風は
焦げたプリントの隅をなぞり
揺れる送信塔から
周波数の低い記憶を運んでくる
滑り台の銀面は黙し
校庭の空蝉が
時刻表のない午後を告げていた
液状の太陽が
どこにも落ちずに澱み
枝葉は水脈を失いながら
茂みを離れる
塩のにおいは
地軸のひずみによく似ていて
遠浅の輪郭が
靴底の熱に 擦れて消える
窓の奥で
一つの季節が抜け落ちる音がした
すこし遅れて
蝉の残響が届く
それもいつかは
腹をすかせた獣に
サナギごと
喉奥へ葬られるんだろう
焼けた街の心拍に
耳を澄ましながら
わたしは
水のふりをして
凍った言葉を呑みこむ
そのとき 太陽が
少しだけ まばたきをして
呼吸を整えながら
熱の端を そっと引き戻した
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 846.7
お気に入り数: 2
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2025-08-01
コメント日時 2025-08-26
#現代詩
#縦書き
| 項目 | 全期間(2025/12/05現在) | 投稿後10日間 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合ポイント | 0 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
閲覧指数:846.7
2025/12/05 19時18分40秒現在
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繊細で明確な言葉が、多様な夏の風景を叙述していきますね。諦めていない人の言葉、 真理に触れたいと思っている人の言葉が感じられ、爽やかな気持ちにさせてもらえます。
0コメントありがとうございます 1日中ニュースをみていると、どんどん暑くなる夏に未来が不安になります。自分が子供の頃の夏休みは、プールに海、川遊び、キャンプ、スイカ割り、飽きるくらい遊んで、夏には夏の野菜を満喫してたのに、どんどん奪われていきますね。 >諦めていない人の言葉、 >真理に触れたいと思っている人の言葉 黒髪さんのおっしゃるとおり、このように思って動いてくださる方のお陰で、生きていられるのだと毎日思います。冷蔵庫にキュウリとトマトがあることがしあわせ
1乾いた砂漠のような不思議な詩です。 暑いはずなのに真冬のように感じました。
0コメントをありがとうございます。 めりいさんのコメントをみて、涙ぐんでしまいました。めりいさんは詩もコメントもすてきですね
1「校庭の空蝉が 時刻表のない午後を告げていた」 夏休みの表現がお洒落すぎる! 最近のうだるような暑さを的確に表現していて、表示しているだけでスマホが熱くなってくるような熱のある詩だと思いました。
0コメントありがとうございます。 夏休みに気づいていただけてとてもうれしいです! 時刻表がなくなることはないのですが、時間に縛られずに眠ってる子供たちを見て、この詩の中でだけ、なくしてみました。 昨年より確実に暑くてこわいですね。カステラリウムさんも熱中症などにはお気をつけてお過ごしください
0一年程山の中で生活していたことがあります。作品は塩のにおいは、とあることからそれは海の近くの郊外なんだけれど、不思議とかのときの散歩の光景が脳内再生されました。
0コメントありがとうございます。 山の中で一年も生活していたなんてすごいですね!夏だけ過ごすとかはよく聞きますが、冬も過ごされたということでしょうか。 この詩は、子供の通学路を散歩したときになんとなく思ったことなどを綴りました。本当に今年の夏は散歩も苦しく、来年も散歩できるのかどうか心配になりました。
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