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酩路   

さかさまほうびん 
作成日時 2018-11-08
コメント日時 2018-11-20

 

思い出せたのはこの一角だけで、あとはずっとシャッターが閉まったままだ。 (夜になると開くらしい。見たことがないのでわからない) 昼間はとても静かだ。 風が強いのと、曇っているのとで、また何かを思い出しかける。 暗くなると、迷路が現れた。 ここはあなたのような人が来る場所じゃない、とすれ違いざまに声が聞こえる。 私に言ったのかどうかまではわからないけれど、目立たないスーツを着た男に言われる。 私のような人? たしかに、ここにはいないような気がする。 ではあの人は?あそこに立っている、私と同い年くらいの女は? ひとりひとりにたずねてまわる妄想。 彼らが順番に答えていく。 そうよ、私は友達に誘われて来たの。 俺はあの店のお姉さんと知り合いなんだ。 今日は仕事でいやなことがあった。 家に帰ったら子どもからの質問攻めにあうんだよ。 どうしてあたしここにいるのかしら。 道に迷ったんだけど、君、この通りの出口わかる? あんたはなんでこんな所にいるんだい。 僕はどうしてここにいると思う? 気付くと靴の裏がひどく汚れている。 看板の明かりを頼りに、それを確認する。 ガムを踏んでしまったようで、すでに半分泣いている。 風が強いので、スカートがなびいて、グラ/ビアのチラシが飛んで行った。 こっちにおいでよ。 私? そう、君。 どこにいるの? こっちだよ。このドアを開ければ、朝になるよ。 嘘でしょう。ここは出口なんかじゃない。 何を疑っているんだ? さあ、私は私に何の疑いも持っていないけれど。 僕の言うことが信じられない? あなたが先に、このドアの向こうへ行ってくれれば。 なるほど。 それに、私は昼間ここへ来たことがあるのよ。 なんだ、それじゃあ全部知っているんじゃないか。 でも、昼と夜ではあまりに違いすぎる。 それも知っているんだね。知らない人が多いよ。誰も昼間にここを通ろうなんて思わないから。 きっとそうでしょう。とにかく、私は帰ります。 そういえば君、どこかで見たことある気がするんだけど。 きっとそうでしょう。 西の出口のすぐそばにある店で働いている? きっとそうでしょう。 僕のことは?覚えていない? (以前、shikiとして詩を一編だけ投稿した者です。いろいろあってしばらくビーレビを見る余裕がなかったのですが、なんとか復活しました。よろしくお願いいたします。)


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ロ三 (2018-11-09):

詩の語り手の存在が、語り手以外の登場人物のせりふで塗りつぶされていくような感覚がおもしろかったです。

みうら (2018-11-10):

非現実な場を表す手法としての詩文。それは暗喩が効果を発揮するからだろう。本作にある暗喩とは語り合う者たちが持つ疑いが喩えとしての何かだ。ややプロットにラフさがあるけれども、そのラフさが特異な表情にもなっている感がある。作者が四月に投稿された当時、私だけでなく多数の人がとても興味を持っていたと思う。作者が書く作品には惹かれるものがある。

さかさまほうびん (2018-11-20):

コメントありがとうございます。自分の作品を客観的に見れるのがやはりこの場の、自分にとって一番良いところだと思いました。実際プロットを緻密に練り上げるのは苦手なので、そういうの分かってしまうんだなあとか、書いているときは、語り手の存在を他の人物のせりふで塗りつぶそうとか思ってなかったなあ、そういう風に見えるのかあ……などとコメントも興味深く読ませていただいてます。

仲程仲程 (2018-11-20):

いい感じでひきこまれました。 なにか生きていることが、どこに向かっているのかわからないような、ぼんやりとした感じ。 帰るところは、どこなんでしょうね。 まだ、そこにあるんでしょうか、なんて話しかけてみたくなります。

沙一 (2018-11-20):

タイトルが好きでした。 お酒に酔って、夜の街をふらふらとさ迷っている、そんな作品なのかなと思いめぐらせていました。 不思議なのは、 暗くなると、迷路が現れた。 という一文で、唐突ゆえに、迷路が一瞬で現れたように感じられてしまい、当人はなぜ迷路だと判ったのだろうかと気になりました。 歩いて、歩いて、おかしいなと思い始めて、ようやく気づくのが〈迷路〉ではないかと思ったので。 試しにこの一文を消して読んでみますと、謎めく文体から、それこそ迷路に引き込まれていくように感じられ、よりおもしろく思えました。 私的には好きな雰囲気の作品です。 (^ ^)

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