまぶた、 蝋のような頬。 完全な点は、 燃焼を最後の折り目として生じた。 化学をかじった人がいうには、 不可分の粒子は朽ちるらしい。 ひとびとの権利が弄ばれたり、 国の境があいまいになったり、 南極からシロクマが消えたり、 地軸がちょっとだけ傾いたり、 一等星が力いっぱい滅んだり、 宇宙がわけもなく広がったり、 そんなことが起きている間に。 でも、点のひとは朽ちない、 わたしがひとの一枚をかたどるかぎり。 落椿がかさかさと不可分になりゆく夜にひとり、 わたしはそのように点となりたい、 ひとつの点を握りしめたまま。
点 (atomism) ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2695.2
お気に入り数: 2
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2025-02-06
コメント日時 2025-03-08
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
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| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


消え入りたいような感覚が最後、点として残ってしまったら、私は怖いなと思ってしまいます。 点と折り目の交錯する感じが不思議でした。 不可分の粒子は滅びるけれど点は滅びない。 点になるとは点に住むこと、それとも点そのものであって、その点は日々何かを考えるのでしょうか。 それにしても点は嫌ですね。 不思議な深いテーマのように感じました。
0消え入らないことをわかっていて、ひとつの点を握りしめたまま。畳んでいくこと。 ひとつひとつ折り目節目に、まっすぐと見据えては、わたしがひとの一枚をかたどるかぎり。点と点は繋がれる。わたしは信じていて、また誰がきっと、私を点として、そっとたたむのでしょう。そう信じているようにおもえた。 丁寧な作品だなとおもうから、句読点を息遣いと思って整理するともっとキレイになるかもね、良 一票
0読みながら点が浮き出たり、消えたり、目の前でしていきました。点、自分のなかにある点って何だろうと自問すると、僕は人の目、黒目の部分かなと考えたりしました。表題にある“atomism”からは、さらに微細なものであることが窺い知れますが、それはまた“world”を構成する人間が、一つひとつの“atomism”であるという図式を浮かびあがらせます。 作品のなかで、“点”というものが限定的な意味の例えだと感じましたが、それが指し示す先には、読んだ人の数だけ答えが待っているようにも思えました。それとは別に、「不可分の粒子は朽ちるらしい」が「でも、点のひとは朽ちない」にぶつかっていくようにも読めました。これは化学と反化学?の思想の戦いみたいなものが、静かに行われているのかもしれません。 全体的に読ませる力がすごく強く、感性だけでは書けない、作者の方の着想が見事に具現化された作品だと思いました。個人的には「化学をかじった人がいうには、~そんなことが起きている間に。」の間に出てくる言葉の数々に、きらめく個性を感じました。
0紅茶猫さま、コメントありがとうございます。 点、いやですか。 わたしはけっこう点すきです。 とてもシンプルなので。 そんなシンプルなイメージで紅茶猫さまをこの作品で不思議な気持ちにできたなら、私はとてもうれしいです。 嬉しい感想ありがとうございました。
0現代詩っぽすぎる。何より、最後の連が蛇足だ。
0タイトルから伺えるとおり無からビッグバンにはじまりインフレーションで拡大していくというこの宇宙の構成をエモーショナルな観点で書き起こしたという詩の構図で、読み解けば簡単だが、その割には表現も広くそして深いところにまで降りてきている。核分裂核融合。専門家の方でしょうか?よく考えられて書けていると思いますよ。
0テクニックを隠す詩でしょうか? 「オノマトペ」のインパクトが強烈で、 あとの「加害者は~」の記述の存在感が薄くなったような気もします。
0A•O•Iさま、コメントありがとうございます。 > わたしは信じていて、また誰がきっと、私を点として、そっとたたむのでしょう。 なんか、本作を投稿してよかったなと思いましたね。 句読点、ご指摘を受けて改めて見直してみたのですが、確かに呼吸が詰まってる感覚もありますね。参考になりました。 ありがとうございました。
01.5Aさま、コメントありがとうございます。 > 個人的には「化学をかじった人がいうには、~そんなことが起きている間に。」の間に出てくる言葉の数々に、きらめく個性を感じました。 この部分は拝読していてとても嬉しかったです。 1.5Aさまの「点」のイメージが本作となんらかの形でリンクしたなら、投稿してよかったかなと思います。 励みになる感想をありがとうございました。
1おはようございます。 何度か拝読させていただきました。 全体を俯瞰してみると とても素敵な作品だなあと、 少し泣きたくなりました。 だけど、ここまで「ひとこと」を丁寧に編んでいる方が、 何故、あそこで「オノマトペ」という言葉を置く必要があったのかが、どうしても解りません。 申し訳ないのですが、 お手隙の折にでも、教えていただけると有り難いです。
0完備さま,コメントありがとうございます. むーん,完備さまに刺さりませんでしたか,残念. >現代詩っぽすぎる というのは「言葉選びが凡庸だ」という意味ですかね.平易な言葉選びを意識したせいで,語の接続も新鮮な飛躍がなくなってるんですかね. >何より、最後の連が蛇足だ。 この指摘は意図が掴めなかったです.置きにいってしまっているのが凡庸だって意味ですかね. もし気が向いたら具体的に補足していただけると勉強になります. 参考になるコメントありがとうございました.
0メルモsアラガイsさま,コメントありがとうございます. 「普遍的なテーマ」と「広がり」を目指して書いた気がするので,そう言っていただけて嬉しいです. ただ,「その割には」という評価から私自身感じるところとしては,テーマの普遍性と表現の広さ深さがトレードオフになっていると感じさせてしまっている点で,本作はまだ改善できるなという気持ちになっています.そういった制約をまるごと忘れさせられるような作品にいつか挑戦してみたいです. ちなみに,核物理に関しては全くの素人です. 励みになるコメントありがとうございました.
0作者さんは点そのもの、概念的な物を確かに想像できているんだろうなって感じがしています。その確固たる点に様々な遊びを付けて作品にしているような印象を受けました。 先へと読み進めさせる力が強いですよね。言葉と言葉をだいぶ飛躍させているのに、違和を生むおかしさよりも、読みたい欲の方が強くなります。これも技術なんでしょう。読み進めさせる力があれば作品の重さを自由に変えられます。 内容は生死観に繋がる様なシュールな話題ですけど、個人的には全体を通して面白さを感じられる作品でした。作者さん自身が楽しさ、うーん、詩の腕を楽しみながら書かれたんじゃないかなと予想してみます。
1既に起こりきった始まりを感じた。よかったです。
0レモンさま、コメントありがとうございます。 返信が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。 まずは、種々のお褒めの言葉にお礼申し上げます。 >だけど、ここまで「ひとこと」を丁寧に編んでいる方が、何故、あそこで「オノマトペ」という言葉を置く必要があったのかが、どうしても解りません。 質問ありがとうございます。あくまで私個人としては「丁寧に言葉を編もうという努力」の中に「オノマトペをあそこへ配置したこと」も含まれているので、質問の意図を汲みきれていない部分もあるかもしれません。もちろん、詩文は筆者の手元を離れた時点で読者のものです。レモンさまの感想はありがたく頂戴します。ただ、見当違いな回答だったらすみません。 「オノマトペ」という無機質な響きを持つ単語と、それを「拒絶する」という強い動作によって、読者を無音の世界に引き込む合図にしたかったと言うのが本来の意図です。「オノマトペを拒絶する」ってなんか金属叩いた時のような鈍い音しそうじゃないですか (これはあくまで私の感性ですが)。 これ以降、最終盤になるまで実際にオノマトペの使用を控えています。宇宙のたくらみがサイレント映画のように想起されて、ちっぽけな個人の手元での「かさかさ」という音が、最後に静寂の中に響けばいいな、という考えでした。 作者がこうして設計意図をひけらかすのも違いますし、「そんなん伝わらんわ!」となるのも覚悟の上ですが、こうやって合議できるのがネット詩の良いところだとも思うので、簡単ですが回答とさせていただきたく。 どうぞよろしくお願いします。
2丁寧に説明して下さり、 ありがとうございます! やはり「オノマトペ」という言葉が、 必然として置かれていたんだと解り、 とてもスッキリいたしました。 素晴らしい作品だと思います!
0千才森 万葉さま、コメントありがとうございます。 >作者さんは点そのもの、概念的な物を確かに想像できているんだろうなって感じがしています。その確固たる点に様々な遊びを付けて作品にしているような印象を受けました。 好意的なご感想をありがとうございます。 実は、初稿では「点」は「不可分」だったんですよね。 不可分の方がより概念的だけど、意味合いとしては遊びがない気がするので、もしかしたらそう言った背景で「点に対する想像の明確さ」というご感想をいただくに至ったのかもしれません。 読んでいただけて嬉しかったです。 ありがとうございました。
1蕎麦屋の娘さま、コメントありがとうございます。 お褒めの言葉、光栄です。
0詩の構図好きっす
0奥間空さま、コメントありがとうございます。
0読後、呆然とさせられるような、それはとても良い意味で、どう読めばいいのかコメント欄に逃げましたが、その中でも「オノマトペ」の話が面白いですね。 というのも、「無音の世界に引き込みたかった」という意図とは別の事が起きているように思いました。たとえば椿が「ぽっとり」と落ちると書かれても、イメージするのは無音に近い静寂なはずです。「かちかち」の白衣も、身体の硬直などの死を想起して、やはり無音は保たれているように思う。 なので、「無音の世界への誘い」というよりも、「無音の世界の演出に、オノマトペは要らない。頼らない」という姿勢でしょう。 あとは、最終連が初読、スッと入ってきませんでしたが、椿も「点」、直前の宇宙の拡がりもふまえると、「点のひと」=「地球上の人々」と後になって気づきました。このスケール感、好きです。
1熊倉ミハイさま、コメントありがとうございます。 あー!ご指摘いただいた内容の方が私の言いたかったことに近いかもしれませんね! なんというか、私には静寂自体にも音があるという認識があって、目の前で起こった事象(椿の「ぽっとり」とか、白衣の「かちかち」にも)には必ず聴覚情報が付随していました。 宇宙のインフレーションというのは、そういった聴覚情報が丸ごと存在しない視座というか、どこかスクリーンの向こうの情景のようなよそ者感というか、そういうイメージがありました。 だから、無音を作り出したかった、というのは、静けさへの誘導、という意味よりも、感覚(実感)の剥奪、が狙いだったということだったのかもしれません。 他人事で恐縮なんですが、コメントいただいて、なんとなく自作でやりたかったことへの理解が深まりました。 示唆に富んだ感想をありがとうございました。
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