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さみしさだけが僕を人間にしうるのだから
万物不滅の雨が 澄みきった窓を打ち付け 喉元まで悲しみに浸した夜 差し出された神様に やさしく頬を撫でられた夢を見て そんな夢ほど ずっとずっと 寂しいものはなくて 夜が雨と共に取り除かれ 全てが旭日のもとに曝け出された朝が 僕の部屋さえも白くしたとき 枕元で開かれた僕の瞼には いつも、どうしようもないほどに 涙が湛えられていた それでもさみしさは僕を突き放しはせず そうだ、僕だってさみしさを 突き放すことはしなかったじゃないか さみしさだけが僕を人間にしうるのだから 黄昏に色を剥がされた、残日の帰り道 苔むした石鳥居を ふいに、見つけてしまう その向こう側では 昔日のままの少女性容姿を 保っていてしまった君が それでいて翼を何気なく生やしてしまった君が そっと僕を手招きしていて 「忘れ物、ずっと置いてきて、生きてきたままだね」 鳥居をくぐった僕に、ただそうやって声をかけては その白いままの両手で、ふわっと風で広がるように神様を広げた 優しい血を教えてくれる赤地、高潔を意味するのは金の花 そうやって縫われて縫われた、それがゆえの神様 そんな神様に祈りを捧げるため、僕は片膝をついて そんな祈りを星の屠りとなすように、君は僕の背に神様をかけて 「だから君は人間なんだ どこまでも、どうしようない、そんなさみしい人間 それが、ずっと、私には眩しかったんだよ」 君の手のぬくもりは“時有鶯聲喚主人” そんな古典的な哀しさの奔流のさなか ぬくんだ手が神様の端っこを優しく掴んで 僕の頬を、汚れを拭き取るように撫でていった 「さようなら、人間」 ふっと消えては、僕と神様だけ残してしまって 石鳥居にもたれかかって僕は泣いたよ、泣いたんだ 雪がついに降りしきるようになっても、帰りたくなかったんだ 人生で一度もなかったくらいに わんわんと泣き出して 何度も何度も神様に涙を染み込ませ 人間になるために泣いたんだ 泣くために人間になったんだ 神様を突き放したくないがためにさみしさを突き放さなかったんだ そして世界が薄れて薄れて、そして覚めて 目に入るは、旭日に満たされた、見慣れた自室
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さみしさだけが僕を人間にしうるのだから ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 303.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2026-01-18
コメント日時 2026-01-18
| 項目 | 全期間(2026/01/25現在) |
|---|---|
| 叙情性 | 0 |
| 前衛性 | 0 |
| 可読性 | 0 |
| エンタメ | 0 |
| 技巧 | 0 |
| 音韻 | 0 |
| 構成 | 0 |
| 総合ポイント | 0 |
| 平均値 | 中央値 | |
|---|---|---|
| 叙情性 | 0 | 0 |
| 前衛性 | 0 | 0 |
| 可読性 | 0 | 0 |
| エンタメ | 0 | 0 |
| 技巧 | 0 | 0 |
| 音韻 | 0 | 0 |
| 構成 | 0 | 0 |
| 総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文

