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批評文/赤い目に僕らも怯えてみよう!/【日常の「非」が付く時間】を読んで。   

作成日時 2019-06-21
コメント日時 2019-06-21
<批評対象作品>
日常の「非」が付く時間


ーーーーはじめに 詩の技術を思うに、「目に映るもの」が非常に重要な要素であると私は思う。 例えば風景。例えば人、物、の動き。例えば色。 今回紹介する作品は、「色」のテクニックが光る作品に感じた。 色の移り変わりのテクニック、また蜘蛛と子供との間の絶妙な距離感、一言では言い表せない蜘蛛の感情が非常に魅力的な本作を、読み解いていこう。 ーーーー作品の紐解き 冒頭、「赤茶色」という言葉から始まる本作の主人公は、恐らく蜘蛛だ。 なんと子供は、木の棒で、主人公(=蜘蛛)の巣を絡め取ってしまう。なんといってもこの1連目味わい深いのは、絡め取られた蜘蛛の感情がここでは何一つ描写されていない点だ。怒り、悲しみ、そのような思考を飛び越えた虚無感が、「書かない」ことによってより一層伝わってくる。 2連目。 >赤茶色なのは空の方で >本当は蜘蛛の巣は白い この転換は見事という他ない。冒頭で定義した蜘蛛の巣の色を、あっさり2連目で裏切る「意外性」。それもまた素晴らしいが、なんといってもこの描写、色の表現であるのに「動き」を捉えてある所が上手い。 どういうことかというと、蜘蛛の巣は「夕焼けの陽」をモロに浴びている場所にあったからこそ、赤茶色に見えたのだ。しかし、絡め取られた。そして、子供はその木の棒を、陽の射さぬところへすっと持ってきたのだろう。そうするとどうだ、蜘蛛の巣は白色であった、赤茶色に見えたのは、夕焼けのせいであったのだ、と初めて分かるのである。 3~4連目。 蜘蛛にとってはかけがえのないマイホームを奪われた存在が、目の前にいる子供である。しかし、家をぶち壊した子供はなんと涼しい目をしているのだ。 よって、蜘蛛は、(こんなことを平然とやってのけるとは、この子供に親はいるのか?)と考えたと思われる。 技術的な話もしよう。 >子供は涼しい色の目で 見事な表現である。この表現は、後半の「子供の瞳の色が赤く染まる」伏線として、この上なく機能している。まず語順だ。例えば、 >涼しい色の目をした子供は この違い。これでは、「子供」という存在にクローズアップされてしまって、目は副要素となる。よって目を最後に持ってくることは後半へのバトンとなっている。また、クローズアップの仕方も上手い。まず子供→目、と、大から小へ視点を凝縮する。そして次の行、 >空の方向を見た で、夕焼けの広い空へ、凝縮した視点を一気に広げて読者は圧倒される。テクニカルな表現だ。 5~7連目 蜘蛛が子供に問うた描写から始まる。家を破壊した子供。家を破壊したくせに涼しい目の子供が空を見たかと思うと、自分(蜘蛛)に気づいたのかこちらを見た。子供は、赤い目をしていた。 このような描写だが、蜘蛛の子供に対する、恐怖で凍りつくような様子を絶妙な加減で表現している。また、7連目の、赤い目だった、と子供は、の空白の広げ具合も素晴らしい。 8~最後の連 >蜘蛛に触れることなく子供は消えた >まるで >生命の輝きとでも言えそうな赤色は >ゆっくり宇宙へ消えていった 蜘蛛にとっては、人間が徒歩で行けるような距離も未知の場所であり、それを「宇宙」と表現している。また、死を覚悟した瞬間から生きながらえた途端、夕焼けが生命の輝きのように見えたのだ。この美しい表現も、先程の恐ろしい描写とのギャップにより、一層綺麗に読めるのだ。 そして二度と来ない子供。子供にとってはなんてことない出来事であり、蜘蛛が何をしようが、そもそもそんなことすら忘れているかもしれない。しかし蜘蛛にとっては、子供は命を脅かした忘れられない存在である。蜘蛛は、また来るかもしれない、そのような恐怖から逃れるように、せっせと巣を直すのだ。 ーーーー紐解きから結びへ 生命の生と死、そして恐怖と安堵を蜘蛛目線で味わえる良作である。なんといっても色の移り変わり。これによって、複雑な蜘蛛の心情を表すことが出来ている。本作に心理描写はさほど多くはないが、蜘蛛の心理に飛び込んでいける構造になっているのは見事という他ない。




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