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春の唄   

作成日時 2019-02-02
コメント日時 2019-02-07

 雀蜂も闘い疲れ、白蟻もまどろみ始めた春の午後。蒼ざめた光の絃が、羊歯の葉脈を静か に揺らす。遠く東の方、猩猩の網膜のように乾いた空の壁紙が、ゆっくりと剥がれ落ちる。  ぼくたちは一体いつ、海から上がってきたのか。  河口に生い茂るモウセンゴケの群れ。砂に埋もれた鉛の獣たち。白い川床には、今日も休 みなく微細な隕石が降り注ぐ。  新月が昇るころ、ぼくたちはまた歩き出す。蟻塚を突き崩し、震える泥土を渡り、狂った ヒラメのように西瓜の舟を漕ぎ始める。  頬にはただ春の腐臭。頭上にはただ濡れた空。  蒼い光の環が微かに身を揺すり、いま世界から一枚の絵が吐き出される。


項目全期間(2020/01/23現在)投稿後10日間
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閲覧指数:226.7
2020/01/23 21時28分16秒現在
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コメント数(3)
世界世紀 (2019-02-03):

混沌としたファンタジーな世界観ですね。 細部まで詳細に描かれたアクリル画のようで、色彩があざやかで丁寧な描写なのに、センテンス内の違和感から足を地面に下ろせない、どこにいるのかフワフワしてしまう感覚になりました。 でもそれが気持ちよかったです。 僕にとっては春の昼下りに心地よい微睡みの中で見た不思議な夢のような詩でした。

ふじりゅう (2019-02-04):

 一枚の絵が吐き出される、という締めが魅力的に感じました。

agath (2019-02-07):

世界世紀様、ふじりゅう様、コメントありがとうございます。 見たことのない景色、見たことはないけれど、脳味噌のどこかに潜んでいる景色の中を歩いて見たくて、こんなものを書いてみました。 静謐でゆったりしたイメージがほしかったので、あえて散文詩型にしました。タイトルは「春月」のほうが良かったかなと思っています。

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