作品投稿掲示板 - B-REVIEW
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作成日時 2019-12-01
コメント日時 2019-12-09

それはどこの国の地面でもないのかもしれない、果たして太陽などあるのだろうか。ひとつの芽が土のかたまりを押しのけて、空に向かおうとしている。あらゆる瞼は閉じられ、すべての睫毛は伏せられている。そこにこめられた願いなど無いのかもしれない。命が、芽吹こうとしている。 Rさん、高校の卒業式の日に母親 が自殺した。結婚して五年目の 秋、そのことを夫に打ち明けた。 晩ご飯はハンバーグ、ケチャップ の赤をみつめながら、彼女はお 母さんになりたいと言った。寒く なってきたね。寒くなってきた ね。今夜のハンバーグ、いちば んおいしかったよ、ありがとう。 芽は双葉になる。懐かしい記憶など無く、求めるすべなどもたない。誰かが笛を鳴らしたような音(ね)、いずれにしろ何もかもが足りない。すべての腕はふりおろされ、それに繋がるすべての肩は無数の地平線となる。悲しいというのだろうか、雨雲が立ち込めてきた。きのう、という言葉などまだ知らない空に。 H君、新卒で入った会社を半年 で辞めて三年、一歩も家の外に 出なかった。犬が死んでも泣か なかった。父が倒れても見舞わ なかった。けれど奥歯が痛くて 歯医者に行った。両親にいちご 大福を買ってかえるとふたり は泣いていた。これでよかっ たのかもしれない。もうがんば らないよ、ありがとう。 芽は伸びつづける。茎は太く葉は青く、なにかに耐えつづけたかのように成長をとめない。降りしきる雨のなか、すべての指はさす方角を持たぬまま、あらゆるこぶしとなってかたく握られる。問いを投げかければ片端から礫になるような力強さ、時は伸び縮みを繰り返しながらしだいに意味を失っていく。 Sちゃん、四歳を過ぎてもこと ばをしゃべらず、水の音がきこ えるとなりふりかまわず泣きじゃ くった。こわいものとゆるせな いものしかない世界で、どれ だけふりほどいても抱きしめて くるひとがいた。ある日ふいに つぶやいてみる。ママ。そう、 ママよ、ママはここよ。もうど こにもいかない、ありがとう。 ✴︎ 明日は 叶わぬことに満ちている 未来は どんなひどいことだって起こりうる 生きていくことはなぜ こんなにも果てがないのだろう わたしたちのありがとうすら またかき消されてしまう かすかな風さえ吹けば なにごともなかったかのように 花はいつか必ず咲く。どこかでだれかがありがとうとつぶやけば、つぼみはまたひとつ色づくだろう。そのことを誰も知らないのに、想いだけがしずかに降り積もる。きぼう、という言葉など知る由もない空から。 見守る者など いるはずもないのに どこかでまた 笛の音がした


項目全期間(2019/12/14現在)投稿後10日間
叙情性2929
前衛性22
可読性66
エンタメ00
技巧1818
音韻00
構成2626
総合ポイント8181
 平均値  中央値 
叙情性4.15
前衛性0.30
可読性0.91
 エンタメ00
技巧2.61
音韻00
構成3.73
総合11.67
閲覧指数:858.6
2019/12/14 17時56分39秒現在
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コメント数(8)
蕪城一花 (2019-12-01):

素晴らしい読みごたえでした。 いい作品だと思います。

仲程 (2019-12-01):

まいった。と再読してもそう思います。 みなさん、読んでください。と。

いまりいまり (2019-12-01):

蕪城一花さん コメントありがとうございます。 素晴らしい、うれしいです。 我ながら出来不出来はともかく力作だとは思います。がんばりました。ありがとうございます。

いまりいまり (2019-12-01):

仲程さん わたし、実は別のサイトで仲程さんの詩を拝読していて、隠れファンです。素晴らしい詩を書かれる方だな、と思っています。だから、まいった、と言っていただけて、うれしいを通り越して恐縮です。でも、負けてられないな、ツワモノを唸らせられたな、という野心も湧きます。笑 ほんとにうれしい。ほんとにうれしいです。ありがとうございます!

なかたつ (2019-12-02):

 久々にB-REVIEWを見た中で、タイトルに惹かれ作品を読みました。抜群にいい作品だと思います。  先ず、作品の構造がよくて、映像作品に例えるならば、空・植物パートは人の姿を纏わない語り手(ナレーション)パートで、Rさん・H君・Sちゃんのパートはモノクロ映像で挿入される短編のようになっています。では、*以降の語りはどうなっているかというと、実は*以前の語りとは少し違うような印象を受けました。というのも、*以前の語りは、淡々として、その語り手の人間性というものが読み取れないような、透明な姿をしているのですが、*以降の語りは、語り手の願いのようなものが込められているような気がします。具体的に指し示すならば、「花はいつか必ず咲く」という断言です。これは見過ごしがちでありがちな表現だとも言えるのかもしれないですが、実はそうではなくて、「必ず」をわざわざつける必要があったのかと考えると、語り手の願いが込められているように感じます。「花はいつか咲く」という表現は、淡々として、描かれた世界に対してどこか距離をとっているというか、無責任な立場に感じてしまうのですが、「必ず」という表現は、「花は咲かない」可能性を秘めている世界に対して、反論をしているわけであり、言わば、語り手の願いというよりも、描かれた世界に対して距離が近いというような、責任を負おうとしている姿勢が感じられたので、ここでようやく初めて、語り手の人間の姿が現れたな、と感じました。この何気ない「花はいつか必ず咲く」という表現だけでもこれだけ考えられるのも、*以前の構造がもたらすものであり、語り手と世界との距離感の操作が上手いな、と思いました。  ただ、それゆえに、このパラグラフで、語り手の隙というのも見えてしまった気がしていて、「きぼう、という言葉など知る由もない空から」というのが、語り手の想いMAX感があり、「つぼみはまたひとつ色づく」ことと、植物が生長・成長していくことと、何より、タイトルにもある、「ひかり、という言葉など」と僕だったら書いてしまうなあ、と大変失礼で余計なおせっかいで申し訳ありません。  あと、それぞれアルファベットになってしまった3人の登場人物も、さきほどの語り手の人間性の希薄さという点から言えば、アルファベット化することによって、登場人物すら非人称性を背負わされているという点で、共通しているなあ、と。これは、作中世界に限らず、現実世界に置き換えてみれば、電車やバスにはたくさんの人の姿が目に見えてはいるけれど、その人たちの生きてきた背景というのは全く知らないわけで、言い換えると、器を見ているけれど、その中身を見ることはできないものであって。この作品はむしろ、語り手や登場人物の人間としての姿を透明化していく、言わば、器を見ようとしているのではなく、その中身を見ようとしているのです。「見守る者など/いるはずもないのに」と、最終連では嘆きのように終わってしまっていますが、いやいや、この作品の語り手こそ、この「光」という作品=器の中に、Rさん・H君・Sちゃんという3人の人物を彩った「見守る者」となっているのではないだろうかと感じました。  もう少し細部の分析を書きたいところですが、長々となってしまうので、この辺でやめておきます。つまり、言いたかったことは、久々にいい作品に出会えました、ということでした。 (余談ですが、僕も仲程さんファンで、仲程さんがこの作品にコメントを寄せているのも必然的だなと思いました。というのも、「あったことをなかったことにしたくない」という根源的な欲望が共通していると作品を通して感じました)

いまりいまり (2019-12-03):

なかたつさま 丁寧なコメント、本当にありがとうございます。抜群にいい作品、そのお言葉もうれしいです。✳︎以降は、確かに語り手は同じなんですが、それまで抑えていた語り手の内面が前面に出てきた形になってますね。これは私が書いたなかでいちばん長い作品です。我ながら、拙作とはいえ力作ではあります。 花はいつか必ず咲く。そうですね、願いをこめました。この世はあらゆる絶望で満ちているけど、ありがとうを糧に花は必ず咲く。 なんか、文章にすると安っぽくなりますね。笑 だから私は詩を書いているのかもしれないです。仲程さんの詩、すばらしいですよね。だから何度も言ってしまうけど、ああいうコメントをいただけて、ほんとに嬉しかったです。 それでは失礼します。ありがとうございました。

IHクッキングヒーター(2.5kW) (2019-12-08):

すみません。コメントしたいのですが、うまく言葉にできないです。 というか、今の僕はまだこの詩をうまく飲み込むことができないです。 すみません。出直してきます。 ありがとうございました。

いまりいまり (2019-12-09):

IHクッキングヒーター(2.5kW) さま コメントありがとうございます。 言葉にできない何かを感じていただけた、ということでしょうか。。 また、考えがまとまれば、もしよろしければ再度コメントください。お待ちしております。 ありがとうございました。

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