作品投稿掲示板 - B-REVIEW
お知らせ

イジュン(泉)グヮー   

作成日時 2019-05-05
コメント日時 2019-06-08

  父親は帰って来なかった 隠れた墓の中に壺はあるけど 骨は入っていない      アカミチモー(赤道毛)グヮーの真ん中に      旗を掲揚する柱が立っていて      村の誰かに招待状(赤紙)が来たら      みんなが集まって送り出した      そこから嘉手納まで何時間か歩いて行く*      嘉手納には軽便鉄道の最終駅があった      モーグヮーから坂道を下って      イジュン(泉)グヮーのそばには      大きな石墓が十何個かある      昔は亡くなった人を中に横たえて      三年後の骨を洗って壺に納めていた      茅葺き家よりはよっぽど頑丈      よっぽど頑丈で森の中だから      親戚集まって墓の中に隠れた      墓の上の方には      酸っぱい島桑の実があって      摘んでは食べてたら      危ないから中に入れと怒鳴られた      その翌日、墓から出ると目の前に      艦砲射撃の大きな穴が開いていた      それから隠れるのをやめて      みんなで本家の屋敷に集まり      捕虜になった      隠れたのが兵隊と一緒の壕じゃなくて良かった      米軍トラックに乗せられ平安名で降ろされて      母親の実家の平敷屋まで歩いた      そこでしばらく過ごす間      勝連南風原の米軍のゴミ捨て場でものを拾った      そのなかで、大きなチーズのかたまり      あのおいしさは忘れられない      やがて戻る場所が残ってるものは戻されて      イジュングヮーの奥の墓地の中心の空地に      臨時の小学校ができた      イジュングヮーはその時も水汲場と浴場と洗濯場で      真っ暗な時は墓から何か出てきそうで      とても怖くてまともにからだを洗えなかった      父親は帰って来なくて      モーグヮーのそばの親戚の家で世話になった      父親が嘉手納に向かった道に      米軍が分厚いコンクリートを敷いた      道から溢れたまだゆるいコンクリートを拾って      その親戚の家の塀に使った 父親は帰って来なかった 横たえることも 焼くことも イジュングヮーの水で洗うこともなかった 隠れた墓の中に壺はあるけど 骨は入っていない      * https://www.breview.org/keijiban/?id=1173


項目全期間(2019/11/18現在)投稿後10日間
叙情性1616
前衛性77
可読性55
エンタメ00
技巧55
音韻00
構成99
総合ポイント4242
 平均値  中央値 
叙情性21
前衛性0.90
可読性0.60
 エンタメ00
技巧0.60
音韻00
構成1.10.5
総合5.34.5
閲覧指数:783.5
2019/11/18 08時54分06秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。


コメント数(5)
竜野欠伸 (2019-05-05):

戦争の虚しさを強く感じる詩です。臨場感を具象的なこととして感じるのは、単に、沖縄の地名を表す方言を多用しているからだけではないだろうと思いました。命の行く末を常に探し続ける無情な想いをうたうレクイエムが、戦禍の悲しさに負けじとひしひしと伝わってくるからと思いました。静かに祈りを捧げたいです。

宝塚橋乃宝塚橋乃 (2019-05-05):

great!

仲程 (2019-05-07):

竜野さん コメントありがとうございます。 おっしゃるように、いろいろな気持ちがあると思います。想像も及ばないとも思います。 最近になって、まわりの大先輩がたがぽつぽつと語るようになりました。それを繋ぎ会わせたものです。自分の感情は入れないようにしました。

仲程 (2019-05-07):

宝塚さん お読みいただきありがとうございます。

yamabito (2019-06-08):

読ませていただきました。 無益な戦争をし、気の遠くなるほどの戦死者を出した愚かな所業は忘れてはいけないと思います。 まさに詩は、そういうところから生まれなければならないと思いますし、誰にも読まれなければならない文章であるべきだと思います。

投稿作品数: 1