雪明かりの中、ひさしぶりに散歩に出る
獣たちの足跡が点在し、ときどき走っては敵に怯えるように急ぎ足になったり、少ないながらもその痕跡が塗されていた
時折、小声で独り言で事を説明する私は酷く滑稽でありながら、そのやわらかな夜明け前の寝床のような空間を楽しんでいたのかもしれない
そういえば、今読んでいる小説はとても娯楽小説とは呼べず、若い作者のくせに粘質でまどろっこしい著名な作家を模倣しているかのような筆致で苛つくのだが、読んでいるうちに、苔の表面の様な言葉のふくよかさも感じてしまっても居たのだった
闇に向かって、今年も終わるな、と言う
そのことが一つの儀式のようであったし、来年はどうなるかは分からないという鋭利な刃物を突き付けられているという気分にもなり、いずれにしても所詮そこら辺の名もない草のような生き様しかできないのだな、と達観するのだ
昔は冬の、雪の、においを鋭敏に感じることができた気がする
でも今はそんなに感じることはなくなった気がする
耳の外側で香り立つ、冬の匂い
外は今いちばん夜が長いのだった
作品データ
コメント数 : 5
P V 数 : 630.8
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2025-08-17
コメント日時 2025-08-29
#現代詩
#ビーレビ杯不参加
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
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| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
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| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
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閲覧指数:630.8
2025/12/05 20時32分36秒現在
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雪明かり、とか、文学的な表現を自分のものとして使っていて、すごいな、と思いました。 全体的に、洗練された文章で、気分良く読めました。
0えっと、違うかったらごめんなさいね。 もしかして、山人さんですか? いつも現フォで拝読している文章と、同じ香りがする…ような? 冬のにおい。 確かにそれぞれの季節に「におい」があって、 冬は、静かで張り詰めていて、澄んでいて、 例えるならば、夏に触れる山の湧水の鮮烈な冷たさのにおい、がします。 ひとつ残念なのは、 来年に対して暗い側面だけを見て、「達観」と述べていること。 「達観」は、暗い側面も明るい側面も、不安も恐れもないところにあると思うのです。 70、80は洟垂れ小僧。 男盛りは100から100から。 と申しますし、筆者さまは、まだまだ小僧だな、と思いました。 ありがとうございます。
0秋を思い出します
0ハンネを書き忘れてました。皆様お初です。トラツグミと申します。 黒髪さん、コメントありがとうございます。これが詩なのかどうか、微妙なのですが、好意的にお読みいただき恐縮です。 レモンさん、コメントありがとうございます。男盛りはお墓の中ですね(笑)。そう考えればまだ中学生くらいですかね。 詩における単語の使い方ですが、もっと慎重になる必要性は大いに感じるところです。 左藤さん、コメントありがとうございます。秋はいいですよね。夏は嫌いです。冬は遊べるのでまぁ好きです。
4こんばんは、 >>獣たちの足跡が点在し、 >>ときどき走っては敵に怯えるように急ぎ足になったり、 >>少ないながらもその痕跡が塗されていた この連なのですが、僕はこの獣の気持ちになってしまいます。 特に、ときどき走っては敵に怯えるように急ぎ足になったり、という部分。 そんな自分の痕跡さえ、残ってしまうのだなと 切なくなりました。
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