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目の奥に炎はない
目の奥に炎はない。 「火を起こそう」そういう男は目の奥の寒さに身を無限に震わせながらも、石をカチカチと擦り合わせていた。 しかし、いくら擦り合わせても火は起こらない。 目の外よりフラッシュが焚かれた。 閃光は瞬く間に男の元までやってきて稲妻として語りかける。 「どうしたんだこんな所で。」 男は稲妻に目もくれずひたすらに手を動かしながら 「火を起こさなきゃ。火を起こさなきゃ。」と繰り返すばかりだ。 稲妻は呆れた。 「そんな目の奥にいるから寒いんだ。外を見ろよ。人がいるだろう?あれはこの稲妻が集めたんだ。熱気も熱量も火や炎の目じゃない。まさしく太陽そのものだ。」 しかし、男は聞く耳を持たない。 腹のたった稲妻は男に体当たりを噛まし、感電させた。 「なんだってそんなことをする。」 幻覚と心停止により酷寒を覚えたが再び男は石を手に取り擦り合わせる。 「あっちには暖かいものがいっくらでもあるんだぞ!」 ふと男が顔を上げた。 そして口を開き稲妻にこう言った。 「目の奥に炎はない。だからつけるんだよ。」 稲妻はそれを聞くと、自分の光を使い果たしたので存在が消え失せた。 男は今も目の奥にいるという。
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目の奥に炎はない ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 485.1
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-11-05
コメント日時 2025-11-26
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文


”火をつける必要だけ”がある。それは使命とも衝動ともとれる。”男は炎を欲している”。それは、情熱とも空虚ともいえる。「目の奥の寒さに身を無限に震わせる」その現在形が男のすべて。外から見れば滑稽で、内側に立てば切実。どちらの面にも傾く読みが成立する強度がある。「目の奥に炎はない。だからつけるんだよ。」理由を超えて手だけが動く、その寓話性が刺さりました。おもしろかったです
1受動的な熱では燃えることはできない。内から湧き上がる炎でないと。「炎」は生きる気力、または創作意欲ではないかなと感じました。
1目の奥に居ると言う男。目の奥に炎はないので、火を起こそうとする。閃光としての稲妻が語り掛ける、説得する。聞く耳を持たない男。体当たりを噛まし、感電までさせる稲妻。 「幻覚と心停止により酷寒を覚えたが再び男は石を手に取り擦り合わせる。」 こんな一行を読んで居ると、登呂遺跡、吉野ケ里遺跡などの弥生時代の遺跡が思い浮かびます。勿論火をおこすことは、既に縄文時代以前に始まっていたようですが。
1こんばんは、 普段見ているのは果たして、 目の外を切り取った世界なのか、目の内を切り取った世界なのか、 とても気になりました。 体感で言えば僕は 目と心はなにかしら繋がっているような…気もします。 「目の奥の寒さ」 というのが必ずしもからだに感じる体温ではなくて、 精神とか神経とかそういった寒寒しさから来るものにも受け取れました。 >>男は今も目の奥にいるという。 この終わり方も 青白い炎がふっ と消えてしまうみたいな ミステリアスさがあり、好いですね。
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