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夜をめぐる断章   

作成日時 2020-01-09
コメント日時 2020-01-28

かつて 未知なるエーテルにみたされていた わたしたちの夜は 彩られた背徳感とひきかえに 戻らない 水のゆくえ 喪われたフェルメールの青 ドガのバレリーナが傘になって踊る 神無月のメランコリー とめどなく降るものを 迷路に誘う アブサン色の信号 偽薬のような倖せでも まなうらに明日を宿せた 黒鏡カーブミラーに帰り路をわすれて ショーウインドーをみつめる憂いをおびた女性の横顔が 欠けた月のようで 虚ろな視線がみつめる先は わからずに ほんとうは ただ なにかをみつめる横顔はうつくしいと その傍らを 過ぎ去った 一瞬のこと 果樹園になった夜の書店は つかれたひとびとが 滋養と慰藉をもとめて 喧騒からひととき離れ まぼろしの本の一ページでは カメレオンに変身する あったかもしれない人生と いまある人生との 越えられない溝が 癒えることない疵となり 記憶に陰影を刻みつけている その深みから掬った 澱に火を点けて夜をひそかに灯したい


項目全期間(2020/02/22現在)投稿後10日間
叙情性135
前衛性30
可読性00
エンタメ00
技巧55
音韻00
構成60
総合ポイント2710
 平均値  中央値 
叙情性3.33.5
前衛性0.80
可読性00
 エンタメ00
技巧1.30
音韻00
構成1.50.5
総合6.86.5
閲覧指数:798.8
2020/02/22 15時44分05秒現在
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コメント数(10)
蕪城一花 (2020-01-09):

うっとりしたのでポイントつけさせていただきました。

沙一 (2020-01-10):

蕪城一花さん うっとりしていただけたとは、うれしい感想をありがとうございます。

つつみつつみ (2020-01-25):

全体的のとても色彩豊かで美術館を眺めているようでした。見たことある色でも、この絵から導かれたのかと思うと、初めてこの色に出会ったような新鮮さもありました。 と同時に、これは人の道に反したときの快楽と引き換えに喪失する残酷さも感じられ、だからこそ色や光はさらに鮮やかさを増すのかもしれないとも思いました。 >彩られた背徳感とひきかえに 背徳感を色で表すと、黒かグレーなイメージでしたが、「彩られた」というのも背徳感がさらに増すような効果を感じました。 >喪われたフェルメールの青 フェルメールのといえば、「牛乳を注ぐ女」のエプロン部分の青が綺麗ですよね。顔料にラピスラズリを使用しているとのことで、とても目を引きます。 あの鮮やかさが喪われることは、とても大きな喪失と感じます。 >果樹園になった夜の書店 面白い比喩だと思いました。空腹や喉を潤すための果物、現実に疲れた人が心をリセットするために見る書籍が集まる書店。 「夜の書店」というところ、これは私事ですが、夜中に書店を訪れた際、思いがけず人がいて驚きました。 最終連が一番好きです。癒えることのない疵であるけれど、一生忘れることはないし、「ひそかに灯したい」というところに、「背徳感」ではなく、いい思い出でもないんだけど、ずっと自分の中にあり続ける何かを、ずっと灯してたいという思いが感じられます

ミリウェイズ (2020-01-25):

言葉選びがとても素敵だと思います。

沙一 (2020-01-26):

つつみさん 背徳感を色で表すなら黒かグレーという共感覚に、なるほどと感じました。功利心による背徳なら、そうかもしれないなと思いつつ、それが恋慕といった情念による背徳なら、むしろ原色の鮮やかさがあるのではないかと考えました。しかし、その色は油彩のようであって、宝石のように澄んではいないかもしれませんね。 フェルメールの青については、まさしくおっしゃる通りで、顔料にラピスラズリを用いていたことから着想を得ました。 本作は、書き留めていたいくつかの詩の断片に、〈夜〉という共通項を見出して、一作に編集しました。作中にカメレオンという語も出てきますが、さまざまな色彩を放つ本作を審美眼をもって鑑賞していただけたようで、うれしいです。ありがとうございます。

三文字(マグネット/なろう) (2020-01-27):

全体を見て格好いいなと思いました。西洋の言葉を色々ちりばめている中に「神無月のメランコリー」とあるのは意外に感じて面白かったです。

水上 耀 (2020-01-27):

第一連の「未知なるエーテル」に心惹かれて拝読しました。 現代ではエーテルといえばジメチルエーテル、あるいはその他のエーテル化合物のことをしばしば指しますが、そのオリジンへ立ち返れば「天界を構成する物質」、「光そのものである」という意味であったと聞いています。 私は当初、化学物質としてのエーテルとしてそのまま読みましたが、揮発性の高いエーテルが夜を満たしていたという、非常に軽やかな情景が心地良かったです。 また、エーテルのオリジンを当てはめてみても、かつて神界を構成する物質で満たされていた神聖な夜が堕していく。そんな情景から始まり、冒頭から読者に想像の余地が残された心地よい描写になっていると感じました。 全体としては、ひとつ実力に裏打ちされたしっかりとした文体にふわりと現れるカタカナ語が興味を惹き、最後まで読ませる力があるように思いました。工夫が効果的に機能していると思います。 また、コメントを拝読すると詩篇の集合であるとのことですが、全編がほどよい距離感で繋がっており、ちぐはぐな印象を抱きませんでした。技術の為せる技だと思います。

沙一 (2020-01-27):

ミリウェイズさんへ 詩ですから、もちろん言葉選びには気を遣いますし、それが愉しくもあります。コメントありがとうございます。

沙一 (2020-01-27):

三文字さんへ 和洋折衷感はわりと好きで、ときどきそのような表現をしたくなります。コメントありがとうございます。

沙一 (2020-01-28):

水上 耀さんへ ご明察のとおり、エーテルは、もともとの神秘的な意味合いで用いていました。未知なる可能性を感じられているときにこそ、ロマンはあるものかもしれません。 情景を心地よいと感じてもらえて、うれしいです。水上さんの感受性がよく表れている感想を、ありがとうございました。

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