私は森の中を迷いながら彷徨っていた
山ふくろうの鳴き声と、おぼろ月夜がおびただしい夜をつくっていた
なぜここにいるのか
記憶を辿るが、なぜだか脳が反応を示さない
記憶の構造が気体のようにふわふわと漂っている
この場を離れ、私の拠りどころへと帰る必要がある
さいわいその昔、私は山野を歩く趣味を持ち、さまざまな知識があった
窪地の風が通らないやわらかい腐葉土の上で、横になり少し目を瞑る
流れる霧のその先から明かりが徐々に差し込み、朝が来る
季節は初夏である
そばに渓流があるのか、鷦鷯の突き刺すような声が聞こえる
標高はさほど高くないだろう
まだありふれた雑木があり、一度は人の手が入ったところだ
藪を行くと千島笹の群落があり、根から斜めに突き出た筍が生えている
小沢を通り、少し登ると小瑠璃の陽気な囀りが聞こえてくる
多くの野鳥は、森で棲み分けを行い
ひらけた光り溢れる地に居るのが小瑠璃だ
小瑠璃に導かれ、改良された山毛欅林に出る
ふと見ると稚児百合の群落があたりを覆い尽くしている
きっと道筋は近い
やがて近くに鉈目を見ることになる
しかし、それは忽然と消えた
たしかに人の存在があり、人の呼吸があったはず
やがて、あたりは再び霧が覆われ
縦横無尽に立ちふさがる蔓群落と灌木が一層激しく立ちふさがり
暗喩の森は深く難解さを増していった
作品データ
コメント数 : 14
P V 数 : 952.9
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2022-09-22
コメント日時 2022-10-02
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2023/09/26現在) | 投稿後10日間 |
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2023/09/26 02時13分13秒現在
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なんだろうな、きっとなにか最後には〈転換〉を見せてくれるぞと 期待して最後まで読んだのですが...... 「隠喩の森」、という締めくくりがあった。そうか、「森」という表題は隠喩の森の ことかと愚鈍な頭に蛍光灯がぽっとついたのはいいのですが、で、それが果たして なんなのか考えてみると、とくに何でも無い。思うに今やもう詩における〈転換〉を 描くことができない時代になっている。〈転換〉とは平たく言えばドラマですが たとえば尾崎放哉の "花火があがる空のほうが町だよ" という句がある。 これがドラマチックなのは放哉は四国で乞食のように極貧の生活を送っていて、しかも 孤絶していたからどこかの町へいこうとして夜になり森のなかで方角を見失ってしまった。 この詩のようにすべてがみえない。わからない。そんなとき花火があがった。その方向が 町だ! 放哉は奇跡を見たように覚醒する。そして再び歩きだす。花火があがることによって それまでの言葉がいっきに方向をみいだす。これがドラマ。つまり転換ですが、 わたしもそれができなくなっている。頭が鈍っているだけではなく、時代なんでしょうね。 そういう感性が維持できない平べったい時代に入ったということでしょうね。 yamabitoさんの精力的な創作活動には敬意を覚えていますしこれからも良作を期待しております。 褒めることをしないでなにか辛口の感想になりましたが、基本的にわたしはいいなと思った詩に しかコメントしないので、どうかそれでお許しください。
1意志のある森ですか。怖いですね、なんか話しかけてみたら反応がありそうですね。
0室町さん、おはようございます。室町さんが誰かであったとしても、レスの有ったコメントに対し、作者は真摯にレスを返さなければならないという礼節だけは持ちたいものだと考えております。 自然生態系の中でのそれぞれの植物などの生息域など、森という一括りの中でもいろんな特徴がみられます。それらのことを暗に置き換え、作品として立ち上げてみたものではありますが、もちろん私などが書いたものなので佳作にまではならない代物かも知れません。 詩における飛躍については、常々意識するところではありますが、だらだらと落としどころだけは強引に決めて、書き締めてしまうという悪癖も散見しているのかもしれませんね。 御批評、ありがとうございました。
0福丸さん、おはようございます。 森は意志を持っているという説に、異論はありません。すべては何かに向かい前進し、とまどってなどいないからです。人間のように立ち止まることがないのが森だと感じます。 何かに話しかけるということは私は現実的にやっています。森の野鳥であったり昆虫であったりと。もちろん会話は成立しませんが彼らは私を無視したりはしません。人間は無視したりする冷酷な動物です。 ご感想ありがとうございました。
0森の中の描写が丁寧でリアルなだけに、最後の一行で種明かしみたいな展開になさらずとも良かったのではないかと思いました。「山怪」を読むと山や森は元来神聖な場所で人を寄せ付けないところがあるのかなと思いますが、比して暗喩の難解さは所詮は人がこねくり回したもの、どちらかというと導入部に心惹かれるものがありました。
0暗喩の森とは魅力的ですね。具体的な鳥の名から鳴き声が聞こえるようです。初夏と言う季節、霧と言う、自分の周囲、腐葉土の上、薮、千島笹、雑木、山毛欅林。鉈目から分かる、人の存在の痕跡。全然関係ないかもしれませんが、ふと、ロビンソンクルーソーでのフライデー登場までの軌跡を思いました。
0紅茶猫さん、おはようございます。 御批評としてはまさにその通りでございまして、最後の方で興ざめされたとのこと、痛みいります。濃茶猫さんのような、美しいメタファなどを書ければいいのですが、私的にはそこら辺はあまり意識せず、その途中のプロセスなどを感じて頂ければ…と言った趣旨のもとで書いたようです。 色々とありがとうございました。
1エイクピアさん、おはようございます。 エイクピアさんのおっしゃるように、文体そのものから、その生や生態系を感じ取っていただいたことはある意味成功だったのではないかと思っています。 本作はあくまでも実体験でなく、架空の、暗喩に関してのイメージ詩としてとらえていただければよろしいかという作者の意図でもあります。 ご感想、ありがとうございました。 (-_-;)、まさに私個人がエイクピアさん、紅茶猫さん、他、の御作に挑む時の心境を模倣したものなのかもしれません。
0濃茶猫もいいですね。今度変えようかな。
0失礼しました。
0yamabito様 まず一読させていただき、自分には無い、漢字力を感じました。最初の行に森の中を迷いながらさまよっていたとございますが、自分、しょっちゅうございますので、お気持ちがよくよく分かります。個人的に、言葉の使い方の全体的なバランスがいいと思いました。ありがとうございます。
0大林満さん、おはようございます。 漢字に関しては、故意です。通常は、チゴユリと書くべきところを稚児百合と表わしていますが、もちろん間違いではありません。ただ、一般的には使われることがないですよね。これはおっしゃるように文体のバランスを意識しているのだと思います。 ありがとうございました。
0すごく、精錬された言葉遣いですね! 素敵です。
0sakuraさん、おはようございます。 お褒めくださり恐縮です。まだまだ食い足りなく歯がゆい思いですが、頑張りたいと思います。 このたびは、ご感想ありがとうございました。
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